講談社文庫『13階段』

 喧嘩で人を殺し仮釈放中の青年と、犯罪者の矯正に絶望した刑務官。彼らに持ちかけられた仕事は記憶を失った死刑囚の事件の捜査を行い、冤罪を晴らすこと。タイムリミットは三ヶ月。捜査の中で二人の過去が交錯し、事件は思わぬ展開を見せることとなる……。

 平成十三(2001)年に発表された、映像関係の仕事に携わっていた著者の作家デビュー作品にして、第四十七回江戸川乱歩賞授賞作品である。

 俗に死刑執行に使用される死刑台への階段の段数が13といわれるが、その通り死刑執行の迫った、まさに13段の階段を上り始めた死刑囚の冤罪を晴らすという目的でストーリーは進行していく。その中で主人公の一人である仮釈放中の青年は一人の男を殺したという罪、そしてその罪が生み出した家族や大切な人への影響について苦しみながら。刑務官は死・罪人と隣り合わせの生業から一歩離れた自分の内なる環境に悩みを抱く。二人はそれぞれ人には言えない苦しみを、悩みを抱きながら捜査に向かう。非常に暗く、救いが見出せない。

 冒頭に描かれる青年の家族とのお互いにどのように振舞っていいか、困惑しながら接するシーン、また殺してしまった相手の父親に面会するシーンは非常に重く、心に突き刺さるシーンである。仮釈放中の人物と接する、ということは身近にはなかなか感じられない事柄ではあるが、「もし」と考えたとききっと見方は変わってくるだろう。

 重いテーマで重い暗闇のようなストーリーが展開されていく一方で、しっかりと伏線は張られており、突如発生した新たな謎と、その真相が明らかにされていく過程は崖から転げ落ちていくような衝撃の連続である。

 そして、その衝撃の果てに訪れる主人公の二人が抱えていた影の真相。どこまでも救いがない。この作品で救われた人物がいるとすれば、それはたった一人しかいないのであろう。

 推理小説としてのトリックは一つしかないが乱歩賞らしい専門的なものであり、この一点がこの作品を読者の謎解きとしての推理小説という形を拒否しているといっていい。謎を解こうとする人々を描く小説である。とはいえこの作品の魅力が失われるというわけではなく、要は読み手が推理小説に何を求めるかということになろう。