(つづき)

第2 本件出勤停止処分

 1 被告は、2008年(平成20年)5月16日、原告に対して、6ヶ月間の出勤を停止する処分を行った(以下、「本件処分」と言う)。

 

 2 後記のとおり、原告は処分通知書を受け取っていないので、処分理由は定かではないが、審査説明書(甲2 懲戒処分について審査する教育研究評議会が審査を行うにあたって当該職員に交付する文章(教職員人事規程4条1項 甲3))や新聞(甲4)の報道によると、

   原告が、2007年(平成19年)6月に園芸療法のボランティアとして募集した学生6人に対し、深夜にまで及ぶ量の作業を指示し、作業中、学生を傷つける暴言を吐き、さらに、辞めたいと伝えたリーダー役の学生に対し、「人間失格」等と激しく叱責したため、学生は体調を崩し、通院するなどの被害を受けた、

   ■横娃娃鞠(平成17年)度の卒業研究で指導した学生に対して、原告が、長期間にわたって継続的に深夜、早朝にまで及ぶ作業を指示し、作業中、学生を傷つける暴言を吐き、また、学生が診断書を提出したのに無視し、このため学生は自殺を考える程心身ともに追いつめられた、

   A圧 △了実についての正式な保健学科調査委員会の調査に対しても、原告は、再三にわたって不誠実な態度を取り続けた、

というものである。

 

 3 前述のとおり、被告は本件処分をしたことを記者会見して発表している。

また、被告は、原告を研究室から退去させ学内で一切仕事をさせないとともに、同年6月分以降の給料を原告に支払っていない。

 

 

第3 本件処分の無効

 1 被告の教職員の懲戒手続について

   (1) 教育職員人事規程7条1項は、

     「教員は、教育研究評議会の審査の結果によるのでなければ、懲戒処分を受けることはない。」と定め、

    同条2項において、

     「第4条第2項から第5項までの規程は、前項の審査の場合に準用する。」としている(甲3)。

    そして、4条2項ないし5項は、次のとおり定めている

     2項 「教育研究評議会は、前項の審査を行うに当たっては、その者に対し、審査の事由を記載した説明書を交付しなければならない。」

     3項 「教育研究評議会は、審査を受ける者が前項の説明書を受領した後14日以内に請求した場合には、その者に対し、口頭又は書面で陳述する機会を与えなければならない。」

     4項 「教育研究評議会は、第1項の審査を行う場合において必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、又はその意見を徴することができる。」

     5項 「前3項に規定するもののほか、第1項の審査に関し必要な事項は、教育研究評議会の議に基づき、学長が定める。」(以上、甲3)

   (2) さらに、職員懲戒規程5条において、

          「懲戒処分は、職員に懲戒処分書及び審査決定書を交付して行わなければならない。」と定め、

    また、懲戒処分の効力については、6条において、

     1項 「懲戒処分の効力は、懲戒処分書及び審査決定書を職員に交付したときに発生するものとする。」

     2項 「前項の文書の交付は、これを受けるべき職員の所在を知ることができない場合においては、公示送達によりこれを行う。」

と定めている(甲5)。

 

 2 懲戒処分の効力は発生していない

   (1) 前述のとおり、職員懲戒規程6条1項にて、「懲戒処分の効力は、懲戒処分書及び審査決定書を職員に交付したときに発生するものとする。」とされているにもかかわらず、被告は、原告に、懲戒処分書及び審査決定書を交付していない。それ故、本件処分は効力が発生していない。

   (2) 尤も、2008年(平成20年)5月16日の午後、Y被告宝町地区事務部長から、「話があるので先生の研究室に伺いたい。」との電話があったので、原告は了解し、研究室で待っていたところ、午後4時40分ころ、Y宝町地区事務部長の外、A医薬保健研究域保健学系長、K看護学領域長が入って来て、A保健学系長が、突然、「懲戒処分決定書が交付された。」旨告げて文書を読み上げようとしたため、原告は、「代理人を通して欲しい。そのような文書は受け取れない。」と申し述べて、A保健学系長らを室外に出した。その際、A保健学系長らは、「渡しました。4時45分。」と叫んでいたが、原告は、何も受領していない。

  (3) にもかかわらず、同日夜、被告は、本件処分の効力が発生したとの前提の下、本件処分を行った事を公表する記者会見を行ったので、原告は、処分の内容を確認するため、懲戒処分書等の送達を被告に要求したが(甲6)、被告は、既に交付しているので改めて送達しないと回答し(甲7)、被告は、未だ原告に対し、懲戒処分書及び審査決定書を交付していない。(づづく)