理学療法士国家試験に合格する前（2005年）から始めたこのブログには、現在までの経過を見ることができる。

合同会社セルフエンパワーメント　代表　松木　寛　http://selfpower.jp/

理学療法士
統合医療カウンセラー
セルフエンパワーメント・コーチ
日本抗加齢医学会認定指導士
全米ヨガアライアンス養成学校講師

リハビリテーション専門病院にて、理学療法士として10年間勤務後、都内統合医療研究所の統合医療カウンセラーとして活動。

人の体の特徴を特定する知識・技術に加え、抗加齢医学・ヨガ（ヨガ哲学・瞑想・アーサナ）などの予防医学、科学的手法に基づいた潜在意識を扱う手法（NLP、LABプロファイル、ヒプノセラピーの枠を超えた言葉の技術や様々なメソッド、唯識概念）を融合し、自らの力を呼び覚ます独自の成功理論「セルフエンパワーメントメソッド」を確立。

理学療法、抗加齢医学という専門的な医療の知識をベースに、ヨガや瞑想や潜在意識を扱うことを融合した手法は、様々な対象者に受け入れやすいものとなっている。

そして、病気をやめたい方、人間関係の悩みがある方、人生の目標を見失っている方、モチベーションが低下したビジネスマン、アスリートにいたるまで、クライアントの潜在意識にある根本原因を瞬時に特定し、意識や身体状態や現実を変革させて続けている。

また、クライアントが見失っている”本来の自分”に気づきを与え、輝く状態にまで短期間で押し上げる手法は、従来のカウンセリングとは一線を画す。

目標達成、願望実現などのコーチングとしての後押しだけでなく、認知症、ガン、難病などをやめる状況をカウンセリングとして強烈にサポートしている（奇跡的変化の事例多数）。

現在は、「心に寄り添った新たな医療の枠組みを創造する」ために、病気に困っている方や病気を予防したい方だけでなく、医療従事者向け・法人向けにカウンセリング・コンサル・セミナー活動を実施。

そして、ヨガインストラクター養成学校にて、「心と身体の関係」「解剖・生理・運動学」などの講師活動や意識障害の方々と会話をするボランティアなどにおいて精力的に活動している。

2012年06月01日09:29

人生最後の歩行に関わる責任

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先日、階段から転倒し、頭を打ち、脳挫傷・急性硬膜下血腫・くも膜下出血を呈した方が当院での長い入院生活を経て、老人保健施設へ退院した。

その方は、上記疾患に加え、多発性の脳梗塞、正常圧水頭症、脳に膿がでるなどの二次的な障害が重なり、何度も頭の手術をされた。

3月末に後輩から私に担当変更した時は、最初の発症から8ヶ月間が経過していたが、原因不明の嘔吐（口から吐く）を繰り返したり、離床（ベッドから起こす機会）を促しにくい状況（調子が良い日は車椅子に乗ることもあった）で、全身的に関節可動域の制限（関節が硬くて曲げたり伸びたりが難しい）がある状況であった。

コミュニケーションはこちらが話すことに対する反応は少なく、時折単語を話すことあるが、全く反応しないことも多かった。特にベッド上では反応がほとんどみられない状況であった。

股関節が曲がりにくい状況では、車椅子に座ることが苦痛になるだろうと考え、股関節の動きを引き出したり、体の捻れも強かったので、位置を修正したり、血圧などバイタルを測定しながら少しずつベッドから起こしていくようなことを行ったりのリハビリが続いた。

麻痺していない足の関節も足首の骨折の既往もあることもあり、かなり関節が固まっている状況で体重を支えられる状況ではなかった。

しかし、麻痺している側の足は比較的筋肉の緊張が低く、リハビリ継続により関節が少しずつ伸びるようになっていった。4月末頃には嘔吐することもなくなり、ベッドから毎日起こして車椅子の乗車機会も増えていった。

しかし、首の位置をコントロールすることが難しく、常に下を向き苦しくなってしまうため、リクライニング式車椅子（手動で後ろに体を倒せるタイプの車椅子）に乗っている状況で長時間の車椅子乗車は難しかった。

先輩から「だいぶ関節が伸びてきてし、介助すれば歩けるようになるかもね」とのアドバイスもあり、麻痺側に長下肢装具（膝折れしないように固定する補助的な器具）を装着し、麻痺していない側にも短下肢装具（足首固定用の補助器具）を装着し、重度介助で歩くことをはじめた。

歩くことをはじめると体重を支える脚の力も増え、首がコントロールされやすくなり、通常型の車椅子でも数時間程度は座っていられるようになった。

そして、何より歩くことで問いかけに対する反応が明らかによくなった。

（※歩くということは、体重を足で支えることであり、足から通過する床反力と重心の位置で活動する筋肉が変化し、様々な受容器の感覚情報が変化する。その入力の一部が脳幹網様体へ投射され、覚醒向上を促したのかもしれない。もしくは歩くというリズム運動がセトロニン系を活性化し、覚醒向上に寄与した可能性もある）

理論的背景はともかく、結果としてベッド上に寝ている時にもうなづきや発話が増えたことは、今後ベッド上での生活がどうしても多くなるその方にはとても重要な意味をもつことになる。

そして、次の施設にリクライニング式の車椅子があるとは限らないため、普通型車椅子に乗れていなければ車椅子に乗る機会が作れなかったかもしれないことを考えると歩くことでそれが実現できたとすれば、一時的にでも歩いたことに大きな意味はあったと思う。

最終日に「次の施設にいって何か不安なことはありますか？」の問いにその方は、「ここのリハビリに通いたい、通えますか？」と質問してくれた。

現在の制度では介護保険と医療保険の関係上、外来リハ通院の実現は難しいが、いつも表情や反応が乏しいその方が当院でのリハビリを継続したいという気持ちを伝えてくれたことに心から感動し、今後も一緒に頑張っていきたい気持ちに対して、どうすることもできない自分に涙がでそうになった。

その方が歩くためには、先ほど述べたような特殊な装具がないと難しい。

そのため、次の施設にいって歩ける全く保証はなく、むしろ介助量から考えて可能性は高くないと思う。

そう考えるとその方の人生において、最後の歩行に一緒に関わることになるかもしれないと改めて実感した。

いよいよ最終日となった日…

技術は知識は不十分な面があるが、今の自分の能力を出し切ることに大きな意味があると考え、今自分にできる介助技術を駆使して、質の高い歩行、少しでも本人が歩いた実感がわくような歩行をしたいと思いながら、一緒に歩いた。

涙がでそうになりながら、最後の歩行介助をした。

あんな気持ちで泣きそうになりながら介助歩行をしたのは、はじめての経験だった。
改めて、理学療法士として対象者に関わる責任の重さを痛感する機会となった。

本症例に限らず、今後も場面場面で全力だせるよう精進していきたいと思う。

2012年04月20日07:32

高次脳機能障害の方から学ぶ

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高次脳機能障害とは、主に脳の損傷によって起こされる様々な神経心理学的症状で、

・例えば、しゃべれなくなったり聞き取れなくなる「失語症」
・集中すること、逆に周囲へ注意をくばることが難しくなる「注意障害」
・新しいことを覚えられない「記憶障害」
・麻痺などがなくその動作のことを了承しているのになぜかその動作ができないという「遂行機能障害」
・自分が病気していることを理解することが難しい「病識の欠如」
・思いどおりにならないと興奮して大声を出したり、他人に迷惑をかけたりなどの「社会的行動障害」
・自分の手がなくなったと訴える「失認症」など

様々な症状がある。
（※細かい定義や例があるが、ここではあえてわかり易い表現であくまでその一部を紹介）

その高次脳機能障害の方へのリハビリでは、その対象者のことを否定せずに、失敗をできるだけさせないよう関わり、今おかれている状況に気づいてもらい、自立した行動をとれるように促すことが原則になる。

高次脳機能障害があっても、本人としてはその病識を理解していなかったり、困っていることに気づけていないことも多い。そのため、まずはそのことに気づいてもらうための促しが必要になる。

その気づく過程には失敗が必要だが、失敗を繰り返させたり、明らかに難しい課題を提示することはより混乱を招き、抑うつを強めてしまう可能性もある。

気づく過程には、本人とよく話すことも必要になる。「何か困っていることはありますか？」と尋ねても「特にないよ」といわれることもあるため、会話の中から残存機能や問題点を整理する問診の技術も必要になる。

高次脳機能障害の方にとって、周りに否定されたり、怒られたり、呆れられたりなどは回復する過程で最もマイナス要因になる。

目に見えにくい症状でもある高次脳機能障害は、その病態がどういうものかを知っている医療従事者であっても、対応を間違えてしまうこともある。
しかし、だからこそ常に一番近くにいる家族の関わり方がその対象者にとっては最も重要であるため、家族への指導が最も重要であるといってもいいと思う。

しかし、現実は数十分の医師からの話があるだけで、十分に伝わりきれていない状況もあるように思う。

先日、ある患者さんを休暇の職員の代わりにリハビリしようと看護記録を見に行った時、「リハビリの人！どうにかしてよ、この人今日興奮して本当にどうしようもないから！」「今日はリハビリできないと思うけど頑張って！」とある看護師にいわれた。

その患者さんは、初対面だったが確かに興奮した様子で「トラが家に来たから今すぐ帰らなきゃいけねーんだよ」「何でこんなところに連れてこられなきゃいけねーんだよ」といわれ、実際は両手を使って平行棒で歩くことも介助が必要な状況だったが、「歩いて帰るから早くここから出してくれよ」と訴えていた。

眼もかなり威圧的でいかにも敵対しているような眼差しだった。

Aさん「みんな俺が脳梗塞だとかわけのわからないこといいやがって！」「歩けないから無理とか勝手にいいやがって！」

病識の欠如があることは理解したが、それ以上に周囲の説明が否定的なものでより混乱や興奮を招いてしまっていることが問題だとと考え、本人の話を否定せずに訴えを聞き進めた。

私「トラはいつきたんですか？」

Aさん「いつかわからないけど、女が連れてきたからびっくりしたんだよ」

私「それはびっくりしますよね！その女の人は知ってる人なんですか？」

Aさん「いや俺の奥さんだから」（数年前になくなっている情報はあった）

私「あ、じゃあ奥さんに聞けばなんでトラを連れてきたかわかるかもしれないですね！」

Aさん「そういえばそうだな、電話してくれねーか？」

この頃には眼球の鋭さはなく、話を聞いてくれる人との認識なのか、徐々に優しい口調で話してくれるようになっていた。

私「はい、あとで連絡とれるようにしてみますね」

Aさん「ありがとう、助かるよ！みんなわけのわからないこといくから困っててさー」

私「そうですよね～。あ、それで急遽帰らないといけなくなったとしたら、どうやって帰ります？歩いて帰ります？」

Aさん「そうなんだよ、それが心配なんだよ」

私「あ、じゃあ私と一緒にちょっとだけ歩いてみません？大丈夫なら私からみんなに伝えるんで！」

Aさん「よし、行こうか！」

ここまでのやり取りを簡略化して書いたが、20分ほど経過していた。

その後、平行棒や手すりを使って歩いてくれて、「ここでふらつくんだよな」「すぐ疲れちゃうんだよ」と現実的な話になり、明らかに落ち着いていった。

翌日担当者に聞いたら、その方はもともと温厚でそんなことは今まではなかったとのこと。

興奮した原因は、様々な原因があったかもしれないが、その方の周囲にいた医療従事者の対応で招いた結果だったのかもしれない。

病態を知っているはずの医療従事者でさえ、病状を進行させてしまうリスクを感じた。

ちなみに、それ以降もその方が順調にリハビリを頑張っている姿をみて、関わり方の重要性を改めて認識する機会となった。

2012年02月06日11:35

セラピストに求められるもの

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一昨日、昨日と京都で行われた“全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会”に参加した。

学会出張ということで、観光らしい観光はできなかったが、代わりに他の施設の取り組みや著明な先生方の研究内容などを聞き、とても強い刺激を受ける機会となった。

その中で、在宅総合ケアセンター元浅草の大西康史先生の「生活期リハを見据えた回復期リハで抑えてほしいこと」という講演は、人と関わる職業人としての考え方を再考するきっかけとなるような感動的な内容だった。

その講演の一部を簡略化して紹介したい。

講演ではいくつもの対象者（患者さん）の事例を紹介し、そこから先生自身が学んだことを私たちに伝えてくれるような形で進んでいった。

60歳代で脳卒中になった男性（Aさん）の話。

Aさんは、脳卒中の影響で手足に重い麻痺を患い、飲み込む能力も低下し、食事も口からできないため、お腹（胃）に直接的に管を差込む形で栄養摂取されていた。

また、声かけすれば目を開けることもあるが、常にボーとした感じで、有効なコミュニケーションもない状態だったそう。

ある回復期リハ病院で入院期間を5ヶ月に設定され、家族より先生の診療所に相談があった。

その時、Aさんの妻の思いは、

「向上は難しいかもしれないが、家族が諦めてはいけないと思う」
「本人の前向きな気持ちがなえているように思う。少しでも意欲を取り戻してほしい」
「別の回復期リハ病院で治療を受けさせたい」というものだった。

先生は、
“あの時もっとしっかりやっていればという気持ちを残したままだと、前向きな考え方にシフトできないのではないか･･･”

“経済的な負担や入院制限（発症後の期間によっては回復期リハ病院に入院できない制限がある）の問題はあるが、可能ならリハビリできる病院へ入院し、家族の気持ちの納得が必要なのではないか･･･”

と考え、医療ソーシャルワーカーに相談し、アセスメントしてもらった結果、一度は自宅に戻ったが、すぐにリハビリが可能な病院を見つけ、回復期ではない病院に2ヶ月間入院したそうだ。

その後も大きな変化はなかったが、現在では退院後1年を過ぎ、訪問看護・訪問リハを行い、先生がフォロー中だそうだ。

現在の妻の気持ちとしては、前向きに進んでいるとのこと。

はじめは、“しっかり治療をやってもらっていないという不満”があったが、２ヶ月間の治療をやりきったという段階で、妻の障害認識が進んだのではないか。

その“2ヶ月間の追加リハビリ”は、家族が次のステージに進むためには必要なプロセスだったのではないか。
そして、たとえ重症であっても改善を目指して追求していく姿勢こそが大事と学んだそうだ。

もうひとつ、別の方の話。

70歳代で脳卒中になった男性（Bさん）は、話をされても聞き取れず、自分から思ったことをしゃべれない状況（コミュニケーション困難）、飲み込めない嚥下障害という症状で、すべての動作や生活上で大きな介助を要する状態であった。

この方も胃に管を通しての栄養摂取する形であった。

そして、退院先について相談を重ね、入院半年後に自宅に退院となったそうだ。
しかし、Bさんは退院し数ヶ月後、肺炎でなくなった。

先生は、Bさんにとって回復期リハでのリハビリはどんな意味があったのか？という疑問が残り、自宅退院を決断され、最後を看取った妻にインタビューしたそうだ。

先生「どうして、自宅を選んだのですか？」

妻「いつも車椅子にのると手をすごい力で私の手を握りしめるんです。それが帰りたいという本人の強い意志表示に思えたんです」

先生「なかなか進まなかったリハビリへの思いは？」

妻「やっぱり本人がその気にならないとね」

「これ以上よくならない病人は、やっぱり病院にはおいてはくれないのですね？」

こんなやり取りがあったそう。

時期がくれば、退院しなければいけないのは事実。

本人・家族が納得していなくても、障害が重くても良くならなくても次に進まなければいけない

そんな状況の中、“説得するよりも共有する”ことが大事だと学んだそうだ。

その他にも様々な事例を挙げて、私たちに大切なことは何かというものをいくつも教えてくれた。

その中でも、回復期リハは、病気を発症するという人生でも大きな転換期、その時期に私たちが関わることをもっと自覚しなければならないと教えてくれた。

また、患者さん、その家族の判断を尊重すること（その方たちの生きてきた人生を尊重するということ）が大事で、狭い意味での医療を超えて、リハ医療は人の人生に関わる医療でやりがいのある仕事であるとも教えてくれた。

それには、自分自身の人間力を高めることで人生の転換地点にいる方々の力になれるかもしれない。

それには、冷静でよくなってほしいという強い情熱を持ち、当事者・家族に寄り添う人間的な姿勢を持ち、他職種とチームを組める協調性をもつことがセラピストに求められることなのではないかと教えてくれた。

今回紹介できなかったケースも含めて、多くのセラピストとして大事なことを気づかせてもらった。大西先生の講演を聴いて、久しぶりに心が熱くなった。また、この気持ちを明日からの臨床に、そして教育に役立てていきたいと思う。

2012年01月13日23:07

短い期間で何ができるか。

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これまで理学療法士として勤務して何人もの方と退院という形で別れてきた。

退院する時、本当に嬉しいと思うことや、とても悔しい思いをすることもある。

先日まで、94歳で心臓の状態が悪くなることをきっかけで体力が落ちて入院していた方を担当していた。（心不全後の廃用症候群）

その方のリハビリの処方箋が出て、2日間ほどリハビリした時にAさんは熱がでてしまい、吐いたり、下痢したりという症状を起こし、感染症の疑いにてリハビリを中止せざるをえなくなった。

2週間以上過ぎてやっとリハビリを再開した時にはすでに2011年のリハビリも残り2日で終わりという状況であった。

また、本人からは悲観的な発言が繰り返し聞かれていた。

94歳にもなって「もう生きてるのが辛い、早く死にたい」というAさんに対し、私はどう接していいかわからず、悩んでいた。

とにかくリハビリをしながらAさんの話に耳を傾けていくと「あなたは私の話を丁寧にきいてくれて神様のようだ」「あなた以外の人は私を物みたいに扱ってくる」などと話されていた。

そして、リハビリとしてはまず本人がどれだけ動けるかを確認するため、ベッドから起き上がってもらい、車椅子に座ってもらった。

それだけで「起こしてくれて本当にありがとう、あなたは神様だ」という発言があった。

この時、Aさんにとって話を丁寧に聞くこと、ベッドの世界ではない場所へいくことが、一番大切なことだと感じた。

そこでその日に担当看護師に「血圧や脈などの問題はないので、食事中は車椅子に乗せてほしい」とお願いした。

翌日に確認すると食事中に車椅子は試していなかった。

その日はあえて昼食直前にリハビリ時間を組み、再び車椅子に座っての食事をお願いしたら今度は行ってくれており、本人も喜んでいた。

そして、その日が年末最後のリハビリの日だったため、これで年末年始のリハビリできない期間も何とか車椅子乗車する機会をつくれるだろうと少しほっとしていた。

しかし、年明けて確認すると年末年始はずっとベッドで食事をしていた。

そして、3日後に別の病院に転院することが決まっていることを聞いて愕然とした。

そんな中、残りの期間で何ができるのかを考えた。

まず、その方のできる能力はどの程度なのかを探った。3日間のうちに平行棒で立つ、平行棒で歩く、歩行器で歩くというようにどんどん新たなことを試せていけた。

それが本人のモチベーションとなり、「あなたのいう通り、自分のできることは自分でやらないとね」「まだまだこれから頑張らなくちゃ」と別人のような発言が多く聞かれた。

そして、息子さんの気持ちが転院した後でも一人で日中トイレなどいけるようになれば自宅に戻ってきてもらう予定なのか、それとももう介護の限界を感じていて自宅に戻ってもらいたくないのかを確認したかった。

なぜかというとそれによって本人が目指すべき目標、周囲の方の関わり方が多少異なってくるからである。

それを確認しようと息子さんに話しかけると、私が自宅に帰ったほうがいいと思っているように感じたのか、私に敵対するかのように威圧するように話をしてきた。

私はどんな方でも自宅に帰ることが必ずしも本人の幸せとは限らないと考えているし、ましてや家族が戻したくないと考えているのに自宅に戻ることは無理だろうし、仮に帰ったとしても幸せな状態にはなりにくいと考えている。

また、自宅に帰ることを強制はしたくないし、そこに口出しする権限もないことはわかっている。

しかし、そのように伝わってしまったことは、心のどこかに「家に帰ってほしい」という気持ちがあったのかと反省した。

そして、息子さんの意見は結局、様々な理由で自宅にはもう戻すことはないとの考えであった。

それを受け止めた上で、息子さんに“現在のできてきている訓練の内容”（つまり現在の状態）、“ベッド上から起きること、つまり車椅子で生活するだけでも喜んでいること”を伝え、それが施設や病院で生活する上でも本人にとってはすごくプラスな要素が多いことを説明した。

そして、身体も良くなってきているので次の病院ではベッド上ではなく、車椅子の生活がすぐにできる可能性があることを伝え、次の病院では起きれるのに起きていない状況を作ってほしくないことを伝えた。

そして、もう少しリハビリしたり、一緒に練習すれば、早い段階で一緒に杖で歩くことなどはできる可能性が高いことを伝えた。（同時に転院先のリハビリスタッフへ手紙を書いた）

すると、笑顔で、「今の状況を丁寧に説明してくれてありがとう、本人の状態も落ち着いてきたみたいだし、次の病院ではなるべく起きて生活してもらえるよう僕からも促すよ」と答えてくれた。

私が伝えたかったことをようやく理解してくれたようだった。

この方とリハビリしたのは、再開して5日ほどである。

関わる期間が短かったからこそ、一日一日の関わり方、リハビリ担当者としてできることを常に考えていく重要性を再確認することとなった。

そして、それには病棟との連携が重要であり、共通した問題とゴールを持つ必要性を感じると同時に難しさも痛感する機会となった。

もっと密に早い段階で医師や医療ソーシャルワーカーや息子とコミュニケーションをとっていたら方針が施設であったとしても、いい意味で違う形で退院できたのではないかと自分の無力さに悔しい思いもある。

また、これをきっかけに日々大切なことは何かを常に考えることを大切にしていきたいと思う。

2011年12月30日17:21

絆

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今年も残りあとわずかとなりました。

今年を振り返ると激動の一年でした。

大震災を経験し、国内・国外からの支援や応援を力にかえて、停滞している政治情勢の中、復興・復旧を少しずつ成し遂げていく、日本の姿は本当に頼もしい限りです。

最悪な混乱状況の中でも、励ましあい、秩序を守り、他人への思いやりを持てる忍耐力のある日本人の強さは多くの可能性を感じる機会となりました。

日本人が「今、自分にできることは何か」とずっと考え続け、行動してきたことが、被災地にいる方々の力となり、気持ちが直接的に届いていなくても間接的にそれが職場や社会で活き、経済の発展につながり復旧・復興の助けになっているように思います。

また、今年は日本にとって悪いことばかりではなく、大変喜ばしい出来事もありました。

女子サッカー日本代表がワールドカップで優勝したことです。

決勝戦では、今まで一度も勝ったことのない世界ランキング１位のアメリカに先制点を許す苦しい展開の中、何度も追いつき、世界一に輝いた“なでしこジャパン”の活躍は本当に日本の誇りです。

そんな歴史的な勝利の裏では、延長戦のハーフタイム（1-2で負けてる展開）での佐々木監督から選手達へこんな一言があったそうです。

「お前たちの大好きなサッカーを失敗なんて恐れずに思いっきり楽しんでこい！」
（一字一句正しくはないですがこんな言葉だったそう･･･）

選手達にとって、その時にほしかった最高の言葉だったのだと思います。

だからこそその言葉を力にかえて勝利を手にすることができたのだと思います。

この女子サッカー日本代表や震災での復興を頑張る日本人など今年はチーム一丸となることの可能性を感じる一年となりました。

私の職場でも若手が増え、「教育が･･･」、「考え方が･･･」、「最近の若者は･･･」、などの意見はあり、それだけでなく、時代の流れでリハスタッフの人数も大幅に増えています。

そんな中、チームとしてまとまりにくくなっている時期だと感じています。

職場の中でベテランでも若手ともいえない中堅？の私のできることは少しでも多くの人とコミュニケーションをとり、そのチームとしてのまとまりやすさ、バランスをとることかなと感じています。

私も、来年は更に自己研鑽しながら、良いチームとしてまずは職場が機能できるように少しでも力になれたらと思います。

ブログをいつも読んでいただいている皆様、良い年をお迎えください。
今年も本当にいろいろとありがとうございました。

2011年11月16日09:34

道具の使用

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これまでのリハビリの研修会に参加し驚くことは多くあったが、中でも特に驚いたもののひとつに道具を使用しながらのリハビリで対象者の反応、わかりやすくいえば身体の使い方が変化する場面を思い出す。

このような場面は研修会だけでなく、職場の上司が目の前で対象者を劇的に変化させる姿を結果として見せてくれたこともあり、道具の使用することをリハビリとして組み込む有効性を教わってきたし、その重要性は理解していた。

にも関わらず、私の中では道具の使用（Activity）を取り入れたリハビリは苦手な分野でもあり、これまで研修会で教わったことの真似事をしても変化がでないことが多く（当たり前だが）、治療が徒手的なことばかりに目が向きすぎる傾向が続き、反省するばかりである。

しかし、時には道具を使用したリハビリで自分の中でなかなかうまくいったぞと思うこともあったりする。

そんな時は、いつもの自分の短絡的な思考ではなく、

「この道具なら何とかこの人はちょっと助ければ使えるかも･･･」
「この道具をどうやって使用すれば使いやすいのだろう」
「次にあんなことにチャレンジしてみようかな」
など様々な思考が駆け巡る。

やはり考えて、新たな発見をする、そしてそれをチャレンジする、できることを探し、引き出していく、などのチャンスが生まれやすい状況にはなる。

そんなことから道具の使用について、今まで教わってきたことを簡単にまとめてみたい。

今日において私達は、日常生活で様々な道具を使用している。

例えば、ペン、はさみ、ブラシ、タオル、コップ．．．

同じ目的で使用されるものであっても、個人において特徴があったりする。

道具とは、何かを作り出したり、目的とする行為を達成するために生活を便利なものにする器具の総称である。

それは、生態的制限を受けている身体器官の延長であって、それぞれの道具は目的に適した形状をしている。

（イチローのバットが身体の延長として機能しているように見えても不思議なことではない）

道具そのものも、形状は日々、安全・効率性を求めてこれまで変化してきた。

その変化しながら人に必要とされてきた道具を人が繰り返し使用し、熟練することで、人としての運動制御に変化をもたらし、その過程で人は巧緻動作など日常生活技能が育まれてきたともいえる。

その道具操作の機能獲得には、真似したり、遊んだり、教えてもらったり、それを繰り返して学習して習得していく過程がある。

それは特殊な運動形態を習得するのではなく、実は課題から受ける抵抗の変化の特性に基づいた知覚・運動経験が蓄積されることにより、無意識的に道具を扱うことが可能になり、習得していく。

道具の操作においては、その使用方法や手順、運動形態が決まっているわけでなく、

①加工される材料に対する道具の運動のもたらす抵抗感が、その材料の特性として的確であるかどうかを点検し、作業中を通じて的確であり続けるように制御できること

②道具の運動をその特性に基づいた的確な感覚情報によって、正確に知覚し制御できること

つまり、道具の先を感じ取るということが重要になる。

例えば、包丁を使用する時は道具の先である包丁の刃の先にあるキュウリの硬さという抵抗を常に感じ取る必要がある。

このことは、硬い抵抗感であるニンジンという野菜を切れても表面が硬く中が急激に柔らかいナスなどで片麻痺者が難しく感じることからも何となく理解できる。

ギブソンは「人が棒で何かを触るとき、その人は自分の手ではなく棒の先に、その対象物を感じ取る＝魔法の杖現象」とよんだ。

また、道具を振ったりした時にその対象物の大きさ、質量、向き、長さ、形状に関する情報をもつことができる能力＝ダイナミックタッチと呼んだ。

人はこれを無意識に行い道具操作の基盤として活用している。

そのためには、道具を持つ手から感じる抵抗感の変化を全身で受け入れること、そしてそれを可能にするための末梢から中枢部の選択的な活動を保証する姿勢筋緊張が重要であるといわれている。

この道具の使用を行う中で、姿勢筋緊張が変化していく場合ももちろんあるし、それで不十分ならば多少徒手的な準備介入を必要とすることもある。

どちらにしても道具の使用という知覚探索活動が人間の身体活動に大きな変化を及ぼすことをもう一度自分に強調し、自分も少しずつでも活用できるように努力していきたいと思う。

2011年10月19日11:39

認知症の方から学んだこと

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理学療法士として仕事をやる中でやりがいを感じることが多くある。

最初は不安な表情していた方が笑顔で退院される時、その日の治療で痛みがなくなりスッキリした表情で喜んでいる方をみた時、医師や他のスタッフから「あの人は歩けない可能性が高いね」といわれる中、本人の頑張りにより何とか歩けるようになった時、挙げればキリがない。

そして、最初はリハビリに対しても拒否傾向である人が何とか現状を受け入れて笑顔で接してくれるように変化する時もまたやりがい、そして大きな喜びを感じる瞬間でもある。

現在、足の付け根（股関節周囲）の骨を折り、人工の骨をいれる手術を行った方を担当している。その方は重度のアルツハイマー型認知症を合併している。

介入当初は、ある時はリハビリを拒否したり、逆に協力的な日もあった。また、興奮して落ち着かない日もあったり、逆に眠るくらい落ち着いている日もあったりとその日によっての変動が大きい特徴があった。

しかし、最近はリハビリに対しての拒否はなくなり、毎日実施してくれる。

そのひとつの理由として、私はあることに気がついた。

それは、リハビリをはじめる最初の挨拶を最高の笑顔で行うとご本人も笑顔になり、リハビリには協力的に受け入れてくれるということだった。

このことは多くのセラピストは経験しているかもしれないが、私にとってははじめての経験だった。

過去に失語の拒否傾向な方の話にゆっくり時間をかけて耳を傾け、拒否がなくなった経験はあった。また、私に対して暴力行為がみられていた人が毎日挨拶を行うことで少しずつ受け入れてくれるようになった経験もある。

しかし、今回のように笑顔が笑顔を生むという経験をわかりやすい形で経験したことがなかったのである。

この対応は間違っていなかったことをある文献を読んで確信した。

その文献には、今回の症例を考える上での多くのヒントがかかれていた。

それは、認知症になっても周囲の人の笑顔はよく認識でき、笑顔のようなポジティブ表情にはその顔を“知っている”ような気にさせる効果があるということであった。

これは、重度の認知症である今回の症例でも私の笑顔をよく認識し、新しい病院（当院）に入院し、不安な気持ちでいる時に笑顔の私をみることで何だか知っているような気分になり、安心した可能性がある。

それでリハビリに対しての拒否がなく、確実に毎日リハビリを受け入れてくれるようになったのではないかと思う。

そして、認知症の人にこちらが笑顔で関わると、相手も笑顔になるという研究結果も紹介されていた。

いくら美味しい料理がでてくるお店でも、こちらに目もあわせず、笑顔もない接客をするようなレストランにはもう行きたくなくなる。

同様にリハビリでも、“またリハビリに行きたいな”と思ってもらえるような、やさしいまなざし、穏やかな顔を笑み、思いやりのある言葉や情熱的なポジティブな気持ちを伝えていくことが大切である。

ただ目の前の課題を頑張ることも大事だが、誰と一緒に行うか、どんな気持ちで行うかもリハビリの効果を左右するはずである。

このことは認知症の方に限らず当てはまることだと思う。

しかし、どんな時も笑顔でいることが大事というわけではなく、相手にあわせることが大事にはなってくる。

もし、相手が落ち込んでいる時に笑顔をみせると、“親身になって考えてくれていない“と思うだろう。

また、相手が“笑顔”でなくても“集中したいい表情”をしていればそれは高い能力を発揮できている時だろう。

その人、その人にあわせて、ポジティブな表情を引き出していくのがセラピストの役割のひとつであり、そのためにセラピスト自身の精神面、身体面が元気であることが大切である。

このようなことを考え、これまでの自分の行動を振り返ると反省することばかりだが、反省ばかりしていては相手に与える印象もネガティブになりかねない。今後は、ポジティブに考えて相手に“快”を感じてもらえるような関わり方をキーワードに行動していきたい。続きを読む

2011年09月25日12:51

片麻痺者の定位の理解

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この地球上にいる以上、重力という絶対的な存在に適応するために、地面（支持面）に身体を定位し、活動できるような姿勢を維持し続けることが頚部・体幹（四肢近位部を含める）の重要な役割である。

重力によって身体を通して感受できる体性感覚情報に基づいて行われる定位は基礎的な定位と呼ばれ、地球と自分との関係を知覚できる全ての定位の基準となっている。

片麻痺者も「支持面に定位しようとしている」という大前提のもとに、「支持面がうまく知覚できないから、能動的に定位することができないのだ」と今まで教わり解釈してきた。

また、片麻痺者の特徴として、頚部・肩甲帯の筋緊張が亢進しやすいのにたいし、下腹部・骨盤帯の緊張が高まりにくいため、身体を支持面に定位する姿勢が限られ、四肢の活動に見合った様々な姿勢を維持することが難しい点が挙げられる。

この特徴と考えていくと、身体を支持面に定位して支えるべき筋（下腹部・骨盤帯）の緊張が高まらずに、頚部の筋に緊張が高まってしまうという不合理な適応反応にどうしても疑問が残る。

そこで、よく片麻痺者を観察してみると、車椅子から滑り落ちたり、坐位がうまくとれない方でも頚部だけは起こそうと反応する人が多い。

これは支持面とは違うものに体性感覚とは別の感覚で定位し、姿勢を維持しようと能動的に行為をしている結果なのではないか。

本来は空間における頭部の位置や動きの変化に対しておこるこの反応が頚部筋の固有感覚や、支持面を探索する体性感覚の変化と結びつき支持面に基礎的な定位をするような全身的な姿勢筋緊張を整える重要な役割を果たしている。

しかし、人は支持面からの情報が不確実になると視覚優位な環境への適応反応を示すといわれている。

この前庭や視覚優位に頭部の位置や動きの方向がわかり、そこを定位の基準として身体を筋で結合しようとしていると考えれば、頚部肩甲帯の筋緊張が亢進し、下腹部・骨盤帯の筋の緊張が高まらないことが不思議ではなくなる。

視覚に基づいた空間知覚も眼球を動かすための横紋筋、安定した見えを確保するための頚部の横紋筋活動との結合で視覚の固有感覚的であると考えられる。

つまり、視空間知覚は頚部の筋活動を介して身体知覚と協調できるものと考えられ、その時に重要となるのが、身体の正中軸と頭部の正中軸が一致して両者が協調する際の基準ができていることである。

頸が何とか据わったような状態で支持面をわからせようとした治療をいくら行っても効果的ではなく、筋活動を顔面から舌、頚部へ、さらに肩甲帯から体幹へ拡げて、腰が据わるように発達を促すことがセラピストの役目である。

現在の障害のある身体でボディーイメージを再構築するには、大きな動きよりも脊柱起立筋が細かく分離して動くように力を吹いてゆする動きが必要である。

参考・引用文献
　片麻痺の機能障害―行為の障害と体幹機能―　冨田昌夫
　Presented by Medical Online

2011年08月07日07:05

足部の重要性

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よく足裏をみるとその人がどれだけ足を酷使してきたかがわかるといわれる。

地球に存在する私達は立っていれば、足の裏が唯一の接地面となり、平均寿命で計算するとそこに全体重を1000万回も預けること（繰り返し衝撃をうける）になるらしい。ましてや走るとなると体重の何倍もの負荷がかかることになる。

加齢と共に足部や足趾の動きが悪くなれば、麻痺にならなくても足底感覚が障害を受けるとの報告もある。

そのような場合、感覚感受性が高い（感覚が少しでもいい）領域の足圧が増加するといわれ、足圧が常にかかっているところは皮膚が硬化したりするため、このことが足裏をみるプロがいろいろ想像できる材料になっているのだろう。

本来、足底腱膜（足裏に縦に走るスジ）や足底脂肪層、厚い皮膚などが足底感覚には重要である。

しかし、先に述べたように足部の動きが悪くなり、足底感覚も低下した状態であれば、骨と地面が近接している足底外側や第2中足骨骨頭付近に圧が集まるよう身体は代償的戦略をとる。

このことがさらに足底脂肪層や足底腱膜、皮膚などから得られるべき感覚情報に歪みを生じ、偏った感覚情報しか得られない原因のひとつになっていると考えられる。

そしてその単一的な足部の動きでは、当然偏った運動連鎖（単一のパターン）での制御（バランス）しか行なえなくなる。

足底外側に足圧を分布させることから距骨下関節は回外（足首の関節が外に倒れるように）し、それに伴い下腿は外旋（外に捻れ）、大腿骨も外旋し、骨盤後傾、体幹を後方移動を起こし、後方重心となる。

このような場合、足部から介入するとしたら、距骨下関節の運動性が重要になる。
特に距骨下関節は重要で、軸の関係上この関節が回内できるかどうかで第一列（母趾側の縦のライン）の運動性が決まる。
しかし、ただ、距骨下関節の回内可動域とそれに伴う第１列の可動域を獲得するだけでは対応できない症例に多く出会う。

それはたとえ可動域がUPしてもそれより上のシステムが長年かけて単一のパターンで動いてきた証拠でもあり、それについて療法士はアプローチしなければならない。

つまり、ストラテジーやロッカー機能を用いて、バランスを促通したり、荷重をかけた際の股関節や体幹の位置などを修正しながら、全体的な運動形成を図る必要がある。

このことは療法士が局所の障害であっても全体をみなければいけないという近年の整形外科領域や中枢神経系領域両方の考え方に共通している。

具体的には足の裏にボールをのせて転がしたり、ビー玉を掴む訓練に加えて、細い紐の上を歩いたり、垂木を使用しての立ち上がりやスクワット、不安定板を使用したバランス訓練などである。

これもただ行ってもらうというだけではなく、その時の運動パターンを見抜き、次の展開に結びつけることが療法士には求められる。

足部は、手掌と同様に無毛部で最も鋭敏な感覚を有する部位として知られている。ヒトが地球環境に適応するために外界の情報をいかに収集して処理するために、足部が重要な役割を果たしてきたことが想像できる。

この高感度センサーといえる足部からの情報を適切に活用するためのそれより上の使い方も同時に考えていかなければ、情報は役にたたないものになってしまうだろう。

2011年07月09日13:16

挨拶は気持ちがいい。

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当院でも365日リハビリ体制が7月から本格的にスタートした。そのため、昨年から今年にかけて多くの新人・若手が入職し、理学療法士が30名以上の大所帯となった。

その影響からか3年目以下の若手の人数が半分以上にもなり、理学療法としての教育はもちろん社会人としての教育が今まで以上に必要な環境になっている。

そんな中、「最近若手があまり動かない」、「全然気づかないな～」、「挨拶もしないじゃないか」、「社会人としての指導に時間を要し技術・知識の教育まで時間が回らない」などの意見を耳にする。

確かに私もそう感じることも多い。

ただ、上に挙げた全ての行動は先輩や上司が率先して新人に示せるかが重要ではないかと思う。

同じ質問を自分自身に問いただしてみると、改めて社会人として当たり前な挨拶でさえ、100%実践できているか疑問が残る。

先日テレビで挨拶をしない若手にどう注意するべきかとの問いに、「上司から挨拶をすること」「挨拶よりも先に笑顔を教えるべき」と話している人がいた。

本当にその通りだと思う。

挨拶をして返答があるととても気持ちがいい。
逆に挨拶をするべき相手に挨拶をできないでいると心に何かモヤモヤができる経験は誰もが経験しているのではないか。

じゃあなぜ挨拶をしないのか？と考えると挨拶した後の相手の反応があまりに悪いからだと思う。

今までの経験で挨拶しても相手が返してくれなかった経験が「挨拶＝しないほうが不快にならない」と脳が判断して無意識にそう行動しているのだと思う。

そんな後輩に「挨拶しろ！」という一方的な押し付け教育で本当に気持ちのよい挨拶ができるようになるか、そして本当の意味での挨拶の大切さを理解できるかは疑問である。

本当の意味での挨拶の大切さを理解していなければ、そのまた後輩にいつか指導する視点さえ持たなくなってしまうだろう。

挨拶をしない後輩がよく見ていると患者さんにはスムーズに挨拶をしている。これは仕事だからしょうがなく挨拶しているのだろうか・・・。

私はそれだけではないような気がする。

人生の先輩である患者さんはいつも気持ちのよい挨拶をしてくれる。

それこそが誰もが挨拶をしやすい環境を作ってくれているのではないかと思う。

つまり、新人にどのように挨拶の大切さを伝えていくかというと挨拶をしやすい環境をこちら側（先輩や上司側）が作ることが重要なのではないかと思う。

例えば、先輩から率先して必ず挨拶をすることを繰り返すと徐々にこの先輩は朝必ず挨拶をする人なんだと思うだろうし、そうなれば挨拶を交わす気持ちよさを経験し、自分から挨拶してくれるように少しずつ変化する可能性はあるだろう。

また、いつも笑顔で後輩に接していれば、この先輩は声かけやすいなという認識を持つだろう。

挨拶に限らず、教育においても同じことが言える。

先輩や上司が自分から話しかけ、後輩が悩みを相談しやすい関係を築くことも大切な要素ではあるし、この人に相談したいと思える勉強や技術の研鑽（挨拶でいう自分から積極的に繰り返す努力）が必要である。

私はそんなことを意識しながら自分から後輩に挨拶をしている。

とはいうものの私も照れ屋なので笑顔までは作れないが、その中で小さな変化を感じてきている。

前まで挨拶を自分からは行わなかった後輩が自分から私に挨拶することも少しずつではあるが増えているのである。

この人に挨拶をすれば、必ず返ってくるし気持ちがいいと脳が学習すればしめたもの。
あとはそのような人材が職場に少しずつでも増えていけば周囲の環境が変化していくのではないかと思う。

そんな環境は社会人としてましてや医療職として当たり前とも思えるが、そんな当たり前なことがなかなか実践できない職場環境、これは職場だけでなく今の時代の傾向かもしれないが、挨拶の気持ちよさが皆が実感できる環境になることこそ、患者さんにとっても私達にとってもリハビリしやすい環境になるのではないかと思う。