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1 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 01:08:34 ID:iGBeRD5g

「警部、お疲れさまです!」
長野県警のまだ若い巡査が、キビキビした動作で警戒線をずらし、現場に入れてくれた。
私を見る視線がムズカユイ。
県警本部の捜査課刑事への、過剰な憧れ。まあ、数年を経るまでもなく、組織のしがらみと不条理が、死んだ魚の目を彼に支給してくださるだろう

深夜の2時過ぎ。人はおろか暴走族すら通らない、うら寂しい国道沿いの雑木林
まといつく霧雨が、寒い以前に鬱陶しい
その、およそ人のいるはずのない空間に発生している猟犬の群れ・・・機捜だ 


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3 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 01:22:27 ID:iGBeRD5g

「きやがったのか・・・」
男たちの中心に立った、頑強な土佐犬を思わせる初老の男が
私をみるなり吐き捨てるように言った
事件発生から三日以内に地道なローラー作戦で捜査を進める機動捜査隊
本来なら、このガイシャの捜査も彼らの職分のはず、だが・・・

「そのガイシャ、ウチが探してた子で間違いなさそうですって?」
そっけなく尋ねる
「死体の損壊状態は酷いが、所持していた学生証と、珍しく無傷な顔で確認できた」
「歯形などの照合を待つまでもねぇよ、これはあんたらの管轄だ
・・・捜索願い中の少女Kだよ」
中年の刑事が吐き捨てるようにいい放つのを尻目に、私は素早く
ガイシャに歩み寄る 




5 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 01:35:06 ID:iGBeRD5g

なるほど、特徴的な上はね気味の髪形や、苦しみに歪み硬直しながらも
なお端正な顔立ちを見れば一目瞭然・・・少女Kだ
胸部から下腹部にかけての大きな裂け目からのぞく腹腔内部は
やけにがらんどう
そして、これだけの傷にも関わらず、周囲に目立つ血痕はない
これも前例通り、か・・・

「もう、県内だけで三件目だぜ!捜査課はなにやってんだよ!」
先ほどの主任らしい刑事が怒気を吐き散らした
「重症の精神病患者が、後輩の高校生人質に脱走して、まだ捕まってないらしいじゃねぇか!」
「その件に関しては、皆さん所轄の方々にもご協力願っているはずですが?」
重苦しい沈黙。お互い、やり場のない怒りと苛立ちが坩堝のようにわだかまる 




6 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 01:55:07 ID:iGBeRD5g

まあいい、見たいものは全部見た
詳しいところは鑑識と検死待ちだ。早々に退場するとしよう

覆面パトカーに乗り込むと、課の久保課長に電話
「・・・久保だ」声にいつもの迫力がない
無理もない。連続猟奇殺人が、起きてから家にもロクに帰った形跡もない
「Kで間違いなさそうっすね。脱走したFの『親しい関係者』三人目です」
「ああうん・・・やはりそうか・・・」
「しかし、長く隔離病棟に監禁されてたんでしょ、Fって子
そんな衰弱した身体、共犯者もなしにこんなに長期潜伏しながら犯行を重ねるなんて・・・」
「・・・実はな、担当医がゲロったんだが、Fは長期に渡って
介護職員の『かわいがり』を受けていたらしくてな
どうやら、下半身不随に近い惨状にあったらしい
だから、不意を突かれて殺された介護職員も、見舞いに来た後輩も
油断しきってたんだろうな
まあ、共犯者などの背後関係は引き続き捜査中だが・・・」 


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7 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 02:04:50 ID:iGBeRD5g

もう、私の耳には久保課長の声は聞こえなくなっていた
・・・Fは、半身不随の身で相手の油断を誘いながら、屈強な職員の眼球を指で抉り、縄にしたシーツで絞殺した
そして、呆然とした後輩を捕まえ、迷路のような病棟を、
他の職員に出くわすことなく車椅子で駐車場へ、さらにたまたま
鍵を刺しっぱなしの軽トラで逃走
・・・下半身不随なのに?

そのとき、私、藤田靖子の脳裏に急に沸き上がったのは一つの仮説。
突拍子もないが、すべての説明はつく。そう、動機を除いては・・・ 




8 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 02:22:03 ID:iGBeRD5g

(中略)

久保課長はすべてを語ってくれた。
結局、冷血な仕事の鬼にみえた彼女も、腹違いの妹への情をたちきることは
できなかったのだ。
捜査の前線指揮官が協力者ならば、彼女の『復讐』も容易だったわけだ
このあと課長はどうするのか・・・などという思いは一片もない
いまはただ、このあまりにも哀しい喜劇に幕を下ろすのみ

ペンションは、窓に明かりも見えず人気が感じられなかった
しかし、いる。刑事として修羅場で身につけた勘が教えてくれる
不自然に半開きの入り口ドアのうしろ・・・

ゆっくりと入り口まで歩みを進める。銃は抜かない。必要ない。
と、おもむろに屋内に飛び込み様、受け身をとって振り返る
そこには、乱れた黄色の前髪から覗く色違いの瞳でこちらを
藪にらみしながら火かき棒を構える小柄な少女の姿があった 




9 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 02:33:13 ID:iGBeRD5g

「藤田・・・刑事・・・さん?」
かすれた声で尋ねられる
「・・・ああ、池田さんのお姉さんに頼まれてきたんだ。
キャプテンを苦しめた悪いやつらは、みんな死んだ
全部、終わったんだ・・・だから、一緒に帰ろう、
・・・華菜ちゃん」
少女の華奢な身体がブルッと、震える
その拍子に、黄色のかつらが床に滑り落ちる

「キャプテンをいじめていた職員も、上埜さんを殺した奴等も、
みんなみんなキャプテンが退治してくれたんだよ
だから・・・だから、キャプテンも病院にもどって休まなきゃ
華菜ちゃんも、お家に帰ろう?」 




10 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 02:45:23 ID:iGBeRD5g

華菜は、静かにすすり泣きはじめた
手から鈍器が滑り落ちる。私は、警戒感を与えぬよう、ゆっくりと彼女をリビングの椅子に導き、腰かけさせる
その姿を、常に視界の端に置きながら、ペンション内を素早く物色する
・・・探すまでもなく、『彼女』は、そこにいた
1階奥の寝室、清潔なベットの上に横たわる、なかばミイラ化した彼女が

『彼女』をシーツと毛布で優しく包むと、華菜とふたりかがりで
パトカーの後部座席に寝かせることにした
華菜は助手席。手錠はかけない。完全に放心状態の華菜は、
たとえ銃をてにしていようとも、もはや人を傷つけることはあるまい
そして、警察署へと走り出した車内で、華菜は、ポツリポツリと語りだした 




11 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 02:58:24 ID:iGBeRD5g

華菜は、優しい後輩だった
極度のパラノイアと精神分裂に苦しみ、自分の愛してやまない人
との間を阻害する恋敵たちへの呪詛を黙って聞き続ける日々
その内容は、日増しに性的に嗜虐的に捻まがっていく
そしてある日気づいてしまう。敬愛する先輩の語る嗜虐妄想は、
現実に先輩が強要されている虐待の反射なのだと

発作的に虐待者の介護職員を殺害した華菜は、警察官の姉を介し
勝手知ったる刑務所のような病棟を、先輩とともに抜け出し、
鍵を刺しっぱなしであることを知っていた病院の車でこのペンションまで逃げてきたのだ 




14 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 03:12:01 ID:iGBeRD5g

当初は、気持ちを落ち着かせてから自首するつもりだった
課長にも、穏便にことを済ましたい思惑があったのだろう

だが、不幸にも、Fの恋慕する少女が、同級生の男子の衝動的犯行で殺害されてしまったのだ
犯人は逃亡後、自殺。無理心中だったのかもしれない
この事件が、Fと、心理的共犯状態に陥っていた華菜の精神を最終的に崩壊させた
Fは、華菜が目を離した隙に極度のストレスによる心臓発作で急死
華菜が駆けつけてきたときには、『うえのさんを殺した犯人たち』
への呪詛と殺害計画のビッシリ書き込まれた紙が死体のまわりに
散乱していたという 


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15 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 03:25:10 ID:iGBeRD5g

「その時、キャップの声が聞こえたんだし!」
ぽつりぽつりと話していた華菜が、急に声を張り上げた
「華菜のせいで、うえのさんの復讐ができなくなった。
だから、今度は華菜は、私になって復讐をなしとげなければならない」と
低く聞き取りにくい声で、しかし途切れることなく続く声に
導かれるまま、華菜は、無警戒の罪のない少女たちを殺めた

「・・・ほんとは、『うえのさん』を殺した悪いやつは残ってる。
でも、キャップは、もう藤田さんが来てくれたから華菜に華菜の
身体を返してあげるよって」
「そう、そうね・・・あとは警察の仕事だから、華菜はとりあえずお休み。
警察署についたら起こすからさ」
「うん、そうするし・・・妹たちに会いたいなあ」
そうつぶやくと、華菜は猫のように、身体を丸めると、すぐに寝息をたてはじめた 




16 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 03:32:57 ID:iGBeRD5g

ようやく終わった・・・いや、まだひとふんばり
些細な雑務をこなして、この残忍な事件ともおさらばだ
とにかく早く、県警本部へ
藤田はアクセルにかけた脚に、心持ち重心を移した
あと、ほんの一仕事・・・

しかし、彼女は気づいていただろうか
彼女の運転するパトカーは、警察署どころ県境をとうに越え、
関西地方に差し掛かりつつあることに。
そして後部座席の彼女は、静かに、満足げなうめき声を漏らした

おしまい 




18 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 03:53:48 ID:G2H/nTms

死んでてもオチになってる… 




21 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 09:38:31 ID:gTj8qoL.

ついに怨霊に進化したキャップ 




22 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 10:28:51 ID:SqHFY5pA

沙粧妙子? 




23 :名前なんか必要ねぇんだよ!:2014/11/14(金) 10:37:18 ID:iGBeRD5g

>>22
正解です 






http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20196/1415894914/







元ネタを調べて見たら柴田理恵さんや佐野史郎さん香取慎吾さんが出演されていたそうです






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