P1020589巨大なキングサイズのベッドで早朝に目が覚めた。せっかくの豪勢な部屋のゆったりしたベッドであっても隅っこに転がっているのだから巨大なシーツの洗濯代がもったいないと思う、私は貧乏性♪。

列車にタッチの差で乗り遅れたり、今治駅から道を教えてくれた人が間違っていたり、ホテルにルームサービスの案内がなくコース料理しか見あたらなかったり、仕方なく食事を求めて嵐の中に飛び出したらたちまち居酒屋にぶつかり、結局、目の前の板さんをからかいつつ、各種焼き鳥などをつまみに気持ちよく飲んでしまった終わりよければすべてよしの夜も明けた旅の最終日。ところで鶏肉も名物だったのね。美味しかった。

ホテルの露天風呂に気持ち良く浸かったと言いたいところだが、強風がゴーゴー鳴るほど吹き抜け長くはいられない。お遍路さんのバスツアーという大阪のおばちゃんたちの大群と夜も朝一番のお風呂でも一緒になり、風に負けじと、声を張り上げ、ひとしきりおしゃべりの花が咲く。お遍路さんというのは、結局、哲学的な命題に後押しされてでも、宗教的な意欲でもなく、誰かの冥福を祈るということよりも、物見遊山が多いのだろうか。ぐだぐだ言ってる私と一緒だw。

前夜よりも風が強いようだ。早朝の船に乗るのに、またしても泣くのか。部屋の窓から山並みの上を黒い雲が勢い良く次々に通って行くのを見ていたら、目の前に小さな虹の破片が現れた。と、するすると4分の1ほどの大きさに伸びていった。吉兆か?空が少し明るくなったような気がする。相変わらず、天気予報では強風、雷、雹に注意となっている。高松初日に短時間程度濡れただけでこれまでほぼ無傷で回れたがまだ運は味方なのだろうか。
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私の経験では台風以外は欠航しませんよとのフロントの言葉を信用することに。キャリーバッグを自宅に発送、スカーフ、本、傘を入れた袋のみと身軽になって桟橋に急いだ。場所は前夜チェックインの時に地図に印を付けて貰っている。発送等で少々予定より遅れてしまい、またしても小走りだ。風は強いが雨は上がった。雲足は早い。
 
P1020600ホテルを出て左にまっすぐしばらく歩くと広い道路に出た。地図によるとそのまま直進して2本ほど先の道路を右に曲がるとちょうど、宗方港行きの客船が出る桟橋に着くはずだが、気持ちよさそうな道なのでそこで右に曲がりどんどんどんどん歩いていくと、海上交番とかそんな風な名前の交番に突き当たった。

       →船の窓ガラスに波が激しくぶつかる

急いではいるが、好奇心が勝った。これって普通の交番も兼ねているのだろうか。道を確認してみる。私が向かうべき桟橋は、フロントが地図で教えてくれた港の左端ではなく、右端、道を数本ほど通り過ぎたところにあることが判明。港に近いのもこのホテルを選んだ理由の一つだったのに、歩くと遠いですよと言われ、首をひねったのだが。でも、どうしてこうなるのだろう。朝っぱらからまたしても必死で走り出す。声を大にする。走りたい訳じゃないのに。5分前に走り込んだ。

P1020605天気晴朗なれど、波高し。今回の旅のようだ。小さな客船は大揺れに揺れた。右に傾き、左に傾き、前のめりになり、後ろに反り返る。遊園地のウォータースライドみたいだ。秋に八景島で水をかぶってずぶ濡れになったが、船の中ではずぶ濡れにならないのが嬉しい。船の揺れと共に両足がピョンと激しく空中に跳ね上がり、ドンと落ちる。面白い。遊んでいると大学生らしい男の子に笑われてしまった。遊べるときには遊ぼうぜ。

大三島の宗方港に着いたら、次の便の欠航を知らせる紙が貼ってあった。セーフ!台風以外欠航したことないって、なんやねん。でもついてるから許すw。

バスで1駅の宗方から岩田健母と子のミュージアムに向かう。徒歩10分とあるが限りなく遠い誰もいない道。山の上には黒い雲が不穏な感じで覗いている。シッシ。引き返したくなった頃ようやくミュージアムが現れた。開館前だが隙間から彫刻が並んでいるのが見える。勿論覗く。廃校が宿舎として使われていて見たかったのだが、P1020609こちらは人の気配が濃厚。しまなみ海道を自転車で渡る人たちが泊まっているのだろう。バスの都合でこういう時間に覗くしかなかったのだ。車でも自転車でもない、空を飛ぶことも出来ない人間は時刻表を握りしめ、複雑に入り組んだ3系列の、でも数少ないバスの便数にあわせて歩くしかない。バス停にとんぼ返りだ。

せっせと歩いていると道路に伊予柑が転がっている。強風に煽られて道路脇の果樹園から転がってきたらしい。ありがたく頂戴する。自販機も店も期待できない旅では貴重品だ。ホテルの冷蔵庫に飲み物を忘れてきてしまい、水分補給は運任せだったのだ。ついてるねえ。

ところミュージアム大三島で降りる。まだ9時前で開いてない。まず急な坂道を下ったところにある伊藤豊雄建築ミュージアムに。

日本一美しい島・大三島を作ろうプロジェクトを開催中とのこと。不便な場所なのでどれほどの人が来るのだろうか。このミュージアムからの眺めは確かに抜群だ。この建物の下にもう一つかまぼこ形の建物が見えた。かなりの高低差に見える。受付の女性に坂が大変か、下は何を展示しているのかを聞くと、資料室だという。食指が動かないまま、帰りの登りを恐れながら、成り行き上、坂を下っていった。

P1020636本体よりもこちらの方が私は好きだ。ガレージのようにも見える建物の吹き抜けから瀬戸内海が一望できる。その隣の資料室とがとても良かった。伊藤豊雄の自宅を模して、少しスケールを小さくして、作ったのだという。こういう家に住んでいるということ自体驚きだが、素敵だ。あくまで明るく、でも居心地がよい。

←伊藤豊雄建物ミュージアム
→資料室内部
P1020635
そして今回、大三島を目指した一番の理由、ところミュージアム大三島は、がっかりだった。収蔵された作品自体が私の好みには合っていなかったようだ。

みんなが絶賛する、瀬戸内海を見晴らすはずの建物突き当たりの一面のガラスには、強風のためシャッターが下ろされ、ギーコギーコ耳障りな音を立てており、2羽の雀が高い天井を途方に暮れて行きつ戻りつしていた。バスは当分来ない。外階段を降りては中に入る構造で、一番下のテラスに出てみたが、強い風が吹くばかり。セルフサービスで無料だというコーヒーを飲むが、インスタントで美味しくない(マッタク、贅沢なバカです)。寒い。だあれも来ない。だあれもいない。仕方なく外に出てみるが吹きさらしの中で数十分も待つ気になれず、中に戻り、そうだ、トイレに行こう。

P1020647便器の底には、半分透明になった、バッタか、キリギリスのような物体が沈んでいた。不気味な風ときしるシャッターの音しかしない世界に、予期せぬ物体。一瞬、パニックになり、そうだ、と勇気を振り絞り、水を流す。流れない。受付の女性に声をかけると、面倒くさいをお面にしたような不機嫌な顔でノソノソやってきて、水を黙って流して黙って去っていった。何度か流せば良かったのね。一気に意気阻喪する。P1020648

(何かに熱中している最中を単に邪魔をしてしまっただけなのだろうが、多分笑うと美人なのだろうが、日本一の美しい島になるまでには多少の努力が必要そうだ)

続く

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