28a61fb6.JPG数年前に胃カメラでの検査を受けた後、新宿駅でひっくり返った経験がある。黒い紗のカーテンが目の前に降りてくるのが見えて意識が薄れた。とにかくもう絶対に胃カメラなど受けるものかと思っていたのだが、嫌も応もなく、受ける羽目になってしまった。

いきつけの飲み屋ならぬ病院は建て替えたばかりで、それとともに機械類も一新したとは聞いていたが、どうせ胃カメラ、たいした違いはあるまいとうんざりしながら出頭したら、鼻から挿入するタイプの内視鏡も選べるという。鼻の形によってはできない人もいるが、映像は多少ぼんやりするらしいがこちらの方が楽らしいとの話だった。

しかし、実はかなり昔、腹痛で入院した際、鼻から管を通して胃の内容物を管で出したことがあり、これが実に苦しかった。カナダの病院でのことだが、「swallow,swallow」とコップいっぱいの水を渡され、ゴクリとするのだが、これがうまくいかず、涙でぐちゃぐちゃになった辛い思い出がある。鼻からの管などもうまっぴら。

どうせ、辛い人生なんだとやけっぱちで台の上に横になったら、点滴をしつつ、ちょっとぼおっとしますよの声で安定剤を入れるのだろうと思いきや、多分麻酔を打ったのだろう。次に気づいたら、これで終わりですよと管を引き抜くところだった。周囲に医師たちの姿は見えていたのに、管を挿入する場面は全く意識なし。口を開けた覚えもなし。辛い場面は完全にスキップしていた。

前日に引き続きの苦行に可哀想にと思われたのか、うるさいと思われたのか、前日は心臓をモニターしつつの検査だったから眠らせておいた方がいいと判断されたのか、いずれにせよ、分からない方が幸せなことは、息子の素行以外にもあるのだ。