第325回 柳広司 『はじまりの島』

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内容
1835年9月、英国海軍船ビーグル号は本国への帰途ガラパゴス諸島に立ち寄った。真水の調達に向かう船と一時離れ、島に上陸したのは艦長を含む11名。翌日、宣教師の絞殺死体が発見された。犯人は捕鯨船の船長を惨殺し逃亡したスペイン人の銛打ちなのか?若き博物学者ダーウィンが混沌の中から掬い上げたのは、異様な動機と事件の驚くべき全体像だった!本格ミステリの白眉。




『種の起源』を書き、進化論を唱えたことで、
当時の生物観、宗教観、科学観をひっくり返したチャールズ・ダーウィンが進化論を唱えるに至った旅路を、
本格ミステリーにのせて読者に届ける歴史ミステリー。


旅程で降り立った島で起こる連続殺人事件を、ダーウィンが探偵役として解決するという大胆な発想。


登場人物や起こった出来事などは、かなり忠実に守りながらも、フィクション部分は大胆に本格ミステリーの手法を取り入れた傑作。


島にまつわる忌まわしい歴史などから、
怪奇的な雰囲気も醸し出しつつ、
大河小説としてのリアリティを両立させています。


ミステリーの要素にしても、
犯人の動機や周辺人物の心情などを通して、

進化論や異文化の襲来という、今までの自分をつくり上げてきた信条をひっくり返す出来事に直面した際の、

人間の心の崩壊、防衛を上手く取り入れています。


ただ単に、歴史にミステリーを足しただけではなく、

ミステリーというフィクションを通して、
進化論や異文化の襲来という歴史の転換点を
史実、人間の心の両面から抉り出しています。



『進化論』というものが当時のキリスト教文化圏や神を崇拝する文化に住む人々に与えた衝撃、
閉じ籠った狭い生活圏でしか生きてこなかった人々が異文化に接したときの衝撃は、

科学崇拝、グローバリズムが当然の現代の人々、
特に無宗教に近い日本人には理解しがたいところも大きいですが、


この小説はミステリーとして面白いだけでなく、
当時の史実だけでなく、それに巻き込まれた人々の心情を少しだけかもしれませんが、
感じることができる稀有な小説です。


ミステリー、歴史好きは絶対読むべき一冊