激オシ小説レビュー・感想

2019年08月

第212回 白井智之 『東京結合人間』

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内容
生殖のために男女が身体を結合させ「結合人間」となる世界。結合の過程で一切嘘が吐けない「オネストマン」となった圷は、高額な報酬に惹かれ、オネストマン7人が孤島で共同生活を送るドキュメンタリー映画に参加する。しかし、道中で撮影クルーは姿を消し、孤島の住人父娘は翌朝死体で発見された。容疑者となった7人は正直者のはずだが、なぜか全員が犯行を否定し…!?特殊設定ミステリの鬼才が放つ、狂気の推理合戦開幕!

刺激が欲しければこれを読めという感じの尖りまくった本格ミステリ。

生殖のために人間同士が結合しなければならない(その方法もまたヤバい)、
異常暴力描写など、
ミステリーのトリックとかどうでもよくなるくらいの特殊で異常な設定にまず驚愕とおりこして、引きます笑

まず、この異常な設定の中でもちゃんと本格ミステリやってる二重人格的な作者がすごい。

また、嘘をつけない「オネストマン」という設定が上手く謎解きに関わってきていて面白い。


この作品は
「少女を売る」と
「正直者の島」という2つの話の二部構成的なつくりになっているんですが、

最初の「少女を売る」が、
「正直者の島」という大々的なクローズドサークルの本格ミステリの話の伏線になっています。

しかも、「少女を売る」だけでも、それなりのミステリ的オチをつけて楽しませてくれるのがまず凄いなと思いました。

長編を飽きずに読ませる構成力があり、綾辻行人や道尾秀介、有栖川有栖が激賞するのも納得です。

グロや鬼畜系が苦手な人は要注意ですが、
伏線的な「少女を売る」が終わり、
「正直者の島」(こっちがメイン)
に入ってからは大して鬼畜描写ないので大丈夫だと思います。


最近こういう特殊設定ものが本格ミステリに風穴を空け始めてる気がして楽しみです。

第211回 綾辻行人 『どんどん橋、落ちた』

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内容
ミステリ作家・綾辻行人に持ち込まれる一筋縄では解けない難事件の数々。崩落した“どんどん橋”の向こう側で、殺しはいかにして行われたのか?表題作「どんどん橋、落ちた」や、明るく平和なはずのあの一家に不幸が訪れ、悲劇的な結末に言葉を失う「伊園家の崩壊」など、五つの超難問“犯人当て”作品集。

本格ミステリの代表ともいえる綾辻行人による、本格愛に溢れた作品。

短編5つが入っていて、確かにどんでん返しではあるんですが、
いわゆる本格ミステリのルールというか暗黙の了解を忠実に守り、
時にはそれを物語の一部として利用する面白い作品集です。


ミステリ好きじゃなくても楽しめると思いますが、よく知っている人ほど楽しめると思います。
ノックスの十戒くらいは知らなかったら調べとくといいかも。


5話中4話に読者への挑戦状があります。



『どんどん橋、落ちた
謎解き後の
本格ミステリの原点にもどる
という言葉にやられたと思いながらもニヤけてしまいました。
ネタバレはなしで説明はなかなか難しいです

ミステリ作家の名前や作者本人の名前が作中に出てきて少しコミカルながら、
ロジックしっかりしていてミステリの醍醐味が味わえます。


『ぼうぼう森、燃えた』

この話のトリックは1話目を意識してさらに逆手にとった結末で好きです。
あとはっきりと書いてはないですが、
深読みすると、殺された犬の生前の言動を考て切ないです。
個人的にはこの話が一番好き。



『フェラーリは見ていた』

なるほど、短めでさくっと終わり、印象は薄め。
嘘やろ!という結末ですが、読み返すと確かにフェアか…
毎回騙されてるなー


『伊園家の崩壊』

タイトルを見て、サザエさん関係あんのかなーと思って読みはじめたら、
想像以上にサザエさんの登場人物そのままでびっくり!
結末以上にそこが衝撃でおもしろい。
初めに
「この作品はフィクションであり既存のいかなる人物・団体ともいっさい関係がない。…」
って書いてあるけどムリムリ、(笑)
ブラックで一番衝撃です。

『意外な犯人』
一番最後がシンプルです。
結末がわかるとスッキリしますね。




ミステリ好きは必読ですが、
これからの人にも本格の面白さを知ってもらうのにいいかもしれないです。



第210回 アガサ・クリスティー 『白昼の悪魔』

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内容
地中海の平和な避暑地スマグラーズ島の静寂は突如破られた。島に滞在中の美しき元女優が、何者かに殺害されたのだ。犯人が滞在客のなかにいることは間違いない。だが関係者には、いずれも鉄壁とも思えるアリバイが…難航する捜査がついに暗礁に乗り上げたとき、滞在客の中からエルキュール・ポアロが進みでた。

『オリエント急行の殺人』、『そして誰もいなくなった』、『アクロイド殺し』、『ABC殺人事件』… 
などなど数々の名作を産み出した作者ですが、
『白昼の悪魔』は知名度や派手さはないですが、名作です。


クリスティー文庫版では若竹七海が解説でこの作品への愛を語っていますが、すごく的確


些細に思える発言や描写までもが伏線になっていて、
読むたびに発見があるスルメ作品。

意識して丁寧に読めば一読でも十分すごいなと思えます。


また、舞台がリゾートホテルで、干潮になると陸から切り離されるという面白い設定。

『そして誰もいなくなった』の舞台の孤島のように切羽詰まった感じはないですが、

ゆるやかな時間が流れるなかでの人間の悪意はとても強調されるように感じました。


他の名作はもちろんですが、『白昼の悪魔』もオススメです。

あと『白昼の悪魔』(Evil under the sun)ってタイトルかっこいいですよね。

第209回 伊岡瞬 『悪寒』


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内容
大手製薬会社「誠南メディシン」に勤める藤井賢一は、会社の不祥事の責任を一方的に取らされ、東京から山形の片田舎にある関連会社「東誠薬品」に飛ばされた。それから八か月ほど経ったある夜、東京で娘・母と暮らす妻の倫子から、不可解なメールを受け取る。賢一の単身赴任中に、一体何が起きていたのか。その背景には、壮絶な真相があった。



自分や家族、友人など近しい人たちが悲劇に巻き込まれるミステリー作品を書く作家は結構いると思いますが、

その中でも伊岡瞬は抜き出た存在だと確信しました。

『代償』がかなりの人気を博したことでも分かるように多くの読者を虜にする作家。

伊岡瞬は今バズってます。



『悪寒』は前半~中盤での主人公や家族が追い込まれていく物語も引き込まれて一気読みですが、

ラストで何発もの衝撃が待っていて、
二転三転するストーリーに翻弄されますが、

それでいて読者を置いてきぼりにしない筆力があります。

その辺りが多くの読者に支持されるところなんだと思います。


『悪寒』では企業の闇から家族愛まで幅広く心に刺さる作品です。

第208回 月原渉 『首無館の殺人』

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内容
首のない死体が一つ。浮遊する首が一つ……。没落した明治の貿易商、宇江神家。 令嬢の華煉は目覚めると記憶を失っていた。家族がいて謎の使用人が現われた。館は閉されており、出入り困難な中庭があった。そして幽閉塔。濃霧たちこめる夜、異様な連続首無事件が始まる。奇妙な時間差で移動する首、不思議な琴の音、首を抱く首無死体。猟奇か怨恨か、戦慄の死体が意味するものは何か。首に秘められた目的とは。本格ミステリー。



シズカという使用人が探偵役のシリーズものの第二弾だそうです。

シリーズものだということを知らなくて読みましたが関係無く面白かったです。


確かに探偵役のシズカは魅力的なキャラクターでシリーズにはうってつけだなという印象


孤立した島、
明治時代の商家、
記憶喪失、
いわくつきの座敷牢
入れ替わりトリック、
などなど、本格ミステリーの王道といった設定がファンには垂涎モノです。


なぜ犯人は首を切り取ったか
という謎にたいしての
答えが凄く綺麗に提示されていると思うので、ミステリーとしてのクオリティが高いです。


また、ページ数もあまり多くなく、
作品世界を大体理解した中盤以降は一気読みで読みやすく、
綺麗にまとまっていると思います。



是非ネタバレなしで読んで欲しい作品です。




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