2017.03.30 日本の奇矯の一つ、富山県黒部川の愛本橋について、風物06

 黒部川の下流域において、黒部川扇状地の扇頂部に愛本橋がある。明治中期までは木造のはね橋が架かっていて、当時は日本三大奇橋のひとつとされていた。

 日本三大奇橋とは、橋の構造的観点から、山口岩国の錦帯橋、山梨大月の猿橋、高知三好の葛(かずら)橋といわれている。これらの三橋は現存しているが、三番目の葛橋は山奥にあり、観光ルートから外れているせいか、この三番目を狙って各地の奇橋が名乗りを上げている。

第一が木曽の桟橋、第二が栃木日光の神橋、第三が黒部愛本の刎橋である。5年程前までは、三番目は葛橋であったが、ここ最近は愛本の刎橋が、現存していないのも関わらず、三番目に居座っている。学術的にいえば、愛本の刎橋そのものは猿橋の系列であり、しかも現存もせず復元もされていない。

こうなってくると、橋ひとつとってもおらが国自慢の情報操作が行われているといえよう。参考までに、加賀藩は刎橋を各地に建設しており、富山八尾の久婦須川にも愛本と同種の橋が架かっていた。