梁石日の原作は,8年前の研修中に読んだ。とにかく強烈な主人公・金俊平と家族にまつわる自伝的な小説で妙なリアリティにのめり込んだ記憶がある。
それが映画化されたと聞き色めきだった。何といってもビートたけしがその強烈なパーソナリティを持つ主人公を演じ,散々に苦しめられ虐げられる妻が,不肖が19歳の春から愛してやまない鈴木京香が演じるというからだ。
映画化されて暫くたって漸く映画を観たが,崔洋一監督作品だけあって「えげつなく」「肉体的」で「人間本性の深淵」を抉り取るような内容で,もう凄かったの一言に過ぎない。
ストーリーは原作を読んで知っていたものの,あれを「映像化」するというのは,キャスティングと演出がなせる業だと,つくづく感心してしまった。
俊平の愛人・清子を演じる中村優子という女優さんもすごい人で,日本の映画もまだまだ捨てられないと,邦画ファンとしては久しぶりの満足感を覚えた。
万人に決して受け入れられるような映画ではないからこそ,「映画」というものの表現力,伝染力を感じて止まなかった。