参議院選挙の投票日でございます。


実のところ私は既に不在者投票を済ませました。投票日に行くことも出来ない訳では無かったですが、当日何が入るか分からないので保険をかける意味合いもありまして。ここ数年、選挙はほぼ不在者投票で済ませています。


話は変わりまして、今回は選挙権が18歳以上となる初の国政選挙でございます。


10数年前の我が身を振り返り、18歳時の私が選挙に行くと考えると非常にゾッとする部分があります。「あんな浅はかな男に政治や社会の行く末を決める何の権限があるのか?」と。


ここで言う「浅はかさ」というのは、政治のシステムに対する無知ということもありますが、それ以上に「社会経験の絶対的不足・人間的な知恵の欠如」という意味合いがあります。


今の私にそれが備わっていると言うつもりはございません。あくまで相対的に見て、ということです。親に寝食の面倒を見てもらい、焦眉の問題は大学受験で、知っている社会は学校と近所と家族と予備校・・・・という人間が考えられるモノの幅など、たかが知れているに決まっているということを言いたい訳です。少なくとも私はそういう18歳でした。


勿論、これは数多く存在しあるいはかつて存在した「18歳の人間」の一サンプルに過ぎません。博識があり社会経験豊富で知恵のある18歳の人もいるでしょうから、そういう人にはどんどん投票に行ってもらいたいです。なので今回の選挙権の年齢引き下げも私個人としては否定するつもりもありません。


ただ18歳の人に社会を広く深く見通す機会が多く開かれているかと言われると、そんな事も無いように思います。


そこでですが、私は今回新たに選挙権を得た世代の人が「遊ぶ」ことが可能な機会をより増やして欲しいと考える訳です。


「政治」を考えることと「遊び」・・・・一見繋がりの無いことかもしれません。


ホイジンガという思想家が人間を「ホモ・ルーデンス」(遊ぶ存在)と定義してます。ここで言う遊びは狭義の遊戯という意味以外に、「行動それ自体が目的となるような行動」というニュアンスもあります(ややこしい言い方ですが、例えば「なぜ遊ぶの?」と子供に聞くと「遊ぶのが楽しいから」という答えが返ってくることがあります。「行動それ自体が目的」とはそういう意味です)。そして人は社会のルールの中で遊びの要素を取り込んできたし、「遊び」が社会の発展を推し進めてきた、とホイジンガは言います。


例えば選挙というのも「集票ゲーム」と考えればある種壮大な社会的「遊び」なんです。


「遊び」の何がメリットかと言うと、自分の想像力を凌駕する経験に遭遇する余地であるからです。その過程で人の価値観は奥行きと広がりを持ちますし、人を見る目や社会がどういう原理で成り立っているのかという知見も獲得出来ます。そしてそれは人や社会への審美眼があるという意味での「知恵」にも繋がります。


また狭義の「遊び」に没入しすぎると、人間は身を滅ぼします。逆に遊びが全くないと人の思想も社会の思想も硬直的なものになります。「遊び」を通じて、文明はその在り方のバランスをコントロールしてきたのです。


遊びがとても大事だということに気づいたのは僕自身かなり最近になってからです。大学院時代のモラトリアム期間だったり芸人になってからは、かなりこの考えにシフトして、実際行動してます。


無意味に南千住に向かって山谷のドヤ街に行ったり、真夜中の駅前でエアーキャッチボールをしたり、セミを調理して食べたり、新興宗教の勧誘にあえて引っかかって議論してみたり、ガールズバーの女の人がどういうテクニックで客を金づるとして繋ぎ止めるかであったり、お笑いライブで法外なノルマを取ってる主催者がなぜライブの主催を継続出来るのか考えることであったり・・・


そういう一見無駄な営みの蓄積は、人間や社会にとって不可欠な価値観が何かを考える私の基盤になってると思います。(もちろん、ただただ無駄になった経験もそこには含まれてますが)


前述した通り政治家を選ぶ集票ゲームと解釈すれば、選挙はれっきとした遊びです。システムの原理を熟知するのは勿論ですが、最後は「この人は嘘をついている」、「この人はキレイ事を言ってるが何も出来ない」「この人は筋の通ったことを言えている」・・・・という選挙民各人の判断センスに全てが委ねられています。


まるで人狼ゲームです。


「若者の政治教育」ということが喧伝されていますが、最近のその流れに対し、私は懐疑的な部分を抱いています。政治は人間が行うものでありますし、雑な言い方をすると「生々しい」ものです。むしろシステムを知るだけでは測れない人間を見る目を誰が諭すのか・・・そういう目線を欠いた政治教育というものは、あまり意味をなさないと感じられるんです。そして制度整備ということだけでは済まされない難解な問題です。だけどどうにかしないといけない話でもあります。


これを読んで投票に行く18歳、19歳の方がどれだけいるかは分かりません。もしかしたら行かない人もいるかもです。そういう人には「嘘をついてる人かどうかを判断して、自分の社会の行く末が決まるゲームです。ゾクゾクしませんか?」と言いたいですね。