ROSE GROVE NOTE(Owner's essay)

フローリストローズグローブ Owner's essay

イギリスには生活用品や衣料品の販売大手で「ブリティッシュ・ホーム・ストアーズ」というのがある。略してBHS。そのBHSが廃業することになった。
イギリス全土に160店以上のお店があり、従業員も1万1千人もいるにもかかわらず、再建の道筋がつかず全店閉鎖で従業員も失業するそうだ。

20年前はイギリスの主要な町に行けば必ず見かける有名店で、商品も値ごろ感があっていい店だった。ランカスターの町中にもあって、僕が現地に家を借りて、家財道具を一式買い集めるのに行ったお店だった。その時に買ったたくさんのアイテムの中で、今でも布団カバーは使っている。乾燥剤入りの紅茶の缶や花柄の食器も今でも現役で、家で普通に使っている。昔は安くても品質の良いものがたくさんあったものだった。

ブリティッシュ・ホーム・ストアーズという名前もストレートで気に入っていた。2009年以降に勢力を拡大したカジュアル衣料店やインターネット通販に押されて急激に業績が悪化したそうだ。時代の流れに乗れなかったといえばそれまでだが、寂しい限りだ。この先イギリスに行ってもその特徴のあるロゴの看板が見られない。

 先日、福岡県の東九州自動車道の工事で、最終的に未開通の区間があり、その場所にあるみかん農園の持ち主が立ち退きに抵抗してきたというニュースがありました。先祖代々の土地を手放したくない気持ちからずっと反対してきたそうですが、行政代執行という強制立ち退きで、農園の敷地の中で立てこもっていた小屋から無理やり担ぎ出されている姿がテレビに何度か映し出されていました。上空からの写真でもみかん畑の両サイドまで高速道路が出来ていて、もうこの畑をつぶすしかないところまで追いつめられている絵でした。

 このニュースを見てわたしは、イギリスで昔、リーズという町までお花屋さんの資材を買いに行くために走った高速M62号線のことを思い出しました。この高速道路の建設でも最後まで立ち退かなかった「Stott Hall Farm」という名の農場がありました。この18世紀から続く古い農場で、持ち主が明け渡すのを拒んだそうです。

 
 そこで最終的にどうなったかというと、日本のように無理やり追い出すのではなく、この農場を避けるように高速道路の上りと下りが二股に分かれて、そして農場を過ぎたところでまた合流するという形になりました。当然、高速道路の下には農場から外に行き来できるようにトンネルが掘られています。

 
 そうなると、周りはひっきりなしに車が走っていきますが、農場の方は全然気にしないという感じでどっしりと構えています。今ではイギリスで唯一の高速道路の真ん中にある農場として有名になっています。

 
 日本でもこのような柔軟な対応をしても良かったのではないかと思います。行政代執行という言葉は最近よく聞くようになりました。ついこの前では梅田の地下の飲食店が執行前に自主的に退去してました。これは梅田の地下で月15,000円の家賃でずっと入っていたということですから常識的に考えても止む無しと思いますが、今回の件のように、親から受け継いだ土地を無理やり取り上げるというのはちょっとかわいそうな気もします。出来上がった高速道路を見てこの方はどう思われるのでしょうか。


Stott Hall Farm
 
Stott Hall Farm

 
 元テレビ朝日のアナウンサーで前田有紀という方がいます。今、年齢は34歳だそうです。
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年前に突然アナウンサーを退職されたのですが、アイドル的に人気のあるアナウンサーだったので急な引退が唐突な感じでした。

 先日、ある雑誌にその前田有紀さんが今はお花屋さんで働いているということが載っていました。どうやら退職後にイギリスに渡って、語学勉強をした後で地元のフラワースクールに通って、今は都内のお花屋さんに普通に履歴書を送って採用されたそうです。花を一生の仕事にしたいそうです。


 そういえば昔はこんな日本人の女性がたくさんイギリスに留学していたなと思います。前田さんはどこのスクールに行ったのかは分かりませんが、コンスタンススプライやジェーンパッカー、ポーラプライクなど、どのスクールも花の仕事を目指す日本人の女性たちでいっぱいでした。

 最近はそのポジションが韓国や中国の女性に代わられてしまって寂しい思いをしていましたが、今でも少なからずこのような日本女性がいることに感動しました。こういうことがきっかけで、日本の女性の中にも同じように英国のお花にあこがれて、お花の仕事を目指す人が増えたら良いなと思います。

 おそらく、前田さんはあまり目立ちたくないと思っていることでしょうが、お花業界の人間としては彼女の生き方がシンボリックに日本の女性の目に映ってくれたらいいなと思います。


 ところで、あの「花時間」が今出ている夏号をもって休刊するそうです。誠に残念なことです。お花に興味を持っている人が減っていることがその理由でしょう。20年前のオープンからずっと「花時間」はわたしの身近にある存在で、仕事をしていくうえで大きな支えでした。その本がもう定期的に出ないことは寂しいという言葉しかありません。本当にありがとうございましたという気持ちです。

 夏号にはローズグローブの作品をたくさん載せていただきました。しかもわたしの写真まで小さくですが載っています。この大きな節目の号に載せていただいたことに感謝しています。

花時間

良かったら、書店で手に取って、気になればどうぞ買ってください。

満開の桜を散らす雨が続いています。今年の桜は期間が短いのかもしれません。

車で街を走ることが多いのですが、いろんな場所に桜が咲いているのを見かけます。ここにも植えてあるのかという発見が多いように感じます。桜の木は、近くで見れば木肌で認識することができますが一つ一つ見てるわけではないので花が咲いて初めて見つけられます。1週間足らずの満開の花をつけて、あとはそれほど注目されないのも可笑しく感じます。わたしは秋の紅葉する桜の葉も好きです。桜の木の下の落ち葉は色も鮮やかでグラデーションも素敵です。考えてみれば花より紅葉する桜の方が好きかもしれません。もともと落葉樹の儚さが好きなのですが。

 先日、ある雑誌でマツコデラックスさんの手記が載っていました。わたしは彼女の番組が好きでよく見ています。豪快で歯に衣着せぬ物言いの人のように見えて、実際は繊細で弱者に対しての愛情を感じます。それが人気の秘密なのでしょうか。ゲイという社会的に少数派であることはある意味、社会を底辺から客観的に見ることができているのではないでしょうか。だからあれほど売れっ子で人気があっても浮ついた感じがしないのだと思います。

彼女の言葉で良い言葉がありました。「どんな人間でも、生まれた時の宿命なんてない。今自分ができる範囲で腐らずにやっている人にだけ、自分の道が見えてくるんじゃない。仕事も人生も、今与えられていることを精一杯やる。その繰り返しでしかないと、私は思っている」。

自分の与えられている仕事を手を抜かず一生懸命にやることの大切さ。これは人の基本だと思います。たとえゲイであってもどういう仕事であっても、人としての基本をしっかりとわきまえていることが人として、尊敬や人気を集める道理ではないのでしょか。彼女はそういう人なのだと感じました。見習いたいと思います。

桜の花も、花が散りそして新しい葉が芽吹いています。これからまた一年後の花のために、ただ真面目に月日を重ねていくのでしょう。そして花が咲き多くの人を楽しませてくれます。来年の花をみる自分はどんな自分なのでしょうか。一つ歳を取っているだけでは無いことを。

先日、出版社のカドカワが出している「花時間」別冊の「花時間ウェディング」が発行されました。
表紙が今流行りのAKB48の女の子が表紙です。小嶋陽菜がウェディングブーケを持って微笑んでいます。

 お花関係の雑誌の売れ行きがどんどん落ちているそうです。存在さえ知らない人が増えています。アレンジメント教室に足繁く通ってくれる生徒さんでも「花時間」という雑誌があることを知りません。他に「ベストフラワーアレンジメント」というヨーロッパの香りあふれる雑誌と、これはほとんど花屋さんか先生を対象にしたプロフェッショナル向けの「フローリスト」といのもあります。本屋さんでは置いていないところもあります。わたしが花屋を始めた20年前はちょうど「花時間」も発刊して間もないころで、いつかはこの本に載せてもらいたいものだと夢をみながら頑張ったことを覚えています。


 いつの頃からか載せていただけるようになり、このウェディングフラワーの別冊にも度々ブーケの依頼があり、その都度デザインをあれこれ考えて載せてもらったものです。どのブーケにも思い入れがあります。今回の「花時間ウェディング」には、わたしの過去の作品が掲載されています。クロワッサンの形をモチーフにしたブーケや、管楽器のホルンをイメージしたブーケなど、ちょっと遊び心のあるものが選ばれました。
 
 また出会えたことは嬉しいものです。今、本屋さんに置いてあります。ご興味がありましたらどうぞ手にとってご覧ください。可愛いお花たちに出会えることと思います。





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