第322 山田正紀 『屍人の時代』
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内容
女優志望の緋口結衣子は、終戦直後の零戦を巡る恋愛映画の主演に選ばれる。しかし何者かによって脚本はおろか連絡先のメモまで奪われ、映画自体の企画が無かったことにされてしまう。不可解な状況の中、彼女の前に現れたのは呪師霊太郎と名乗る貧相な若者だった(「零戦の時代」より)。戦後の北海道を放浪する謎の探偵・呪師霊太郎――時を経て、なお姿を現す不思議な探偵が遭遇した4つの不可思議な事件とその解決を描く。本来発売されることの無かった幻の書籍まさかの発売。『人喰いの時代』の衝撃再び。




『神獣の時代』
『零戦の時代』
『啄木の時代』
『少年の時代』

4つの時代を切り取ったミステリー短編を収録した作品。
名探偵・呪師霊太郎のシリーズ。


全ての作品で、発想の素晴らしさが光っています。

『神獣の時代』では、
叙述トリックを使って、まさかの犯人が示されるのが驚き。

『零戦の時代』は、
過酷な戦争の時代を舞台に、ささやかな読み違い、虚実が入り交じった展開から、
探偵の呪師霊太郎の残酷な推理が光ってます。


『啄木の時代』、『少年の時代』では、
石川啄木、宮沢賢治(ネタバレですが)の人生をモチーフにした展開の発想が素晴らしい。

『少年の時代』では探偵の霊太郎が黒幕となり、暗躍するという発想の転換が斬新。


全ての短編のクオリティが高く、
トリックや謎解きだけでなく、
ストーリーの舞台や演出も素晴らしい。

オススメ連作短編です。