2007年04月10日

4月6日「ビュッフェ131」にて、すぎやまこういち氏が語ったすべて

4月6日にNHKラジオ第1で放送された「ラジオほっとタイム」(13:05〜17:55放送)の番組中の「ビュッフェ131」(15:33〜17:05)にてゲームファンにはドラゴンクエストの楽曲作曲として名高い、すぎやまこういち氏がゲスト出演しました。


当方生では聴けなかったものの、番組を録音して拝聴いたしました。あまりゲームのお話はでてこないんじゃないかなと思っていたら、すぎやま氏のゲーム音楽観も見えてくる内容だったので、いいことを聞けたなと思いましたね。


さて今回そのラジオを聞き逃した方々もすぎやまこういち氏がラジオで何を語ったのか感じ取ってもらえれば幸いと思い、その模様をほぼ全文書き起こしましたので、ちょっと置いておきます。


放送時間は40〜50分間ほどのもので、長文になりましたので、「続きを読む」からどうぞ。



古屋和雄(以下、古屋):毎週金曜日のこの時間は音楽評論家の黒田恭一(Google検索)さんにご乗車いただきまして、素敵なお客様とのトークと音楽をお楽しみいただいております。

新年度も変わらぬスタイルでお送りしたいと思っているんですが、本日黒田さんが体調を崩されまして、残念ながらお休みです。私ちょっと力不足ではございますがゲストの方ををお招きしてのお話を伺って生きたいと思っております。

本日のゲストはすぎやまこういちさんです。こんにちは。


すぎやまこういち(以下、すぎやま):こんにちは。やぁ、あのー、黒田さんにお会いするのも楽しみだったんですけれども、残念。黒田さん多分聞いてるね?

古  屋:きいてます、きいてます。

すぎやま:お元気で、お大事に!

古  屋:(笑)

すぎやま:またお会いするのを楽しみにしていまーす。

古  屋:えー、黒田さんとはもう長いお付き合いでいらっしゃいますか?

すぎやま:だって、あの、『ドラゴンクエスト』が最初出来たのがもう20年前ですからね。あの方がもう最初からずっとやってくださって、CDの──あぁ、当時はLPレコードか、書いていただいたり、黒田さんご自身が『ドラゴンクエスト』のゲーム大好きでずっとやってくださったり…。

古  屋:その人気ゲームソフト『ドラゴンクエスト』は何千万人くらいの人がしたんでしょうね。

すぎやま:そうね、累計販売本数が3千万とも4千万ともいわれていますから、少なくともそれくらいの人数は触っているんじゃないかと。

古  屋:そうですよねぇ。今日は楽しみに皆さん聞いていらっしゃるんじゃないかなと思うんですが、まず、すぎやまさんと申し上げますと、昭和6年のお生まれだそうですね。

すぎやま:そうなんです。一桁!

古  屋:で、あと5日でお誕生日が(編注:すぎやま氏の誕生日は4月11日)。

すぎやま:そうなんです。今年で76(歳)になる。うわぁ、この歳になると誕生日うれしくないねぇ。

古  屋:(笑)。民放でディレクターをなさって、新春かくし芸大会ですとか、ヒットパレードなどの音楽番組のディレクターをなさりながら作曲活動をしておられるた。で、1968年でしょうか。昭和43年以降作曲のほうに専念なされた。

すぎやま:はい。

古  屋:もう40年、50年というご経歴。

すぎやま:そうですね。月日がたつのは早いものよ、という感じですけれども。

古  屋:お忙しかったでんしょう?

すぎやま:もう、そりゃあもう!

古  屋:掛け持ちで。

すぎやま:今はできないね。ディレクターをしながら作曲、、そりゃ無理ですよ。若いからできたんで。

古  屋:元々その作曲というのは若いころから?

すぎやま:うん、もう、そうですね、学生のころから作曲家になりたいと思ってたし、はい。やってました。

古  屋:で、今日の1曲目。すぎやまさんといえばやはり、この曲でしょう。


──1曲目『亜麻色の髪の乙女』 / ヴィレッジシンガーズ


古  屋:1968年、橋本淳(Wikipedia)作詞、すぎやまこういち作曲『亜麻色の髪の乙女』、ですねぇ。

すぎやま:ヴィレッジシンガーズ。懐かしいね。いやぁ、だけどこれがいつの間にかリメイクされて、島谷ひとみさんで2度売れしてね、びっくりしましたよ。

古  屋:若い人たちカラオケにいって、本当に新しい歌として、この歌みんな歌ってますからね、若い女性。

すぎやま:そう。で、「あれ? お母さんもしってた!」みたいな驚き方があったみたいな。

一  同:(笑)

古  屋:なるほどね(笑)。えー、まぁこのほかにざ・ピーナッツの『恋のフーガ』ですとかタイガースの『君だけに愛を』『シーサイド・バウンド』『花の首飾り』などなど。それから、、『帰ってきたウルトラマン』とか。

すぎやま:うん、あれはもの凄く枚数売れましたねぇ。『帰ってきたウルトラマン』のテーマ。

古  屋:(笑)。いろんな曲をなさったんですねぇ。

すぎやま:もう、そうですね、随分いろんなジャンルのものやりましたし、まぁ歌だけじゃなくて、その後はアニメフィルムの音楽とか映画音楽とかコマーシャル音楽もいっぱいやってましたし、で、ついに行き着いたところがゲーム音楽なんです。

古  屋:そうですか。で、当時の曲でですね実は私自身社会人になりまして、DJなどで音楽をかけていながら、すぎやまさんの作品だとは知らなかった作品があるんです。

すぎやま:なんでしょう?

古  屋:これをお聴きいただきましょう。


──2曲目『学生街の喫茶店』 / ガロ


古  屋:1972年、山上路夫(Wikipedia)作詞、すぎやまこういち作曲。『学生街の喫茶店』、ガロ。

すぎやま:これもね、さっきの亜麻色じゃないけど、私にとってはビックリヒット。今日はビックリヒット2連発だね。

古  屋:(笑)。どういう風にビックリされたんですか?

すぎやま:あれは大体、発売されたときはいわゆるB面だったんですよ。全然宣伝もしないし、ずっともぐってたのが発売した1年後、もうガロの次のシングルが4枚ぐらい出た後くらいの頃からなんか火がついて、気が付いたら大ホームランになっちゃって。

古  屋:何がAだったんですか?

すぎやま:あれ、確か村井邦彦(Wikipedia)さんの札幌オリンピックのイメージソングかなぁ(※1:記事最後部で解説をつけてます)。

古  屋:そうですかぁ。

すぎやま:これが火がついてドーンと。で、これも知らなくて、ニューカレドニアに遊びに行った時──ニューカレドニアだったかなぁ? 飛行機の中かどこかで村井邦彦さんに会って、「すぎやまさん、『学生街の喫茶店』に火がついてきて、今30万越えました!」というのを聞いて、「えっ!? そうなの!?」って。知らなかったの。それが30万どころか、もう200万近くまでいったみたいですね。

古  屋:しかし、ご自身の作品がこうして時代を越えてみんなに愛され、歌い継がれているっていうのはどういう風にお感じになられますか。

すぎやま:そりゃ嬉しいにきまってるじゃないですか(笑)。ほんとに僕がこれがいいメロディだ、僕の好きなメロディだ、好きな音楽、好きなハーモニー進行、好きなリズム、好きなバスの進行、ってなんか音楽全体の姿、それが聴いている人に受け入れられるというのは、僕の人格が受け入れられたと。作曲家にとって作品というのは人格の一部ですよ。完全に。だからこんなに嬉しいことはないですね。

古  屋:はぁぁ、そうですかぁ。そして! 先ほどからお話のようにすぎやまさんが人気ゲームソフト『ドラゴンクエスト』、これ社会現象にもなりました。1986年に発売された家庭用のゲーム機。

すぎやま:そうですね。

古  屋:ですが、20年!

すぎやま:うん。

古  屋:これ(作曲に携わった)、きっかけはなんだったんですか?

すぎやま:きっかけはね、まぁ、どのみちいつかはゲーム音楽に携わる宿命にあったと思います。こんなちっちゃい子供の頃からゲームフリーク、ゲーム大好き人間。

古  屋:ちっちゃいときから?

すぎやま:うん、もう東京下町でのベーゴマ、メンコから始まって、あらゆるカードゲーム、それから麻雀、なんでもこい、ゲームと名の付くものは全部やってて、いわゆるフリッパーゲーム──球を打つやつ。

古  屋:両側でポンポン打つやつ。

すぎやま:あれもやってたし、モノポリーはもちろんやってたし。で、家庭用ゲーム機が発売されるやいなやすぐ買って、もうインベーダーというゲームが流行ったときはそれの名人級というかね。

古  屋:みんな喫茶店で黙々と下向きながらピコピコピコピコやってましたよね。

すぎやま:はい。で、大ゲームフリークであって作曲家でしょ? これがどっかで結びつく必然性はありましたね。いつかはあるだろうと。

古  屋:ということだったんですね。それでは、みなさんにお聴きいただきましょう。交響組曲ですね。これちょっとご紹介いただけますか。

すぎやま:はい。『ドラゴンクエストVIII』から、序曲、東京都交響楽団の演奏、指揮は私自身、というわけです。


──3曲目 交響組曲『ドラゴンクエストVIII』序曲 / 演奏・東京都交響楽団 指揮・すぎやまこういち


古  屋:はぁぁぁぁ、ビックリしました、実は私ゲームをやらないんですけど、聴いたことありますもんね。

すぎやま:あぁ、どっかで聴こえてきてるんだ。ゲーム発売のときにCMで使われることもあるわけでしょ、それからゲームのお店の店頭で流したりしてることもあるし、どっかで聴こえてきてるんでしょうね。

古  屋:でしょうねぇ。私の知り合いはですね、この曲をたしか結婚式の入場曲に使ったという人もいましたね。

すぎやま:あ、ありがたいですねぇ。

古  屋:ありますよねぇ。

すぎやま:ありますよ。特に僕の業界関係の若い人の結婚式に呼ばれることあるでしょ。まずこれですな(笑)。

古  屋:あ、そうですか!(笑)んー、なるほどね、20年ですか。これはいつかはやるだろうということでしたけれども、直接のきっかけというものはなにかおありだったんですか?

すぎやま:直接のきっかけはね、このドラゴンクエストのゲームを作ったメーカーのパソコンの将棋のゲームを買ったんですね、森田の将棋(編注;正確には『森田将棋』)という。これをやってみて、へぼ将棋のクセになまいきにもアンケートハガキに「終盤はすばらしく強いけれども、序盤の駒組みをいまひとつ工夫して欲しい」なんつーことを書いて出したのよ。

古  屋:利用者としての意見を出された。

すぎやま:うん、出したの。そしたらまず、そのメーカーの一番偉い人──またまじめにね、全部見る人なのよ。で、みたらこんなのが来てる。「どうかね?」って部下の人に渡して。「小学生だろ?」つって。小学生だと思ったらしい、名前がひらがなで書いてあるから(笑)。

古  屋:あぁ、なるほど(笑)。

すぎやま:で、部下の人はすごいザ・タイガースのファンで『君だけに愛を』をカラオケで歌うっていう人だったの。「え!? 専務専務、これは作曲家のすぎやまこういち先生ですよ」という話になって。「じゃ、ダメ元で作曲を頼んでみようか」ということで電話がかかってきたの。「すぎやまさん、ゲームの音楽の作曲やりませんか?」「やるやる!」。将棋でいうとノータイムで(笑)。

古  屋:(笑)

すぎやま:「はい! やるやる!」

古  屋:そういうきっかけがあったわけですね。そうですか。実際にそういうゲームの音をお作りになるときは苦労なされませんでしたか?

すぎやま:うん。それはね、作曲にどのみち苦労はつきものですから、コマーシャル音楽作るときには自分の楽想をどうやって13.5秒に収めるかだとか、映画音楽のときはまたそれなりの苦労があるし、全部ある。ゲーム音楽でもそれなりの苦労がありますよ。

古  屋:私専門的なことはよくわからないんですが、ああいうゲームソフトの容量っていうんですか? 音やいろんなものを入れる容量がすくないんじゃないかということをいう人がいますが、そういうのはどうなんですか。

すぎやま:大変でしたよ。1番最初の『ドラゴンクエスト』のときなんかは、本当に容量が少なくて。

古  屋:音がいろいろ入れられない。

すぎやま:入れられない。だから2トラック。2トラックだけで曲を全部作る。それもあまり長くなるとメモリーが足りなくなる。だから『ドラゴンクエスト』のときはたぶんね、今のああいうゲームのね、容量の数億分の1でしょう。使える容量が。

古  屋:数億分の1。ふーん……ちょっと想像がつかない……

すぎやま:想像つかないようなケタなんですが、ですから中身の音楽は全部2トラックで「何とかしてください」って。まぁ考えてみたらねバッハのフルートのための無伴奏パルティータ(baroken 古楽試聴室)なんてのは1トラックの音楽でしょ。

古  屋:ほっほっほ、おぉぉぉぉぉ(わかってるのかわかってないかのような感じの含み笑い)。

すぎやま:フルートは2本でませんからね。それで立派な曲ができてるわけなんだから

古  屋:なるほど。

すぎやま:うん。だから2トラックあればそれの2倍あると、こういう風に気持ちを切り替えれば出来る。

古  屋:割と前向きな考えをなさるタイプですな。

すぎやま:そうです。

古  屋:ふぅぅん……(口ごもってしまって、やや沈黙)。

すぎやま:だから、それで曲が出来なきゃこれはプロじゃないと。でも逆に2トラックの限られた容量の中で、どう自分の思った楽想を表現するかというのは、楽しいパズルでした。

古  屋:パズル。

すぎやま:うん。そういう風に思っちゃえば楽しいじゃないですか。辛いと思うよりは、このパズル、難問どう解決するかということに楽しみと喜びを見出せばいいと。やっぱりこれは前向き思考ですよね、これは。

古  屋:なるほどね(笑)。私はですね、ほんとに小さい頃からやっぱり賭け事が好きでですね、麻雀だ、いろんなことやるんですけども、ゲームやり始めるとですね、たぶん自分はハマリ過ぎるだろうと思いましてですね……

すぎやま:(話をさえぎるかのように)大丈夫よ!

古  屋:(自分の話を続けて)私自身やらず、子供がやりたがるんですよ。小学生が。小学生にやらせるといくら時間があっても足りないんじゃないかと思って、今のところストップかけているんです。

すぎやま:あぁ。でもね、コンピュータゲームで生活なりなんなりが破綻したっていう人っていうのはほとんどいないでしょ。

古  屋:(声のトーンを落として)いないですかね?

すぎやま:うん、大丈夫ですよ。古屋さんだって絶対大丈夫。だって、アルコール依存症になってないでしょ?

古  屋:あぁあぁ、はいはいはい。

すぎやま:ということはちゃんと自制力働くってことで。たぶんアルコール依存症で入院する人の数より少ないんじゃないかな。

古  屋:あっはっは(笑)。そうですか、すぎやまさんがそういうならちょっと考えてみましょうかね。

すぎやま:僕も大丈夫だもん。

古  屋:すぎやまさんご自身も自分が作られたゲームで遊ばれるわけですか。

すぎやま:もう、トコトン! やりますよ。相当深く。

古  屋:自分の作った音楽の中で遊ぶというのは面白いでしょうねぇ。

すぎやま:楽しいですね。えぇ。だから、いろんな発売された『ドラゴンクエスト』関連のゲームでもね、僕がこうやって、ここまでやったっていうとね、メーカーの人がね「深くやってますねぇ(感嘆)」ってメーカーの人が驚くぐらい。下手したら担当者よりももっとやってる。

古  屋:そうですか、いやぁ黒田さんがいたらもっと話が盛り上がったかもしれませんがねぇ。

すぎやま:黒田さんも相当(ゲームをやってる)、でもあの人も大丈夫でしょ?

古  屋:えぇ! そうですね。

すぎやま:だから大丈夫なんですよ。

古  屋:そうですか。さ、ここでもう1曲すぎやまさんから曲を紹介していただきましょうか。

すぎやま:はい。えー、今度はねぇ、交響組曲『ドラゴンクエストIV』から「海図を広げて」。海へこうダーッといくときの、船に乗っていくときの曲です。演奏は東京都交響楽団。


──4曲目 交響組曲『ドラゴンクエストIV』より、「海図を広げて」 演奏・東京都交響楽団


──ここで4時半のニュースがはいります。


古  屋:時刻は4時33分です。ゲストは引き続きすぎやまこういちさんです。後半もどうぞよろしくお願いいたします。

すぎやま:お願いいたします。

古  屋:黒田恭一さんはですね、ゲームをすごい巨大画面でみてなさるんですって。

すぎやま:あぁ、それは世界に入りやすいですね、ドンドン。

古  屋:マリオとかありますよね。あれとかこんなちっちゃいはずなのに、こんなに大きいマリオが出てくるらしくて。

すぎやま:はっはっは。スイカぐらいの大きさのマリオが(笑)。それでね、黒田さんこういう旅が楽しい、この番組も旅ですよね。で、『ドラゴンクエスト』っていうゲームもね、ほんとに旅の要素が非常に大きいんですね。で、さっきやった「海図を広げて」。船に乗ってダーッといって冒険、冒険の旅なんですよ。

古  屋:なるほどねぇ。

すぎやま:その楽しさがあるんで、この番組にはなんか(『ドラゴンクエスト』の楽曲が)乗りやすいかなぁという感じがしますね。

古  屋:ひとつのそういう旅の中にはいろいろな音楽が入っていますでしょうね。

すぎやま:そうです。で、これからかける──短い音楽──最初の『ドラゴンクエスト』やったときには、いわゆるPSG(Programmable Sound Generator - Wikipedia)、プロゴラマブル・サウンド・ジェネレーターの略なんですね。ようするにビープ音に近い「プッ、プッ」っていう音しか出ない。それが音楽を作る。それでも僕自身はそういうもんだと思っていたし、そのビープ音に近いような音色を手がかりにやってるひとが世界を描いてくればいい。

古  屋:ビーフォーと今おっしゃったのは……?

すぎやま:ああ、ビープ音!

古  屋:あぁ、ビープ音(苦笑)。ビープ? 音。

すぎやま:やっぱり(喋りの)プロじゃないから発音悪いな、こりゃ。すいませんね。

古  屋:すいません、すいません。

すぎやま:ビープ。あの、「ブー」という単純な音色…。でもね、それで世界を描いてくれればいいわけで、『ドラゴンクエスト』のときはあの音色で十分にゲームなさってる方はいろんなものを感じてやってくれてたんですね。それとね、ゲーム音楽というのはね、音楽であると同時に求められるのは記号性なんです。

古  屋:記号性…。

すぎやま:記号なんです。というのは、街に入って街の音楽がパッと出てくると「ここは安全なところですよ」という記号でもあるんです。

古  屋:はぁぁぁぁ…。

すぎやま:それから洞窟の音楽がパーッとなると「ここはモンスターが出てくる危ないところですよ」。で、今度は記号としてのウェイトが非常に高いものでME、ミュージックエフェクトというものがありますね。で、それはね、短いレベルアップの音楽…

古  屋:レベルアップ?

すぎやま:ゲーマーがやってて、戦って経験値を積むと自分のレベルが上がっていくんですよ。

古  屋:あぁぁ、はいはい。

すぎやま:それがまた楽しいの。自分が育っていくっていう。だから、少年野球になり、中学野球になり、高校野球になり、大学野球からプロに入ってっていうみたいなレベルアップですね。

古  屋:はぁぁ、ちょっと聴かせてもらいましょう。

すぎやま:はい。


──ここでおなじみのレベルアップのメロディが流れる。


古  屋:あぁぁ、これ嬉しいんだ、みんな。

すぎやま:うん、嬉しいの。これ、だから、音楽であると同時に記号なんです。

古  屋:なるほどねぇ〜。

すぎやま:この後にかける宿屋の音楽もそうなんですが、5秒とか3秒とかの音楽。これは意外に作曲が難しいんですよ。

古  屋:宿屋って言うのはどういうときに……?

すぎやま:街に入って戦いに疲れて、宿屋に泊まると回復するんです。「あぁ、よかった」っていう、回復もする。

古  屋:ちょっと聴かせてもらいましょう。


──おなじみの宿屋のメロディ。


古  屋:回復しましたねぇ、えっへっへっへ(笑)

すぎやま:で、なんとこれはどっちも東京都交響楽団のメンバーの演奏ですから、生音楽でやってる。

古  屋:すごいですねぇ。

すぎやま:これまた記号性のある音楽でゲームの中でいろんな仕掛けがある。カジノがあったり、レース場があったり。競馬じゃないですけど、競馬は馬が走る。このゲームの中でもすライムレースといってね、ゲームに出てくる1番かわいらしいモンスターがいるんですよ。で、それがね、何匹も走って競争する。で、ゲームやってる人は、馬券じゃないな。スラ券というのか(笑)。それを買って「走れ! がんばれ!」つって、ほにょほにょ走って、仕舞いのほうでへにょとなったりね。結構コミカルな。これちょっと長いですけど、、

古  屋:じゃあすライムレース聴いてみましょう。

すぎやま:スライムレース。


──スライムレースの曲。ドラクエ5の戦闘曲「戦火を交えて」をコミカルにアレンジした曲。


古  屋:はっはっはっはっ、へたりましたか?

すぎやま:最後へたるんですよね、ペッペケペッペペーって。

古  屋:なるほどねぇ。音楽はやはり記号であると。

すぎやま:はい。

古  屋:これはドンドンドンドン皆さん楽しいでしょうね。ゲームしてて。

すぎやま:で、まぁ、いろんな音楽作ってますけれども、これはスライムレース。本物の競馬の発走のファンファーレも作ってるんですね、私。だから東京競馬場、中山競馬場のG1レース。これはまたファンファーレがありますから。

古  屋:聴いていただきましょう。


──JRAのG1レースのおなじみのファンファーレ


古  屋:これみんなすぎやまさんなんですね。

すぎやま:えぇ。で、この曲みなさんそうなんですが、狙った馬券がバーンと当たるとすごく名曲に聴こえる。丸ハズレだと「なんだこの曲は」、んなことはないか(笑)

古  屋:あのー、黒田恭一さんがお書きになってましたけれども、これだけのものをお書きになるというのはバロックからジャズまで、相当引き出しの広い・大い方でないと、とてもゲームには対応できないんではないかと、しみじみおっしゃっておりました。

すぎやま:まぁ、僕たち実用音楽の作曲家というのは引き出しがたくさんいるんですね。ですから、古い骨董屋さんなんかいくと日本の昔の家具でもって、くすり箪笥(薬箪笥 - Google イメージ検索)ってのがあるでしょ。

古  屋:ちっちゃな引き出しがいっぱいついて。

すぎやま:あれじゃないとね、実用音楽の作曲は勤まらんのですな。だから引き出しはいっぱいあります。

古  屋:それじゃあ、また交響組曲から聴かせていただきましょうかね。

すぎやま:はい。今度は『ドラゴンクエストVI』のエンディングの曲ですね。交響組曲『ドラゴンクエストVI』より「時の子守唄」。やはり東京都交響楽団の演奏です。


──5曲目 交響組曲『ドラゴンクエストVI』より「時の子守唄」


古  屋:すんごくゲームの音楽ってメロディがきれいですよね。

すぎやま:メロディ勝負ですよね。

古  屋:メロディ勝負ですか。コマーシャルの音楽もお作りになると思いますけれども、そいうものとはまた違うものですか?

すぎやま:違うものです、違うものです。その話をします?

古  屋:えぇ、えぇ。ちょっとだけ(笑)

すぎやま:あのね、コマーシャルは15秒勝負でしょ。だから、ガーンと出だしのキャッチが必要なの。ゲームの音楽は何回も同じ曲を繰り返し聴くからキャッチでいくとクドくなっちゃう。何回聴いても飽きない曲。

古  屋:それでこのメロディが。

すぎやま:えぇ、メロディがいい曲。1番何回聴いても飽きない曲の真髄がクラシック音楽ですよね。全人類が200年300年聴いてまだ飽きない曲という。

古  屋:音楽は決してBGMではないわけですね。

すぎやま:ないんです。このゲームの場合はね。だから、ゲームとバレエの音楽は音楽が前面に出てくる。映画音楽はBGMになる、その違いがあります。

古  屋:いやぁ、すぎやまさんはこういう楽しみを若い人、青少年へのクラシック入門の活動をしてらっしゃる。

すぎやま:はい。ですからオーケストラ音楽というのは音楽の大変なご馳走なんですよ。そのご馳走の味を知って生涯を終えるのと、ご馳走の味を知らないまんま生涯を終えるっていうのは人生の幸せ度が全然違うでしょう。ですからみなさんにご馳走の味を覚えてください! まぁ、僕はロックミュージック、これも社会的にとっても重要な音楽だと思うんですが料理としてみた場合は、ギター、ベース、ドラム、キーボード、とまぁ、素材・食材が5種類くらいでポンと作って大量販売、ハンバーガーに近い感じですよね。ところがオーケストラ音楽っていうのは食材がフルート、ピッコロから始まってコントラバスにいたるまでもう何十種類の食材を使って、うわーっと作る。その代わり大量販売はできないけれどもとってもおいしいというフランス料理のフルコースか、懐石料理のフルコースかという、音楽のご馳走じゃないですか。そのご馳走の味をみなさんに知って欲しいっていうんで、ずっと『ドラゴンクエスト』のコンサートをやって、オーケストラを初めて生で聴いて、「うわーっこんなにいいもんだったー!」っていう発言がインターネットにいっぱい出てきて嬉しいですね。

古  屋:イギリスを代表するシンフォニーオーケストラ、ロンドンフィルなどとご一緒にお仕事をしていかがですか。

すぎやま:ですからね、ゲーム音楽でもゲームを知らなくてももう本当に音楽として楽しんで演奏してくれる、これは同じですよ。ロンドンフィルもとってもね、気に入って気合を入れて演奏してくれたし、それから例えば中にチェロのソロの曲があったりすると、録音の前の日にチェリストが僕に尋ねてきて、これはどういうシーンのどういう感じの雰囲気の曲なんだと聞きにくるわけ。で、このつたない英語で一生懸命説明すると「今晩、シーンをイメージして明日までにさらってくるから」と。それで弾いて「うわぁ、楽しかった」といってくれる。だから、ほんとに音楽には国境はないなぁというのを感じました。

古  屋:そうですか。さぁ、それではもう1曲聴かせていただけますか。

すぎやま:はい。じゃ今度はね、最後ちょっと景気良く『ドラゴンクエスト』の戦闘の曲をやりましょうかね。交響組曲『ドラゴンクエストV』から「戦火を交えて」。東京都交響楽団。


──6曲目 交響組曲『ドラゴンクエストV』より「戦火を交えて」


古  屋:いやぁ、こうやって聴いてらしてもどうしても手が、タクトが動きますね。

すぎやま:うん、それはもうね、音楽聴けば身体は反応するように出来てんだね、きっとね。

古  屋:このあと5時台は「アンチエイジング」をテーマにお伝えするんですが、すぎやまさんの若さの秘訣というのはなんでしょう。

すぎやま:そうね、なんなんだろう。ストレスのない生活をしているのかなぁ。もう好き勝手に生きてますから(笑)。ゲームやりたいときにゲームやったり、仕事やるときは仕事やったり。

古  屋:残り少なくなりましたが、黒田さんに一言メッセージを。

すぎやま:はい、もう黒田さん早く元気になって〜! お大事に〜。今日会えなかったのは残念ですが、黒田さんとまたドラクエ談議をしたいですねぇ。

古  屋:どうもありがとうございました。

すぎやま:はい、どうも〜。

古  屋:今日のお客様は作曲家のすぎやまこういちさんでした。

すぎやま:はい、どうもありがとう!


※1:『学生街の喫茶店』のA面は『美しすぎて』で、すぎやま氏がいう札幌オリンピックのテーマソングである『虹と雪のバラード』(トワ・エ・モワ)ではないです。おそらく『虹と雪のバラード』の作詞が村井邦彦氏であることから混同してしまったのではないかと思われますがどうでしょうか。



以上がすぎやま氏がラジオで語ったすべてです。こうして聞いてみるとすぎやま氏が本当にゲームが大好きで、ゲームのことをまじめに考え、そしてゲーム音楽だけに限らず、絶えず今後の音楽のことを考えているということが聞き取れますね。こういう人がゲーム業界に携わっていていると思うと、一ゲームファンとして嬉しいですね。ただいつもホストをやられている黒田恭一さんがお休みだったのは残念ですね。ゲームに精通されてる音楽家(?)な方のようで、そういった方とのまさにゲーム談議ですぎやま氏が何を語るのかというのも聞いてみたかったですね。

それより何より76歳にもなるのにまだまだ元気! これからもたくさんのいい楽曲を生み出し続けていって欲しいとお思います。


すぎやまこういちの世界
毎年各地で開催されてるドラゴンクエストコンサート。今年は東京2箇所、名古屋、札幌で開催される模様。今年は行ってみようかなぁ。PS2版ドラクエ5ちょうどいまやっとるし。
ラジオほっとタイム


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(Article written by ほらえもん)


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