ライター文月みほ「私はAVを1万本観た女です」

アダルトライター19年生の文月みほが、あれやこれを気ままに綴っていきます。

1998年フリーライターとしてデビューし、主にアダルト業界を取材。これまで執筆したAV評は1万本以上、関係者インタビューは1000人に及びます。AV脚本&演出も担当。アダルト系イベント構成作家としても活動中。

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量産型やめました。

ここ最近、仕事の関係もあって文豪の作品を読み漁っています。
そのせいか、どうにも青春時代の記憶が蘇生しまくりで、ホント困ります(笑)

そんなわけで、このゾンビたちを野に放つ作業を本日もやろうと思います。

*******

20代の半ばまでは、必死になってかじりついていた文学の道ですが
どういうわけか、今の生業を選んだ理由は
深い葛藤と焦燥と、その末に思いついた悪戯心からでした。

世に言う文豪が、あまりに狂死していることに、疑問と違和感を覚え始めたのは、高校時代。
「どんなに立派なことを説いたって、最後に狂って死んでいくのであれば、なんの説得力があるのだろう?」と
まぁ、いっぱしの思春期らしく友人と議論を交わしたものでした。

ほんの数回ですけどね…。

つまらない議論でグラグラ揺らいでいる暇なんて私にはない。
さっさと書いてしまおう。

明日、死んでもかまわないように、身支度を整えるような心境で
夕飯の後には自室にこもり、書くべきテーマを思案し続けました。
しつこいくらい粘着質に宮沢賢治を読み漁っていたのもこの頃です。

と、いうのも、なにも生真面目だったからでありません。
子供の頃から病弱だったため、毎日のように父親から
「お前は、どうせすぐ死ぬんだ」と、言われ続けており
今思えば、それが我が子愛しさのあまり口から突いて出た
他愛のない暴言なのだと理解できるのですが (…というにはまだ早いかな…)
まぁ、わりと大人になるまで、自分は明日死ぬんだという覚悟で過ごしていました。

だから、生産性のないことが大っ嫌い。
アニメも漫画もゲームもほとんどなし! (つまりは一部あり!)
今では信じられないほど、ねっとりと芳醇な毎日を送っていたのです。

こんな私がなぜアダルト業界に首をつっこんだのか?

不意に思い出したのは、中島敦を実に約25年ぶりに読んだためでした。

大学生時代以来ということです。

通っていた大学には、かろうじて学生運動が残っており
当時付き合っていた恋人が、何を思ったのかその親分を気取りだしたので
呆れてほおりだしたのが、大学2年。
学生会館で高らかなシュプレヒコールをあげる愛しの君を「シラ~」っとした目で見過ごしました。

彼の行為に、なんら生産性を感じることが出来なかったのがその理由。

ヘルメットとマスクと白衣とで武装したつもりになって
大学内の机といすを全て持ち出して、校門付近にバリケードを作り
その前で誇らしげに笑う彼の姿がバカバカしくて、
「どうだ」と言わんばかりの視線を向けられた瞬間に、遂に別れを決意したのです。

あの時は上手い言葉がみつからなかったけれど、
今、思いっきり意地悪な言い方をするのであれば
大正デモクラシー時代に築かれた過去の遺物の
さんざ叩き壊された後に
転がって捨ててあった瓦礫を
まるで宝物みたいに拾い上げては
たわむれにヤマトノリではっつけて
つぎはぎの要塞を作って
「どうだ凄いだろ!」とでも、言っているように見えたというか。

うわ…我ながら酷い言い方だな…。
でも、この瓦礫の要塞だけが私を失望させたわけではなく
他にもいろいろ事情があるのだけれど、今は話がそれるので、ここまで。
とにもかくにも、当時、生き急いでいた私には茶番に見えてしかたなかったのです。
でも、内心どこかで羨ましいと感じていたのも事実。それもホント。

さて、こんなわけで「知識人」というもののあり方が、すっかり判らなくなってしまい
ふてくされた私はこう考えました。

「ちょっとイケナイ遊びでもしてみようか…」と。

そのイケナイ遊びが、アダルトライター業でした。
AVを見た経験は片手だけ。性体験もほとんどないに等しいレベル。
とある風俗雑誌で風俗嬢のインタビュアーを引き受けたものの
吉原って何線でいけばいいの?  など、平気で人に聞いてしまう有様…。

それでも、数少ないながらも
私が知っているAV女優たちは、羨望の的でした。
美しいプロポーションに見惚れ
スポットライトを浴びてのけぞる麗しいエロスに惹き込まれ
AV業界だなんて恐ろしそうな場所で生きながらも
無邪気に笑う彼女たちのオフショットを見ながら、
妖精にも似た、あぶなっかしい魅力に憑りつかれたのです。

美女至上主義とでも、言えばいいでしょうか?
この美女たちに自分の運命を狂わされたら
さぞかし気持ちがいいのだろうな…など考えてしまったのです。

そして、世間的には真面目だと思われているこの私が、
こっそり陰で、こんなにも怪しい仕事を生業にしているだなんて
なんて愉快なのだろうと、心を弾ませました。

投げやりではありません。
世の中に対する私なりの反逆心。

書くべきテーマを、なかなか探し当てることができず
自堕落な生活に羨望を抱いた、幼さがそうさせたのです。

それでも、ライターを始めた当初は、「こんな遊び、本当はやめなきゃいけない」と、何度も何度も悩んだものです。
前にも書きましたが、最初の2年は雨戸を締め切って
陽の光を避けて、鬱ウツとしながら仕事をしていました。
芥川龍之介が自宅の書斎を「餓鬼窟」と呼んでいたのは有名ですが
そんな風なことを気取っていたのです。
今風に言えば「厨2病」ですね(笑)

さて、40代も半ばを過ぎた私は
実を申しますと、この酔狂な遊びにも興が失せかけています。

うちあけるなら「アダルトライター・文月みほ」である時間は
去年に比べて半分以下になってしまいました。
仕事がなくて、多くのライターが泣く泣く業界をさる今にあって
自らの手で仕事を整理しているからです。

かつての私は、ゴールさえ霞んでしまったものの
生産性こそが美徳と信じる気持ちには変わりはなく
量産型ライターを極める自分を誇らしく思っていました。
けれども、今になって、それを私に求める者たちが疎ましくなってしまい
かつての恋人にしたように、冷たい別れを重ねています。

正直、食うにも困っています。大いに。
だから、何もアダルトライターの職を、すっかり捨てようというのではありません。

ただし、量産型ライターはやめました。
その意味をご理解いただける出版関係者様、アダルト業界関係様、
ご依頼、お待ち申し上げております。

井之頭公園前のいせやで、死ぬほど焼き鳥をほおばるのが、今の私の最大の夢です。

アダルトライター・文月みほ




 

インタビューゲーム

想えば私は、人の中に個性を見つけるのが好きだ。
「新人女優のインタビューなんて、どれも同じでつまらないでしょ?」 
苦笑を浮かべながら、そう問いかけてくる人もいるけれど、 
私はそう感じたことは一度もない。
これまで500人か1000人か、数え切れないほどのAV女優に会ってきたが
誰一人として、同じ顔の子はいなかったし、同じ背景を背負った人間もなかった。 

だから、私は毎回ワクワクと胸をはずませドアを開ける。
AVメーカーの小さな接客ルームの中、 緊張で肩を張り待っている美少女の顔が見たくって
ニヤニヤ笑いを必死で押し込めて(…いるつもりで)
「ライターの文月と申します。宜しくお願いします」と、かしこまった風に頭を下げる。

すると、たいていは向こうも少し慌てた様子でペコリとして、少したどたどしい口調で名前を告げる。
明らかに張り詰めた空気。
目の前の美少女は「一体、この人は何を聞き出そうというのだろう」そういう 顔で見つめ返す。

新人女優とのインタビューは、いつも
こうして始まる。

ここからが本番だ。


「なぜ、AVに出てみようと思ったのですか?」
「なぜ、AV女優になろうと決めたのですか?」

この2つの質問は、似ているようで全く違う。
インタビュー経験者ならお気づきのはず。
前者は、AV女優という自覚がまだ芽生えていない女の子に対する質問。
後者は、これからメーカーの看板を背負うという責務を認識している、新人女優に対する質問だ。

最初の選択肢を誤ってはいけない。
ゴールは、美少女の中に眠る個性という宝石。

そういうゲームを楽しむ。
楽しくってたまらない。

さて、話は少しそれるが、私には親友と呼べる存在が一人もいない。
ほんのわずかな時期に、そういう特別な存在をみつけた気がしていたけれど、
彼女が大々的にお誕生会の告知をしている傍らで
そっとスルーされる程度には疎まれているらしい。

買ってしまった誕生日プレゼントはどうしようか…。

まぁまぁ、そんな余分なボヤキは風呂場で楽しむとして、…私は人付き合いが得意ではない。
その理由は分かっている。おのれをさらけ出すのが恥ずかしいのだ。

 「一体、この人は何を聞き出そうというのだろう」

人と対峙するとき、いつもそう身構えてしまう。
「なるたけ、恥は隠しておこう」そう思うのに、気を許した相手にはどんどんしゃべってしまう。
しゃべりながら、自己嫌悪に堕ち、堕ちながらその嫌悪を吹き飛ばさんとまたしゃべる。
次第にのぼせてくる→余計なことを言う→ぐったり落ち込む→疎遠になる…ちーん。

そうだ。己を晒しすぎると湯あたりを起こす。そんな風に具合が悪くなる。

それなのに、目の前の美少女は「私を見て!」「私を知って!」と
どこもかしこも見せてくれようとする。
一度、明るみの中で衣服をはぎとった女は強いのだ。
羨望のまなざしを向けずにはいられない。

時には互いに気が急いて、言葉と言葉がぶつかることもある。
聞いて答えて、聞いて答えて、聞いて…また聞いて、答えて答えて答えて聞いて答える。

こうして妙なリズムが響きだすと、近くで咳払いが聞こえる。
私は苦笑する。美少女はぷくっと頬を膨らませる。
「書けないことを、聞くんじゃない」「余計なことは言わなくてよい」と、
美少女を守る逞しきナイトたちが、抜身の剣をちらかせる。

なんてスリリングで、なんて愉快なゲーム。
帰りの電車に揺られ、クスクス笑いが止まらない。

手のひらには、いくつもの宝石。
今日もまぶしい宝物が増えていく。

アダルトライター:文月みほ
 

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