激オシ小説レビュー・感想

2016年09月

第61回 深水黎一郎さんの『人間の尊厳と八00メートル』です。

5つの短編が収録されています。
どれも気色が違って、それでもそれぞれひきこまれるような内容です。

全体を、通してゴリゴリのミステリーってかんじではなかったのが良かったです。
どちらかというとブラックユーモア的なかんじが強いかもしれない、、


・人間の尊厳と八00メートル
表題作。バーでの果てしなくインテリな会話から始まり、難解すぎてついていけないと思いきやなぜか苦にならないところがストーリーテラーだなと。会話がキテレツすぎるから面白いのか? 気づいたらラストで尊厳達成。

・北欧二題
北欧でのお話しふたつ。個人的には一番好き。ひとつめの老城の朝はカフェオレみたいなほっこりする話。昔の外国の短編みたいで好き。
ふたつめの北限の町にても、主人公が結構キテレツでかわいい。語尾てへぺろって感じ。

・特別警戒体制
なんとなくそうなるかなとは思ったけど、犯人の動機がかわいい。基本この短編集かわいい。

・完全犯罪あるいは善人の見えない牙
タイトル長い(笑)。でもそのとおりのお話し。
内容はよく考えたらヘビーだけど、コミカル。ズッコケ犯罪記。

・蜜月旅行LUNE DE MIEL
新婚旅行のはなし。これ男のイタさ全開で読むの辛い(笑) 関係ないけど成田離婚てそういうメカニズムで生まれるのか。
嫁の豹変。
これもなんだかんだコミカル。




いやー
一気読みでした。

短編だからこそ、短編であることをフルに生かした、短編の面白さ爆発の作品だと思います。


めっちゃ面白いんで読んでみてください。


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第60回は樋口有介さんの『ピース』です。

樋口有介さんは好きな好きな作家さんのひとりで、特に魅力的な登場人物がお気に入りです。

今回もバーのラザロの人達や新聞記者、刑事など癖がある人たちがそれぞれの思いで行動するストーリーには楽しませてもらいました。


あらすじは
次々とおこるバラバラ殺人の犯人を刑事が追うという話で、その背景には20年前の事故が、、

という重い感じなんですが、

文庫版の表紙がポップすぎる!笑

青春小説みたいなイラストでギャップが、、
と思ってましたけど、

読んだあとは
そういうことね、と納得。

ストーリーの中で結構寄り道っぽいところもあって
雰囲気だすためにやってるのかなあ~と
勝手に思ってましたけど、
ラストで全てのシーンが必要なものだったんだなあ~と判明。

独特の雰囲気があって読むのが本当に楽しいです。


ラストも真相からさらなるミステリーへという感じも好きです。






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第59回は下村敦史さんの『闇に香る嘘』です。

江戸川乱歩賞受賞作です。

乱歩賞受賞作は単行本の巻末に審査員の書評が載っていて、毎回それを読むのもちょっとした楽しみになってます。

審査員の方々の書評がいつもおべっかなしの正直な意見が多くて、受賞作にも結構キツめの感想がそのまま載っているんですが、

『闇に香る嘘』に関してはおおむね好評だったようでした。(一番キツい池井戸潤氏は今回はいなかったですが笑)

タイトルだけ酷評で
もともとは『無縁の常闇に嘘は香る』から『闇に香る嘘』に、改題されています。たしかにこっちの方がいいような気もします。


審査員の好評どおりの傑作です!

あらすじ
開拓団として移住した両親の子供として満州で生まれ育った村上和久は、戦中・戦後の食糧難による栄養不足が原因で、41歳の時に光を失い盲目になった。それから数年後、満州での避難行の最中に濁流に飲まれ、もはや死んだものと諦めていた兄が中国残留孤児として日本に帰国し、再会する。中国人の養父母に育てられた兄の言動に、日本人とは違う相容れないものを感じた和久は自然と距離を置くようになり、兄は岩手の実家で母親と暮らすようになる。

和久は視覚障害が原因で妻に去られ、やがて一人娘との関係も悪化し断絶。

時が経ち、69歳になった和久は、腎臓病を患う孫娘への腎臓移植の適合検査を受けるが、数値に問題があり、移植は叶わず、和解しつつあった娘からも冷たい言葉を浴びせられる。そんな折、残留孤児支援政策の不備を訴え、国家賠償の集団訴訟を起こしていた兄から訴訟費用を無心する電話が入る。またかとうんざりする和久だったが、兄に移植の件を頼もうと岩手へ向かう。

久しぶりに母の手料理や懐かしい郷土料理を味わい、場の空気が和らいだのを見計らって、兄に移植の検査の件を伝えると、兄は言下に拒否する。せめて検査だけでもと粘るが、兄の態度は頑なだった。諦めきれない和久は、なぜ兄がそこまで頑なに移植を拒むのか理解出来ず、検査を受けると何か困ることがあるのか、兄は本当に自分と血が繋がった兄弟なのか、まさか偽残留孤児ではないかという疑問が頭をもたげてくる。兄が帰国した時、母はすぐに兄だと確信したというが、既に失明していた和久には確かめようがなかった。兄の正体を探ろうと、同じ開拓団で生活を共にしていたかつての仲間たちを訪ね、手がかりになるものがないかと当時の様子を聞くと、兄にはあるはずの火傷の痕がないことが分かる。間もなく、猜疑心に苛まされる和久の元に「本物の兄」を名乗る男から電話が入り、疑惑はますます深まっていく。時を同じくして、和久の元には差出人不明の不気味な内容の点字の俳句が連続して届くようになっていた。


結構こういう残留孤児とか全盲みたいな重めのテーマが入ってると、

知識ひけらかしすぎて読みづらい~

みたいなことありますけど、
ストーリーとしての面白さを損なうことなく、テーマへの想いを読者に伝わるのがすごいと思います。

ミステリー的な伏線とか、全盲の人間の葛藤、残留孤児の悲劇など、有栖川有栖さん風にいうと、

「絶対評価でA」

です。

激押し。




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第58回は赤井三尋さんの『翳りゆく夏』です。

江戸川乱歩賞受賞作でドラマ化作品で割りと人気な作品です。

ドラマでは前田あっちゃんが風俗嬢役で話題だったやつです。

あらすじ
「誘拐犯の娘が新聞社に内定」 週刊誌のこのスクープが、大手新聞社・東西新聞を揺り動かす。彼女に入社を辞退させないために重役たちは説得に出向き、窓際社員の梶は、社主の意向で20年前の誘拐事件を調べ直し始める。

収穫のないまま終わると思われていた再調査に、新しい事実が発覚し、封印されていた真相が明かされる。



今読んでみて、
週刊誌がどうでもいいことを大袈裟に書くのは今も昔も変わらないですね(笑)


本作は謎があって、重みのある展開や登場人物の心理描写があるというところが江戸川乱歩賞らしいなと思います。


結末は確かに

そこかー!!

っていう衝撃展開ですし、(封印された真実っていうのはちょっと違う気がしますけど)
ストーリーの中で際立つところなんですけども、

結末までの登場人物の立ち回りや活躍?が生き生きと描かれていて、スピード感もあって面白かったです。

少し重い雰囲気のミステリーを読みたいときにオススメします


乱歩賞の作品全部読んだわけではないですけどかなり上の面白さでは?






第57回は村上龍さんの『五分後の世界』です。

この小説はかなりヤバいです。

今まですごいおもしろい!
とか
感動した!
とか
そういう感情になる本はたくさんありましたけど、

『五分後の世界』は自分の世界を全力で揺さぶられるような、なんかよんでてクラクラというかグラグラというかそんな感覚になるヤバい小説やなと思いました

あらすじ

箱根でジョギングをしていたはずの小田桐はふと気がつくと、どこだか解らない場所を集団で行進していた。そこは5分のずれで現れた『もう一つの日本』だった。『もう一つの日本』は地下に建設され、人口はたった26万人に激減していたが、第二次世界大戦終結後も民族の誇りを失わず、駐留している連合軍を相手にゲリラを繰り広げていた……

いわゆるパラレルワールドにとんじゃうって話ですけど、、
五分後の世界は今自分がいる現代社会に比べて残酷な、壮絶な世界ではあるけど、

現実の世界と、五分後の世界を、わけたのはほんとうに国民や政府のたったひとつの選択

いつこうなるかこうなってしまうかわからないし、どちらが正しい国家なのかと問われると答えられない、

最後の一行、主人公の『選択』はなかなか衝撃やなと思いました。

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