伝説の詩

April 27, 2008

旅女伝説

遠い昔、平安京の時代の事です。


京の町中を、来る日も来る日も、人を捜し歩く、旅の女がいました。



哀れに思い町人が尋ねたところ、遥か遠い南国の島から来たというのです。



嫁いだ家が貧しく、そのうえ主人まで亡くしてしまった時の事です。


義父が口減らしのために、女に内緒で、一人娘を京の町から来た男に売り飛ばしてしまったそうなのです。



その後、義父が亡くなり、娘を捜しに来たというのです。



それを聞いた町人は、娘を捜す手助けを始めたのでした。



そんなある日の事。



南禅寺通りのとある京料理屋の軒先で、旅の女は疲れ果て倒れてしまったのです。



慌てて出てきた店の女中こそが、捜し求めていた娘だったのです。



声をかけ合うこともなく、旅の女は娘の腕の中で、息を引き取ったのでした。



それを知った店の主人が供養をし、南禅寺近くに墓を立て、そこで眠る事になったのです。



その頃から、店の側でひっそりと咲く、旅の女によく似た花が見かけられるようになったそうです。


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May 30, 2007

フェニックス伝説

その昔、貧しい農民たちがいました。


僅かな田畑を耕し、苦しい生活を強いられていました。


しかし、その地の代官は更に法外な年貢を取り立て、農民たちは追い詰められていました。


その時、一人の若者が代官の悪政を正そうと立ち上がったのです。


しかし、多勢に無勢、武器も持たない農民に勝ち目は無く、取り押さえられてしまったのです。


首謀者として名乗り出た若者は、見せしめのため、農民たちの目の前で火あぶりにされてしまったのです。


その時、燃えつきた若者の体から立ち昇った煙は、空高く昇り続け、不死鳥の如く空一面に光輝いたのです。


その噂を聞いた藩主は、私利私欲の為に悪政を行った代官に切腹を命じ、農民たちは救われたのです。


その後、農民たちを見守るかの様に、時々空に現れ輝く若者に、農民たちは手を合わせ感謝し続けたそうです。


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May 07, 2007

感謝峠伝説

その昔、幼い子供と生き別れとなってしまった夫婦がいました。


夫婦は、子供とはぐれたその町で、小さな飯屋をしながら、子供を捜し続けていたのです。


そんなある日の事、旅の行商人から、二人の子供ではないかと言う話を聞かされたのです。


夫婦は喜び希望に胸を躍らせ、旅に出たのです。


長年の苦労も重なり、年老いた夫婦には辛い旅となりました。


この山を越えれば、子供の住む町だと言う峠に差し掛かった時の事。疲労のため、二人は倒れてしまったのです。


しかし、その峠で茶店をしていた親切な夫婦に助けられ、手厚い介護を受け、体力も回復した頃の事。


茶店の主人が、麓の町に住む老夫婦の子供を捜し出し、連れて来てくれたのです。


その後、老夫婦は子供の住む町で、親子三人仲良く暮らしました。


焼き物師として名を挙げていた子供は、峠の茶店に感謝の気持ちを込め、お地蔵さんを造りお礼をしたのです。


それ以来、その峠は、“感謝峠”と呼ばれ親しまれる様になったのです。


今では食堂となったその店に、お地蔵さんは飾られており、峠まで登れた健康への感謝、素晴らしい景色を眺望出来る感謝の印として、大切に守り継がれていると言うことです。


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April 11, 2007

白い小川伝説

昭和初期の頃の事。


山合の二つの村があり、その境に小川が流れていました。その小川は、二つの村の水源であり、子供たちの遊び場でもありました。


そこで知り合った男の子と女の子、やがて二人は少年少女へと成長し、恋に落ちたのです。


お互いの村の境にある小川は、二人のデートの場所でもありました。


その小川の畔に、二人は小さな記念樹を植えました。そして、この木が大きくなり花が咲いたら、結婚しようと誓い合ったのです。


ところがその翌年、少年の元に招集令状が届いたのです。


必ず帰って来ると言い残し、少年はサイパンへと出征しました。


ある日の事。時々届く手紙を楽しみに待ち続けていた少女の元へ、少年が行方不明になったと知らせが届いたのです。


それでも、生きて帰って来る事を信じ、少女は嫁にも行かず、毎日毎日小川へと通い、二人の木の成長を見守り続けていたのです。


何年か歳月が流れた頃、二人の木に蕾が出来、綺麗な花が咲きました。


これで帰って来る、帰って来たら結婚出来ると喜んだのも束の間。

とうとう、少年の戦死の通知が届いたのです。


それを聞いた日、少女は白い花が咲く木の下で、一枚の遺書を残し、彼の元へと旅立ったのです。


その後終戦となり、復興景気による宅地造成が進み、あの小川も無くなり、公園へと変わって行きました。


ただ、村人の協力により、その木だけは少女の遺志通り残されてきたのです。


今でも春になると、その木は二人をいとおしむかの様に、白い小川が流れているかの如く、綺麗な花を咲かせ続けているのです。


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March 19, 2007

紅い雪の伝説

遠い遠い昔のお話です。


北国に、雪深い山合いの村がありました。


その村には、誰も住まなくなった空き家があり、お化け屋敷と村人は恐れていたのです。


ある年の事、村の子供が神隠しに遇うと言う事件が起こったのです。


いくら捜してもどこにも見当たらず、村人は諦めかけていたのです。


ところが、次の年にまたしても子供がいなくなってしまったのです。


同じ事件が3年も続いた頃、村人の間では、空き家に妖怪が住み着き、子供をさらって食べるのだと言う、まことしやかな噂が立ち始めたのでした。


祈擣師にお願いをしたところ、生け贄に若い娘を捧げ妖怪をいさめなければ、又災いは起こると言われたのでした。


村人は相談し合いましたが、誰も我が娘を差し出そうと言う者はおりません。


困り果てたその時、一人の娘が名乗り出て来たのです。


娘の名はお春と言い、18になったばかり。

二年前に流行り病で両親を失くし、たった一人で畑を耕しながら生きている、気丈な娘でした。


村にしんしんと雪の降る、寒い日の事でした。


『私は一人の身、誰も悲しむ者はおりません、私が生け贄として参りましょう、私が空き家に入ったら、家に火を放ち、妖怪もろとも焼き尽して下さい』

と言い残し、空き家へと入って行ったのてした。


村人は娘の言葉通り、空き家に火をつけ全てを燃やしてしまいました。


燃え落ちる空き家と共に、その夜、村には、娘の悲しみが乗り移ったかのように、紅く染まった雪が降り注いだのでした。


その後、村では神隠しに遇う子供はいなくなったのです。


やがて雪が溶け、春が訪れた頃。

その焼け跡に、まるで紅い雪が降り注ぐかのような、可愛い花が咲いたのです。


村人はその花に“ お春花”と名付け、大切に守り続けたと言うことです。


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March 12, 2007

鼻のない象の伝説

その昔、アジアの草原に住む象の中に、鼻の短い象が誕生しました。


成長しても一向に鼻は伸びてこず、出来そこないと罵られ、笑い者にされた挙げ句、祟りだと恐れられ、見世物小屋へと売られてしまったのです。


毎日人に笑われ、怖い怪物の様に見世物にされる事に耐えきれず、小屋を逃げ出して、放浪の旅をする様になったのでした。


人に出会えば笑われ、後ろ指を指され、次第に山へ山へと入り込んで行ったのです。


ある村まで辿り着いた時、一人の老婆と出会ったのです。お腹を空かしていた象に、老婆は毎日食べ物を与えてくれました。


初めて優しくされた象は、感謝のお礼に何か恩返しをしたいと思っていました。


ちょうどその頃、村では食物を荒し、人を襲う熊が出没して、村人は困り果てていたのでした。


象はこの熊から村人を守ろうと、村の入口に立ち続けたのでした。


それからと言うもの、村に熊が現れる事はなく、たいそう村人は喜びました。


その後、象は村人と仲良く暮らし、いつも村を守りながら、立ち続けたまま生涯を貫いたのでした。


その跡に生えた一本の木が成長するにつれ、あの鼻のない象となって蘇ったのです。


村人は、象の生まれ変わりだと思い、村の守り神として奉り、今でも大切に守り続けているのです。


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February 12, 2007

ζ鶴の舞伝説ζ

大正時代初期の頃、とある農村で、飼われていた鶏や山鳥が次々と死んでいく事件が発生した。



農民の間では噂が広まり、次第に大きくなっていった。恐ろしい疫病で、人間に感染し、やがて村は全滅すると言う話にまでなっていったのである。


その村の側には広い沼があり、冬になると渡り鳥の鶴がやって来ていた。


ところが、この鶴が疫病を運んで来るのだと言う話になり、農民は猟銃で、鶴の群れを撃ち殺してしまったのである。


その中でたった一人だけ、最後まで反対をしていた青年がいた。


その青年は、不慮の事故で両親を亡くし、一人田畑を守り続けていた。


全滅させられた鶴は、一人ぼっちの青年にとって、安らぎであり友達でもあったのである。


悲嘆にくれた青年は、せめてみんな仲良く弔ってやろうと、亡骸を集め、沼の小高い丘に埋葬し、周りに花を植えて祈り続けたのである。


そのかいあってか、村の疫病騒ぎも治まり、農民も後悔し、埋葬した丘に祠を建て、過ちを償おうと祈りを捧げたのである。


次の年の冬、青年が植えた花が咲いた。


鶴が踊り、今にも飛び立とうとする姿から、『鶴の舞』と呼ばれるようになったのである。


初めて花が咲いた年に青年は結婚し、その後子供にも恵まれ、家族仲良く幸せに暮らしたと言う事である。


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February 10, 2007

宮大工伝説

天下騒乱の時代、京の寺社は強大な力を誇っていた。

その時代、仁五郎と言う宮大工がいた。

修行中から、いつかは歴史に残る大仕事をしてみたいと考えていた。

修行15年目の秋、親方の元へ大きな寺の建立の仕事がきた。

そして念願叶って、遂に仁五郎にその仕事を任されたのである。

仁五郎は寝る間も惜しんで仕事に没頭した。

その結果、万民が驚嘆する寺を建立したのである。

ところが京の町を揺るがす様な戦が起こった。

寺の僧兵が守るも虚しく、寺に火が放たれ、僧兵たちも命からがら逃げ出した。

その時仁五郎は、体に10本もの矢を射したまま、一世一代の宝を死守しようと、立ち往生したまま寺と共に焼け落ちたのである。

その跡地に咲いた花は、仁五郎の情念が乗り移ったと思い、人々は仁五郎花と呼び偲んだと言われている。


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February 07, 2007

インディアンの誇り

「お祖父さん、いつもここに置いてあるこれは何?」

「これはな、お前たちの祖先の形見じゃよ。白人が東と西を鉄道で繋ごうとした頃、私たちは祖先から受け継いできた、土地や文化や民族を守ろうと、白人と戦ってきたのじゃ。

しかし武器や騎兵隊の数の違いは大きく、勝ち目がなくなった時、酋長はインディアンの最後の誇りを賭け、数名の戦士を率いて敵陣へ突入したのじゃよ。

その中に、夫と共に最後まで戦った女戦士がいたのじゃ。男に負けず勇敢に戦い、インディアンの誇りを見せつけた女戦士が倒れた後、私たちは戦いに負け、この居住区へ移されたのじゃよ。

その後、騎兵隊の隊長が、女戦士の誇りを持った戦い振りは同じ戦士として尊敬に値すると言って、この羽飾りを届けてくれたのじゃよ。

私たちはこんな所に住もうと、これを見て誇りを持って生きてきたのじゃ!

いいか、お前たちもその事を忘れず、誇りを持って生きていくのじゃよ!」


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January 27, 2007

∞傘張り伝説∞

時代は江戸の頃、ある長屋に住む三人の家族がいました。

仕えていた藩が取り潰され、浪人の身となった男は、妻と娘を連れ江戸の長屋に移り住むようになったのです。

いづれかの藩へ仕官出来るその日迄、妻と二人、傘張りの仕事をしながら、家族三人貧しいけれど仲良く幸せに暮らしていました。

その頃江戸の町では、辻斬りが横行し、庶民を恐怖に陥れていたのです。

実は、この辻斬りこそ、幕府が不穏な動きを見せる浪人を一掃しょうと、浪人狩りの為に仕掛けた罠だったのです。

遂にその魔の手は、長屋の家族にも伸びてきたのです。

その浪人は辻斬りの一味だと疑われ、奉行所へと連れて行かれたのです。

妻や長屋の人々の陳情も虚しく、浪人は河原の処刑場に於いて、辻斬りの罪により処刑されたのです。

無実の罪により夫を失ない、夢も希望も無くし悲嘆にくれた妻は、とうとう耐えきれず、娘を胸に抱き、夫が処刑されたその川へ身を投げたのです。

憐れに思った長屋の人々は、その家族を三人一緒に、河原の片隅に弔ったのです。

その次の年、河原の畔に仲良く笑う、三人家族の様な花が咲いたのです。

人々はその花に「傘張り花」と名付け、大切に守り続けたという事です。

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