水曜日の夜までにパッキングや行動食の購入を済ませ、12日木曜日は仕事を15時過ぎに切りあげて帰宅し、17時すぎに自宅を出る。みんなが働いているであろう時間にザックを担いで駅へ向かうこのなんともいえぬ背徳感。そして大阪駅でホームに並ぶサラリーマンたちを見ながらひとりこの世界から抜け出ることが出来るなんともいえぬ優越感。


 18時12分発のサンダーバード39号に乗り、少しの高揚感と若干の緊張を抱えながら車窓から流れる風景を眺める。買った弁当を食べながら明日の行程を考える。明日は薬師峠でテントを張って寝ているのだと思うとワクワクしてくるのと同時に、いまの自分に5時間の行程が歩けるのだろうかとリアルな不安が押し寄せる。すこしお腹も空いてきたので、大阪駅で購入した駅弁を頂くことにする。
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 金沢で富山行きの新幹線に乗り換えて富山に向かう。東京からは新幹線一本でいけるから便利かもしれないけど、乗り換えずに行けることが出来た時代を知っている身としてはややこの路線は不満である。

富山駅は21時29分に到着。駅を出て明日折立行きのバスが出るはずのバスターミナルに行くが、案内は何も出ていない。まさか運休とかしていないよなあと思い各種サイトをチェックするが特に通行止め等の案内はなかったので、まずは一安心。

今日予約している宿は駅前と聞いていたが実際はすこし離れていた。駅前を離れると富山はビックリするくらい暗い。いったんホテルにチェックインしてからコンビニにデザートと明日の朝メシを買いに行き、ホテルに戻ると隣にミニスカートのそれっぽいお姉さんが。ははーん、隣のヤロー、デリバリーしやがったな(笑) 果たしてどうでもいい前段の声が聞こえてきたので、気にはなったものの付き合いきれないので大浴場に避難することにした。風呂から戻ると声はまったく聞こえなかったのでショートコースだったようだ。やれやれ。

7月13日金曜日

   5時30分のバスに乗るために早めにホテルをチェックアウトする。空は曇天模様。残念だけど登る身になってみると、あまりカンカン照りだと帰って困るので、これくらいの雲の量のほうがいいかな。
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  2番バスターミナルには続々と登山者が集まってくる。出発前に女性の添乗員が登場し、予約者の確認をとりはじめた。予約をしているものが優先で席に座れることが出来る。予約をしておいた私は先頭の席に座ることができた。隣に座ったのは今日は薬師沢小屋まで行き、イワナ釣りを楽しむというIさんという方。話をしているうちに共通の知り合いがいることがわかる。これもご縁でしょうか。

富山駅から折立直通のバスは途中のアルペン村でトイレ休憩。が、肝心のトイレが鍵がかかっていて入ることが出来ない。バスの運転手もここうちらの施設じゃないもので、はははと苦笑。いきなりトイレ難民が発生。まだ朝早いため、開いているのはコンビニのみ。しかも2つあるトイレの一つは故障していたため、長蛇の列が発生。結局ここで出発が30分遅れる。なんともおおらかというか、なんというか。ネタをありがとう。
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折立到着し、パッキングを整えていよいよ出発。入山口はこんなかんじ。
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   慣れないストックを持ちながら登り始めるが、どうもしっくりこない。逆に疲れるような印象を受ける。後で気づいたが、急こう配の時は真ん中あたりを持ったほうが自分には適していた。いきなり実戦で試したわけだから無理もない。

ひさしぶりの登山に慣れないストックで最初からすでにバテ気味。あられちゃん看板を見た時は実は結構ヘロヘロ。お恥ずかしい。
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1870地点を超えるとニッコウキスゲの咲き誇る見通しのよい尾根が現れる。
喜びもつかの間、まだだまアップダウンがあることに少々ゲンナリする。
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ここからも登りは続くが、完全にばてたなあと実感。こういうときは水をいくら飲んでも回復しない。無理せずゆっくり歩くことに決めて歩く。今日は天気も大丈夫そうだし、どんなに遅くても13時には到着するだろうと割り切った。

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画面中央に太郎の小屋が見えてくる。意外と遠いなあというのがこの時の印象。でも実際歩いてみるとそれほどでもなかったりする。今日は曇天でよかった。晴れていたら遮蔽物が何も無いこの尾根は結構な炎天地獄。

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このベンチで大休息(;^ω^) ここからの薬師岳の姿もなかなかボリューム感があってよい。

ここからもうひと踏ん張りで太郎平到着。やったーあ。
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眼前には明日歩く雲の平の台地が左側にばっちり見える。
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このかっこい山は水晶岳。
今回絶対に行きたい山の一つ。18年前裏銀座ルートを縦走した際は雨で横を通過してしまった。あれから18年。ついに来たぜ。いや、まだ登ってないけど。
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昼メシは太郎の小屋でラーメンを頼んだ。しかし、どういうわけか食欲がわかない。腹ペコ山男と名乗っているのに、山で食欲が無かったのははじめてではなかろうか。完全な夏バテである。カシミールカレーのほうがよかったかな。すこし残してしまった。
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しばし小屋の前で休憩をしたあと、テント場に向かう。今日は薬師峠でキャンプだ。ここは水も豊富でしかも冷たい。山のキャンプはこうでなくちゃね。
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今日は食欲がいまひとつなのでスパゲティの量は少しにして胃に流し込んだ。
本当はハンバーグを載せるつもりだったが、明日に延期することにした。スパゲティの量を減らしたのでトマトペーストは不要だった。
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テントサイトからみえる黒部五郎の雄姿
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テントもすこしずつ増えていく。私のテントは左から2つ目のIBSテント。
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そして迎える夕暮れ
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今日のメンバーはみなマナーがよい。連休前に入って来ているからだろうか。日が落ちると急に静かになった。

テントの中でペットボトルランタンで明日の地図をにらめっこする。
実はラーメンを食べてからしばらくは「明日は薬師岳だけ往復して帰ろうかな」とかなり迷ったが、このころになると冷静さを取り戻していた。
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長い人生の中でたったの数時間頑張ればよいのだと、思ってみると長時間歩行もたいしたことないと思えるマインドを手にいれたのは今日バテた成果かもしれない。12時ごろ目が覚めて星を眺めた。ただただ美しい。単純なものに美しいと思える素直な感情を取り戻していくのが山に入る喜びなのかもしれない。