患者さんと家族の方々への情報

2012年05月08日

日本のがん患者さんを痛みから解放するには、未だ格段の努力が必要!(3)

単位人口あたりでみた医療用麻薬(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなど)の年間消費量は、その国のがん疼痛治療の水準を示す国際的な指標の一つです。

人口1万人あたりの各国の医療用麻薬の消費量を国連国際統制委員会の統計用のDDD(Defined Daily Dose)という単位で表したデータを2007年9月10日のニューヨークタイムスが報じています(下記)。この記事は日本に焦点を当てたもので、日本の医療現場や医療用麻薬規制当局も取材した後に掲載されたものです。

アメリカ335.0
ドイツ130.0
オーストラリア75.0
日本7.0
シオラレオーネ0.1
単位:DDD(国連国際麻薬統制委員会の資料による)

1980年頃の日本の医療用麻薬の年間消費量は、10圓曚匹閥肪爾望なかったのですが、がんの痛み治療法が重視されるようになってから増加を続け、2000年には1000圓鯆兇─△修慮紊眩加していますので増加傾向著明と国内では評価されていますが、他の先進国と比べると未だ少ない年間消費量なのです。海外のマスコミ関係者の中には、余りに少ない日本の年間消費量を知って、「日本人のがんは人種的に痛みを起こしにくいがんなのか」という解釈をした人があったそうです。ニューヨークタイムスは日本各地を取材し、「日本では鎮痛薬の使用法の普及速度が遅すぎる」と指摘した記事となりました。

この言葉は、日本のがん医療で痛みへの対応が不十分なことを反映しています。医療用麻薬のような強力鎮痛薬でないと効かない痛みの患者さんに医療用麻薬が使われていない現状の是正がない限り、医療用麻薬の年間消費量は増えません。最大消費量国アメリカでさえ今でも、「痛みから解放されずに最期を迎えているがん患者が多い・・・いっそうの啓発が必要」と叫ばれています。日本での問題がいかに大きいかお分かりいただけると思います。自分を含め国民全員にとり切実な問題であると医師全員が自覚すべきです。

既に本ブログで述べたことですが、大がかりな広報活動が緊要ですし、がん患者の診療にあたる医師が診療科のいずれに属していても、少なくとも次のことを実践して欲しいと思っています。知識不足と思うなら、知識豊富な同僚医師の助言を求めるべきです。次に列挙する事項は、今年のがん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用推進のための講習会での私の最後のスライドで示したことの詳細です
  • 痛みからの解放を各病院・各診療科の基本方針とする。
  • 医師、看護師、薬剤師が各十で学ぶだけでなく、相互に助言しやすい雰囲気を全病院的に広げる=チームワークの強化=病院長のリーダーシップが最大促進因子。
  • 患者さんに 痛みの訴えを促す。
  • 痛みの訴えには即応する(早期治療開始が治療を簡素化する)
  • 鎮痛薬をWHO方式治療法が示す5原則を守って処方する
  • わかりやすい説明、服薬指導を心がける
  • オピオイドの適応があれば、即応する
  • 鎮痛効果を継続的に確認し、痛みが消える量に向けて増量調整する
  • 鎮痛薬の副作用対策とその効果の確認!各医療職、各施設が、社会に対し、痛みは消失可能なこと、医療用麻薬が安全なことを伝えていく
  • 痛みから解放されて日々を前向きに過ごしている患者さんの姿を紹介する
これらの実践の出発点は、患者さんの痛みの訴えに即応し、痛みを診断し、痛みに相応した薬を処方する医師の診療行為の適切さです。次いで重要なのは、処方した薬の効果を翌日までに確認し、効果に応じて薬を増減調整いていくことであり、痛みの強さに相応した効力の薬を処方することです。この円滑な実施には各自の学びが必要であり、各医療職、殊に看護師、薬剤師の協力が必要ですが、組織の長(病院長など)のリーダーシップが大幅な加速に寄与します。

基本的には、卒前医学教育において、医師たる者の倫理観を伴う広い責務が身に付くよう教え込むべきです。そのようにしていけばメールで示された患者さん側の苦情がなくなるはずです。事実を知らせてくださった勇気にも応えることになります。

医療界全体と臨床現場に医師への学びを促す工夫について、どしどし提案してください。(終)

fumikazutakeda at 12:00|PermalinkComments(4)