オリジナルの小説(短篇)を載せています。 マニアック派ホラー、ミステリなど。実験小説『ちょっと猟奇的な一家とその飼い猫の記録』不定期連載中。





閲覧いただきありがとうございます。

気まぐれに小説(短篇)を載せています。

いろいろ書きますが、ホラーが主流となります。あしからず。

アーカイブがごちゃごちゃしているので、{
目次}を用意しています。大体の作品はそこから飛べます。どうぞご利用ください。


*作品の無断転載を一切禁止しています。







○ホラー

 管理人の主力です。
 一部にマニアック要素を含みます。苦手な方はご注意ください。



○ミステリ

 ホラーに分類するか迷ったものは、こちらにカテゴライズしています。



○ちょっと猟奇的な一家とその飼い猫の記録。 /連載中

 基本はコメディ。たまに特別篇が登場します。



○その他

 幻想を紡ぎます。


b









『犬』

 
         9


『記憶』

     


『城』

   


『ベルの音が…』

 


『にごり』

     


『いらないもの』

    


『忌祭』

      


『削除してよろしいですか?』

   


『よじれる』(記念小説)




『仔虫奇譚』

     



『におい』

 


『錯綜』

   


『魅惑のパスタ』(記念小説)




『いびつな…』

       


『譫妄』

1


『アスファルト、或いは…』

     


『恐怖症』

   


『冀望』




c



『霧の街』

      


『怖い家』

第一の場所
       

決裂の場所
 


d









閲覧いただきありがとうございます。


作品について、少しだけ。
ええと、完全に公開を見送っていた作品になります。笑

当作品は、「怖い家」の第二部に当たるお話になります。
もともと「怖い家」は、幾つかの章で連なる中篇~長篇作品として構成してあり、
いまさらながらに、以前までのお話は序章篇ということになります。


というわけで、今回からようやく本篇スタートです。
少し事情があり、どこまでアップできるかわかりませんが、今少しお付き合いいただければ幸いです。






決裂の場所






 まるで地震が来たような喧噪に、伏木京樂は慌てて目を覚ました。

 見渡すと409号室の床の上は、コンビニ弁当の食べかすやら何かの資料やらゴミやらで散乱していた。が、これは何ら変わらぬいつもの調子だということにすぐさま気が付き、ぼんやりと安堵を覚えていた。

「伏木先生、いらっしゃいますか?!えっ、臭!!ゴミ!!」

 仮眠室のドアは開き切っていた。

 聞き慣れた声だ、と働かぬ頭で思い、見ると助手として自給820円で雇っている学生が一人、ものすごい剣幕でこちらを睨んでいた。

 大変な事態ですよ、先生、ものすごく、大変です、緊急です。

 寝ぼけた脳の中で声が響き渡った。

 床のゴミを蹴散らしながらゆっくりと学生の方へと向かうと、彼はわざとらしく大きくため息をついた。がしゃ、と音がして、自らの足元を見ると、コンビニのビニール袋が足裏に纏わりついているのが見えた。

「寝ぼけている場合じゃないですよ、先生。単刀直入に言います。二か月ほど前から先生が鑑定を引き受けている被告人Sですが、なんていうか、先日の先生の発言が大問題になっています。被告人の精神鑑定医、弁護関係者、さらには遺族関係者、一般者からものすごいクレームが来てます。クレームというか、脅迫というか。マスコミにも洩れてます。ていうか先生、ツイッターでまた要らぬこと呟いたでしょ。それで呟いた瞬間にものすごい叩かれてたでしょ。目撃してたんですからね、オレ。今回まずいですよ、マジで。オレ殺されたら先生のせいですから。あとそれから」彼は早口で言いながら、カーキ色の上着のポケットからスマートフォンを取り出した。「期間限定、伏木先生への窓口&取次専用ナンバーへの着信ですが、今日夕方から被告人主任弁護士の秘書の方からメッセージを取り次いでいます。『来週以降に予定されている被告人への面会ですが、今後一切、すべてをキャンセルにせよ』と」

「……キャンセル……。フン…」

 よれたワイシャツの皺を叩きながら伏木は欠伸をした。「ううーんと…。まだ電話は繋がりそうか?その秘書と」

「電話自体は繋がると思います。でも、折り返しは不要だと言われました」

「ふん。こっちに選定権がないのをいいことに…。クソだなあ」

 ドアを離れ部屋の奥に行くと、窓を開けた。籠っていた空気がわずかに外に流れていったが、まったく風が入って来ず、たいして効果はないように思えた。

「臭うか、この部屋?」

「……まあ……臭いますよ。そんなことより、先生…」

「ふん。ここじゃあ、碌に風も入らないしなあ。換気口もねえし」

 精一杯に窓を開けてみても、目立った風は感じられなかった。

「……先生、あの…。まさかとは思いますけど、来週」

「あれ、俺のスマホどこ行った」

「…先生…あの、助手歴一年弱のオレが言うのもなんですけど……十四年振りにせっかく大学に戻って来れたのに、また妙な騒ぎを起こすのは……」

「鬼火くん」

「は、はい?」

「自給、百円上げるからさ」弱弱しい風が窓を吹き抜け、去って行った。「予定があるなら悪いが、来週、面会の拘置所付近まで一緒に付いて来てくれるか。近くの駅まででいい。それで、行き途中に俺の身に何かあるようだったら、警察に連絡を入れてほしい」

「えっ、刺されるの前提で行くんですか?!マジですか?ほぼ確実に、オレと先生以外みんな敵ですよ。知りませんよ。マジで刺されますよ」

「鬼火くん、頼りになるなア。さすが優秀な助手だなア」

「え…うぜえ……」

 伏木はふと、開け放たれたドアの向こうに、灰色のスーツケースがあるのを発見した。

「それは、スーツケース?」

「ああ、これは防御のためですよ。先生の助手をするようになってからは、これを持ち歩くようにしてるんです。先生への世間の怒りがオレにも飛び火して、いつ刺されるかわからないんで」

 いつも持ってたの、気づきませんでした?

さらりと言う助手の顔を、伏木はまじまじと見ていた。いまさらながらによく見ると、胸元には「○○助手 鬼火葉」と実名の入ったプレートがぶら下がっていた。

「それで、例の被告人なんですけど――」戯れにプレートに触れると、うざったそうな目がゆっくりと伏せられた。「先生なら、何があっても面会に行くだろうと思って、情報を少し整理しておきました。とは言っても、自分自身の勉強のためが九割なんですけど…。興味深い事件…なんて言っちゃ駄目ですけど、分析のし甲斐がありそうな件ですよね。ともかく、来週でようやく三回目の面会になりますよね。被告人S……笹原。肉親殺しの――」

「情報は要らない。それは自分自身の勉強のために使ってくれ」

「…えっ?そうですか?」

 鬼火は手早くノートを背負っていたリュックに仕舞うと、伏木に向き直った。「ともかく…面会に行くにしろ、一般の方はまだしも、直接の裁判関係者との衝突はできるだけ避けてくださいよ。わかっているとは思いますけど。本当…今度こそ終わりですよ、先生。あっ、あと」よく見るとリュックもまた上着と同じようなカーキ色をしているようであった。「ツイッターで『拘置所に到着なう』とか死んでもやめてください」

「鬼火くん」

「はい」

「ちょっとコンビニ行って来るけど、一緒に来るか」

「は、えっ?」

 言うなりジャケットを羽織りながら、さっさと部屋を出て行く伏木の姿を、少しの間鬼火は呆然と見つめ、不意にはっとした表情で慌ててスーツケースを手にその後を追いかけて行った。

(続く)
お願い
{はじめに}をご一読ください。
Profile
author: 古石

***

いろいろなものを書きます。
ホラーが主力。