島田荘司 『ネジ式ザゼツキー』
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〈内容〉

奇妙な童話、異形の死体 御手洗シリーズ本格長編!

記憶に障害を持つ男エゴン・マッカートが書いた物語。そこには、蜜柑の樹の上の国、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機などが描かれていた。御手洗潔がそのファンタジーを読んだ時、エゴンの過去と物語に隠された驚愕の真実が浮かびあがる! 圧倒的スケールと複合的な謎の傑作長編ミステリー。

御手洗潔シリーズの長編で、
王道であり、異端でもある
600ページ超の大作です。


『水晶のピラミッド』や『アトポス』のような時代や場所を問わず、
ひとつの作品の中に複数のストーリーが様々な色を見せ、ながら1つの結末に収斂していくスケール感の大きな作品や、

『暗闇坂の人喰いの木』のような怪奇色が強く、作品自体の雰囲気が強い作品が
島田荘司、御手洗シリーズ長編の醍醐味のようになってきていたと思いますが、


『ネジ式ザゼツキー』はそういった側面もありながら、
より、御手洗潔という天才的な推理力を持った人間の、

推理のプロセスや、
頭脳の内側を

より強調し、
謎解きのロジックにより焦点を当てた、
本格推理の純粋度が高い作品です。


安楽椅子探偵よろしく、

この作品の御手洗潔は、
推理において、
部屋を一歩も出ない。

場面が変わらないからこそ、推理力がより際立っていて、
本格推理ファンとしては垂涎もの。


また、部屋を一歩も出ない理由として、
手がかりが記憶喪失の男が書いた、
「タンジール蜜柑共和国への帰還」しか
手がかりが無いから、
出る必要もないというのはさすがの設定。


ちょっとしたネタバレですが、
男が書いた「タンジール蜜柑共和国への帰還」が、
ビートルズの
『Lucy in the sky with diamonds』
との奇妙な符号があったりして、

ビートルズのメロディが愉快に脳内に響きながら読めたのは楽しかった。
LSDのドラックソングですしね。


そう思っていたら、

首を切断され、
首と胴体に、ネジとネジ穴が埋め込まれた
射殺死体の事件が浮かび上がってきたり、

宗教的な悪魔信仰や、
戦争の残酷な拷問の話が出てきたりして、

島田荘司らしい雰囲気強めのストーリーも味わえてページを捲る手が止まらない。


本格ミステリファンとしては読んでおくべき一冊。