気の向くままに小説を書いています。 マニアック派ホラー、ミステリなど。実験小説『クズ家』不定期連載中。





閲覧いただきありがとうございます。


ホラー短篇小説を中心に文章を書いています。他、ミステリなど。

サイトのおおまかな作風の雰囲気を掴んでいただくには、「にごり」または「冀望」を一読していただくのが早いかと思います。

基本的に希望ある物語は描きません。どうぞ纏わるような闇をお愉しみください。

猶、すべての作品はフィクションであり、作品の無断転載を一切禁止しています。
感想などありましたらお気軽に。色々と拙い所はありますが、よろしくお願い致します。


アーカイブがごちゃごちゃしているので、〈
目次〉を用意しています。大体の作品はそこから飛べます。どうぞご利用ください。







🔪ホラー

 管理人の主力です。
 一部に強い残酷描写を含みます。苦手な方はご遠慮ください。



🔪ミステリ

 ホラーに分類するか迷ったものは、こちらにカテゴライズしています。



🔪ちょっと猟奇的な一家とその飼い猫の記録。 /連載中

 ブラックコメディ。たまに特別篇が登場します。



🔪その他

 幻想を紡ぎます。








……書いてる人……

アイコンb
悪夢を愉しんでいただこうと色々試行錯誤していますが、如何せんすべては夢幻なもので、何がどうなっているのかいないのか、それすらよくわかっていません。
密かに某ミステリ新人賞選考通過歴などありますが、特に何もできない人間です。
最近ではサンシャイン池崎の「イエェェェイ!」がどうにも耳から離れないでいます。









b









『犬』

 
         9


『記憶』

     


『城』

   


『ベルの音が…』

 


『にごり』

     


『いらないもの』(非公開)

    



『削除してよろしいですか

   



『よじれる』(記念小説)




『仔虫奇譚』

     



『におい』

 


『魅惑のパスタ』(記念小説)




『いびつな…』

       


『譫妄』

1


『恐怖症』

      


『冀望』




違和感』




『滅裂』

     


『幻想映画館』




『盲目の』


 


『グルーミー・マム』

 


『夢想』





c



『霧の街』

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another 
 
 


い家』

第一の場所
       

決裂の場所
  


d










S病棟の怪(実話怪談)
 
 
閲覧いただきありがとうございます。

エログロ、ナンセンスホラー作品になります。
ご理解のある方のみ、閲覧下さるようお願い致します。






夢想




 

 

 

p.6

 

 ………

 ……はじめて……を覚えたのは、十九歳の時でした。

 ひとの顔やものを見るのが厭なので、ずっと目は瞑りっ放しでしたが、そのためか、余計に自分の唇に神経を遣ることができました。

 舌を入れられるのも、歯列をその生温かく湿ったもので擦(なぞ)られるのも、気持ちが悪くて仕方ありません。ただ、唇を、唇で包み込まれるのが、ぱっくりと食まれるのが、好きなんです。

 こちらからは、何もしません。ただ、受け身になって食まれるのが、好きなんです。

 さらには同時に、鼻腔まで塞がれると、堪りません。あの何とも言えぬ、生を支配される感覚に、ぐらぐら目眩すら覚えます。

 あれほど強烈な眩瞑を覚えたのは、いつだったでしょうか。

 冷たく簡易なベッドに、四肢を拘束されることに抵抗しなかった様子が、より一層相手を煽ったことは、知っていました。それでもこちらは、すべてを目に映すのが厭なもので、震える瞼を閉じ切ったままでいましたが。

 汗ばんだ掌で体中の皮膚を撫で廻されるのも、熱い唇を押し当てられるのも、すべてが虚しく、徒爾に感じられました。ついには、それが性器の直接的な刺激へと変わっても。

 冷たく鋭利なものを唇に当てられた時、あっ、と、はじめて声が漏れました。

 柔く表面の皮膚を切り付けられた時、湯が沸点に達するかのような激しい昂揚に、身悶えしました。

 血の滲む傷口に吸い付かれて、むず痒いような痛みとともに視界が白み、呆気なく達しました。

 突然のことでした。完全に、気が緩んでいました。相手はいつになく激しい調子で、愛と軽蔑の言葉を口遊むと、力尽くで、こちらの瞼を開こうとしました。

 自分の顔を、その目で見て欲しい。いま、おまえを、すべてを支配しているのが、誰なのかを。そんなことを、ほざきながら。

 思わず、笑い出していました。

 駄目。駄目だ。

この人は。こいつも。何も、わかってない。

厭だ。厭だったのに。四肢の使えぬこの状況で、一体どうやって抵抗ができるのか?

どうして、どいつもこいつも、見たくもない現実を、こうやって、見せようとするのか?

 どいつもこいつも、何も、わかっていない。目を開けろ、と、その言葉が吐き出された瞬間に、すべてが耐え難い嫌悪に変わることなど。

 そうでなければ、まだ、もう少し、この状況を愉しんでいられたのに。

 微睡みのような幻想に、浸っていられたのに。……

 

 

p.3

 

 ……

 飛び散る鮮血が、己に降り掛かるのを、止める術はありませんでした。

 意図的に、唇の肉を切り取るのは、避けました。

 はじめにズタズタに切り裂いた唇以外の顔のパーツは、すでに原形がなくなり、表面の肉は赤くぼこぼこに盛り上がり、見た目はまるで、マグロのなめろうのような有様でした。

 しかし、驚くべきは、その下半身でした。

 体は、丁寧に、ベッドに横たえてありました。服の上から、それは見た目にも盛り上がっている様子で、尿とは違う液体をじっとり滲ませていました。

 堪らなくなって、その上に跨りながら、顔に唯一残された赤い唇に吸い付くと、火照ったように熱を含んだ舌が中からにゅうっと出てきて、同じく火照る唇を、舐め上げてきました。

 そうして興奮したように、顔と同じように傷だらけの掌が、尻の柔肉を探り当て、その奥に隠された卑穴に、指を潜り込ませてきました。

 指先自体に滲み出る血液に、乾き切ったその中も、すぐにぬかるんできました。心地よさはありませんでしたが、すっかり身を預けていると、自らの内臓から噴き出す血に咳込みながら、相手が何かを囁きました。

 挿れたい。

 支配、させて。

 ………。

 もう、嫌悪は、沸き上がって来ませんでした。ぼうっとする頭で頷き、血塗れのナイフを床に転がすと、ゆっくりと微睡みが戻って、……。……

 

 

p.7

 

 ……

 …………何も、見えない。

 ……視界を塞がれているのか。

 唇に、何か生温かい飛沫が付着していることに気付き、舐めるとわずかに苦い鉄の味がした。

 周囲に漂う噎せ返るような血と精液の臭いに、ゆっくりと昂揚が戻って来た。

大丈夫……いまなら、何も怖くはない。

 この暗闇なら、すべての幻想が幻想でなくても、どうということもない。

 手探りに、目の前に横たわる体の、まだ熱の治まらぬ昂りに触れると、とろりと何かの液体を溢れさせた。

 いつからか左手に握っている、冷たく鋭利な物に意識を取られたのは、一瞬だった。

 ……そうだ、いまのうちに。そんな考えが、頭を過る。

 この瞼が開かぬうちに。幻想でない幻想など、すべて書き換えてしまえばいい。

 なぜ、いままで気付かなかったのだろう?

 不意に、笑いが込み上げてきた。ぞくぞくと、戦慄にも似た……が押し寄せ、……

 

 

p.2

 

 ……

 ……その脹らみから、白い液が迸ると同時に、熱い吐息が、吐き出されました。

 汗と唾液に濡れた唇が近づいて来て、閉じゆく目元に触れました。

 広がる闇にゆっくりと嫌悪が薄れ、心地良い微睡みが、戻って来ました。現実の中にいるという現実感は薄れ、ただ支配されるという幻想が、戻って来ました。

 瞼を閉じたまま、唇をせがむと、すぐに、柔く温かいものが、唇を食んで来ました。

 けれど、痙攣する瞼は、意思に逆らい、びくびく、勝手に開き始め、

 コントロールが効かず、暴れ出した体を、

押さえ付けられ、縛られ、

 乾いてひび割れ、いびつに歪んだ唇、

黄ばみ充血したような眼球、

毛穴の開き切った赤みの差した肌、

しらない。

 違う。

 ちがう

 誰?

 ちがう。

 知らない。こんな人間は。

 ああ たえられない

 たえられない 幻想でない幻想など

 

 

 

「………発見された件のノートですが、全容は日記形式に近く、破損ページを合わせても計八ページ分ほどの文章量となっています。ページ番号は文章と同じく手書きで書かれており、すべてばらばらの順序にナンバーが振られていますが、それが意図的なものなのかどうかは、どうにも解っていません。また内容に関してですが、恐らくは完全な創作であると思われます。というのも、話に出て来る〈主人公〉とは、即ち〈書き手〉であり、そこに該当するような書き手は、現実に存在していません。そもそもこの主人公が、女性なのか男性なのか把握することすら困難であり、中の〈微睡みのような幻想〉という文章のとおり、すべては作者の妄想の域を超えず、……」

「……。……フフ」

「………何か?」

「ううん。いや」

 アパートの、殺風景な部屋の一室。

 今は綺麗に片付いているが、染み付いた錆びた鉄の臭いに囲まれ、眉を顰め鼻を曲げながら、淡々と報告書を読み上げる捜査官の姿に、思わず笑いを溢すと、怪訝そうな目がこちらを見た。

「一ページ目の内容は?」

「……わかっていません。気に入らなかったのでしょう、恐らくは事前に、作者により破かれたものと見られます」

「ふうん…。しかし……こりゃあ文才無ねえな。どこぞの三文エロ小説にしちゃあ、文章は統一性がなくぶつ切れ、ページ番号もバラバラ。内容もぐちゃドロの支離滅裂と来る…」

「…そもそもが、他者に読ませる為に書いたものではないと思われます。メモ書き……殴り書きのような筆跡が、随所に見受けられますので」

「単なる妄想日記ねえ…。にしちゃあ、随分……」

「…?はい」

「その、作中の、顔をズタズタに切り裂かれた男ってやつ。……見つかった死体の有様そのままじゃねえか」

 言うと、益々顔を顰めながら、捜査官の男は言った。

「……ええ。ただ、作中と大きく違っているのは……例の顔のない死体こそが、この日記の作者であるということ――」

「なぜ、そうだと判る?」

「筆跡鑑定の結果です」

「フウン。…つまり単純に考えると、日記の主人公は男ってことだな。……フン、現実ってやつは、こうやってすぐに幻想を打ち壊しやがる」

(続く)