古谷禎朗 -木美求真-

Japanese kogei furniture

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全体が楕円のカタチをした一体感のあるハコモノを作りたかった。

極々シンプルに見えると思うが、全体が下に向かってすぼまっているのに併せ、帆立(縦の板)も若干2ミリほど下の厚みを薄くしている。

雰囲気を損なわないよう天板の面取りはシャープに。だが、その角度にとても悩んだ。

この手のモノはチリ(段差)のない仕上げなので組んでから塗ることになる。
隅の処理に手がかかるが仕方ない。

こういう組み方の場合は木の性や向き、組み方、接着剤、色々と考慮しないといけない。
扉や引き出しを設けることも考えたが、センターテーブルとしての用も想定し今回はフルオープンとした。

近年、創作のテーマとして掲げているモダンの先を行く「近未来」な飾り棚として捉えて貰えると嬉しい。


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天板はそのカタチに合う木目を探した。




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(キャビネットつまみ部の刃物跡、テクスチャーの違いがポイントとなり、傷も目立たない)



刃物で削ったままでその勢いを残し、仕上げる手法。木工や彫刻の場合、「刃物跡」と呼ぶテクスチャー。

現在の木工業界全体で最もトレンドな手法かもしれない。
刃物もノミ、彫刻刀、カンナ、槍カンナ、チョウナと様々。

僕なりにその利点を考えてみた。


1 手作り感が出る。 おそらくこれが一番の理由だろう。量産品やフラッシュとの差異が判りやすい。

2 コストを抑えられる。 木工で一番手間がかかる研ぎ磨き作業や塗装の時間を省略できる。しかし真に切れ味鋭い刃物跡を残すには刃物の研ぎなどの調整に手がかかるので一概には言えない。

3 使う側に過度の緊張を与えない。 ある意味では元々傷がついた様な風合いなので、普段使いのモノは特に気にせず使える。ただ器などでは耐水性の問題は考慮するべきだろう。

独自の鋳込みによる造形法を開発し、世界的に高評価されている陶芸家の方がこう言っていた。
「鋳込みをする様になったのはやきものの世界では温かみや味だとされる「手跡」を消したかったからです。」と。
あくまでフォルムだけで勝負したいということだろう。

僕は手跡を全て否定しようとは思わないが、流行にのって安易に行うのは考えものだと思う。

数少ないが刃物跡の残し方が巧く、勢いもあり、刃の切れが魅力的な作り手はいる。

今の僕がこのテクスチャーを意味無く使わない理由は一つ。
まだ「途中」だから。


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平櫛田中「気楽坊」の刃物跡。勢いある刃物跡





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サイズは幅で350ミリ。仕上げは特殊なオイルフィニッシュ。

家具の中では小さいモノだが、この中にも様々な技やディティールの工夫が詰まっている。

まず本体の工法は天板と側板、そして底板兼台輪と側板も「留型隠し蟻組み」
天板はいいとして、底板を兼ねた台輪もこれで組む事は珍しいと思う。
その1番の理由は、従来の台輪の付け方では側板との関係で必ず「木の収縮異方性」による無理が生じるから。

前面全体はカーブを描き、シャープな面取りで奥行きをつけた。(これが曲者だったが)

抽斗のツマミは黒檀を埋め込んで、彫刻刀で掘り込んでいる。

抽斗の接合部は「包み蟻組み」、中はA4の書類が入るサイズに設計した。

大阪の百貨店での個展の際、上品なご婦人が亡くなられたご主人の大切な書類や手紙を保管する為に、とお買い求め下さった。
このタイプのモノはなぜか女性に人気があるようで、これとデザインが同じで拭き漆で仕上げたモノ(材は桜と献保梨)の2点も名古屋の個展の際、それぞれ違うご婦人が連れ帰ってくれた。







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