激オシ小説レビュー・感想

2018年08月

第133回 村田沙耶香 『コンビニ人間』
_AC_SY400_



村田さんの作品を読むのは三作目


『殺人出産』→『消滅世界』→『コンビニ人間』の順で読みましたが、

だいたい主人公がエキセントリックですが、
最初の二作がなかなかSF的な設定だったのに対して、

『コンビニ人間』は舞台が所謂"普通"の日常なだけに、

村田さんが描く主人公の特異さが際立って面白かったです。



なにが凄いかって、なにが凄いのか私みたいな陳腐な脳ミソじゃわからないけど、なんとなく凄いと思わせるのが凄い

村田作品は中毒性があって、定期的にクレイジー沙耶香の思考を楽しみたいと思ってしまいます。



すこし、内容の話をすると、

常識的な思考ができない主人公が、"普通"とされている、思っている、みなされている人を描写した時に


"普通"の人ってこういう風にも見えるんだなあ…

としみじみ思いました。



読んでいると何故か怖くもあり、何故か鳥肌がたってくるような作品でした。


歴代の芥川賞作品の中でもかなりレベル高いのでは??(知らんけど笑)

第132回 小林由香 『ジャッジメント』

_AC_SY400_


デビュー作にして話題作

20XX年、被害者遺族が合法で加害者に被害内容と同じ事を刑罰として執行することができる法律が生まれた。
復讐法による刑罰か従来の法に則った刑罰かを選ぶことができ、復讐する場合は必ずしもみずからの手で行わなければならない…


そういう設定で、連作短編に近いような形で進むストーリーです。

復讐に立ち会う"応報監察官"という仕事に就く女性の視点でいくつかの復讐に関するストーリーが語られます。


題材としては目新しい訳ではないかもしれませんが、やはり普遍的なテーマなのでとても興味を持ちました。


読後の感想としては
復讐をするかしないか、良いか悪いか、という問いに対しては何とも言えないとしかいいようがないです。

刑罰がどうあれ、
凶悪な犯罪の被害者達には絶望しかないのではないかと感じました。



※軽くネタバレ

悲劇的な結末の後、
復讐の是非は永遠に議論されるだろうというような結びでしたが、

刑罰をどう議論しても大切な人が殺されれば、もはやその先には絶望しかない、
たとえ、多少立ち直ったとしても悲しみは消えない。

そんな諦めにも似た思いだけが残りました。



こんな重いことを真面目に思索させる程の筆致には、デビュー作にして感服です。


この作品はもちろん素晴らしいですが、今後の活躍にも期待大です。




あらすじ

大切な人を殺された者は言う。「復讐してやりたい」と。凶悪な事件が起きると人は言う。「同じ目にあわせてやりたい」と。犯罪が増加する一方の日本で、新しい法律が生まれた。目には目を歯には歯を―。この法律は果たして被害者とその家族を救えるのだろうか!?第33回小説推理新人賞受賞。大型新人が世に問う、衝撃のデビュー作!!


第131回 有栖川有栖 『妃は船を沈める』
_AC_SY400_


火村&アリスの作家アリスシリーズの作品です。

こちらのシリーズはどの本を読んでもそれぞれの味があり、1冊で完結するものが多いので、毎回楽しめるので好きなんです


特にミステリーにはつきもののワトソン役のアリスが他の有名な作品の人物よりもユーモアのセンスが飛び抜けていて、バカすぎないのがいいですね。


こちらの『妃は船を沈める』は巻末の西澤氏の解説にあるように、

登場人物に『妃』という漢字がつく女性が出てくるのが挑戦的でおもしろいです

タイトルに『妃』が入ってるということは、登場人物の『妃』は事件の真相や犯人に関係ないわけがないじゃん!
ネタバレじゃん!
どうするの!?

と思いながら楽しく読めました。

もともと一部の『猿の左手』を書いたあとにその後日談を思いつき書いたのが二部の『残酷な揺籠』だそうで、この2つを幕間を挟んでつなげて長編になっています。
事件自体は一部、二部とも単独で解決しますが、


また、W.W ジェイコブズの『猿の手』にヒントを得てされて火村が事件を解決するところなどユニークです。

また、火村の(作者のものでもある) 『猿の手』に対する解釈も深読みっちゃあ深読みですが面白い。
そういう風に読書をするのがプロか、と思いました。

『猿の手』は有名なホラー作品らしいですが、読んだことはなかったです。
それでももちろん楽しめます。


どちらかというと火村&アリスの作品では変化球よりの作品かもしれませんがミステリー好きには読んで発見がある作品だと思います。


あらすじ
「妃」と呼ばれ、若い男たちに囲まれ暮らしていた魅惑的な女性・妃沙子には、不幸な事件がつきまとった。友人の夫が車ごと海に転落、取り巻きの一人は射殺された。妃沙子が所有する、三つの願いをかなえてくれる猿の手は、厄災をももたらすという。事件は祈りを捧げた報いなのだろうか。哀歌の調べに乗せ、臨床犯罪学者・火村英生が背後に渦巻く「欲望」をあぶり出す。

このページのトップヘ

ーバーレイ広告は掲載できません。