諸々が一段落して若干時間に余裕ができたので少し趣味のフリーゲーム漁りをしていたのだが、その中で随分久しぶりにこれは好きな作品だと思えるフリーゲーム作品に出会えたので、2年半ぶりに紹介記事でも。(作者様HP、ダウンロードはふりーむ!より)

ゲームジャンルとしては近年めっきり見なくなったシミュレーション・ロールプレイング(SRPG)で、率直なところゲームシステム自体に目新しさは感じられなかったが、完成度・戦略性はこの手のゲームに抵抗がない人であれば十分に楽しめる水準のものだと思う。敵増援大量出現→即行動で味方ユニットが為すすべなくやられることがあるのが古い時代のゲーム的で少し理不尽さとストレスを感じるので、そこだけが若干減点ポイントだろうか。もっとも、クリア難易度自体はそこまで高いわけではなく(前述の即終了パターンで敗北条件ユニットがやられて1度だけゲームオーバーになった)、許容できる範囲ではある。

そうしたゲーム性の高さもさることながら、この作品の魅力の根幹を成しているのは何よりシナリオとキャラクターだと感じた。シナリオとしては全編に渡って鬱志向が強いので、(私は好物だが)この点で大きく人を選ぶゲームだとは思う。シナリオの良さについてネタバレにならない範囲で語るのは難しいが、『蒼穹のファフナー』7話〜10話あたりのような(といって通じるかどうかはともかく、ファフナーを引き合いに出す時点で私の評価の高さは察して頂ければ)、人の死に対する受け止め方に個人差・温度差があり、それによってそれまで上手くいっていた仲間達がバラバラになっていく、というあたりのキャラクターの描き方、希望から絶望への暗転は見事だと感じた。序盤の日常シーンから各キャラクターの個性をきっちり描写しているからこそ、普段の行動・上手くいっている時の言動には表れない弱さや隠している内面を鮮やかに描き出していたと思う。登場人物が単に「壊れている」のではなく、それぞれ個性的に「生きている」と感じさせたのも、そうした丁寧な日常の描写によるものだろうか。そして物語上、そうした死が登場人物たちに影響を与え、その後の行動へ良い意味でも悪い意味でも影響を与えていく、という(冲方先生の表現を借りるなら、「死者が生者の道となる」)あたりは作者様の独特の表現で描かれており、非常に興味深かった。ちなみに、個人的に一押しの登場人物は「伊勢 朱莉」。序盤から登場する人物ということもあって場面場面での心境の変化が非常に丁寧に描かれており、序・中・終盤の言動を比較すると大きな変化が見て取れて、それが「キャラクターがぶれている」のではなく、あくまで一貫したキャラクターとして見事に描き出されている点が鮮やかだった。「利己」と「利他」、「希望」と「絶望」のバランスを取りながら人間らしく生きていく姿が私好みである。

また、若干ネタバレにはなってしまうが、ファンタジー的なタイトルと裏腹に作品を貫くSFテイストも非常に私好みだった。『魔法少女』というタイトルがかの『魔法少女まどか☆マギカ』をどの程度意識してつけられたものかは分からないが、作者様のブログによると、どうも作者様は『まどか☆マギカ』の最終話の展開(SF風でありながら、結局は「万能の力」による力技の解決)に不満を持たれているようで、この点でも私の感性(昔書いた感想記事)と近いかな、という気はしている。この作品の核心や結末について多くを語ることはしたくないが、少なくとも『まどか☆マギカ』の結末に対するある種のアンチテーゼ的というか、きちんと作品世界での理屈によって説明できる「SFらしい」解決になっていると感じて、個人的には好感が持てた。

SRPG・鬱展開・SF要素と、大きく人を選ぶゲームシステム・シナリオであることに加え、ボリュームが多くかなり時間がかかる(作者様によると標準プレイ時間30時間超とのこと)ゲームであることもあり、誰にでも勧められるようなものではないが、これらの要素を魅力的に感じる方であれば是非試してしてみることをお勧めする。序盤だけでも作品の雰囲気は掴めると思うので、少しやってみて魅力的に感じたら続けるというスタンスで問題ないと思う。

以上、拙いながら紹介文とさせていただく。この作品に一人でも多くの方が触れることを祈っている。