激オシ小説レビュー・感想

2017年07月

第98回 飛浩隆『自生の夢』
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日本小説界の怪物、飛浩隆さんの最新作?短編集です。

実は書店で見つけるまで、不勉強により名前も知らなくて、たまたま表紙がgoodだったので手に取った作品。

なのでそんなに、語れることはないんですが、
この『自生の夢』、麻薬です。


著者の想像力と言語化の、プロセスに驚嘆するに違いない傑作です。


凡人の遥か上を飛びまわる文章、それでもってなぜか親しみも感じる心地よさ。

これぞ、小説という感じです。


『海の指』気になります。


短篇だからこその魅力もあると思います。


ぜひ他の作品も読みたくなりました。

73人を言葉の力で死に追いやった稀代の殺人者が、怪物〈忌字禍(イマジカ)〉を滅ぼすために、いま召還される─── 
第41回星雲賞日本短編部門受賞作「自生の夢」他、今世紀に発表された読切短編のすべてを収録。 
最先端の想像力、五感に触れる官能性。現代SFの最高峰、10年ぶり待望の作品集。 
「この作者は怪物だ。私が神だったら、彼の本をすべて消滅させるだろう。世界の秘密を守るために。」───穂村弘 

その他の収録作品: 
◎「海の指」第46回星雲賞日本短編部門受賞 
霧が晴れたとき、海岸に面した町が〈灰洋(うみ)〉となり、異形の事物は奏でられていく。 
◎「星窓 remixed version」日本SF大賞受賞第1作
宇宙空間からぽんと切り抜いたガラス板を買ってきた。 
◎「#銀の匙」「曠野にて」「野生の詩藻」 
天才詩人アリス・ウォンの生み出したもの、遺したもの。 
◎「はるかな響き」 人類誕生以前に行われた犯罪、その結果、人類を殲滅させるに至った犯罪。






第97回 バリントン・J・ベイリー
『ゴッド・ガン』
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SF回の奇才ベイリーの名作ぞろいの短編集。

最近SFをよく読むんですが、いちばんしっくり来た作品

テーマに向かって真っ直ぐ、力強く進んでいくストーリーが心に残る作品

[収録作品] 
ゴッド・ガン 
大きな音 
地底潜艦〈インタースティス〉 
空間の海に帆をかける船 
死の船 
災厄の船 
ロモー博士の島 
ブレイン・レース 
蟹は試してみなきゃいけない 
邪悪の種子

どの作品もおもしろいですが、
個人的には
『ブレイン・レース』
がシンプルですが一生忘れられないようなインパクトとイタズラ感、奥深さがあって好きです。
ブレイン・レースって『知の闘い』とか『知能の競争』とか、本当はそんな意味らしいですが、ほんとに
"ブレイン"が"レース"してしまうところが、
ブラックなユーモアも感じてやみつきです。
日本語で考えると、

実際に
二階から目薬さそうとしてみたり、
虎の子を捕まえに虎の巣に突入する

みたいな、馬鹿馬鹿しくも興味を惹かれるストーリーです。


他の作品も
神を殺す
蟹の青春と老い
不死身
などひとつのテーマをSFの形をとって突き進んでいくなんともすがすがしい作品で好きです。


あらすじ

設計技師にして発明家のわが友人ロドリックはある夜、自分は神を殺すことができると語った……。 
マッド・サイエンティストのあるまじき発明を描いた表題作、死んだ友人の蘇生を奇妙な異星人に託した男たちが 
目の当たりにした悪夢「ブレイン・レース」、不死の異星人とその秘密を追い求める男との長きにわたる追跡劇「邪悪の種子」など、 
英国SF界の奇才ベイリーの作品群から、単行本初収録の名品全10篇を収録した傑作選。

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第96回 梓崎優 『叫びと祈り』
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初めて読んだ作家さんですが、
最近読んだ本のなかでは断トツで傑作。

世界を駆け巡るジャーナリストの斉木が登場する、連作短編集です。


舞台は砂漠、修道院、風車の町、熱帯雨林など、日本人にとって馴染みが薄いところばかり。それがこの作品を特徴づけているとおもいます。

この小説ポイントは犯人の動機が特異なところ

この動機を作り出すのはこの設定しかないという特別な舞台で繰り広げられるミステリーです。
なのでこの作品でしか味わえない部分が多く、新鮮で心に響く小説です。

通常の謎解きに加えて、叙述トリックも差し込まれていたりするので、技巧的な部分も素晴らしいんですが、
トリックや動機が明かされたことで、トリックへの感嘆以外の部分にも衝撃を受ける面白さがあります。


文体も綺麗で、それでもってまわりくどいわけではなく、ミステリーのおもしろさに加えて文学の高揚感も楽しめる作品になっています。


必読!

砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇…ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。選考委員を驚嘆させた第五回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理誕生。大型新人の鮮烈なデビュー作。








第95回 原宏一 『床下仙人』
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注目の異才、原宏一さんによる短編集。

前から気になっていた作家さんですが、初めて読んだ作品。

この本の評価はどのくらいあるか知らないんですけど、おそらく代表的な作品なんじゃないですかね?

そのくらい、なんとなくの知識でもわかる傑作。


床下仙人

てんぷら社員

戦争管理組合

派遣社長

シューシャイン・ギャング


5つに共通するキーワードは労働、働くこと

普段あまりこういう労働者にスポットを当てた小説は読まないので、どうかなーとおもってたんですが、これがまたおもしろくて瞬読。


働くことについて、不安とか、焦りとか、家族関係とか、誘惑とか、そのへんを表現しているとおもうんですが、
ユーモアがエキサイティングで、しかも面白いだけで終わらない風刺小説。
センスが抜群です。

読んでよかったなーと心の底から思いました。


あらすじ

「家の中に変な男が棲んでるのよ!」念願のマイホームに入居して早々、妻が訴えた。そんなバカな。仕事、仕事でほとんど家にいないおれにあてつけるとは!そんなある夜、洗面所で歯を磨いている男を見た。さらに、妻と子がその男と談笑している一家団欒のような光景を!注目の異才が現代ニッポンを風刺とユーモアを交えて看破する、“とんでも新奇想”小説。

第94回 多島斗志之 『追憶列車』
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追憶列車……
もうタイトルからノスタルジックないい響き。

5つの短篇が収められています。

マリア観音

預け物

追憶列車

虜囚の寺

お蝶ごろし


5つの短篇は完全に独立していて、それぞれ完成度が高い。

作者は短篇にあまり納得していないらしい、、

すごいおもしろいと思うのにな~、、

確かに長編も症例Aとかめちゃくちゃ良かったけど。


最後の『お蝶ごろし』は一番(ぶっちぎりで)長い短篇で、明治維新後の女性や落武者、博徒たちの男女のもつれや復讐を描いた傑作。結末がやるせない。
5つの短篇のなかでも割と結末がハッキリしている。

他の4篇はわりとモヤっとするタイプ
それでもなぜか気持ちいい読後感を楽しめる不思議な短篇。
『マリア観音』がなんとなく好き

多島ワールドに引き込まれて、そのまま出口が見つからないような、そんな体験をさせてもらいました。

ミステリーっぽさもあり、純文学っぽさもあり、今回は時代小説の手法もあり、戦争文学の臭いもする。
ジャンルを飛び越えた小説で、得した気分です。

【あらすじ】
第二次大戦末期にフランスからドイツへ脱出する列車で出会った日本人少年と少女の淡い恋心を描いた表題作、主婦の足下に忍び寄る謎の女を追う「マリア観音」、清水の次郎長の三人目の妻、お蝶が男女のもつれから死に至るまでを描いた「お蝶ごろし」など、魅力の五篇を収録。予想を快く裏切る、情感豊かな作品を厳選した傑作短篇集。「マリア観音」「預け物」「追憶列車」「虜囚の寺」「お蝶ごろし」収録。






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