2016年12月

第72回 米澤穂信『王とサーカス』傑作 ※ネタバレ有


第72回は米澤穂信さんの『王とサーカス』です。
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*第1位『このミステリーがすごい!2016年版』国内編ベスト10
*第1位〈週刊文春〉2015年ミステリーベスト10/国内部門
*第1位「ミステリが読みたい!2016年版」国内篇
*第3位『2016本格ミステリ・ベスト10』国内篇

こんな感じでものすごく評価されてる本です。


賞の数に負けず内容も凄まじく良かったです。


『さよなら妖精』の続編ということですが読んでなくても全く問題ないです。(作者も言ってます)
太刀洗がでてくるくらいで2,3回さよなら妖精の回想が少しだけ出てくるくらい。
そもそも『さよなら妖精』では語りが太刀洗じゃなかったですしね。


ミステリーで評価されてますが、
前半はほぼミステリー感はなく

謎解き

というよりは

答え探し

という感じです。

それがリアルなネパールの風景と相まって刺々していて刺さります。

後半はミステリーっぽくなりますが、
なんというか読んでいてきまずい、罪悪感に苛まれるような刺さる内容。

実際に2001年にあったネパール王族殺人事件を扱っていますが、最近なのに自分自身全く覚えていない、、
悲劇を安心できる場所から消費するのが好きというのは自分のことかと刺さる。

一方で邪な人間があるところでは凄まじく清廉で純粋というのもポイントだったかなと、

主人公太刀洗もジャーナリストとして伝えることの正義について迷うところも読みどころかなと。
どんな仕事をしてても迷うことはあると思うし、

すべて他人事じゃない、でもスケール大きい
刺さる話でした。


あらすじ

2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは? 『さよなら妖精』の出来事から10年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生をも左右するような大事件に遭遇する。2001年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクションにして、米澤ミステリの記念碑的傑作!







第71回 米澤穂信 『さよなら妖精』手の届かない場所

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第71回は米澤穂信さんの『さよなら妖精』です。

米澤さんの割と初期の作品ではありますが、物語を読ませる力がすごいです。

知らなかったんですけど米澤さんて若いんですね、、それもびっくりです。


ストーリーに派手さはなくほとんどが高校生の日常を描かれています。
その中の非日常として現れるユーゴスラビア人のマーヤと主人公たちの話が何故かどんどん読んでしまう不思議な感じ。

ちいさい謎をヒロインの太刀洗がスパッと解いたりはしますけどもミステリー感は少ないです。

結局のところ、
登場人物のセリフにもありましたが、
自分達の日常のなかで、手の届かないものに興味を持つのは嘘なんですかね、

ただそれに手を伸ばしてしまう主人公の気持ちはわかるし、そのせいでラストの衝撃に繋がってしまうのは悲しいことだなと。

そんな感じで
読みがいのある作品でした。

あらすじ
一九九一年四月。雨宿りをする一人の少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国したとき、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶の中に――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。著者の出世作となった清新なボーイ・ミーツ・ガール・ミステリ。


ボーイミーツガールミステリってどうなん?笑




第70回 貫井徳郎 『私に似た人』リアルな未来を描ききった、いやもう現実になりつつある

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第70回は貫井徳郎さんの『私に似た人』です。

一応レジスタンスと称する小規模なテロ起こる時代に生きる10人の人達の生活を描いた、連作短編小説ということですが、
少しずつリンクしながら最後のミステリー的な結末に着地するので、ひとつの長編としても読めるかなと思います。

一つ一つの物語はリンクしてますが、
ひとりひとりの物語で感じることがまた違うので、
いろんなことがずっしりとのしかかってくる一冊でした。

これからくる時代、もしかするともう始まっているかもしれない現代、
ネット上のほんの少しの希薄なつながりだけでできる組織犯罪、
人間同士つながりが希薄なせいで起こってしまう悲劇、


これからの社会について考えさせられる
深い小説でした。


欧州で起こるテロはこれと変わらないかもしれない。

<あらすじ>
小規模なテロが頻発するようになった日本。 
ひとつひとつの事件は単なる無差別殺人のようだが、 
実行犯たちは一様に、 
自らの命をなげうって冷たい社会に抵抗する 
《レジスタント》と称していた。 
彼らはいわゆる貧困層に属しており、 
職場や地域に居場所を見つけられないという 
共通点が見出せるものの、実生活における接点はなく、 
特定の組織が関与している形跡もなかった。 
いつしか人々は、犯行の方法が稚拙で計画性もなく、 
その規模も小さいことから、一連の事件を《小口テロ》と 
呼びはじめる――。 
テロに走る者、テロリストを追う者、実行犯を見下す者、 
テロリストを憎悪する者…… 
彼らの心象と日常のドラマを精巧に描いた、 
前人未到のエンターテインメント 







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