BlogPaint英国が大変なことになっている。ロンドン北部の町で始まった抗議行動が英国各地に飛び火し、4日間にわたり暴動が続くという事態になっている。700人近くが逮捕され、警官111人と警察犬!5頭が負傷したという。

7年前に、レンタカーを返却する場所として、ロンドン中心部まで列車1本で戻れ、シシンハースト城に近く便利そうと言うだけで選んだクロイドンというロンドン南部の町、そこが炎上し、死者が出ているらしい。

肝心のレンタカー店が見つからず、返却時間が切迫する中、町中心部のモールで電話をかけようとしたのだが、公衆電話という公衆電話が壊れているか、故障していて困り果て、インフォメーションの女性に頼んで電話をかけて貰ったことがあった。レンタカー店はクロイドン駅近くの商店街にあったが、そこはゴミが風に舞い、落書きの目立つ荒れた感じの通りだった。

驚いたことに店舗に入るにはガラスの入り口越しに中に合図をし、安全そうな人物だと面通しした上でないと中に入れないようになっていた。明らかにここの治安はそれまで回っていた観光地とは様変わりの悪さなのだ。娘に早くこの町を出ようとせっついて、黒人が多いからと偏見だと怒られたが、治安の悪さは町に直ちに反映する。英国らしからぬ雑草の生えた道や花の少なさから、私は嫌な緊張感を感じ取っていた。

7年ぶりに訪れた英国は、欧州では一番安全と言われていたが以前とかなり異なっていた。前回フリーパス状態だった入管にセキュリティが厳しくなったために人があふれかえっていることでまず軽いショックを受け、ロンドン市内では有色人種の割合が明らかに大きく増加していることに驚いた。

宿泊したB&Bの半地下の窓は鉄格子で覆われ、玄関ドアには頑丈な日本ではまず見かけないかんぬきがとりつけてあり、入り口のドアは真ん中と下の2カ所にこれまた重々しいかんぬきと錠前がつけられていた。周辺の住宅を見て回ったが、1軒残らず半地下の窓には頑丈そうな鉄格子がはめられていた。そうする必要がある状況なのだ。

今回の暴動はこういった治安の悪さの延長線上にあるのだろう。スコットランドBBCがスコットランドで視聴できなくなっていたり、各地観光地のインフォメーションがクローズされていたり、グラスゴーではツーリスト・インフォメーションで宿を紹介して貰ったら、結構な値段の紹介料を請求されるということもあった。景気が減速し、閉塞感が漂っているというのも確かだろう。だが、自分の住むところを自分の故郷、大事な場所と認識する人間が急速に割合として少なくなっていることも一因のような気もする。

前回泊まった田舎のB&Bでは宿主は夕方、鍵もかけずに出かけていたし、クロイドンでの体験も特殊なごく一部の地域のことだと思わせるようなものがあった。暴動の広がりは、もうクロイドンのような町が特殊な例ではなくなっているということを示しているのかもしれない。

縁があるなら英国にしばらく暮らしたいと半分本気で出かけた旅でもあったが、窓に鉄格子のある生活の方が地震と放射線に苦しむ国よりも住むのは辛いと感じた。英国は好きだ。今回の旅でますます英国が好きになったのだが、しかし住むのはなかなか大変そうだ。

女性でも夜に出歩く自由がある日本は、やはり他の国とは違う、一種夢のような国なのかもしれない。

そしてぼうっと夢の中のように漂っている間に、少しずつ分解されていっているような気がしないでもない。もう少しすれば夢から覚めたように、いや、別の悪夢の中に入っていき、グローバル化とやらで他の国と同じようになってしまうのだろうか。

写真はクロイドン駅近くのレンタカー店のパーキング。壁の周囲は草花ではなく、雑草です。