オリジナルの小説(短篇)を載せています。 マニアック派ホラー、ミステリなど。実験小説『ちょっと猟奇的な一家とその飼い猫の記録』不定期連載中。





閲覧いただきありがとうございます。

気の向くままに文章を書いています。

いろいろ書きますが、ホラーが主流となります。あしからず。

アーカイブがごちゃごちゃしているので、{
目次}を用意しています。大体の作品はそこから飛べます。どうぞご利用ください。


*作品の無断転載を一切禁止しています。







○ホラー

 管理人の主力です。
 一部にマニアック要素を含みます。苦手な方はご注意ください。



○ミステリ

 ホラーに分類するか迷ったものは、こちらにカテゴライズしています。



○ちょっと猟奇的な一家とその飼い猫の記録。 /連載中

 基本はコメディ。たまに特別篇が登場します。



○その他

 幻想を紡ぎます。


b









『犬』

 
         9


『記憶』

     


『城』

   


『ベルの音が…』

 


『にごり』

     


『いらないもの』

    


『忌祭』

      


『削除してよろしいですか

   


『よじれる』(記念小説)




『仔虫奇譚』

     



『におい』

 


『錯綜』

   


『魅惑のパスタ』(記念小説)




『いびつな…』

       


『譫妄』

1


『アスファルト、或いは…』(公開停止中)

     


『恐怖症』

      


『冀望』




違和感』




『滅裂』

     


『幻想映画館』




『盲目の』


 


『グルーミー・マム』

 



c



『霧の街』



『怖い家』

第一の場所
       

決裂の場所
  


d










S病棟の怪(実話怪談)
 
 


*残酷な描写を含みます。ご了承ください。



グルーミー・マム -2






「……クソ。そもそも、なんで、入って来れたんだよ…」

「……え…?」

 どことなく切羽詰まったような、蒼白な貌が、こちらに向けられた。

 ……ぴちょん。

「ここはいつだって閉ざされてる。出られないし、入れない。入れないんだ、誰だって。それなのに――」

「な、何言ってるんだ…?多分、鍵が…」

「見てみろよ。鍵なんか、最初から掛かってない」

 …ぴちょん。

 闇の中を、振り返っていた。

 近くで、音がしたような気がした。器から零れ出たうどんが、床の表面に当たって跳ねるような……。

 スマホのライトを音の方へ翳すと、光の中に、ちらりと何かぬらぬらした赤い物体が映った。

 ぴちょん…。

 蒼白い、人の足のようなものが見えた。

 その白い腿に、表面が爛れたような、どす黒い胃袋のようなものが垂れ下がっていた。そこから繋がっている小腸のような細長い器官が、ぽたぽたと赤い液体を滴らせ、それが床に当たって、ぴちょん、と音を立てた。

 悲鳴を呑み込んでいた。己の鼓動が激しくなってゆく。

友人の顔を見ていた。この異様な空間の中で、その唇が、引き攣ったような笑みを浮かべていることに気付き、新たな恐怖を覚えた。

 うっかりスマホを滑り落としてしまうと、加減で灯りが落ち、周囲に纏わり付くような闇が戻って来た。

 慌ててしゃがみ込み、探そうと腕を伸ばすと、何かべったりしたものが指の腹に付いた。汗ばんだ指先を擦り合わせると、剥がれた皮膚のようなぶにょぶにょした触感が伝わってきた。

(……な…何だよ、これ……)

 おい…と、少し離れた所から声を掛けられた。

 冷たくジットリ湿った掌に、腕を掴まれる。動揺しながら立ち上がると、すぐ傍に友人の顔が迫ったことを気配で感じた。

「……おい……手…濡れて……」

「……手…?」

 あらぬ方向から友人の声がしたことに、ぎょっとする。

 目を凝らすが、まだ暗闇に慣れぬ瞳には何も映らない。

ずる…、と、何かを引き摺るような微かな物音がした。己の口から心臓が飛び出しそうなほどに、動悸は激しくなっていた。

「……手、離して…くれ…」

「……どうした…?」

「…離せよ……」

 身を捩ると、湿った厭な感触を残して、それはずり落ちた。

 ようやく、目が闇に慣れて来た。掴まれていた部分を見ると、泡立った赤黒い液体が付着していた。さらには、生肉が腐ったような異臭が、そこから漂って来ることに気付いた。

 見ると、数歩離れた所に、友人はじっと佇んでいた。表情はわからない。しかし、この得体の知れぬ異変に、特に動揺している様子は感じられない。

苦い貌を隠せぬまま、縋るような視線を送ると、ゆっくりと友人は自分の方へ近づいて来た。至近距離まで近づくと、ようやくぼんやりと表情が見えるようになった。いままで暗闇に隠れてまったく見えなかったが、その顔や、服から覗く体のあちこちに、鬱血した痣のような痕がへばりついていた。

「…ど…どうしたんだよ、その痣?――」

「……うん?………ああ…。こんなの、べつに今に始まったことじゃない…。それより……まだ…怒ってる…のかもな……」

「……は…?」

「……いつからかな……俺のせいじゃない…と思ってるんだけど………。怒ってるよなあ……俺のせいなのかなあ……」

「…な……何を……言ってるんだ……?」

「……ふふ……。いや…べつに……。…フフッ…フ……」

 ぞっとしていた。この闇の中でふらふらと笑い出した、友人の姿に。

「…わ……悪いけどさ、おれ、帰るよ……」

 笑い声は、止まない。

 唐突に、ぼちょ、と水風船が落ちたような音がしたと同時に、足元に何か弾力のあるものが当たった。

 何度目か、ぎょっとしていると、歪な赤黒い袋が、視界に飛び込んできた。

「え……な……なんだろ……何か…ヒトの胃袋…みたいな……」

 ぴたりと、笑いが止んだ。

「…ああ。胃袋……なんだろ」

 あまりにも淡々とした相槌に、耳を疑う。

 その表情もまた、淡々としていた。

「…まさか……な……なんで…そんなものが……」

「……そりゃ…あの人…中身がさ……どんどん腐って来てるから……崩れやすくなってるんだよ、色々……」

「…あの人……?」

「俺の母さんなんだよ、あの人」

 友人の足が、ぶちゅりと、その赤黒い物体を踏み潰した。

 赤と黄土色の混ざったドロドロした液体が、中から飛び出してきた。続いて、鼻をつんざくような腐臭……。

 苦い物が体の奥から込み上げて来そうになって、思わず口を掌で覆っていた。

「…あの人さあ……」

どこか自嘲的な口調で、友人は言った。「この前、目玉も爛れ落ちちゃってさあ……。多分、何も見えてないよ、あの人…」

(続く)
お願い
{はじめに}をご一読ください。
Profile
author: 古石

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いろいろなものを書きます。
ホラーが主力。