シーケンス制御講座

工場の設備等を制御しているシーケンス制御を勉強しましょう。

カテゴリ: 自己保持回路

例えば回路がいくつかあって、ボタンを先に押した方を優先するのか、
それとも後から押した方を優先させる場合の2つのパターンがある。

・先に押した方を優先させる場合は例えばクイズ番組で回答するときに
押すボタンはこちらになる。
一瞬でもボタンを早く押した方が優先され、後から押した方は無効になる。
これは自己保持回路を組んで、コイルのb接点を他の回路を切る条件に入れておけばよい。
以前かいたインターロック回路もこれである。

・後で押した方を優先させる場合
こちらは自己保持を入れる条件(ONボタンなど)を他の回路を切る条件にいれる。

回路の数が少ない場合は自己保持回路で書いてもよいのだが、
シーケンサーを使っているならば、デバイスデータを使ってもっと簡単にすることができる。
データは一度書けばその数値は保持されるので自己保持回路はいらなくなる。
default
あとおし

自己保持回路の応用として、ひとつのボタンでランプをON/OFFさせる回路を紹介する。

基本の自己保持回路だと入のボタンと切のボタンの2つが必要になるのだが 、
パルス命令をつかうことで ひとつのボタンで入/切をくりかえす回路をつくることができる。
 注意しなくてはいけないのは、パルス命令が必要なのでシーケンサーでなければ
この回路が組めない、という点である。
リレーシーケンスでおなじことをしたいときはオルタネイト型のボタンを使用する。
オルタネイト型とはボタンを押した状態を保持する機構のことである。
これに対し押している間だけONするボタンはモメンタリ型と呼ぶ。

以下にラダープログラム例をあげる。
ff0














丸数字はラダープログラムがM1のコイルをONさせる際に条件を判断していく
順番である。

X0をONさせて1スキャンめ
①のM0のa接点はON、②のM1のb接点はM1がONしていないのでOFF(導通)、
③のM1のa接点はOFF、④のM0のb接点はONして非導通
①②が導通するので⑤のM1のコイルがONする。

2スキャンめ
③のM1のa接点で自己保持する。M0はパルスなのでこのスキャンでは
OFFになっているので④の接点は導通になる。

ここまでがM1が自己保持してONになる動作

自己保持がきれる順序

M0がONすると④の接点が非道通になってM1の保持をきる。

文字でかくとわかりにくいが、ワンスキャン毎に分解して考えると動作が理解できるとおもう。
もし、理解できなくても形を覚えておけば使うことはできるが、回路を応用しようとおもうと
どうやって保持が入るか、また保持が切れるのか理解しておかないといけない。
この回路も自己保持の応用であるため、コイルの前に接点をいれれば保持を切ることができる。

例では一度内部リレーM1を保持させて出カY0につなげている。M1をY0におきかえても結果はおなじである。
私は一度内部リレ一を立てておくと後で動作変更や追加があった時に改造しやすいので
このように回路をくむようにしている。

この動作は専用命令を使っても実現することができる。三菱電機のシーケンサでは
FF(フリップフロップ)命令をつかう。
こちらを使ったほうが簡単に書くことができ、ステップ数も減らすことができるが、
先にあげた自己保持回路をつかった回路の方が後で応用がきくことが多いので
場面によって使いわけるようにしている。 

シーケンス回路ではタイマーを使用すると、よりこまやかな制御ができる。
たとえば、以前例にあげたワークをプッシャーでおす動作などでは
ワーク検知センサーONと同時にプッシャーが前進すると、コンベアが完全に停止して
いないのに、ワークをおしてしまうことがある。これをふせぐために
センサーがONしてからt秒後にプッシャー前進、とするとよりスムーズな
動作となる。
他によくタイマーがつかわれる例として
  • ボタンをおしてからt秒後にリレーがONする。
  • 停止ボタンをおしてからt秒後にリレーをきる。
  • 熱風をふきだすブロワーを停止する際に、ヒーターOFFからt分後にブロワーを停止する。
などがある。
回路サンプル↓
 img013



































自分でタイマーの時間を任意に調整したい場合はアナログタイマーをくみあわせるとよい。


※わかりにくい点、質問、とりあげてほしいテーマがあればコメントしてください。

自己保持回路の基本形として2種類ある。
なにが違うかというと、保持する条件が先か、保持をきる条件が先か、というところである。 
保持の条件を優先させる回路は自己保持回路の基本としてあげた形であり、
コイルの手前の部分(私はクビとよんでいる)に接点をいれる。きる条件X11が入力されると
コイルへの電流はかならず遮断される形である。
例をあげるとX10の"自己保持 入"ボタンとX11:自己保持 切のボタンを同時におした場合、
M20のリレーはONしない。
自己保持










非常停止や機械のオーバーランなどはかならずこの部分に入れなければならない。



この回路をすこし形をかえて、保持をきる条件を優先させる回路にする。
自己保持の接点のとなりに保持を切る接点をいれる。
X10の"自己保持 入"ボタンとX11:自己保持 切のボタンを同時におした場合、
M20はONする。
電動機を寸動でうごかしたいときに、この回路をつかうと切ボタンをおしながら、
入ボタンをおすとM20のとなりにX11の接点があるため、自己保持はしないが
M20には通電するため、入ボタンをおしている間だけ電動機が動く。
自己保持





また、機械が原位置にあるときのみ始動をうけつけるようにしたいばあいは、
始動PBのとなりに原位置の条件をいれる。このときに入れる位置に気をつけないと
機械が動き出したとたんに自己保持がきれてしまうので、どこまで自己保持で
くくればよいか考えなければいけない。

すこしの違いではあるが、こまかい要求にこたえていくには、形をかえることで
動作がかわることを知っておかなければいけない。

次回はタイマーの使い方を説明する。

シーケンス回路の基本として「自己保持回路」の説明をする。
自己保持回路は簡単にいうと、「何らかの動作を記憶する」回路である。
「何らかの動作」とは、たとえば「モーターを始動させるためにボタンをおした」
だとか「センサがONした」などの何か「動作のきっかけになるもの」である。

たとえば、ボタンをおしてモーターが回転する回路を作成するとする。
理科の実験でおこなった、スイッチをおすとランプが点灯するような回路を
イメージしてほしい。
押しボタンをおしているあいだだけ、スイッチのコイルが励磁されて
スイッチがONする。この場合は「始動ボタンをおす」が「動作のきっかけに
なるもの」である。
これをボタンをおしたあと、指をはなしてもモーターがまわりつづける
回路に変更する。
マグネットスイッチのa接点を起動ボタンと並列に接続すると、
ボタンから指をはなしても、マグネットスイッチの接点から電圧がかかるため
マグネットスイッチはONしつづける。マグネットスイッチが自分の接点で
自分のコイルに電流をながしてON状態を保持するわけである。
この状態をスイッチが「自己保持している」、と呼ぶ。

しかし、このままではモーターを停止させることができない。
そこで、自己保持回路の登場である。以下の図を参照。
img001


上の図はシーケンス図、下の図は実態配線図である。
現場ではシーケンス図のみ提示され、実態配線図は提示されないので、
シーケンス図をみながら配線したり、動作を想像することになる。
各要素は以下に説明する。(記号の説明はこちら)
PB1:起動ボタン
PB2:停止ボタン
MS1:マグネットスイッチ
THR1:サーマルリレー

PB1とPB2のあいだの線には 「1」とかいてある。これは「線番」とよばれ、
配線をするときにわかりやすくするためのものである。

自己保持GIF

動作の説明
1.
PB1をおすとMS1のコイルが励磁される。線番2と3につながっているのが
コイルである。コイルが励磁されるとMS1のa接点がONになる。
この状態で電流はPB1とMS1のa接点の両方にながれている。
PB1から指をはなしてもMS1のa接点から電流がながれつづけるため、
MS1はONしたままである。

2.
PB2をおすとコイルへの電流は遮断され、自己保持がきれる。
また、モーターが過負荷になるとTHR1のサーマルリレーがONし
自己保持が切れる。このように電動機を駆動させる場合には
安全回路を組み込むことが必要である。

自己保持回路は順序制御するときにも、動作を記憶するためにつかわれる。

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