強制送還「事故死」裁判傍聴録 5・13 IN東京地裁

外国人犯罪者の人権の前には入管・警察は最下層!?

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 平成25年5月13日、東京地裁706号法廷にて15時30分より開かれた「スラジュ事件」の裁判を傍聴。

 不法滞在で入国管理局の摘発を受け、強制送還中に死亡したガーナ人について家族が国を相手取った損害賠償請求訴訟を起こしているものである。

ee212676 死亡したのはアブバカル・アウドゥ・スラジュというガーナ人のニガー(黒人)。同裁判で家族を支援している人権派団体APFSなどはスラジュさん事件と呼称している。
 家族の訴えは入管職員らが強制送還中にスラジュを圧迫して死に至らしめたというもの。

 ガーナ人・スラジュが強制送還中に「事故死」したのは3年前の平成22年3月。同年12月に家族が入管職員10名を千葉地検に特別公務員暴行陵虐致死容疑で刑事告発、後に全員が不起訴。
 平成23年8月には家族が民事賠償請求訴訟を起こし、その第9回目の期日がこの日、5月13日に開かれたものである。

 当日、法廷に入って驚いたのは原告側の席に家族と弁護人が共に座っているのは当然としても、死亡したスラジュの遺影が堂々と持ち込まれ、原告側の机上に掲げられていたことだ。確か裁判では、いかなる立場であっても法廷内に遺影など持ち込んではならないとされていたはずだが、これが容認されている事実がいかに原告側にとって甘い対応がなされているかを示している。

 原告側の席には家族と弁護人を合わせて9名が陣取った。原告として訴えを起こしているのは死亡したスラジュの妻(?)と思しき多々良優子という女性。

 一方の被告側には弁護人と入管関係者なのか11名が陣取った。

 50名分の傍聴席は満席。ほか全員がAPFSなど人権派団体の関係者であり、支援者だと思われる。中には死亡したスラジュの同胞なのかニガーも7〜8人はいた。

 それにしても人権派団体の動員力は侮れない。傍聴席が満席になっても後から駆けつけた支援者ら数人が廊下で審理が終わるのを待つほどだった。

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 裁判官は裁判長・小林久起のほか外山勝浩藤田直規による合議制。開廷の直後、これまでの裁判官から一部が入れ替わったことを裁判長より告げられる。

 審理は原告側から新たに提出した準備書面の説明から入る。第3〜第7に至るまで各準備書面について計5名の原告側弁護人が説明した。

 当然ながら、その主張はスラジュの死因は入管職員らの制圧・圧迫にあるとしたもの。有形力の行使が組織的且つ計画的に行なわれ、スラジュ本人には「自殺する意図は無かった」としている。

 入管のマイクロバスから自分で歩いて降りたスラジュが飛行機のタラップを自分で上ろうとしたところを、「9名の入管職員がスラジュを抱え上げ、押さえ、うつぶせにさせた時、入管職員らが『前後左右』『頭から』と発言した」と指摘している。この時、スラジュは手錠をかけられた状態。身体を固定する拘束具はあらかじめ準備されており、運び込みは極めて短時間で行なわれたと話す。

 弁護人は「スラジュさんは抵抗せず、奇声を発するわけでもなく、激昂もせず、日本語で話して日本語で抗議していたにも関わらず、入管職員らにはスラジュさんを気遣う様子はまったくなかった」としている。

 次に「違法性の判断」について。
 原告側弁護人は声を塞ぐ防声具やタオルの規定などは刑務所内での死亡事故が相次いだため、現在の監獄法でも廃止されていると主張。一部の留置施設で限定的に使用されているに過ぎず、スラジュの護送に際して大型手錠や結束バンド、タオルなどが使用されたことは「法定外器具であった」として入管職員らの過剰な措置を批判した。

 一方、国(入管側)は「強制送還を実現させるため」「具体的危険性の有無に照らして必要だった」と反論している。

 続けて原告側弁護人は「スラジュさんの首を入管職員らが押さえつけたのは故意である」とした上で、スラジュが危険な状態に陥った時も「入管職員らは詐病を疑って必要な応急措置をとらなかった」「意識が無くなってから飛行機から降ろした」と説明。

 また、スラジュを検死した医師の鑑定書についても「不十分であり、矛盾、飛躍に満ちている」として、制圧行為の最中に意識不明に陥ったとしている。

 この裁判を傍聴して分かったことだが、死亡したスラジュは「CTAVN」という先天性の心臓疾患を患っていたという。医師の検死では「入管職員らによる圧迫は軽度なもので、些細な刺激でも致死性不整脈を起こすことがある」としている。

 しかし、原告側弁護人は「9人がかりでの危険な圧迫による窒息死だった」としている。被告と原告とで主張が異なった場合は「経験則上、どちらが合理的であるかを判断せよ」と裁判官に迫ったものだ。

・・・ ・・・ ・・・
 裁判の終了後、東京地裁からすぐ道路を隔てたところに警視庁本部があったので、知己の刑事と会った。警察官として犯人の護送などの経験を持つ者なら具体的な話が聞けると思ったからだ。

 当日にあった裁判のことを告げると、刑事はすぐに何の裁判だか把握しているようだった。警視庁と法務省とで所管は異なるが、同じ警察行政に携わる者らの職務遂行が訴訟の対象になっていることは警察内部でもかなり話題になっているのだろう。

 だいたい、常識的に考えてみればおかしな話だが、たかが1人の不法滞在外国人を護送・強制送還するのに撮影者まで含めて入管職員が10人がかりとは尋常ではない。だいたい護送に必要なのは容疑者を両脇で抱えた2人。多くても3〜4人ではないだろうか。

 それだけスラジュが強制送還に至るまで、強制送還の当日まで相当に激しく抵抗し、入管職員らの手を煩わせたことは想像に難くない。

 さらに前述のようにスラジュは心臓疾患を抱えていた。この点について法廷で原告側弁護人らは「スラジュさんは肉体労働をして、ダンスなどスポーツもしていた」としており、心臓疾患が死因ではないとしている。
 だが、自分でペース配分が可能な仕事や趣味とは異なり、後先考えずに抵抗して暴れた場合は発作的に持病を悪化させることだってある。つまり入管職員らの制圧が直接的な原因ではなく、自ら心臓に持病を持っていると知りながら、抵抗して制圧を受けるような振る舞いをしたスラジュにこそ死に至った原因があると言えよう。

 これが死亡事故の全て、である。

 警察にせよ入管にせよ、容疑者が暴れなければ押さえつける必要もない。大暴れして激しく抵抗したために数人がかりで押さえ込まなければならなかった。
 法定に定められていようと定められていまいと、スラジュのためにも、わざわざ拘束具を用いたものだろう。

★強制送還への抵抗 人権派による嘘偽りの一部始終!

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画像:入管職員による強制送還当時を再現した裁判資料より

 今回の審理で特徴的だったのはチェックポインターを使い、法廷内の傍聴者にも分かり易く、原告側弁護人らが準備書面の説明をしたこと。そして強制送還当時のビデオ映像が上映されたことである。ビデオ映像は全体のうち上映はほんの数分間だったが、強制送還当時の様子が大型テレビジョンで法廷内に流された。

 入管の捜査資料の一環である公的な映像は一般には公開されているはずもなく、法廷内では一切の撮影・収録が禁じられているので拙ブログをご覧の皆様にはお届け出来ないが、以下は実際の映像を見た筆者の感想。
 マイクロバスから降りる直前、入管職員がスラジュに対して「自分で歩くか?」と訊ねている。

 …護送に際しても容疑者自らの足で歩くのは当然である。わざわざ入管職員が訊ねているということはその直前、スラジュが相当に暴れて激しく抵抗したことを示す。そのため入管職員が自分で歩くか?それとも我々が抱えて運び出そうか?という選択を迫っているように見える。…何と心優しい温情的な入管行政の強制送還であることか…。

 スラジュはバスから降りたが、飛行機のタラップに上る直前になって立ち止まった。ここで両脚から全身にチカラを込め、飛行機に搭乗することの拒否を意思表示したのだろう。即座に入管職員らが両サイドからスラジュを抱え上げて飛行機のタラップを上り始める。
 …スラジュのこうした抵抗は日常茶飯事だったと思われ、入管職員らは逐一口頭で注意することもなく、強引に抱え上げたと思われる。

 通路をわたって客席に行くまでの間、スラジュは「ウッタエル(訴える)、ウッタエル、ウッタエル」と盛んに言葉を発し続けていた。

 …上映がこの段階に差し掛かった頃、法廷の傍聴席から1人の黒人の男が立ち上がり、手荷物を持って退廷した。鎮痛そうな表情を浮かべていたが、おそらくはスラジュの身内か友人なのだろう。生前、それも死の直前のスラジュが映されたビデオ映像を見るに耐えなかったのだろうが、それにしてもわざとらしい演出だ。

 スラジュが「ウッタエル」としたのは入管職員の強硬措置(スラジュからすれば暴力)についてだろうが、不法滞在ゆえ強制送還され、それに抵抗したから入管職員らが心優しくも抱え上げて飛行機に搭乗させてくれたというのに、何を訴えるというのだろうか。

 客席にたどり着いたところでビデオ撮影が終了していることについて、原告側は不可思議だとしているが、こと強制送還においては帰国用の飛行機に乗せるまでが任務である。
 原告側弁護人はスラジュが激昂することもなく、抵抗もしていないとしているが、明らかに抵抗している。抵抗しているのに抵抗していないと強弁するのだから、ああいう手合いの言うことなど強引なこじ付けと捏造であり、まったく信用に足らない。

 スラジュが抵抗することなく、大人しく飛行機に搭乗していれば死亡事故など起きていない。自業自得である。

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 今回の裁判でもう一つ特徴的だったのは、裁判長・小林が露骨に原告側に肩入れしていることだ。尤も傍聴席の99%がスラジュの同胞と支援団体APFSの関係者で占められているのだから、裁判長からしてそうなってしまうのも無理はないのだろうか。

 被告側である国の代理人弁護士と裁判長との間で意見書の提出期日をめぐって見解の相違があった時、傍聴席のAPFS関係者と思われる者らが「こっちは何年も待ってんだよ!」「国のエリートだろ!」「何やってんだよ!」「遅過ぎる!」と野次を飛ばした。…裁判長からの注意は一切無し。

 2回目に野次が飛ばされてから、ようやく裁判長から「傍聴席はお静かに願います」と注意があった。普通なら即座に注意があって然るべきだし、同一の者による野次なら退廷が命じられていてもおかしくない。法廷内への遺影の持ち込みからしてそうだが、いかに裁判所としてAPFS側に配慮し過ぎた低姿勢であるかを物語っている。

 裁判官らの原告側への肩入れはこれにとどまらない。
 原告側弁護人による証人尋問の請求についても、「裁判所は年度ごとに動いている」ことを説明した上で、本来なら今年3月には終わっているべき裁判の期日が延びていることを理由に、この証人尋問は必要でも、この尋問は必要無いのではないかとか、早期に裁判を決着させ、尚且つ「原告側が勝てる裁判にするためには…」とする旨を口走ったところで言葉を遮ったように、一見は公平に振る舞っているようでも原告側が有利になるよう事を運んでいると思えてならない。

 印象的だったのは裁判長が原告側弁護人に対して、「この裁判官(我々)で裁判を終わらせなくても良いというのであれば、それでも(期日を延ばしても)構いませんが…」とする旨を述べた時である。

 賠償額がどのくらいの額になるかの問題であって、原告側の勝訴となることは間違いない。それを前提に、審理の体裁を繕った一種の茶番劇であり、最初から結論ありきなのである。

 次回の期日は5月29日16時からだが、期日についての進行協議となるため、裁判長が傍聴席に対し「審理の期日については後日、弁護士さんのほうに確認が取れればそちらで聞いて下さい」と言ったように原則、非公開のようである。

★カオスから治安再建、良い国をつくろう!

 審理を傍聴し終え、改めて思ったことだが、日本の入管・警察ほど犯罪者に優しい警察行政というのも他国に類を見ない。

 強制送還も然りだが、発砲や留置といった正当な職務執行が訴訟の発端とされてしまっている。本来的には母国へ帰りなさいに対して日本に住む権利がある、帰るところがないと言う犯罪外国人に対しては、では死になさいといった対応がとられても当然なのに、まるでオブラートに包み込むように入管職員らが抱え上げて飛行機に乗せるような「サービス」まで行なわれている。これなどは、うたた寝してしまった子供を親が抱き上げて寝床まで運んでやったようなものだ。

 その他、拳銃使用にしても本来なら警告や威嚇射撃なしでの発砲があって然るべき局面でも、くどいくらいの警告がなされた上で行なわれた発砲まで裁判の対象とされてしまっている。

 栃木県では留置場で病死した中国人犯罪者の家族が1億円の賠償訴訟を起こしているが、警察行政に絡む裁判としては過去最高の賠償請求ではないだろうか。

 凶悪犯罪に関わらずとも、外国人の場合は交通違反の黒人ドライバーが「差別だYO!」「俺が黒人だから止めたのか」と言いさえすれば見逃されるようなことが巷間で繰り広げられている。

 何も警察や入管のみが悪いのではなく、日本社会全体の体たらくが犯罪者であっても逆に訴え出る、人種差別を口実に違法行為も見逃される外国人特権日本人差別を生み出しているのだと思う。

 「士農工商」で言えば士に該当する人々が今日ほど最下層に転落させられて虐げられた社会というのもない。仮に日本社会全体として、官民を挙げて「排外主義」「レイシズム」に転じたとしても犯罪外国人を円滑に追い出せるかどうかは分からない。そこまで状況は酷くなってしまっている。

 既に死滅したも同然だが、ここで闇黒裁判によって入管・警察行政が死滅したことを追認するような訴訟を看過してしまったら、今度は治安を再建して建て直そうにも建て直すことさえ出来なくなってしまう。

 不法滞在外国人は在留を求めた裁判に訴え出ようが何をしようが一律、速やかに強制送還。それで抵抗して死んだ奴は自業自得。発砲されて被弾しても当然、何をされても当然。留置場ほか収容施設で病死しようが自殺しようが、犯罪を起こす外国人が悪い、日本に来た外国人が悪い、日本に住んでいた外国人が悪い、守られるべきは日本人の権利。

 そういう発想に転換していく、それこそが「体制変革」であって、日本人の権利が守られる社会、共生と人権の近代史から脱却した「良い国」をつくろう。