2010年03月12日

Spiritual Nature / 富樫雅彦5

Spiritual Nature / 富樫雅彦


天才ドラマーと言われた富樫雅彦さんは、1970年に不慮の事故により下半身が不随となってしまうのですが、翌年には当時日本に滞在していた Gary Peacock の Voices という作品に、パーカッショニストとして参加をするという事を行ない精力的に活動を再開します。

私は富樫雅彦さんの演奏を2度経験しているのですが、一度目はピアニストの加古隆さんとのデュオだったと思います。(随分と昔の事で、はっきりと覚えていません。ベースがいたかも?)やはり、両手のみの演奏という事で、特徴的なドラムセットによるフリーフォームな演奏で独特な世界を描いていました。

2度目の演奏は J.J.スピリッツによる演奏で、バスドラやハイハットが無くてもフォービートの演奏が出来るという事を示してくれました。まぁ、バスドラはありますが、ハイハットを使わず、シンバル一枚だけでも強烈なスイングビートを送り出す Leon Parker の様なドラマーもいるので、両手だけの演奏でもフォービートの演奏は出来るという事ですね。


しかしながら、下半身が不随となる前からフリージャズに傾倒していた富樫雅彦さんは、事故からの復帰後の演奏も J.J.スピリッツ以外の演奏は主にフリーフォームな演奏が多く、この Spiritual Nature はその代表と言って良い作品だと思います。


私は、ジャズを聞きだして直ぐにフリージャズに興味を示しどっぷりと漬かってしまうのですが、富樫雅彦さんの世界というのは非常にハードルが高いものなのです。

昨年この作品が「Jazz The Best:Japan Jazz History」としてリリースされた時も、少しばかり購入を躊躇したのは事実です。他にも欲しい作品があったのですが、結局は無性に聞いてみたくなりアナログ盤を所有しているにも関わらず購入してしまいました。(レコードプレーヤは段ボール箱にしまわれたままになっていると言う事はこのブログでも何度も書いている通りです。)


この作品で展開されている音楽は、フリージャズと言って良いのでしょうか。それも疑問です。淡々と進行していく中で、他にも3名参加しているパーカッションを中心として、その中に野太い音による池田芳夫さんのオスティナートに近いベースが響き渡り、フロントの管楽器が絡み合いながらソロをとっていたり、佐藤允彦さんのピアノがソロを取るという様な展開なのです。そして、ベースの音が止まると沈黙の中でパーカションのサウンドが静かに鳴り響くというものです。管楽器の絡み等は実に牧歌的な雰囲気を感じさせるのに対して、佐藤允彦さんのピアノは少しばかり前衛的なスタイルなのですが、あくまでも激しいビートを繰り返すベース以外はスタティックな世界です。

この作品はやはり、フリージャズではなく「富樫雅彦」という一つの新しい音楽のスタイルのジャズだと思います。いや、ジャズを超越した音楽かもしれません。


この作品は発売されたときに、某SJ誌のジャズ・ディスク大賞で、日本人として初めて「金賞」を獲得したそうです。当時の他の候補作にどの様な作品が挙がっていたのかは判りませんが、審査員は日本人であり、その日本人の感性に強く訴えるものがあったという事ではないでしょうか。


この音楽は日本人にしか理解できない世界かもしれませんが、世界中のジャズの作品のなかでも素晴らしい作品であることは間違いないと思います。でも、やはり難解な音楽ですね。



余談:「Jazz The Best:Japan Jazz History」というシリーズは、過去の日本のジャズの作品を初CD化してくれたりして、非常に素晴らしいものなのですが、仕事がいい加減なものが多く見受けれれます。菊地雅章さんと Elvin Jones の共作である Hollow Out や峰厚介さんの Out Of Chaos の音はSHM−CDでありながら最悪でした。この Spiritual Nature においても、メンバーのクレジットから池田芳夫さんと翠川敬基さんのお名前が欠落しています。しっかりして下さいU社さん。





Spiritual Nature / 富樫雅彦

East Wind UCCJ-4083

Produced by Toshinari Koinuma
Recorded by Yoshihiro Suzuki
Live Recorded at Kohseinenkin Kaikan, Tokyo on April 9, 1975 [01.-04.]
Recorded at Victor Studio, Tokyo on April 29, 1975 [05.]


富樫雅彦 (perc,celesta)
渡辺貞夫 (fl,sn,as)
鈴木重男 (fl,as)
中川昌三 (fl,b-fl)
佐藤允彦 (pf,marimba,glockenspiel)
翠川敬基 (cello,b)
池田芳夫 (b)
中山正治 (perc)
豊住芳三郎 (perc)
田中昇 (perc)


01. The Beginning
02. Moving
03. On The Footpath
04. Spiritual Nature
05. Epilogue

All Composed by Masahiko Togashi


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funky_alligator at 20:14│Comments(2)TrackBack(0)JAZZ 

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この記事へのコメント

1. Posted by ヒロシ   2010年03月13日 19:19
5 ヒロシです。
少し前にお世話になった者です 笑

富樫雅彦さんは自分が尊敬するドラマーなんで、記事が嬉しかったです。

下半身付随になりながらも不屈の闘志で手のみでドラム演奏されていた富樫さん!亡くなられた時は寂しかったです。
2. Posted by funky_alligator   2010年03月13日 20:57
ヒロシさん

コメント嬉かとです!

ばってん、富樫雅彦さんが尊敬するドラマーとは、まるっきし知らんかったけん驚いとるとです。

また、なんかあったら、さびいてくれると嬉しかとばい!

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