第204回 桐野夏生 『猿の見る夢』愛すべき男の人生

第204回 桐野夏生 『猿の見る夢』
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内容
これまでで一番愛おしい男を描いた――桐野夏生

自分はかなりのクラスに属する人間だ。 
大手一流銀行の出身、出向先では常務の席も見えてきた。実家には二百坪のお屋敷があり、十年来の愛人もいる。 
そんな俺の人生の歪(ひず)みは、社長のセクハラ問題と、あの女の出現から始まった――。 

還暦、定年、老後――終わらない男”の姿を、現代社会を活写し続ける著者が衝撃的に描き切る! 

週刊現代読者の圧倒的支持を得た人気連載が、ついに書籍化!




ーこれまでで一番愛おしい男を描いたー
桐野夏生


という作者のコメントを聞いていたのでどんな男が主人公かと読み進めると

女好きで、
傲岸不遜で、
小心者で、
弱いものには強く出る、
差別主義者、

そんな60歳手前の会社役員……

こんな男を愛おしいと思えるか!!??

と思いましたが、
何故かちょっとわからんでもない感じになったので桐野作品は不思議。


社長のセクハラ疑惑から
少しずつ狂い始める男の人生が、

メンへラ愛人
怪しい占い師
美人で性悪な秘書、
不仲の妹夫婦、
母の死
など、

いろんなことに翻弄され終わっていく様を、
見事に描いた作品です。


なにが凄いって、愛人や秘書含め、大体アラフォーから60歳くらいの立派な社会的地位の大人達の話なのが斬新。

年取っても大体こんな感じかと、失望やら安心やらいろいろ感じる作品でした。

とりあえず今回の作品も面白いです。



第203回 宮内悠介 『月と太陽の盤  碁盤師・吉井利仙の事件簿』SF界の奇才が描く本格ミステリ

第203回 宮内悠介『月と太陽の盤』

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内容
放浪の碁盤師・吉井利仙と、彼を師と慕う若き囲碁棋士・愼。ふたりが出会う入り組んだ謎の先に見える情念の闇と論理の光。囲碁をめぐる宿命に取り憑かれたような不思議な事件の数々は、ふたりに何をもたらすのか? 静かな迫力に満ちた逸品。

『盤上の夜』を読んでから追いかけているSF作家。

『月と太陽の盤』では碁盤を作る碁盤師・吉井利仙と彼を慕う少年棋士の愼(しん)が遭遇する謎や事件を描いた、本格趣向のミステリー短編集


碁の世界を扱っているので、どの作品も上品で気品溢れるものになっていて雰囲気が良いです。




SF作家として活躍する作者なので、ミステリーはどうか?

という感じで読み始めましたが、
ホームズ役の利仙、ワトスン役(自分で解決する作品もあるが)愼という配役や、

「碁盤に線を引くだけです」という水戸黄門ばりの決め台詞など

王道の本格ミステリーに仕上がっていて、本当に幅の広い作家だと感動しました。



落語家のホームズ役を擁した、
北村薫の「円紫さんと私」のシリーズにも通じるような本格ミステリーに仕上がっています。


盤に秘められた親子の悲劇『青葉の盤』、
贋作を巡る駆け引き『焔の盤』
対局を控えた棋士の殺人事件を鮮やかに愼が解決する表題作『月と太陽の盤』
など魅力溢れる作品集です。




宮内悠介ならではの作品の深さ、盤上への愛を感じる作品で作者ファン意外のミステリーファンにもオススメです。

第202回 平山夢明 『独白するユニバーサル横メルカトル』たぶん文学賞最大のアクシデント

第202回 平山夢明 『独白するユニバーサル横メルカトル』

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内容
タクシー運転手である主人に長年仕えた一冊の道路地図帖。彼が語る、主人とその息子のおぞましい所行を端正な文体で綴り、日本推理作家協会賞を受賞した表題作。学校でいじめられ、家庭では義父の暴力に晒される少女が、絶望の果てに連続殺人鬼に救いを求める「無垢の祈り」。限りなく残酷でいて、静謐な美しさを湛える、ホラー小説史に燦然と輝く奇跡の作品集。

「このミステリーがすごい!」2007年の一位を受賞した作品。


読んだらわかると思いますが、この作品が受ける賞としてはかなり攻めた選考。

平山夢明といえば鬼畜、グロで残酷なのに、何故か魅力に溢れていて、突き抜けたグロさから爽快感まで生まれてしまい、読まずにいられない作家


最初の『C10H14N2(ニコチン)と少年』は
タイトルの意味がわかったときの脱力感と馬鹿馬鹿しさが凄い。
最初から好みが別れる短編集。

このミス受賞ということで手に取ったミステリー好きは先を読んでくれないかもしれない問題作、笑


この作品や次の『Ωの聖餐』の飛び抜けた汚さ、グロさに読むのを辞めたいと思ったとしても、


表題作の『独白するユニバーサル横メルカトル』は是非読んでほしい。
ミステリーっぽさもあり、相変わらずグロいが、展開も面白い。
何よりもおそらく史上初の語り手によって伝えられる素晴らしい作品。
これを読むだけでも価値があると思った好きな短編。


短編集としては『ミサイルマン』の方が好きだったりするんですが、
この表題作が好きなのでオススメします。







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ギャラリー
  • 第204回 桐野夏生 『猿の見る夢』愛すべき男の人生
  • 第203回 宮内悠介 『月と太陽の盤  碁盤師・吉井利仙の事件簿』SF界の奇才が描く本格ミステリ
  • 第202回 平山夢明 『独白するユニバーサル横メルカトル』たぶん文学賞最大のアクシデント
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