2020年の登山はCOVID-19 の影響で、南アルプスの主要な山小屋は営業中止、北アルプスは小屋もテント場も完全予約制など、かなり制限がかかった状況となったため、その日の体調等で幕営場所を柔軟に変更する山行スタイルを選んでいる私にはちょっと厳しい。そこで今年は日帰りできる山に行くことにした。ただし、三密を避けるため、メジャーな山は避け、マイナーな場所を選定。今回は中央アルプス南部の越百山(こすもやま)。

タイトルどおり、結論から申しますと、アクシデントに見舞われ、山頂まであと1時間のところで下山、足を引きずりながら下山、地獄の林道を一人で歩いてなんとか、車までたどり着きました。こんなことは登山人生初でしたので、反省を踏まえ、きちんと記録しておこうと思います。

8月11日火曜日。
3時半に目覚ましをセットして床に就くが、やはりクーラー無しは寝苦しい。寝たのか寝ていないのかよく分からないまま、目覚ましの音で目が覚めて準備をする。準備を終えてふと時計を見ると、なんと2時半。え?どういうこと?どうやら向かいの新聞屋さんから聞こえた電子音を目覚まし音と勘違いしたようだ。なにそれと思ってあと1時間あるから寝ようと再び布団に入ったのがそもそもの失敗。気づくと、5時(;^ω^) えええ!!!予定では3時半起床、4時発。4時半には行動開始を予定していた。そもそもこの時点で大遅刻である。顔を洗って車に乗って林道を走る。もみじ荘の看板前に車を止めて、出発したのが、6時前。1時間半のロスタイム。これが後で響くこととなる。
P8110072

最初のゲート。右側の人用のゲートをくぐって林道歩き開始。
P8110073

いきなり真っ暗なトンネルをくぐらねばならない(;^ω^) ちょっと怖いぞ、ここは。
P8110075
伊奈川ダム。
P8110076
ダム湖はエメラルドグリーン。
P8110081
本来であれば、ダム湖奥にある駐車場まで車が入ることができるが、昨年の豪雨で林道が崩壊して以来、奥に入ることは出来ない。
P8110087

林道の様子。これは当分の間復旧は困難と想定されますね。
P8110084

P8110085
駐車した場所から30分ほどで最初の分岐に到達。
P8110090
右手の林道を歩きます。ちなみにいつも思うのですが、林道に自転車置いてほしい。1000円でも借りるけどなあ。
P8110091
この先にオレンジのリュックを背負ったオジサンと親子連れが居ましたが、抜かしました。上りで出会ったのはこの方たちだけ。

噂のコスモカー。ロゴがカッコイイですね。
P8110092
ダムから1時間歩くと、登山口です。ここで入念に体操をして登ります。
P8110093

P8110094

水場までは樹林帯の急登です。風も吹いていませんので、ここは我慢のしどころですね。中央アルプス南部らしい雰囲気です。
P8110096

下のコルまで上がると次第に高山の稜線歩きの雰囲気が出てきます。
P8110099
とはいえ、ひたすら登りです。メジャーな山なら先行者がいますが、今日は誰もいません(;^ω^)
P8110102

もちろん登山届は出していますが、誰もいないのでここで足を滑らして滑落しても誰も気づかないでしょうね。単独行者のリスクを感じます。

上の水場に到達。すこし谷に下りたところに水が沸いています。花崗岩帯なので、水の味は六甲の水の味とおなじまろやかな味わいです。
P8110105

登山道は整備されていますが、随所にこんな箇所もあり注意が必要ですね。
P8110107

次第に高度を稼いできましたが、ガスも上がってきました。1週間前の予報では快晴だったのでこの日を選んだのですが、台風がその後発生するとは予想できませんでしたし、仕方ありません。
P8110108
寝不足もあり、ちょっとしんどいなと感じながら歩いていたのですが、ここでアクシデント発生。進行方向に貼りだした木の根っこに足をひっかけてしまい、前方に転倒してしまいました。とっさに左手を付いたので、顔面や体を打ち付けることはありませんでしたが、左手の親指を倒木で切ってしまいました。血がじわわと溢れてきます。

まずは、予備で持っている水筒を取り出し、水で傷口を洗い流します。水は飲むだけでなく、こういう時にも使えるということを登山を始めた19歳の時に先輩から教えてもらいましたが、初めて実践することになりました。さらに、ウェストポーチに入れているバンドエイドを貼ります。自分のために使うのはこれも初めてかも。ちなみに、いつもは登山グローブをはめているのですが、この日に限って付けていませんでした(;^ω^) また、転倒をふせごうと踏ん張ったのですが、その際に左膝の裏を伸ばしてしまいました(右足でひっかけたので)自分でも瞬間的にこれはヤバイなということは分かりました。ただ、痛みはそれほどでもないので、小屋まで歩いて様子を見ようと決め、登山を継続しました。

いったん尾根を登り切ったあと、下っていくと越百山の小屋が見えてきました。この時点で10時半。
P8110109
下りになると、膝裏が次第に痛くなり、左足が棒のようになっていくのがわかりました。小屋で荷物をおろし、休憩をしたあと、空荷にして山頂を目指すことにしました。せっかくここまで来たからね。
P8110111
が、やはり、左足は回復するどころかどんどん痛くなってきます。山頂まで約1時間。この調子なら下山は同様に1時間かかると想定。痛みが悪化すれば、下山にはさらに時間がかかることを考えると、小屋に泊まることも考えましたが、1日経ってよくなる見込みが現時点では無いこと、このまま登山を続けて下山すると、下山時刻が17時を過ぎること(樹林帯だとかなり暗くなります)もあり、遭難の危険が高まることを考え、残念無念ですが、ここはただちに下山することにしました。勇気ある撤退と自分に言い聞かせます。

安平路山方面も真っ白です。山頂に到達してもおなじように真っ白だろうと自分を言い聞かせ、なんとか無事に車でたどり着くぞ!と自分を鼓舞し、下山開始です。
P8110112
誰とも会わない登山道をひたすら下山。
元気な時は静かな山旅を楽しめますが、トラブルが発生すると心もとないことこの上なし(;^ω^) 
P8110115
笹をかきわけながら気合いで下山。
ストックを持って来て本当に良かったと思いました。しだいに左足は動かなくなり、膝も機能しなくなりました。ただ、そこにあるだけ。踏ん張りも全くきかないので、正直体が振られて転倒しそうになったことは2度や3度ではありません。
P8110120
くそー!と叫びながら、下山をしていると、谷から「きえええええええ」という叫び声が。鳥かなと思って目を向けるとなんとニホンカモシカ。こちらを見つめています。まるで、もののけ姫に登場するシシガミと対面した気分。あ、もしかしてこれ山の神様かな。気を付けて下山せよとオレに言いに来たかなと勝手に解釈。そんな私の目の前で、再び、雄たけびを上げながらカモシカは谷を下っていきました。

登山アプリで現在を確認しながら、ヘロヘロになって下山に4時間かかってしまいましたが、なんとか15時に下山出来ました。
P8110121
ここで安心といいたいところですが、ここから1時間半の地獄の林道歩きが待っています。しかも、暑い。敗残兵のように足をひきずりながら車まで歩きます。気合いと根性の林道歩きです。
P8110122

今日は下山したら、まず風呂に入ろう、何を食べようか、下山したらどんなふうに反省をまとめようかとあれこれ考えながらなんとか車にたどり着きました。必死だったので、写真は1枚も無し(;^ω^)車に乗る時は、左足を手を持ち上げないと、座ることすら出来ませんでした。マニュアル車だったらクラッチ操作が出来ないので、死亡でしたね。

というわけで、2020年初めてのアルプス登山は、アクシデントによる敗退となりましたが、学び多き山行になりました。

反省点としては

前泊の場合、宿の環境に左右されることを考慮しなかったこと(今回の場合はクーラー無し)
寝不足、二度寝、さらに寝坊をし、出発時間が遅れたこと
体力不足により、コースタイムどおりにしか歩けなかったこと
ふだん続けていたストレッチをサボっていたこともあり、体が硬くなっていたこと
下半身の筋力が不足していること(トレーニング不足)

よかった点としては
思ったよりも冷静に判断ができたこと。正直、あのまま頂上往復をしてたら、足の痛みはさらにひどくなっていたと思います。残念ですが、引き返してよかったと思います。日帰りとはいえ、ツェルト装備、非常食、水などいつもどおり対応できる装備を持っていたので、最悪下山中に動けなくなってもビバーク出来る心の準備ができたことは良かったと思います。

膝は2日経過し、ほぼ普段どおり歩けるようになってきました。ただ、同じことがアルプスの縦走中に発生したとしたら、怖いですね。テントも買い替えてまだまだ登るつもりでしたが、しばらくは六甲山あたりの低山で様子を見たいと思います。

以上、今年49歳になるオッサンの反省文です。