【モリコウスケレビュー】
米カリフォルニア州やフランスでは管理組合の共用部分の修繕履歴(計画含む)の整備が法で位置づけられ、中古住宅購入者はその情報開示を求める権利があり、管理状態が市場で評価される仕組みがある。

日本には現在そのような仕組みはない。
しかし、著者が予見しているように、資産性を維持しつづけるか、限りなく価値ゼロに向かうかは、ひとえに「管理状態」で決まる。
本書は、資産性を維持向上させるための、具体的手法・事例が豊富に紹介されている。
マンション管理は、経営そのものであることをあらためて気づかされる。

また、政策への批判や提言を行っているところも共感した。
例えば、中古マンションの流通活性化策として、不動産取引時の公開を義務付けることである。

以下、管理会社に騙されるな。管理組合と管理会社は利害が相反する関係(修繕積立金の奪い合い)。
・修繕積立金は初期は安く設定されて売られる。よって、長期修繕計画において、10年後に3倍、20年後に5倍になったり、多額の一時金を徴収したりする。しかし、修繕積立金の値上げを扱うと、多数の反対意見にあう。特に年金生活者が多いマンション。値上げを総会に提案し、納得してもらって賛成を得る政治的コストは、あまりに過大である
・日常の管理は激安で受注しておき、修繕工事受注で取り返す(関連会社に修繕させて見積にマージンを上乗せする)
・売り主側の都合で、築11年目に管理会社による建物の点検が行われる。もし9年目に定期点検を行って不具合が見つかった場合、保証期間内なので売り主の費用負担で是正工事を行う
・長期修繕計画に定められた実施時期イコール大規模修繕の時期だというトーンで計画を進行させ、工事の実施を促す→工事受注のノルマを達成しなければならない管理会社の都合

星野芳昭・白金タワー管理組合理事長は言う。
マンション管理について、「維持管理ではなく経営、つまり区分所有者がオーナーシップの自覚を持ちガバナンスを発揮し、管理会社を適切にマネジメントすることだ」
管理組合と管理会社は利益相反関係にあるので、管理を管理会社任せにすると、やりたい放題で搾取される。そして搾取額が大きいほど社内では評価されるというのが、管理会社の人事評価である。
管理組合は管理会社を適切に是々非々でマネジメントすることが求められる。
そのためには、理事長という、リーダーシップをもった経営者のもとに、理事というボードが支えるガバナンス構造。ただし、理事長に業務と権限が集中し過ぎることなく、適材適所で役割分担する、"仕組み"が重要になる。この点は、会社経営と何ら変わらない。
戸数の多いマンションには、
様々なバックグラウンドを持った人たちが住んでおり、例えば、
大企業の役員もいれば、→理事長向き
経理担当、会計士・税理士もいれば、→監事や会計担当向き
建築関係、技術者もいれば、→大規模修繕委員長向き
法務担当、法曹関係者もいれば、→規約変更委員長向き
防火管理者、自衛隊、消防関係者もいれば、→防災委員長向き
WEBデザイナーもいれば、→ホームページを通じて情報発信・情報公開(公式ホームページで内部書類を一部公開すると、マンション購入を検討者の判断材料として非常に有用。マンション管理組合の運営状況を情報公開することで信頼性が大きく増し、資産性の評価が高まる)
カメラマンやセミプロもいれば、→ホームページ掲載の写真を撮影
介護関係者、医療従事者もいれば、→高齢者サポート

このように、適材適所で役割分担すれば、管理組合運営が活性化し、マンションの価値が高まることにつながる。
そして、良い仕事をしてもらうためには、ボランティアではいけない。
具体的には、理事会役員は、月3000〜1万円の役員報酬を支払う。一方で、輪番制で辞退する人からは、管理費の半分を2年間収めてもらうのが、公平性の観点から妥当である。

本書には、こうした、マンションの価値を高めるための管理組合運営のヒントがちりばめられている。