太極図の魅力を様々な分野で当てはめながらその普遍的な真理を解説したつもりです。
今、ブームになっている脳科学に当てはめたお話をしたいと思います。
木村拓哉が演じるテレビドラマ「MR.ブレイン」の主人公やテレビで引っ張りだこのタレント茂木健一郎先生は脳科学者です。
脳に関する新刊本はベストセーラーになっています。
中でも、話題のミラーニューロンという脳細胞の発見は、自己と他者の認識を世界的に変革する社会を一変させる世紀の発見だと言われています。
私が本を読んで、感動した言葉を書き出しました。
「全ての現象は脳が作り出したイリュージョンにすぎない」
「身体の60兆の細胞は常に死滅再生を繰り返す。しかし、1000億個の脳細胞は再生しない。死滅するのみである。これは、自己をいう個体の意識と記憶を維持する為である」
「人間の60兆個の細胞の中に、他者のDNAを持つミトコンドリアが一つ一つの細胞の中に、2000~3000個も共生して、細胞に酸素から得られるエネルギーを与えている。どこからが自分でどこからが他者であるという区別はミクロレベルでも付けられない」
「女性のミトコンドリアは授精の度に受け継がれるので、それをたどれば16万年前のアフリカの1人の女性に行き着く。その女性を『ミトコンドリア・イブ』と呼ぶ」
「動物脳と呼ばれる生存を司る古い脳は人称が理解できない。他者を攻撃した言葉を自分という人称が理解出来ないので、自己への攻撃と記憶し、ストレスを抱え込んでしまう」
「人間は開放系のチューブみたいなものである。しかし、人間の脳は閉鎖系の袋だと錯覚している」
「人間の筋肉を動かす脳の細胞が人間の意志決定を司る脳細胞が発火する0.35秒前に発火している。肉体が心、意志をリードしているのだ」
「五感による認識は、脳が描き出した錯覚である」
「ミラーニューロンという鏡の機能をする脳の細胞は、自己と他者を繋ぐ、人間が社会との、つまり他者との関わりを持つための装置である」
「右脳の回角という部分は、自己が肉体を離れ幽体離脱させる脳細胞である」
「幽体離脱する脳の機能は、人間が自己を客観視して、社会に自己を順応させる脳のシステムである」
「人間が食べ物を食べるのは、宇宙では、全ての物質がエントロピー増大システムの中で、低エントロピーの食べ物を自己に取り込み、エントロピーを低下させる為の行為である。自己とは他者の存在が無ければ存在できない相互依存の関係にある」
「自己の範囲は五感により、ミクロ世界から宇宙のマクロ世界まで、拡大することができる。それは脳が全ての世界を確かな質感(クオリア)をイリュージョンとして創造しているからである」
「自我という意識は、脳細胞の80%を占める水が作り出している」など
興味深い解説が本に書かれています。
どれも、太極図の原理を理解すると初めて理解できる不思議な世界です。西洋的な論理的な世界観と異なる脳の世界が論述されています。
自己と他者を区別し、名前を付けるのが学問の世界です。しかし、老子は部分の総和が全体を作るのではない。生命は部分の総和を遙かに超える運動体であると言います。ですから科学的に部分を分析しても生命や宇宙の不思議な世界は理解できないのです。その観点から最近の脳科学という学問の限界も見えてきます。
事実、脳科学者自身が最近、解明したと思っていた脳の世界が、次々と新しい発見により、さらに不可解な脳の世界を拡大させたにしか過ぎないと嘆いています。
それは、講義で述べたように、最先端の宇宙科学が96%を占める理解不能な暗黒物質を発見した時に類似しています。
サムシンググレートに対する畏敬の念を失った哲学の裏付けのない科学的なアプローチは迷路の中に迷い込みます。
老子が言うように、自己と他者は深いところで繋がっている相互依存、相対的な存在です。近代において、自己と他者を分ける西洋的な概念は、個人の自由や権利を拡大させました。しかし、2008年、その弊害がサブプライム問題に象徴される西洋的文明を支える自己中心的な存在である人間観を信じたアメリカ文明の崩壊という形で現れたのです。我々は繋がっている。本当はひとつである。そう老子は根源的なつながりの深い世界を「道」と呼びました。お釈迦様は「空」と呼びました。「有ると言えば、無い。無いと言えば有る世界」「波動であるが物質でもある。観察する行為で確率論でしか、そのどちらかに見えるかは分からない量子論的世界」「人生とは、死にながら、生きている世界」
それらは太極図の陰陽の渦巻く、陰の陽、陽の陰が交互に繋がる不思議な世界です。
最近の脳科学の著しい進歩は、日本人が発明したMRI装置の開発によるのです。将来、日本人が老荘思想を応用して、脳の不思議な世界をさらに解明すると信じます。
脳科学的な自己とは何かという認識が老子の世界観をより現代人に理解させる手段になると思います。
最後に、皆様がいつか、人生において、様々な困難に遭遇された時、迷われ、苦しまれているあなたのそばに老子がそっと現れ、あなたを励まし、慰め、勇気を与えてくれると信じます。「足を知る」「無用の用」「水の
最後まで受講していただき感謝いたします。