あんなこと、こんなこと。どんなこと?

自分の言葉をしゃべりたくなった翻訳者のきままな独り言:多様だから価値がある。反論、異論大歓迎

2014年10月

P1020240[少し手を入れました]
アップしようと思っている間に、1ヶ月が経過。この間に息子一家の引っ越し、妹の婚家の片付けの手伝い、もちろん、仕事と母のこともあり、遊びもありで、ああ、忙しかった、大変だった、楽しかったw。

少し前に美術と建物という私の旅のテーマにぴったりの、日本の名建築の美術館編みたいなウェブを見つけ(どういう訳か探したのだが見つからない。見つけたら御紹介します)、1年間に3度目となるが金沢が再び浮上。前回知り合った女性が新潟で個展を開くというので、ウェブにあった妻有の現代アートを巡り、新潟経由で金沢という旅に決定した。

しかしまあ、どこも地方はすんなりとは行けないことになっているようだ。時刻表を組み合わせ、歩ける距離を計り、滞在時間を計算し、まあこれが旅の楽しみの1つではあるのだが、根が大雑把なものだから、ああでもない、こうでもないで、ようやく予約をし、計画を立ててから新潟の彼女の個展の場所が燕三条と分かり、残念ながらパス。ま、縁があればそのうちにまた会える日も来るでしょう。

十日町〜まつだいを含めた妻有の一帯は大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレという世界最大規模の芸術祭を3年に1度催しており、来年がトリエンナーレの年に当たる。今年は芸術祭の年ではないが、名建築100選の中にまつだいの農舞台と十日市のキナーレが入っている。今なら混雑を気にせずにゆっくり見られるはず。P1020252
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まつだいは松代と書く。まつしろ地震のあの松代だと思うのだが違うのだろうか。列車は、米どころを抜けていくのだが、黄金色の稲の少なくない部分が倒れている。こんな景色は初めてだが、今年の夏は水害が多かったし、そのせいなのかもしれない。寝ている稲を起こして刈り取るのはさぞかし大変だろう。

プランの作成に時間がかかって出遅れ、すでに希望時刻の指定席は売り切れ。6:36東京発のたにがわに乗ることに。用意もあって3時起きとなった。出だしから不整脈で心臓が騒ぐ。情けないが取り出して静まれと一括するわけにもいかない。昨年の悪夢がよぎる。あのときはお腹だったが心臓はいかんともしがたい。一人旅に不安を覚えるときだ。しかし戻るわけにはいかない。旅に病んでも芭蕉は歩いたのだぞと言い聞かせているうちにすっかり心臓も旅モードになったのかしっかりとなる。越後湯沢から北越急行犀潟行きでまつだいに午前9時17分に到着。かなり大きな駅なのに無人駅だ。

P1020264農舞台は10時開館だが心配ご無用。周辺にアートが散らばっている。駅近くに立派な古民家が移築されている。これだけの規模はちょっと珍しいほどの立派な古民家だ。見物客は私一人。結婚式が先日行われたとのことで広間には花も飾ってあった。今もこの地域ではこのような座敷で結婚式を挙げる若い人たちが居るのね。この古民家は山古志村から移築されたものだと聞き、あーと声にならない声をあげた。アートだなんだと浮かれてやってきたのだが…。なぜ日本はこうも災害が多いのだろうか。そしてその度に立ち直ってまた生きていく。その連続でここまでやってきた。起き上がりこぼし、シジフォスの神話…。ご先祖様たちが頑張ってやってきたのと同様、私たちも、子供たちもやっていくしかない。

二階には韓国人たちの祈りの場が設けられていた。白い結界のような場所。神式の結婚式も、仏式の祭事も、そして外国の神も受け入れる場所。誰もいない部屋をぎしぎし床を踏みながら巡っていく。家の前には小川が流れ、その向こうは林と棚田。

P1020248川沿いに進んでいく。おかしな案山子や鉛筆他造形物が畑の中、山の中、そこかしこに点在している。楽しい。カラカラという音につられてどんどん上って行った。ロープの先の板にまたがって坂をブーンと下りていくと板の下につり下げられた物が地面に埋め込まれた仕掛けを木琴のように叩いていく。誰もいない隙を狙ってまたがったとたん子供たちが歓声を上げてやってきた。ゴメン、一度やらせてと、ぶら下がったが、体重のせいか一気に下までスピードが加速し、上手く音階には鳴ってくれなかった。残念。でも楽しくて息が弾む。娘がいたら恥ずかしがってやらせてもらえなかっただろうな。

農舞台という名の建物1階の吹き抜けにはDJがいたので、ジャズをかけて貰う。椅子の1つに腰をかけゆっくりと音楽に身を任せる。山から下りてきた涼しい風が吹き抜け、音が流れていった。こういうのを幸せというのかも。まだお昼前。早起きして良かった。

写真はクリックすると大きくなります。

P1020242朝は紅茶。決まっている。誰が決めたって?いつから?分からない。記憶の外のずっと昔から紅茶。

十数年前、K子と一緒に紅茶教室に行った。大枚5000円を支払った。バブリーな時代だ。
紅茶の歴史や入れ方を教わったが、別に私の紅茶の味に大きな変化はなかった。

茶葉をけちらず、水は汲みたての水道水、沸き立つ湯で、つまり、ヤカンをポットにではなく、ポットをヤカンに近づけ、入れる。ずっとそうしてきた。

数ヶ月前にNHKのためしてガッテンだったと思うが紅茶の美味しい淹れ方をやっていた。沸騰させたお湯ではなく沸騰直前だと味が全く違うという。へえ。

やってみた。毎日試してみた。熱心に実験した。で、今や私は紅茶の達人である。本当に味が違う。豊かな深い味がする。この十数年、損してた。

やり方は簡単。音を聞くこと。電気ポットで沸かしているのだが、沸騰し始めは低い音で始まる。じっと耳を澄ます。待つ。低い音が高い音に、クイ〜ンと変わる瞬間にすかさず茶葉に注ぐと、茶葉がすべて一旦、上に集まり、それからジャンピングが始まる。

ほぼ9割、できるようになったが、悩みができた。緊張して控えているのに、耳の調子が悪いのか高音にならずに沸騰してしまうことがある。この十数年美味しいと思って飲んできた紅茶なのに、ああ不味いと感じてしまうのだ。某有名紅茶店で、紅茶茶碗をひっくり返したくなるほど、わっ、不味い、と不愉快な気分を味わう羽目にもあってしまう。悲しい。

あーあ、一度美味しさを知ってしまうと、後戻りできないのね。そして私は毎朝、紅茶の奴隷となって、緊張して電気ポットのそばで控えるのだ。


写真はクリックすると大きくなります。妻有まつだい農舞台近く

乱読、粗読、失礼
ヒトのオスは飼わないの? 米原万里
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重松清 その日のまえに
雪沼とその周辺 堀江敏幸
人間の基本 曾野綾子 
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反日・愛国の由来−韓国人から見た北朝鮮増補版 呉善花 なぜ1000年も恨まれるのか由来が分かる。
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寡黙なる巨人 多田富雄 ☆☆


[追記有り]
10日(金曜日)辺りから沖縄の僻地にいる娘一家のことで気を揉んでいた。宇宙飛行士が数多くの台風を見てきたがこんなの初めてと言うほど眼がぱっちりしたスーパー台風。おまけに直撃コース。娘宅には地上波のTVも入らないし、PCも外に出なければつながらない、典型的な情弱一家。すぐに停電になるし、フェリーは2日ほど前から止まるから急には逃げ出せない。それなのに娘は避難しないと言い張る。

ちゃんとした、例えばコンクリートのマンションの上階とか、高波が打ち寄せたって平気、風速70メートルだってへっちゃらという家に住んでいれば、心配しないよ。でも雨漏りのする小さな平屋、すぐ側が海岸。心配しない方がおかしいでしょ。挙げ句の果てにうるさいと怒ってしまった。下の娘からも何もできないのだから静かにしていなさいと叱られる始末。そんなこと言ってもねえ。

台風のストーカーのようにPCにしがみついて動向を追っていた。ふーふーと画面に息を吹きかけてどこかに飛ばせたらいいのだが…。

丸2日間暴風域と強風域にあった娘宅。洗濯機の中にいるみたいな音だったという。もの凄い、瞬間風速が50メートル近くを記録した激しい嵐の音の中、3人の子供たちも婿殿もあっという間に寝入ってしまい、朝までぐっすり寝ていたらしい。これでみんなは洗濯機の中でも寝られるって分かったと、娘。

その元スーパー台風が、騒ぎが落ちついた今頃になって、今夜、真夜中に東京にやってくる。日本って大きい。娘宅は随分遠い。そんなことをぼんやり考えていたら、思い出した。子供の頃、台風が来るのがちょっとした密かな楽しみだったこと。

父は張り切って雨戸に釘を打ち付け、母はおにぎりを沢山こしらえ、夜はとっておきの、ヤマト缶といったか、鯨の缶詰とおにぎりで、時には停電でろうそくの光の下での夕食。遠足みたいだった。寝る前に非常時に備え、洋服をきちんと着る順番に枕元に用意し、みんな一部屋に集まり、こそこそひそひそ、布団に入っても興奮してクスクス笑い。早く寝なさいと叱られて、風の音を子守歌にいつの間にか寝入って、起きると雨戸の隙間から明るい日差しが一筋、二筋。台風一過の青い空。庭一面が深さ十センチ程度の水たまりで、ドジョウや小魚が泳いでいた。

こんなのんびりとした体験、今時している人たちはいないのだろうな。もしかしたら娘一家も一部屋で押しくらまんじゅうしながら、風が、きゃー、とか騒ぎながら、心配するのは娘一人で、子供たちは案外楽しんでいたりして。50年後に、そう言えば、小さいとき、台風、面白かったねなんて思い出したりするのかも。

さて、強い風の音が収まった朝方になりようやく眠れたと思ったら耳元で蛙の鳴くような音を聞いて飛び起きた。寝ぼけていたらしい。外は無風、いつもにも増して静かな朝だ。台風の贈り物、空が美しい。

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