第130回 結城昌治 『あるフィルムの背景』
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角川文庫で刊行されていた『あるフィルムの背景』にブラックユーモア、トリッキーな作品の5編を加えて、ちくま文庫から刊行された作品です。

ちくま文庫の帯がいつも販売戦略として素晴らしいなと思いながら購入しました。

著者は不勉強で全く知らなかったんですが、おもしろそうだったので購入しましたが、想像を遥かに超える作品でした!
有名な作家さんだったんですね…


胸が痛い、苦しくてこれ以上読んでいられない…
そんな作品が一部では特に多く、短編に内容が濃く詰まった傑作ばかりです。


第一部

惨事
本当にこういう話は胸が痛いです。ラストは崖から落ちるという展開が良かった。
すいませんネタバレでした。

蝮の家
夫と妻の両方の視点から書かれているのがミソ。結末は予想できたが、逆にこの直球勝負が潔くて好き。

孤独なカラス
少年犯罪を描く作品。少年の内面を描きながら、異常さを感じさせる。
今の時代になって特に光る作品だと思います。

老後
これは…スカッと系?

私に触らないで
花言葉から着想を得たという作品。
中年の欲求不満が起こした悲劇。
同じ男として切ない…
最後の刑事が死神に思えた

みにくいアヒル
容姿の美醜は人生に大きな影響を与えるのはしょうがないかもしれないけど……残酷。

女の檻
この作品は主人公の苦悩、女の独占欲、伏線回収など展開が素晴らしく傑作だと思います。
読みながらなんとか三角関係が丸くおさまらないものかと願ってました。

あるフィルムの背景
押収したAVが妻に似ている…
というところから始まる悲劇
短編でよかった…
これ以上長いと胸が苦しすぎて読めないと思うくらい素晴らしい短編です。




第2部は雰囲気が変わってトリッキー、ブラックユーモア系

ただ最後の
温情判事
はシリアスでやりきれない秀作。



全てがベスト級の傑作短編集です!