雉も鳴かずば撃たれまいは、余計なことを言わなければ、災いを招くこともなかったのに、という意味で使われます。
通常は、災いを招いてしまった後に使われます。
今回、余計なことを言った訳ではありませんが、余計なことをしたばかりに、これから大変な災いを招きそうな事態になってきました。
中国に「鴻茅薬酒(鸿茅药酒)」(hong2 mao2 yao4 jiu3/ホンマオヤオジウ)というお酒があります。
内モンゴルの「内蒙古鴻茅国薬股份有限公司(内蒙古鸿茅国药股份有限公司)」(nei4 meng3 gu3 hong2 mao2 guo2 yao4 gu3 fen4 you3 xian4 gong1 si1/ネイモングホンマオグオヤオグフェンヨウシェンゴンス)という会社が作っているものです。
この会社、住所は、内蒙古自治区(nei4 men3 gu3 zi4 zhi4 qu1/ネイモングズジチュ)の烏蘭察布(乌兰察布)(wu1 lan2
cha2 bu4/ウランチャブ)市凉城(涼城)(liang2 cheng2/リャンチョン)県鴻茅(鸿茅)(hong2 mao2/ホンマオ)鎮にあります。
この会社があるので鴻茅鎮というのか、鴻茅鎮にあるのでこの会社名になったのか、どちらかはわかりません。
「薬酒(药酒)」(yao4 jiu3/ヤオジウ)とは、通常は「白酒」(bai2 jiu3/バイジウ)に、漢方薬をいろいろ漬け込んだお酒です。
東北料理「東北菜」(dong1 bei3 cai4/ドンベイツァイ)のお店では、大抵、何種類か置いてあります。
効くのか効かないのかわかりませんが、何となく元気になるような気がして、よく飲んでいました。
で、この「鴻茅薬酒」も、いろいろな漢方薬が入ったお酒のようです。
わかりやすく言えば、養命酒のようなものかもしれません。
養命酒には、14種類の生薬が溶け込んでいるのだそうですが、「鴻茅薬酒」には、何と67種類の漢方薬が使われているのだそうです。
何でもかんでも入れればいいってものではないと思いますが、何と言っても67種類ですから、相当、ドキンドキンしてしまうようです。
ということで、昨年12月19日に、譚秦東(谭秦东)(tan2 qin2
dong1/タンチンドン)さんと言う広東(广东)(guang3 dong1/グアンドン)省は広州(广州)(guang3 zhou1/グアンジョウ)のお医者さんが「中国神酒“鴻茅薬酒”,来自天堂的毒薬」という文章を発表しました。
「天堂」(tian1 tang2/ティェンタン)とは、天国のことです。
中国の神酒「鴻茅薬酒」は、天国から来た毒薬!と、なかなか挑発的なタイトルです。
天国から来たというのは、天国へ連れて行かれてしまうということを言っているのでしょう。
もっとも、その主張は至って常識的なもので「鴻茅薬酒」を飲むとドキンドキンしてしまうため、年配の方は飲むのは控えましょう、というものでした。
また、発表したと言っても、私のブログのようなものです。
クリックされたのは2200回ほどと言いますから、私のブログよりはずっと多いですが、それでも、13億の人口を考えれば、ほとんど読まれていないと言っても過言ではありません。
ところが、今度は会社の方の「鴻茅薬酒(ホンマオヤオジウ)」が、この文章の所為で返品され、140万元の損失を被ったと譚さんを訴えました。
そして地元の涼城の警察が、はるばる広州まで訪れて、譚さんを連れて行ってしまいます。
名誉棄損だと思うのであれば、民事裁判で損害賠償を訴えるのが普通でしょう。
それを、警察がいきなりやってきて、刑事罰として捕まえてしまうというのは、ちょっと理解に苦しみます。
また、この警察には「鴻茅薬酒(ホンマオヤオジウ)」の人も同行していたというのですから、何それ?と思ってしまいます。
涼城で「鴻茅薬酒」は、恐らく、一番大きい企業なのでしょう。
その企業からお願いされれば、警察も動かざるを得ません。
中国は怖いね!と思ってしまう事件でした。
ただ、習近平(习近平)(xi2 jin4 ping2/シジンピン)の新時代(新时代)(xin1 shi2 dai4/シンシダイ)に入った中国は、以前とは変わったようです。
これに対し「ちょっと待った!」と声を上げる人たちも出て来ました。
いくら中国でも、これはおかしいと感じたようです。
人民日報(人民日报)(ren2 min2 ri4 bao4/レンミンリバオ)など、中央のメディアまでもが批判するようになったことで、完全に流れは変わりました。
譚さんは、1月10日に身柄を拘束され、1月25日から逮捕されていたのですが、先日、4月17日、証拠不十分ということで、釈放されました。
そして、立場が弱くなったのは「鴻茅薬酒(ホンマオヤオジウ)」の方です。
譚さんの事件を通して、このお酒が、何と、江蘇(江苏)(jiang1 su1/ジアンス)、遼寧(辽宁)(liao2 ning2/リャオニン)、山西(shan1 xi1/シャンシ)、湖北(hu2 bei3/フベイ)などの25の省と市の管理部門から違法通知を出され、その違法回数は2630回にも上り、数十回にわたる販売停止を喰らっていたことが、公に知られてしまいました。
多くの人が、譚さんの文章のタイトルのどこにウソがあるの?と疑問を持つようになり、この酒は絶対に買わない!と言う人まで出て来ました。
地元の警察を使って変なことをしなければ、知らない人は多かったのに、今回の件で、ほとんどの中国人が、このお酒はおかしいと知ることになります。
この先、倒産するだろうとまで言われています。
雉も鳴かずば撃たれまいで、鳴かなければよかったのですが、もう鳴いてしまったので、これから叩かれまくることになるのでしょう。
自業自得であるので、仕方ありません。
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