前回までの「ブローバック」
リーア国民党政治部門と軍事部門の会合にて、同じ反政府勢力ながらもイデオロギーの違いから敵対する革命評議会(CRR)への今後の対応が話された。エグゾセ旅団は、CRRに対する「軍事力を伴うネガティブ・キャンペーン」なる作戦を提案、政治部門に承認される。そして同じ頃、リーア政府軍は反政府デモ隊に対して、なんとモビルスーツによる空爆を行ったのだった。
「会議は中止、今すぐ総動員で怪我人を救護に向かえ!」
リーア国民党政治部門と軍事部門の会合にて、同じ反政府勢力ながらもイデオロギーの違いから敵対する革命評議会(CRR)への今後の対応が話された。エグゾセ旅団は、CRRに対する「軍事力を伴うネガティブ・キャンペーン」なる作戦を提案、政治部門に承認される。そして同じ頃、リーア政府軍は反政府デモ隊に対して、なんとモビルスーツによる空爆を行ったのだった。
「会議は中止、今すぐ総動員で怪我人を救護に向かえ!」
イーサンたちにそんなアナウンスが流れた。屋上から見ても相当な死傷者が出ているように見える、現場はもっと酷いのだろう。政府軍のジム・コマンドが去ってからも絶えなく鳴り続ける悲鳴、怒号がそれを予感させた。
すぐさま現場に急行しようと、階段へと向かったイーサンだったが、“忘れ物”に気づいてピタリと足を止めた。
「ミス・アルドワン!」
あまり親しくない人への呼び方だった。振り返った先にはエリーザの姿。彼女はまだ殺戮現場の観察していた。ショックを受けているのかどうかは分からないが、とにかくそんな暇はない。一人でも多くの生存者を救出するには、一刻(ひととき)も無駄に出来ない。
イーサンは屋上から急いでホテルの地下駐車場へと降りると、すぐさまロジャース達と合流した。
「ロジャース、俺達は何をすればいい?」
「近所のモスクが緊急避難場所になっていて、そこで応急手当が行われてる。そこのSUVを貸すから、歩けない怪我人をモスクまで搬送してくれ。エリーザは簡単な手当が出来る、彼女も連れてけ」
ロジャースはイーサンと一緒に来た、隣のエリーザを見て指示を出した。
「了解です」
イーサンの後ろにいたエリーザは声を出さずに、首をこくりと頷かせて返事をした。
「よし、出発するぞ」
イーサンはロジャースから鍵を貰い、SUVのアクセルを入れた。
現場へと向かう道中の車内は、これから殺戮現場へ向かうという緊張感と、悲壮感が合わさったような雰囲気だった。車道にも大勢の市民が乗り出していて、イーサンは時よりクラクションを鳴らしながら掻き分けていき、その様子はまるでモーゼの十戒のようだった。
通り過ぎていく市民を車窓から見ても、けが人を抱えて走る者や、頭から出血しながらも必死に逃げようとする者、泣き崩れて動けない者など、慌てふためく市民の姿が嫌というほど視界に入ってきた。テレビのニュースでよく見る、爆弾テロ直後の現場のような風景が、今目の前で繰り広げられていることに、イーサンも少なからず動揺していた。
「……車道は空けてくれよ」
イーサンはクラクションを鳴らしながらそう呟いた。
「本来ならもう着いてるはずなんですけどね」
イーサンに向けて言ったのか、それとも単なる独り言なのか、エリーザが口にした。
続きを読む