2025年11月14日

陽ざしが暖かい

 こういう日が、もう少しあってくれないものか。


「『ドグラ・マグラ』完全解読」 佐藤正章 私家版 読了

 SRマンスリーに「『ドグラ・マグラ』解読」が連載されていたが、これはそのオリジナル版で、著者からいただいたものであります。以前同じ著者の「『箱男』完全解読」を読み、その解読の精緻さ、論理のアクロバットに舌を巻いたので、今回も楽しく読んだ。

 途中、アクロバット過ぎて、ちょっとついていくのが難しくなるところもあるが、最後に「特殊要約」という、解読結果に基づいて物語の筋を再構成しているセクションがあり、それを読むと、解読結果と物語とが矛盾なく合致し、「ああ、こういうことだったのか」ととてもすっきり。これもまた、大変に面白かった。

 ここまで分析されるのには、途方もない時間と神経をすり減らすような集中力が必要だったと思うが、それに見合う出来栄えの力作である。
 貪欲な読者で恐縮だが、もっと他にも読みたい。


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2025年11月13日

ちょっとほっとする

 先月の半ばあたりから、パソコンを起動するとBitlockerという青い画面になったり、作業中突如ブラックアウトしてBitlocker画面になったり、再起動して復帰したりしなかったりを毎日何度も繰り返していたのを、だましだまし使うのに疲れてコールセンターに電話する。
 そうすると、対策の一つにBIOSの設定を初期化する手がある(データは消えませんのでご安心を)というので、やってみたら、なんかうまくいったみたい。しばらく様子を見ることにする。
 ただ、再発した場合は、もう少しやばい対応になるようで、データーの保存はこまめにしておかんといかん。

 文フリが終わって、いろんな所への発送が終わるまで、クラッシュはせんどいてくれ。たのむ。
 パソコンに向かって神頼みをするというのは、デジタルなのかアナログなのか、今風なのか古風なのか、わからん。

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2025年11月08日

「Carr Graphic vol.4」のご予約を承ります

表紙修正お待たせしました。Carr Graphic vol.4 “Appointment with Fear and Farce” を11月23日の文学フリマ東京にて販売いたします。
 郵送をご希望の方はご予約を承りますのでコメント欄に書き込みをお願いします。
 追って、詳細をご連絡いたします。発送は11月23日以降になります。

 本巻で扱う作品は『仮面荘の怪事件』から『墓場貸します』までの、円熟の技がさえる12作。図面はTony Medawar氏の指導により、より完成度が上がりました。お楽しみいただければ幸いです。


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2025年11月05日

篠田真由美著『倫敦銀猫堂骨董綺聞』のご購入希望を受付ます

表紙本日、篠田真由美著『倫敦銀猫堂骨董綺聞』の入稿が完了しました。
 初売りは11月23の文学フリマ東京ですが、当方でもご購入予約を受け付けます。
 ご希望される方はメッセージに書き込みをお願いいたします。
 1904年のロンドンを舞台にした連作短編集(文庫サイズ)です。


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2025年11月04日

木枯らしか

 旧岩崎邸に行く。

 これから描くであろう洋館内の部屋の参考のため。そして「金唐紙とは何か」という講演にも参加する。
 そもそも金唐紙なるものを知らなかったし、友の会まであることはなおさら。この歳になって、全く未知の世界を知ることができて楽しかった。

 その前に昼食としてカレーうどんを食べる。
カレーうどん

 

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2025年11月01日

10月も終わったので

残りは二か月。

 本は読んだが、SRの十冊の課題本なので、ここには書けない。

 本棚の(本)の入れ替えをする。取り出したものはダンボール箱の中へ。優先順位の高いものを並べるためである。やむを得ない。捨てるわけではない。限りある空間なので。

 

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2025年10月28日

ズボンの右のポケットの脇に

穴が開いていた。小さいけど。力のかかるところみたい。左側は大丈夫。


 『骰を振る女神』 ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ 国書刊行会 読了

 三作品が収録された短編集。いずれの作品ものすごい迫力。読んでいて息苦しくなるというか、変な言い方だけど、読みたくなくなるというか。
 個人的に、前にも後ろにもいない作家はウールリッチだと思っていたのだが、この作家もそうであることを認識。

 偶然を多用する技はこの作家の特徴であるのだが、それは、日本でいう本格謎解きとしてみなされる作品よりも、この短編集に収められているような、悪漢小説やサスペンスものにぴったり合う、というか、そもそもの文体とも相まって鬼気迫るものがある。

 内容の紹介はしない。三編とも、読み始めてすぐは、何が起きているのか、起きようとしているのかわかりにくいが、飛ばさずに読んでいくと、間もなくJ・T・ロジャーズの世界に引き込まれること、間違いない。

 

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2025年10月21日

冬へとまっしぐら

 『クラシックな殺し屋たち』 ロス・トーマス 立風書房 読了

 何度か読むチャンスを逸し、もう今読まなければ絶対読まないだろうと思い手に取る。読めた。1998年12月に(もちろん古書として)入手したというメモを発見。27年モノの積読。まあそんなに長くはない方かな。

 四作あるマッコークル&パディロ・シリーズの一作。四作とも翻訳がある(下記)。
 実は、ロス・トーマスは『女刑事の死』と一昨年に翻訳が出た『愚者の街』しか読んだことがない。ではなぜ本書を手に取ったのかというと、邦訳題名とカバー絵がユーモラスで、そういう感じの作品なのかなあと思ったため。で、結局今まで読まなかった。

 それで、面白かったのかというと、まずまず面白かった。ただ、私の好みの守備範囲とはちょっと違うので、こういう言い方になるのはお許しを。実はシリーズ三作目であるということを知ったのは、読み始めてからで、「マックの店」というのが出てきて、あれれとなって、よよよと調べて分かった次第。もちろん、先行する作品を読んでいなくても十分に楽しめるし、実際に楽しめた。
 ただし、第一作、第二作では、この二人は危機に陥っても死なないということと、第四作が描かれたのだから、本作でも大丈夫というネタバレにはなってしまうが。

 本体にも帯にもあらすじが書かれていないので、どういう話しなのかというのをざっくり説明する。
 舞台はアメリカ。クェートに匹敵するような石油の埋蔵量を有する小国の王が、アメリカの石油会社と契約を結ぶ直前に危篤状態になり、皇太子はお忍びでアメリカにいて、そういう事情で契約書にサインするのは彼なのだが、その日までに皇太子を殺したい何者かと、殺されたくない何者かがいて、それよりも前にひと悶着あって、もう切った張ったこりごりだと思っているマッコークルとパディロが巻き込まれる(読点のみの悪文)。
 
 今の映画で見るような殺し屋と比較すると確かに「クラシック」ではあるが、作品全体にかかわる謎は本格ミステリ風で、また十分に納得がいく結末も準備されていて、SRの会で1986年ベストの二位であった『女刑事の死』よりは面白かった(ちなみに本書は1976年の年間ベスト40位に入らなかった)。


 『冷戦交換ゲーム』(1966年:原著発行年、以下同じ)
 『暗殺のジャムセッション』(1967年)
 『クラシックな殺し屋たち』(1971年)
 『黄昏にマックの店で』(1990年)

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2025年10月15日

風邪をひかないように気を付けなければ

『男爵と魚』 ペーター・マーギンター 国書刊行会 読了

 遅ればせながら。
 今回はどういう奇想かと思っていたら、男爵にはモグラの血が流れているようで、ははんこの手かと思ったが、油断はできないのでじっくりと読む。話の筋は、見失くことなく読み終えられた。ほっ。
 題名から男爵の話かと思ったが、それもあるが、冒頭で彼の秘書として雇われるジーモンの話でもある。

 奇想小説のストーリーを語ることはよくないことなので、これ以上はしない。上記のことは開巻早々の話なので、まあいいかなと思った次第。
 個人的には、少し哀しさを感じた。

 それにしても、こういう物語を日本語で読めるなんて、いい時代に生まれてきたものだと、心から思う。翻訳文学が年々減少しているとはいえ。確かにそれは残念なことなんだけれども。

 

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2025年10月14日

セエタァを取り出す

 『決闘』 三上於菟吉 ヒラヤマ探偵文庫 読了

 勧善懲悪因果応報の物語であるが、日本風冒険小説の根本は、まずはここからという感じの、起源的作品であるように思う。
 くどい説明や長引かせる描写はあるものの、連載小説なのでやむを得ないことだろう。今でも散見される。
 とはいえ、ここでは関東大震災による不慮の死を除いて、悪玉にも善玉にも「死」がないことは、刮目に値する。

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2025年10月13日

色づく前に葉が落ちる

『ジョン・サンストーンの事件簿<下>』 マンリー・ウェイド・ウェルマン アトリエサード 読了

 やっぱり面白かった。
 ただ、少し残念なことは、上巻で決着がついているライヴァルの話が含まれたりしているところ。つまりは上巻と下巻で発表年代順ではないこと。
 
 しかし、このことは、今の出版状況から考えるとやむを得ないことかと思う。特に翻訳の場合、上下巻で出ると上巻だけで終わってしまう人も多いと思う。そこで、上巻だけ読んでも、この作品集の、また探偵の魅力の伝えられるように編集されたのだと思う。

 そういう愚痴を言いましたが、ホラーをあまり読まないけど良い出会いでした。ありがとうございました。


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2025年10月09日

SRの全国大会に行く その4

 二日目。
 目が覚めると完全な二日酔い。私の二日酔いの症状は、頭が痛いとか気持ちが悪いではなく、強烈な寝不足。アルコールの力で寝ているように見えるが、実は気を失っているだけで眠ってはいないのである。

 さて今日は、オプショナルツアーの二日目で、内容は全くミステリと関係がない。

 九時過ぎの列車で東静岡から三島へ。
 向かいの席でO村さんとS沼さんが本を読んでおられるが、私は目が泳いでとても文字を終えないので瞼を閉じる。

 三島からはバスに乗って三島スカイウォークへ。 深い谷間に架けられた長い吊り橋を渡り、種々のアクティビティが楽しめるところである。
 天気が良いが、残念ながら、富士山の山頂は雲がかかっていた。この時期は仕方がない。

 吊り橋は頑丈に造られているので、揺れないだろうと思っていたが、ワイヤーがキイキイ音を立てるし、そこそこ揺れる。そんなに怖くはないが、乗り物酔いみたいな気分に、二日酔いが残っているので余計になる。

 ジップラインも経験するつもりだったが、着地の際やや衝撃がありそうで、下手をすると半分持病の腰痛を悪化させるかもしれず、そうなると目も当てられないのでやめておく。
 再び吊り橋を渡って振出しに戻る。帰りの方が揺れが大きく、おかげで、渡り終わった後もしばらくふらふらする。三半規管が弱くなったなあ。

 午後一時。バスに乗り三島市内に戻る。やや遅い昼食。名物のうな重である。時間をずらしたので、待ち時間少なく店内に入ることができ、またゆっくりと味わうことができた。

 これで二日目のオプショナルツアーは終了で、解散である。
 ただ、せっかくなので、三嶋大社にお参りに行くとともに名物の餅を買う。
 横手から出て、小川に沿って梅花藻をめでながら三島駅へ。
 お土産を買って「こだま」に乗り込み東京へ。帰宅は午後六時半。

 皆さんお疲れさまでした。楽しゅうございました。また来年お会いしましょう。

 おわり



 

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2025年10月08日

SRの全国大会に行く その3

 例の踏切の名は「興津清見寺踏切」というようです。補わせていただきます。


 さて、本日の宿の最寄り駅、東静岡駅に着く。どうやら新駅らしく、改札を出たコンコースは巨大といってもいいほど。ちょっとしたコンサートが開けそうである。

 少し歩いてホテルに入り、各自でチェックインをする。荷物を置いた後、夜遊びのための買い出しに参戦。近くを走る広小路(おそらく国道一号線:未確認)沿いにコンビニがあり、酒類、ソフトドリンク、甘辛取り揃えたお菓子等を買う。

 午後六時、ホテル内のレストランに集合。今回は久々にY前さんが(蔵書整理を兼ねて)参加。また、地元(といっていいのかよくわからないけど)全国で二千人ほどしかおられないという珍しい名字のR知さんも。全員で二十数名。ぎっくり腰のためK村さんが急遽不参加となったのが残念。

 鍋をつつきながら自己紹介。一番遠くから来られたのは、四国のIN口さんだろうか。
 最近読んで面白かった本(K木さんのおススメは年間ベストになる確率が高いので、その場でネットで確認する)とか、近況報告(もちろんミステリにかかわる)とかで盛り上がる。
 いやもう、みんなそれなりの経験を踏まえた方が、副業レベルであったとしてもミステリにかかわることをしていて、すごいなあというか、何なんだろうね、この感動は。

 山Mさんと少しお話をする。
 「改装された乱歩邸に行きましたよ」「もう飽きたな」「最近(乱歩や横正)で新発見もありますよね」「昔の話だね」
 ミもフタもない。話術が巧みで面白いんだから誰か録音しといて! 
 えと、「その1」の冒頭で書いたように、このレポートらしきものはすべて架空の物語です。

 午後八時からは場所を会議室に変えてゲームとオークション大会。ここからが本番。何歳であろうと、参加者全員が子供(金は持っているみたいだけど)になる時間が始まる。
 今までの経験では(ホテルの)会議室の貸し出し期限は、夜十時というのが常なのだが、今日は十一時までということで、これはがぜん盛り上がるというか、飲みが進むであろう。ホテルの方には感謝である。

 最初はS沼さん作成のクイズ。推理作家協会賞とか「このミス」にかかわる出題。かなりの難問。少なくとも1990年代から2020年代くらいの知識がないと高得点は望めない。
 次が私が作ったクイズ。去年と同じでビンゴと「クイズグランプリ」を合わせたもの。前年の反省から数字を1〜79に増やしたものの、やはりすぐに開いてしまう。
 かなり座が乱れた頃、いつも冷静で自分を見せないO川さん(これ匿名か?)が、「まじかー!」と大声で叫んでいて、何が「マジ」なのか知りたかったが、進行役の身として節度を守り訊ねないことにする。
 賞品は森咲郭公鳥の、本年全国大会限定のブックカバー(書皮)とかシールとか。

 そして本のオークション。
 珍しい本が出たものの、驚くような安値で落札されたり、(出品者の)持ち帰りになったり。ただ、あまり激しい争いにはならず、比較的平穏。

 十一時になったので、ごみを片付け、まだ飽き足りない人たちは部屋を選んで分科会。
 私は、幹事S竹さんの部屋に押し入り、せっかく作られたのに遠慮してできなかったクイズを楽しむ。絶対に正解を言い当てられないけど答えが爆笑。センスが光るので次回はぜひみんなの前で。

 ということで、今日はここまで。
 つづく・・・今日終わるつもりだったけど、まだ終わらないや。
 

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2025年10月07日

SRの全国大会に行く その2

 言い忘れていましたが、この一日目のツアーは、歴史に残る名作『人形はなぜ殺される』の聖地巡礼の旅である。
 
 興津駅で予定のメンバーがそろうのを待ち出発。
 まずは松下研三が昼食をとったと思われるかつ丼屋へ。そして同じようにビールを。かつ丼は身が厚くボリューム満点で、この歳では半ライスでよかったくらい。カツカレー、とんかつ定食、親子丼を注文された方も。

 腹ごなしを兼ねてもう一つの聖地に向かって静岡方向に歩く。古書店はないが、なんとなく趣のある家が多く、これは東海道だろうかと思っていたら、本陣跡と刻された碑がありそのことを確信。

 やがて見えてきた清見寺の総門をくぐり、旧国鉄東海道線を下に見る跨線橋に。幹事の説明を聴く。
 ここから静岡方向に見える踏切が「人形が殺された」現場とのこと。
 ちなみに、犯人は計画が不調に終わった場合は無蓋列車に飛び乗るつもりだったらしいが、下を通る電車はかなりの速度で、とてもそんなことができるとは思えない(ジェームズ・ボンドと竈門炭治郎、トム・クルーズ、およびターミネーターや怪人二十面相を含む悪役は除く)。

 やや雨も強いこともあり、ケンゾーが通り過ぎた清見寺を参拝し寺内を見学。見どころはたくさんあるのだが、盛り上がったのは、梶原景時の血しぶきが残っているとされる玄関の間の血天井。
 「濃い色の部分があるが本当に血だろうか」「雨漏りの跡みたいだけど」「家(うち)にもあったなあ」「ルミノール反応を試したら」
 TN田さんがルミノールのことをエタノールと言い間違ったため、「飲みたいだけか!」と、古参から攻撃を受ける。こういう時は静かにお参りするのが吉。
 それはともかく、後にケータイで撮った写真を皆で見比べると、撮り方によっては赤く見えることを確認。無念の思いが残させたのかもしれない。

 また、仏殿や方丈とは別に、朝鮮・琉球の施設を迎えたと思しき潮音閣(二階)があり、そこからは、三保の松原や日本平、伊豆半島も眺められる。しかし、皆の興味は真下を走る東海道線。列車は総門と山門の間に造られた溝のような凹部を走る。
「上下線が丸見えで「銀河」が停まっていたら、あわてて駆け降りるだろう」「ケンゾーはスルーしたが彬光はここで見下ろしたに違いない」と衆目が一致。

 寺を出てしばらく「線路と平行」に進む。すぐに線路方向に降りるというよりは落ちるような急坂があり、これは犯人が利用したと思しい。その急坂は使わず、少し歩くと急階段がありそれを下ると線路そばに出て、線路に沿って少し行くと例の踏切である。このあたりもう本当に聖典どおり。
 清見寺の西隣に止水荘があったとすればまさに。

 感慨深く踏切の真ん中で立ち止まる観光客。
 「彼女はもう少し向こう側(東側:興津駅より)だったようです」「どこ?」「そこまでは・・・」「そのくらい想像しろ!」「線路わきの柵も低かったから運び込みやすかったのでは」「死因は轢殺だっけ?」「少なくとも気を失わされてはいたでしょうね」
 これこれ、迷惑というか怒られますよ。

 目的を達した一行は、興津駅に向かって引き返す。
 途中、西園寺公望の終の棲家を見学(見学料は無料)。ぞろぞろと入って行ったら、管理を務められているNPOの方が驚かれて「どこからいらっしゃったんですか」と訊ねられる。
 「東京と大阪です」と答えたが、実は大阪在住はおらず「関西と四国です」といった方がよかった。

 それはともかく事情を察していただいたのか、とても丁寧にご説明をいただく。ええと・・・
 「建物の現物は明治村にあり、ここにあるものは設計図を基に忠実に再建したもの」「窓の外のある柵(面格子)は外見は竹だが内に鉄芯が入っている」「部屋割りは細かい」(二・二六事件を意識してだと思うが、そう大きくはない家なのにたくさんの部屋で区切られ方向感覚を失う)、「玄関は皇族専用、ほかに政治家がこっそりやって来る玄関がある」「二階の廊下は鴬張りになっているが、これは暗殺者の察知というのではなく、誰かが来たら密談をやめるためのもの」「朝食はオートミール、昼夜の主食はフランスパンで(おかずは)日本料理。料理人を呼び寄せる」「避雷針は銅製で何度も盗難にあった」
 二階からの眺めは、東名高速の高架などでそれほど良くはない(これは清見寺の潮音閣もそうだった)が、良いところだったろうなということは偲ぶことができた。冬も比較的温暖だったろうし。
 庭で記念写真。
 明治村ができたのは昭和四十年より後だから、『人形・・・』の出版年である昭和三十年頃は、この家の現物は残っていたのかなあ。ケンゾーは行きたくても行けなかったようだが。

 そして、本日の宿泊地、東静岡にむかう。

 (つづく) これいつまで続くのかな?


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2025年10月06日

SRの全国大会に行く その1

 以下は、その日あったと自分で思っていることであり、現実のトレースではありません。主観であるため、時間が短くなったり長くなったりします。もちろん、主観的にあったらしいことと、客観的になかったこととが混在します。つまりは、私の空想に過ぎません。
 これでいいですかね?

 東京駅九時半ごろに出発する「こだま」に間に合うように家を出る。キャリーバッグはすでにいっぱい。昭和三十年にはキャリーバッグなるものはなかった。あったのはボストンバッグ(死語)。

 三島で「こだま」を下り、在来線に乗り換える(あれ? 昭和三十年に在来線という言葉はあったのかな)。この地域の普通列車はほぼ同じ外観で、あまり面白くない。「こだま」が停車するホームにあったうどん屋と、普通列車が停まるホームにあったうどん屋では、微妙に味が違ったのだが、どちらも今はなくなったようだ。残念である。私が赴任していた工場の社員食堂では、これらのうどん屋と同じ卸しの麺を使っていたのだが、いやあ美味しかった。

 しばらくして興津に着く。ここが一日目のオプショナルツアーの集合場所。「コウヅ」とも読めそうだが「オキツ」と読むのが正しい。
 OK村さんとO沢さんが、「転がる石」というグループが来日した年について話されている。懐かしい話題である。最初に来た時には東京ドームでの切符(当時は破格の一万円)が買えないと話題になっていた。

 (つづく)
 

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2025年10月01日

今日は涼しい

『鍵かけた扉のかげで』 アーネスト・M・ポート 仙仁堂 読了

 『ベンスン殺人事件』に先立つこと三年。ヴァン・ダインが「不用意に恋愛要素を持ち込んで古典になり損ねた評した作品」とのこと。怖いもの見たさで読んでみる。
 確かに、主人公(話の語り手)が、犯行現場で出会った女性に一目惚れして突っ走るところが「あーあ」と思うが、探偵の魅力もあって楽しめた。ただし密室の謎とその解決は予想の範囲である。

 ヴァン・ダインが、この小説をそれなりに評価した(あるいは興味を示した)理由は、なんとなくわかる。というのも、これは「心理的証拠」で犯人を暴こうとする話だからである。
 「心理的証拠」というと、「ギャンブルのやり方から、殺人の度胸があるか判断する」といった、「ほんとかよ」みたいな感じを受けるが、「物的証拠」の反対語として「心理的証拠」を置くと、わかりやすくなる。

 「物的証拠」とは、例えば「指紋」とか「凶器」とかであるが、これらは拭き取ったり、埋めたりすればなくなる。しかし、「指紋を拭き取った」とか「凶器を隠した」とかいった記憶は残る。もちろん「自分が殺した」ということも。
 これらが「心理的証拠」であり、自分の力では捨て去る(忘れ去る)ことができない。だから、そこを突けば、「物的証拠」がない犯罪でも、犯人を見つけ出すことができる、というわけである。

 「物的証拠」を見つけるのは警察、「心理的証拠」を見つけるのが探偵。もしかすると、そういう役割のすみわけ、というか「探偵」の生き残りを、ヴァン・ダインは考えていたのではないかなと思う。

 で、その「心理的証拠」というのは、ヴァン・ダインで消えてしまうのかというと、そうではなく、ニコラス・ブレイクに受け継がれるし、なにより一番の成功は「刑事コロンボ」である。
 コロンボの犯人たちは、「あそこに証拠を隠した」とか「証拠を偽造した」とか「自分が殺した」という心理的証拠から逃れることができないため、コロンボの仕掛ける罠(逆トリック)にいとも簡単に引っ掛かる。

 余談だが、J・C・ヴァン・ドインという、微妙な名前の人物が登場する。参考にした?


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2025年09月25日

確かに秋

 『趣都』 山口晃 講談社 読了

 名著である。マンガの体をした哲学書。

 街中の電柱と電線、そして日本橋の上にかかる首都高の高架。
 われわれはそれを醜いものとして疑わないが、本当にそうですか? ちゃんと自分の目で見て考えましたかと、問いかけてくる。

 そういえば電柱の美しさについては、庵野秀明が描いていたなあとか、両方とも土の中に埋めて見えなくしてしまえというアプローチが同じだなあとか、いろいろ思う。付和雷同して思考停止するのは人間の(日本人の?)悪い癖である。いや、僕もそうですが。

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2025年09月23日

秋風ぞ吹く

 東京国立博物館(トーハク)に、「運慶 祈りの空間ー興福寺北円堂」を観に行く。トーハクで運慶を観るのは、2017年の「運慶 興福寺中金堂再建記念特別展」以来である。そうか、両方とも興福寺がらみか。次は五重塔を修復するようなので、それが落成したらまた…

 前回は、興福寺と言っても、円成寺の大日如来をはじめ、ほかの寺からも来ていたし、運慶だけでなく一族郎党を引き連れての大行列、平成館を借り切ったビッグコンサートだったが、今回は七人のアンサンブル。本館一階のホールを北円堂に見立てたものだった。

 こじんまりとしてはいるが、無著世親菩薩の観る者の心に静かに語りかける迫力は、何度見ても感動する。四天王も、怖いというよりなんとなくユーモラスである。
 どっちかというと脇侍が好きなんです。

 帰りに甘未屋でいそべ焼きを食し、本屋で『趣都』(山口晃 講談社)を買う。

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2025年09月17日

今年最後の暑さとか

 『忌まわしき悪党』 レックス・スタウト 論創社 読了

 待っていました。今は亡き雑誌「EQ」に連載されたのみで一冊の本になることなく、待つこと幾星霜。内容はすでに忘却の彼方。新鮮な気持ちで読む。

 アーノルド・ゼック三部作(誰もそんなことは言ってない)の始まり。
 事件そのものは、今年芸能界というかエンタメ界を揺るがせた大事件と似ていて笑う。というか、よく開いたねウルフ、この事件。

 ゼックのたくらみが秀逸。続編が楽しみ。
 
 三部作が完結するように、ここから呪いをかける。うらら〜

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2025年09月13日

エアコン使用せずの一日

ほっとする。


 『9人はなぜ殺される』 ピーター・スワンソン 創元推理文庫 読了

 面白そうな発端なので読んでみた。途中まではサスペンスがあり面白かった。しかし最後でがっかり。私には合わなかった。
 何が自分に合わなかったのかを書くとネタバレになるので、書くべきではないのかもしれないが、これだけだとあまりにも曖昧なので、何行か開けて書く。
 ばらされたくない方はご注意を。














 まず、結末が「断崖の上での自白」に終わる点。火サスかよ。何年前のパターンだよ。『そして誰もいなくなった』がそうであるとしても、書かれた年代を考えろよ。
 エピローグにあたる部分のこれは何だよ。何の伏線もなく。超人かよ。他はみんな置き去りで、そこだけ救ってどうするんだよ。

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