たまには経営やマーケティング関連したことも書きましょう。

市場を考える際に、重要な要因として競合財と補完財というものがあります。競合財と呼んで字の如く、競争関係にある商品・サービスであります。補完財とは、その商品と組み合わせて、利用する商品・サービスであります。
 
これをご飯で説明すると、パンとご飯は競合関係になりますが、明太子はご飯の補完財となります。最近明太子市場は縮小しておりますが、一つの要因としてパン食が増えているというものがあります。つまりご飯が増加しない限り、明太子市場は伸び悩みます。従って明太子提供者としては、ご飯がパン食に比べて伸びるのか?を考える必要がありますね。ご飯市場が縮小するならば、明太子をご飯にのせて食べるスタイルを変革させる必要があります。明太子をチューブ化し、パスタに利用する、もしくはパンにのせて食べるような提案が必要になりますね。
ご飯としては魅力ある補完財(海苔玉や佃煮、漬物)などを増やし、ご飯の量を増やすしかありませんし、パンメーカーは、ジャムなどで魅力ある補完財を増やすことでパンの量を増やすしかありません。でも最近の若者は朝食を採らないケースが多いので、パンもご飯も朝食市場を拡大させないとだめですね。
このような競合財と補完財の関係式は色々な市場であるかと思います。
 
まずは補完財のゲームソフトメーカーですね。あるゲームソフトメーカーが、ソニーのプレイステーション3でゲームソフトを出そうとしたが、値段が高く思うようにゲーム機が売れていない。逆に任天堂のゲーム機Wiiが売れている中では、このゲームソフトメーカーは、ソニーのゲーム機にこだわることなく、任天堂に移りますよね。
逆にソニーとしては任天堂Wii(競合財)では作れない、任天堂のゲーム機では表現できない、コンテンツを自社で作るか、サードパーティに作らせて、魅力ある補完財(ゲームソフト)を集めて、戦うしかないでしょうね。
 
VHSとβのビデオ規格競争も勝因は、補完財となるVHSのレンタルビデオの本数によりました。VHSの方が映画ソフトメーカーのニーズに合う長時間録画テープ(2時間映画が入る)でありました。
更に面白い話としては、花王とカネボウがシャンプーで90年代後半に市場競争していた時に、花王はシャンプーのボトルを沢山製造できる工場を作りましたが、他方でカネボウはシャンプーの詰め替え袋を販売しました。花王は工場に設備投資したために、詰め替え袋の生産には後手に回らざるを得ない状況でした。結果シャンプー市場としてカネボウのナイーブが好調になりました。詰め替え袋が補完財の役割を担い、自宅にあるボトルに入れると言う行為が、消費者の環境意識を刺激したのですね。
 
もう一つ間歯磨き粉の話もあります。とあるメーカーが歯磨き粉と歯ブラシの両方を出しており、非常に強いメーカーAがあるのですが、その時に歯ブラシ専業メーカーBが勝負をしかけたケースです。これは逆に補完財を保有していたために邪魔になったケーススタディです。歯ブラシ専業メーカーBとしては、どうしたのか?歯を一本一本磨くために、ブラシ部分の長さを短くした商品を開発しました。商品としてはきめ細かく、口の奥まで届く歯ブラシだということで売上拡大に成功しました。では歯ブラシと歯磨き粉の両者を販売しているメーカーAも対抗して出したかったが、もし歯ブラシ部分が小さくなったら、それが市場シェアNO.1企業が出し、歯ブラシ部分の基本が通常の半分の長さになってしまったら、自社の歯磨き粉の売上は半分以下になってしまう恐れがあるために、自社の全体的な売上は下げることになってしまう。つまり共食い(カニバゼーション)を始めてしまうのです。従ってメーカーBのような製品を開発することができないというものです。逆にメーカーBは競争優位を確保したというものです。
このケーススタディはソニーにも当てはめることが出来ます。ソニーはAV機器メーカーの世界的な有数メーカーとしてウォークマンとか、音楽プレイヤー市場では非常に強い企業でしたが、今はアップルのiPod社が圧倒的な一位であります。ソニーは自社内にAV家電部門を有しつつ、また世界的な規模でソニーミュージックエンタテイメントという音楽会社(補完財)を有しており、既存の音楽のパッケージビジネス(CD,MD)を破壊する訳には行きませんでした。音楽ネットワーク配信事業には後手に回ったのです。その結果既存の音楽ビジネスには何の柵(しがらみ)も無いアップル社が先行してしまいました。
この歯ブラシとソニーの事例は補完財を保有しているが故に、それが邪魔になってしまったものです。
逆に補完財が役に立つケーススタディも見てみましょう。本来こちらのケーススタディが基本系であります。
普及財(主力製品)と補完財(補助製品)を組み合わせた、高収益モデルの構築というものがあります。
一番わかり易いのは、使い捨て剃刀メーカーの戦略であります。ジレットなどの二枚刃、三枚刃などの使い捨て剃刀は色々なお店で販売しておりますが、これは非常に安く販売しております。恐らく1000円もしないものと思います。でもこれを購入して利用していてもいずれは剃刀の刃が毀れてしまい、代わりの刃のセット(4つ入り)を買うことになりますが、これが1000円近くも高いのです。ユーザーとしては剃刀の柄の部分を既に所有しておりますので、これを捨てて、また一から買いなおしは勿体無い。従って刃セットを買うことになる訳です。
使い捨て剃刀メーカーの戦略は普及させるために最初の製品は安くして、補完財の刃セットで儲けるというビジネスモデルであります。
任天堂のゲーム機戦略も実はこれで成功しました。ゲーム機「ファミコン」は14800円と非常に安い価格で販売しました。この時おもちゃの問屋や小売店も利幅が安いので非常に反発しました。一台あたり数百円です。しかしゲーム機を安くして販売し、普及させ、ゲームソフト6800円~9800円という価格で販売させれば、一本あたり数千円×何百万台という形で儲けることが出来ると説得し、このビジネスモデルを構築し、見事成功したのです。つまり普及財としてのゲーム機を低価格で販売し、補完財のゲームソフトで稼ぐモデルです。また任天堂はサードパーティが任天堂のゲーム機からソフトを出す場合、任天堂の工場でマスクROMを製造させるように契約をしたために、1本あたり数千円が自動的に任天堂に入ることが可能になりました。
 
コピー機メーカーも同じようビジネスモデルですね。コピー機はリースで非常に安い価格で販売し、トナーや紙を販売することで儲けることができるビジネスモデルですから。
でもコピー機メーカーは一つ間違えたことがあります。今は複合機ということでFAXやスキャナー機能が付いておりますが、スキャナーした時にもお金を取るビジネスモデルは想定しておりませんでした。環境問題が深刻になる中で紙資源の利用をすくないようという動きがユーザー企業に出てきております。ペーパーレスと言うことで既存の紙資源をデジタル化するためにスキャナーを利用するケースが増えているのです。逆にコピーをする機会は減少し始めております。
コピー機メーカーは今後はカラーコピー機が登場するために、更にトナーなどの補完財で儲けることができると考えがちですが、世代間競争として次世代のカラーコピーではなく、次々世代としてペーパーレスディスプレイが登場し、カラーコピー市場を代替してしまう可能性は否定できないのです。でもそこまで長期的な未来を予測して判断することは、市場予測しかしていない既存の企業経営ではとても無理だと思います。仕方の無いことだと思います。サラリーマン経営者は凡そ5年近くで退任しますからね。そんな長期的なテーマを見てられないかも知れません。
 
製品市場を調べるときに、その製品の競合品と補完品としては何があるのか?、普及財と補完財の儲けるモデルが出来るのか?、競合企業は、補完財が逆に不良債権化してしまうのか?ということを分析してみると、どうしたら自社製品の競争優位戦略を構築できるのかを見極めることが出来るかもしれませんね。