7月12日、福岡県警沖縄派遣費用訴訟第二回弁論でした。午前10時から福岡地裁門前でミニアピール。10時30分から原告3人が5分ずつ弁論。原告と傍聴あわせて19人の参加。

今日は、被告側答弁への反論でした。これに対して被告側が8月末締め切りで書面が出ますので、原告団会議を9月4日19時から福岡合同事務所で行います。
次回公判は9月6日14時半です。14時から門前集会も行います。

ぜひご参加よろしくお願いいたします。

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2017年(行ウ)第8号 違法公金支出損害賠償住民訴訟等請求事件
 原 告  福岡市民救援会 外
 被 告  福岡県知事小川洋、福岡県

原告ら準備書面(1)

                                                    2017年7月5日
福岡地方裁判所第1民事部合議A係 御中



第1 答弁書に対する反論
  1  答弁書「本案前の答弁」について
(1)出訴期間の徒過について
 ① 被告は、「本件の請求に係る住民監査請求に対しては、2016年12月13日付け28監総第646号福岡県監査委員通知によって、却下する旨の通知がなされ、同通知は、2016年12月14日に監査請求人らのもとに到達している(乙第1号証)。これに対し、原告らは、上記通知が到達した日から30日が経過した後の2017年1月20日に本件訴訟を提起しており、本件訴えのうち住民訴訟として行う部分(請求の趣旨第1項)については、出訴期間を徒過した不適法な訴えとして却下されるべきである」と主張する。
 ② しかしながら、地方自治法242条第2項第1号には「内容の通知があった日」から30日以内と記載されており、この趣旨は「通知の内容を認識した日」と解すべきであり,物理的に到達した時と解するのは、下記判例に照らすとき、住民訴訟の制度趣旨に反するものである。
   被告は、乙1号証の郵便到達記録をもって、証拠十分と主張するのであろうが、少なくとも、原告らの証拠調べをして、各自がこの監査結果を認識した時点を明らかにする必要があると思われる。
 ③ 東京地裁平成12年3月23日判決は、監査請求書に請求者の押印が存せず、かつ氏名が通称名であった事案について、「地方自治法施行令及び施行規則の定めに従っていなくても、同定めが押印を求めている趣旨は、請求者が真に監査請求をする意思をもって監査請求をしたのかどうかを確認するためのものであると解されるから、押印がされていなくても、その監査請求が当該請求者の意思に基づくものであることが確認できる以上、単に押印がないとの一事をもってその監査請求を不適法とすることは相当でない」とし、かつ、通称名であることについても、「同請求者が家族とともに請求に加わっていることから、同人が当該地方公共団体の住民であることは容易に知り得、監査請求が当該住民の意思に基づくことが明らかである以上、監査委員はこれを適法なものとして応答する義務がある」としている。しかも、当該事案では、監査委員は請求者に対し、押印がないことについて補正を求めたにもかかわらず、請求者においてこれを拒否しているのである。
    そもそも、住民監査請求の手続は、簡易かつ略式の方式で、住民が監査委員に対し、監査の請求をすることができることを予定したものと解するのを相当とする(最高裁平成2年6月5日判決、園部判事意見。)のであって、前記東京地裁判決からも明らかなように、被告が主張する地方自治法施行令172条及び同施行規則13条の様式による調製は、当該住民がその意思に基づいて監査請求をしたことを確認するためのひとつの手立てにすぎず、その形式的な要件に合致していないというだけの理由で、不適法な監査請求として却下することは、住民監査請求の制度の趣旨に照らしても許されないと言わなければならない。
(2)当事者適格について
 ① 被告は、「原告らのうち、O、K、S、T、U、M、B及びAは本件監査請求を行っておらず(乙第1号証),同人らの訴え原告適格を欠く不適法な訴えとして却下されるべきである」と主張する。
 ② しかしながら、同人らは住民訴訟における適格性はともかく、損害賠償請求事件においては、他の原告らと同様、福岡県民として県費の使われ方について、問題にしているのであり、少なくとも本件の実体審理に入り、今回の福岡県警の沖縄派遣の適法性について審理を経た上で、原告適格性について判断される必要があると思われる。

第2、答弁書第4「被告の主張」に反論する。
「1.公金支出と本件派遣は無関係な行為である」への反論。
(1)被告は、最高裁昭和58年7月15日判決調査官解説を引用して、本件派遣の違法性が本件公金支出に直接の関係も結びつきもなく、違法性の承継は生じない旨を主張する。しかし、調査官解説(以下、「解説」)は、裁判官である調査官の個人的な解釈に基づく解説書であって、その解説内容に、一般論として、法的拘束力がないのは論を俟たない。したがって、この解説書は法的根拠にはなりえない。よって、被告が原告主張に反論するに、同解説書をもってするは、失当である。因みに、憲法は、第76条で「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法および法律にのみ拘束される」のだから、本訴訟審理はかかる条規によって執り行われるものである、と確信する。
(2)次に、被告答弁書は、本件訴訟に違法性の承継はないと主張している点について反論する。
 ① 違法性の承継について
 一般に、違法性の承継とは、数個の行政行為が連続して行われる場合に、先行行為に瑕疵があったときに、その瑕疵が後行行為にも継承されることをいう。違法性が継承される場合には、後行行為に対する取り消しの訴えにおいて、先行行為の違法性を主張できる、というものである。
行政行為が連続して行われており、先行行為に瑕疵がある場合、その瑕疵が後行行為にも継承されるかの問題であることに異論はない。さらに、先行行為と後行行為が段階的に連続してなされている場合に、違法性承継が問題とされ得ることにも異論はない。
 違法性承継が認められた典型的な判決は「最判昭25.9.15」である。この判決は、先行行為の農地買収計画に農地委員会と知事の権限不行使の違法があり、この違法が後行行為の農地買収処分に継承され、取り消し訴訟で先行行為の違法を攻撃しうると判示した。また、安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取りされていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であると主張することは許されるとの判決「最判平21.12.17」が出ている。
 ② 福岡県警察職員の沖縄派遣の違法性
  福岡県警察職員の沖縄派遣には、次の違法がある。
  (あ)警察庁の事前通知の違法性
    7月12日の沖縄県公安委員会の援助要求発出に先行して、7月11日に警察庁が警視庁又は他の都府県警察本部に対して、各警察部隊の沖縄派遣態勢を準備するよう通知を行った。この通知行為には警察法逸脱の違法がある。すなわち、同法60条(援助の要求)には、各都道府県公安委員会は、警察庁又は、他の都道府県警察に対して援助の要求ができると記されているが、逆に、警察庁からの各都道府県公安委員会からの援助要求に対する協力方指示の条規がなく、7月11日の警察庁の同通知発出には、法による行政からの逸脱の違法がある。この通知は警察法が予定していない国家警察から自治体警察への命令と受け止めざるを得ない違法がある。民主化の一環として国家警察が解体され、警察行政機関が自治体警察に転換された戦後日本の歩みを根底から覆す暴挙である。「法的に言うと、47の都道府県警察があるだけで、日本警察という単一なものは存在してはいけないのです」(田村正博京産大教授)
  (い)沖縄県公安委員会発出の援助要求の違法性
 沖縄県公安委員会の他都府県警察本部への援助要求は自治体警察として自発的なものとは言えず、違法な警察庁の国の事前指示に依るものであるので、違法である。また、警備警察職員の人員が不足しているのであれば、沖縄県警察員の定員に関する条例を改正して警察職員増員計画を立てるべきであり、他都府県警察の人員を割くことよって不足を補い、結果として派遣した自治体の住民福祉を妨げることになった援助要求を発すべきではなく、権利濫用の違法がある。また、協力要求の理由を具体的に示すことなく、警察庁通知に追随して都府県警察に協力要求したのは、地方自治体と国との関係を定めた地方自治法第1条の2(地方公共団体の自主性)に違反する。
  (う)福岡県警察本部長発出の福岡県警察部隊の沖縄派遣命令の違法性
 よって、沖縄県公安委員会の違法な援助要求に基づいて、福岡県警察本部長が福岡県警察職員に発出した沖縄派遣命令は警察法36条及び地方自治法第1条の2に違反する。
  (え)福岡県警察職員による派遣先沖縄県での違法行為
    派遣された福岡県警察職員は沖縄現地で違法な捜査活動を行った。分かっている範囲でも、東村高江で道路を封鎖して違法に検問を行った。自然を破壊する違法な工事に抗議する人々を違法に実力排除し、その過程でポケットをまさぐるなど違法な暴行を加え、刑法195条特別公務員暴行凌辱罪に抵触し得る行為を行った。
  (お)警察法2条違反の警察行為
    上記した警察庁、沖縄県警、福岡県警の行政行為は、警察の責務を定めた警察法2条に違反する。本件訴訟の対象となる一連の警察行為は、沖縄県内で県固有に自生した事案に対する警備行動ではなく、東村高江地区に住民の反対の意思を踏みにじって、米軍ヘリパット施設工事が強行されたことに基因する日米安保条約上の自民党公明党政府の債務遂行を保全する警備行動であると言える。
    その政府の債務遂行のために、国の機関である警察庁が、上記したように国と対等の立場にある地方自治体たる沖縄県公安委員会の援助要求に先行して関係都府県警察に準備方通知を出したのだから、その行政処分は「警察は、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない」とする警察法2条二項に違反すると言わざるを得ない。すなわち、国論を二分している米軍ヘリパッド施設工事が、自民党公明党政府の意思実現のために警察力を使って強行されたことは、警察の不偏・不党かつ公平中正の原則を破り、政府による住民弾圧に加担したと言わざるを得ない。
 (か) 警察法第36条違反
 都道府県警察の責務は、警察法第36条によって「当該都道府県の区域につき、第2条の責務に任ずる」とされている。しかるに、今回の福岡県警部隊の派遣は、福岡県内から約800kmの隔地沖縄県内は、福岡県警の責務を果たす区域ではない。
 (き) 警察法60条第一項違反
 同条第一項に、「都道府県公安委員会は、警察庁又は他の都道府県警察に対して救援の要求をすることができる」と規定されている。この条規は、自治体警察からの応援要求を予定しているところ、本件訴訟における警察庁通知には、本来対等である国の警察組織と地方自治体の関係を、あたかも上意下達の上下関係に変えた違法がある。そうすることによって、国は、警察法60条第一項の法規性を没却した違法がある。

 ③ 福岡県警察職員の沖縄派遣の違法性は福岡県警察の沖縄派遣警察署員への  公金支出に継承される。
 (あ)さて、被告は5月9日答弁書で、本件支出の原因が本件派遣ではないと述べている。しかしながら、上記したように、本件派遣が違法なのであり、その違法性を継承した福岡県会計支出の違法性を先行行為の違法性を攻撃することで立証できることは、2-1に例示した判例が示すとおりである。訴訟審理で派遣行為の違法性が立証されれば、公金支出もまた違法支出となる。
    本件の福岡県警本部長による福岡県警沖縄派遣(先行行為)には、2-2で前述した自治体警察の本旨を破壊して警察庁が都府県警察に先行通知した違法、福岡県警が本来の職責地福岡県での警察任務を放棄した違法、沖縄県警察本部の指揮下で様々な違法行為を繰り返した違法などの違法があり、その違法性が後行行為の沖縄派遣警察職員への給与支給という後行行為に継承され、本件賠償請求訴訟において先行行為の違法性を攻撃して損害賠償請求の理由とすることが可能であると主張する。
 (い) 前記2-1の「違法性の承継について」で述べたように、先行行為と後行行為が段階的に連続してなされている場合に、違法性承継が問題とされ得ることにも異論はないことを前提として、本件訴訟に関係づけて述べる。
    先ず、住民監査請求と本件訴訟を通じて、請求人と原告がその対象としているのは、福岡県警察職員が遠い沖縄県に派遣され、福岡県内で警察法36条「当該都道府県の区域につき、第2条の責務に任ずる」に違反しているにも拘わらず、当該派遣警察職員への財務会計上の給与支払い(以下、「会計支出」)である。
 (う)福岡県警察職員の沖縄派遣の違法については、2-2で前述したとおりである。
    「被告の主張」の根拠は畢竟、「被告の財務会計上の行為を捉えて、損害賠償の請求をできるのは、被告の行為自体が財務会計上の義務に違反する違法なものであるときに限られる」というのであって、本件支出自体についての財務会計法規上の義務違反を具体的に主張していない原告らの請求に理由がない、ということなのであろう。
    しかし、前記判例以外での「一日校長事件判決」(最高裁平成4年12月15日)では、「介入するには教育委員会の行為に『著しく合理性を欠きそのために予算執行の適正確保の見地から看過しえない瑕疵』が存在する場合でしか口を出せない(その場合のみ、是正義務が発生する)」と論じられている。
    その判示を本件訴訟に適用すると、「派遣警察職員の沖縄派遣には著しく合理性を欠き、予算執行(公金支出)の適正確保から看過しえない瑕疵がある」と断定せざるを得ないは、前述の違法がある。よって、今回の沖縄派遣福岡警察職員への給与支給という公金支出は、福岡県に損害を与えたと評価せざるを得ない事情があり、本件損害賠償請求には理由がある。
 ④ 最高裁平成16年1月15日判決を援用する
本件訴訟の核心の一つは、警察法36条に違反して福岡県内で勤務することなく、沖縄に違法に駐在した福岡県警察職員への公金支出を成した被告の行政処分は違法ではないのか。このことに関しては、最高裁平成16年1月15日判決を援用する。この判決は、第三セクター会社に県職員を派遣し、給与条例上の勤務をしないことの承認をして当該職員に給与を支給した事案につき、地方自治法24条1項の趣旨に反する違法なものなので、承認の是正することなく行われた当該職員に対する給与の支出は違法であると判示されたもので、その理由に当該支出自体についての財務会計上の違法性は論じられておらず、あくまで原因行為(先行行為)の派遣の違法を供与支出の違法の理由にしている。
これを本件訴訟に適用すると、福岡県警察職員の沖縄派遣という原因行為の違法そのものが、財務会計上の公金支出の違法性を構成している。よって、本件損害賠償請求には理由がある。
この点について、行政法学者の芝地義一京都大学名誉教授は、「違法な目的のために公金を支出することはそり自体も違法だというのは常識ともいえる原則なのである」(「住民訴訟における違法性(上)」法曹時報51巻6号1434頁)と指摘している。そのうえで、「原因・目的が違法であっても公金支出が必ずも違法とされない現象、換言すると、原因・目的の違法性の審査に限定が加えられるという現象がみられる(「住民訴訟における違法性(下)」法曹時報51巻7号1634頁)と指摘している。
 ⑤ 小結
 上記したように、福岡県警察職員の沖縄県への派遣行為の違法性が、同警察職員への公金支出に承継するという法理、違法目的のために支出すること自体が違法という原則によって明らかになった。よって、本件公金支出は違法であり、損害賠償請求に理由がある。

第3、福岡県警機動隊の沖縄派遣の実態における違法性
 1、まず、福岡県警を始めとする都道府県警察は、本質的に自治体の警察であり(警察法36条)、その本務は当該都道府県の住民の生命・身体・財産の安全を守ることにある。にもかかわらず、福岡県警が大勢の機動隊員を沖縄県に5ヶ月以上もの長期にわたって派遣すると言うことは、本務に違背するものと言わざるを得ない。
 2、次に、住民総数140人程度の高江に、福岡県警機動隊員を含む他都府県からの機動隊員総勢500人と沖縄県警機動隊員のほぼ同数を持って、住民や住民を支援する市民らの抵抗を実力で排除し、ヘリパッド建設を強行するためになされた本派遣は、警察官職務執行法第1条に具体化された警察活動の比例原則に違反する違法なものであると言わざるを得ない。
    さらに、その警備活動において様々な違法行為が行われた。

  (1)違法検問
      琉球新報によると、2016年7月19日と20日、ヘリパッド建設現場から4km南に離れた唯一の県道で、福岡県警は突然前触れもなく検問を開始し、ヘリパッド建設予定地に向かう車両をことごとく止めて行先、目的、職業などを聴いた。あげくに「帰った方がいいですよ」とまで言った。気の弱い人にしてみれば、警察から強制されたようなものだ。高江弁護団に所属する小口幸人弁護士によれば、「一斉検問は特別な事情がない限り違法で、判例も出ている。」とある。その根拠は、道路交通法95条2項と、67条1項である。
     (道路交通法95条2項)
 免許を受けた者は、自動車等を運転している場合において、警察官から第67条第1項又は第2項の規定による免許証の提示を求められたときは、これを提示しなければならない。 
     (道路交通法67条1項)
       警察官は、車両等の運転者が第64条第1項、第65条第1項、第66条、第71条の4第3項から第6項まで又は第85条第5項若しくは第6項の規定に違反して車両等を運転していると認めるときは、当該車両等を停止させ、及び当該車両等の運転者に対し、第92条第1項の運転免許証又は第107条の2の国際運転免許証若しくは外国運転免許証の提示を求めることができる。
       ※67条2項は、実際に交通違反や事故をしたときの定めなので関係ない。 
上記の、64条、65条、66条、71条の4、85条に「違反して運転していると警察官が認めたとき」だけ、「当該車両等を停止」させることができ、免許証の提示を求めることができ、このときだけ運転者には免許証の提示義務が発生する。
 取材に向かう途中の琉球新報の記者に対し、福岡県警機動隊は「この先で工事をしていて車の出入りが多い」「路上駐車が多く道路が危険になっている」などと説明したが、免許証を提示する理由についてははっきりと言わなかった。「(免許証の期限が)切れているかもしれないので」という説明もあった。市民に「何の工事だ」と問われた機動隊員が「聞かされていません」と答える場面もあった。
 翌日21日、高江の住民らは、ヘリパッド建設予定地周辺の県道70号の封鎖や検問の禁止を求める仮処分を那覇地裁に申し立てた。住民側は、道路が封鎖されれば通勤や買い物などで移動する自由が侵害されるとし、検問では個人情報が国よって違法に収集されると訴えていた。
 共産党の赤嶺政賢議員(沖縄1区)が防衛省と警察庁を国会内に呼んで事情を聴いたところ、両省庁は一斉検問の事実を認めたうえで「安全のため方向転換を勧めた」としか、答えることができなかった。このように、法的根拠を示すこともできない警備活動は、警察法2条2項に規定された日本国憲法に保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等の権限を濫用してはならないとの原則に照らし合わせても、違反するものであることは明らかである。
  (2)女性への不当拘束・逮捕
      2016年9月6日午前、高江の県道70号において、車を使った抗議行動をしていた女性が、他にも同じような行動をしていた中で一人だけ身柄を拘束され、名護署に連行された。車を運転していたその女性によると、福岡県警機動隊員の指示により車を完全に停車させたにもかかわらず、ドアを壊され、6人ほどの福岡県警機動隊員によって車から引きずり出され、地面に押さえ付けられ、公然で手錠をかけられ、ズボンの前後のポケットに手を入れて探られ、靴下を脱がされ、パトカーに連れて行かれたとのこと。高江弁護団の小口弁護士は、「車から引きずり出した上で、男性機動隊員が女性のズボンの前後のポケットをまさぐる、車のキーを探す、という全く必要のない不当な捜索です。逮捕も不当だが捜索も不当そのもの」とコメントしている。警察側は「公務執行妨害」と言うが、車に乗っていて警察には触れておらず、その逮捕理由も不明瞭のままだ。これは明らかに行き過ぎた行為であり、人権侵害を幾重にもおかしていると言える。
   (3)トラロープによる危険な吊り下げ
 2017年9月28日の午後、H地区ヘリパッド建設現場の谷間で抗議していた市民を、沖縄県警と福岡県警の機動隊が、トラーロープを使って無理やり引き上げ、強制排除した。足場の悪い斜面で市民の体に細いロープを結び、怪我をするのを承知で強行された悪質な弾圧である。      沖縄県警の池田本部長は「命綱」「災害救助」という言葉を使って、トラロープの使用を正当化している。だが、「痛い」と叫ぶ女性を強引に引きずり上げている映像を見れば、それが嘘であることは一目瞭然だ。実態は「命綱」どころか市民を危険にさらすものであり、「救助」ではなく「強制排除」という弾圧でしかなかった。
              (目取真俊ブログ/海鳴りの島から)
 琉球新報に報じられた写真を見ると、排除された20代女性の腕や脚などには複数のあざが残っている。その女性は「『こんな作業はむちゃだからやめてください』と訴えたが聞き入れてもらえなかった。ロープで引っ張られた際に切り株や地面に何度も体を打ち付けた」とある。使用されたのは通称「トラロープ」と呼ばれる細いロープで、標識などの用途で使用されているものであり、人や物を支える用途では作られていない。沖縄県山岳連盟・雨宮節会長は「トラロープは原則から言うと、強度が弱いため人命が関わるときには使ってはいけないし、全く適さない。」と断言している。そのようなものを「救助」と言って使用し、市民を命の危険に晒して体にあざまで作らせることを、市民を守るべき機動隊員が行ったことは、許されまじきことである。
 3、県警本部長は、その警察官の行った職務が違法なものであれば、これに対応する額の減額、あるいは不支給を決定することができる。県警本部長には、支出決定において、違法に行われた派遣決定により違法な警備活動を行った警察官に対して給与を支払ってはならないという行為規範がある。
   そしてこのような行為規範は、地方自治体の財政の原則を定めた地方自治法2条14項(「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」)及び、地方財政法2条1項(「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努めなければならない。」)に基づくものである。
 4、よって、本件公金支出はこれらの規定に違反した、違法なものと言わざるを得ない。

以上(このブログ上では、市民の氏名はイニシャル表記とした)