感染症の病理学的考え方

若手医師,初学者のために,病理学・臨床検査医学的視点から感染症を主体に情報発信します.「臨床と病理・臨床検査の架け橋」となる新しいタイプの医師を目指しています。*本ブログの記載は一部を文献等から引用していますが、私の個人的見解です。決してその所属施設の意見を反映するものではありません。

ニューモシスチス肺炎PCP予防薬について。
ニューモシスチス肺炎pneumocystis penumonia (PCP) の原因は、Pneumocystis jnirovecii ニューモシスチス・イロベチーという真菌で、一般的な真菌細胞膜の構成成分であるエルゴステロールをもたないため、エルゴステロールの合成阻害を作用機序とする抗真菌薬に対する感受性がない。


ACC
AIDS
診断と治療ハンドブック PCP
http://hb.acc-info.jp/part2/no27.html


CDC
https://www.cdc.gov/fungal/diseases/pneumocystis-pneumonia/index.html


PCP
cytology 
http://pathologyapps.com/histology.php?id=509&type=cytology


PCPとは
藤井毅 http://www.jscm.org/journal/full/02603/026030195.pdf


****************************************************************************
ニューモシスチス・イロベチーに殺菌的な作用を示す薬剤はST 合剤などに限られる。

一般的にエルゴステロール合成阻害剤は、真菌の細胞膜合成阻害を起こす。
  • イミダゾール系:脂溶性のイミダゾール環を持つ。イミダゾール系は水に難溶であるため、ミコナゾール以外はすべて外用で使用する。表在性真菌(白癬)や、口腔、咽頭、膣カンジタ症のクリーム、トローチ、膣錠として使用する。トリアゾール系とあわせてアゾール系といわれる。アゾール系抗真菌薬は分子内に2個の窒素原子を含む五員環(イミダゾール環)をもつイミダゾール系と3個の窒素原子を含む(トリアゾール環)をもつトリアゾール系に分かれる。細胞膜のエルゴステロールの合成過程を阻害する。具体的にはラノステロールを14α位の脱メチル反応に関与するチトクロムP450と結合し本酵素の作用を阻害しエルゴステロール合成を阻害することで抗真菌作用を示す。ミコナゾール(商品名フロリードF)がある。
  • トリアゾール系:イミダゾール系とあわせてアゾール系といわれる。アゾール系抗真菌薬は分子内に2個の窒素原子を含む五員環(イミダゾール環)をもつイミダゾール系と3個の窒素原子を含む(トリアゾール環)をもつトリアゾール系に分かれる。細胞膜のエルゴステロールの合成過程を阻害する。具体的にはラノステロールを14α位の脱メチル反応に関与するチトクロムP450と結合し本酵素の作用を阻害しエルゴステロール合成を阻害することで抗真菌作用を示す。フルコナゾール(商品名ジフルカン)、イトラコナゾール(同イトリゾール)、ホスフルコナゾール(同プロジフ)、ボリコナゾール (同ブイフェンド)がある。


***********************************************************************
バクタ
バクタ=ST合剤は、サルファ剤であるサルファメソキサゾール(SMX or SMZ)とトリメトプリム(TMP)という抗菌薬を5対1の比率で配合した合剤である。
作用機序としては葉酸の合成を阻害することであり、2種類の葉酸合成拮抗薬を用いることで相乗効果を得ている。腸内細菌の葉酸合成も阻害するので副作用に葉酸欠乏がある。


***********************************************************************
ペンタミジン
ペンタミジンイセチオン酸塩はin vitroでニューモシスチス・カリニのグルコース代謝及び蛋白質合成を抑制する。

今日の話題
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/51/10/51_656/_pdf/-char/ja

上記副作用として、低血糖や高血糖があるが、機序はよくわかっていない。


***********************************************************************
アトバコン

アトバコン(AtovaquoneまたはAtavaquone)はナフトキノン誘導体に属する化合物であり、ニューモシスチス肺炎の治療や予防に使われる。またプログアニルとの合剤はマラリアの治療にも用いられる。商品名サムチレール。
ユビキノンの類縁物質であり、ミトコンドリア内膜でチトクロームbへのユビキノンの結合を阻害し、抗真菌効果を発揮する。

*ナフトキノンとは
ナフトキノン色素Xanthomegninの酸化還元反応とミトコンドリアの電子伝達短絡
https://www.jstage.jst.go.jp/article/myco1975/1982/15/1982_15_22/_pdf/-char/ja

福武勝行 アトバコン
http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/120510html/index.html
アトバコンの作用
ミトコンドリア呼吸鎖であることが示唆されており、ニューモシスチス・イロベチー ミトコンドリアの電子伝達系複合体靴鰺淦する。また、アトバコンは、ミトコンドリア内膜蛋白質ユビキノンのチトクロームb への結合を阻害し、ATP レベルを顕著に低下させることにより抗ニューモシスチス・イロベチー活性を示すと考えられている。


写真はアトバコンの化学構造式
Atovaquone_Structural_Formula_V.1.svg(1)




グラム陽性菌GPはペプチドグリカンをもち、グラム陰性桿菌GNRと異なり、容易に壊れない。

そのため、DNAを抽出する際には、GNRはリゾチームによる処理を必要としないが、GPは以下に述べるリゾチーム溶液による細胞壁融解を必要とする。



****************************************************************************
細胞と染色体
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/cells.htm

原核生物の染色体
大腸菌などに代表される原核細胞は、一般に細胞内には特定の仕切りがなく,1〜10 mmの大きさである。DNAはある種の塩基性タンパク質に結合して折りたたまれ、裸の状態で細胞質(cytoplasm)に存在する。 DNAが存在する領域は核様体(nucleoid)と呼ばれる。細胞膜の外側には糖脂質やプロテオグリカンなどから構成される細胞壁(cell wall)が存在し、また、線毛(ピリ, pilus)で覆われているものもある。細胞によっては,細胞膜は細胞内に折りたたまれて多層構造をなしたメソソーム(mesosome)を形成している。細いタンパク質の繊維から成る鞭毛(flagellum)が細胞から突き出ており,これを使って細胞は運動する。
原核細胞から成る原核生物は単細胞生物である。通常、遺伝子のセットを1組しかもたず、一倍体(haploid)という。DNAは環状構造をしている。原核細胞では染色体DNA以外に、プラスミド(plasmid)のような低分子の核外DNAが存在し、薬剤耐性や性因子の交換などを行う


細菌の増殖
http://jsv.umin.jp/microbiology/main_007.htm
細胞が増殖するには、細胞が2つに分かれる時
  • 正確に同じ2コピーのDNAが合成され、2つの細胞に均等に分かれる事
  • 2つの細胞分の細胞質構成分、細胞膜、細胞壁、外膜(グラム陰性菌)、鞭毛などの付属器官ができ、均等に2つに分かれる事、
  • 細胞に隔壁ができ、分裂する事、
が必要である。

DNAの複製
細菌の染色体は2重らせんの DNA (dsDNA) から成る。ほとんどの細菌では、この dsDNA は環状をなす。複製はある一定の開始点から進行する。DNA(RNAも) の合成は 5' から 3' に進行するので、一方は連続的に合成が可能であるが、他方は、非連続的に進行せざるを得ない。そのような非連続的 DNA 合成の結果 Okazaki fragment が出来る。
細菌の環状DNAにヒストンは存在しない。



****************************************************************************
細菌内には核網体外に、小さな環状DNA(プラスミド)が存在する。これを利用したのが、細菌による遺伝子クローニングである。

ThermoFisher
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/cloning/cloning-learning-center/invitrogen-school-of-molecular-biology/molecular-cloning/cloning/traditional-cloning-basics.html

DNAの組み替えによる従来のクローニングは、ベクターとインサートDNAをそれぞれ制限酵素で処理する。処理された断片はライゲーションというプロセスで、リガーゼと呼ばれる酵素でスプライシングされ、目的遺伝子を発現できる新しいベクターを形成する。これは従来のクローニングの最も簡単で古い技術で、研究者にTAクローニング™、TOPO™クローニング、PCRクローニング、ライゲーション非依存性クローニング、遺伝子アセンブリなど、他の修飾酵素の独自な特性を利用する新しいクローニング方法を編み出す基礎を与えた。

ベクターの調製
従来のクローニング方法に使用されたベクターはプラスミドをベースとし、これは2本鎖の環状DNAで、ゲノムDNAとは独立して細菌の中で複製するものである。
クローニングベクターはすべてプラスミドをベースにしており、いくつかの非常に重要な要素を持っている。
例)
  • 細菌由来の複製を効率的に宿主細菌細胞内で増殖させること、
  • 1つの制限酵素部位、さらに一般的にはいくつかの制限酵素部位を持ち、すぐに目的インサートの付加を行うマルチクローニングサイト(MCS)、組み換え後に利用する大腸菌選択用マーカー(例:抗生物質耐性)などがある。

ベクターによっては、MCSは遺伝子の中でマーカーとして使用され、候補クローンをスクリーニングして、どのインサートでスプライシングが成功したかを調べられる。


大腸菌を使って目的のDNA, タンパク質を作らせよう
https://www.chem-bio.st.gunma-u.ac.jp/~taiken/2015/8.pdf



*************************************************************************************
歴史的に、ビーズを使用した破砕法などによりDNAを抽出していた。しかし、QIAGEN社が開発した、DNeasy Blood & Tissue Kitは、これらの方法を容易にした。
https://www.b2b-qiagen.com/jp/shop/transfection/dneasy-blood-and-tissue-kit

DNeasy Blood & Tissue Kit は、簡便なスピンカラムおよび96 ウェルプレートフォーマットにおけるシリカベースの迅速で容易なDNA精製を実現する。ほとんどのサンプルはProteinase Kで直接溶解できるため、機械的な破砕の必要はなく、マニュアルでの作業の時間を短縮できる。



原理
DNAの抽出
いまさら聞けないプラスミド抽出法の原理 高木 昌宏
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8909/8909_yomoyama_1.pdf

溶液I
リゾチーム液(Lysozyme 溶液)
2 mg/mlリゾチーム(lysozyme),50 mM グルコース(glucose),10 mM CDTA(cyclohexane diamine tetracetate),25 mM Tris-HC1(pH 8.0).リゾチームのみ直前に混合し,その他の液はストック液として,0qCに保存する.CDTAとは,キレート剤であり,良く用いられるEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)よりもアルコールに溶けやすく,金属イオンと強い複合体を形成すると言われている.しかし,CDTAの代わりにEDTAを用いても構わない.

溶液I
リゾチームは細胞壁の分解,グルコースは浸透圧を与えて細胞膜を破壊する役目,そしてキレート剤(CDTA,EDTA)は金属イオンを活性中心に持つデオキシリボヌクレアーゼを阻害する目的がある.
溶液Iの組成から,この操作は細胞壁を溶解する操作である
大腸菌のようなグラム陰性菌の場合には細胞壁は弱く,この操作で良い(実際には,リゾチームが無くても抽出できる).しかし細胞壁構造の強固なグラム陽性菌の場合には,その表層の性質に応じてリゾチーム濃度や保温温度を変更する必要がある
枯草菌(Bacillus subtilis)からのcccDNAの抽出には,溶液I添加後,室温または37qCで30分保温する操作が有効であるとの記載がある。


試薬の説明
https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/SAJ/Brochure/1/j_recipedna.pdf


リゾチームの説明
https://www.geneaid.com/sites/default/files/LY2.pdf

Lysozyme is most often used for lysing bacterial cells by hydrolyzing the peptidoglycan present in the cell walls. Lysozyme alternatively can improve efficiency of protein or DNA/RNA extraction. Lysozyme catalyzes the hydrolysis of 1,4-beta-linkages between N-acetylmuramic acid and N-acetyl-D-glucosamine residues in peptidoglycans and between the N-acetyl-D-glucosamine residues in chitodextrins. Gram (+) positive bacteria cell walls have a substantially higher proportion of peptidoglycan so are more susceptible to lysozyme hydrolysis. Lysozyme is purified from chicken egg white and supplied as a lyophilized powder. 

Triton X-100 は界面活性剤として使用する
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/protein-biology/protein-biology-learning-center/protein-biology-resource-library/pierce-protein-methods/detergents-cell-lysis-protein-extraction.html

http://www.labome.jp/method/Detergents-Triton-X-100-Tween-20-and-More.html

トリトンX-100 は通常の非イオン性界面活性剤であり、ほとんどの免疫沈降実験で選択される界面活性剤である。この系列は極めて類似しており、ミセル当たりの平均モノマー数とPEGベースの頭基のサイズ分布のみが異なっている 。

****************************************************************************
写真は黄色ブドウ球菌の全ゲノム
http://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jsasem/1/049/html/1110490301.html


049-0303

溶血性レンサ球菌感染症 2012年〜2015年6月
ヒトに化膿性疾患を起こすレンサ球菌の多くはβ溶血性レンサ球菌であり、細胞壁多糖体抗原性による分類では、
  • A群レンサ球菌〔Group A Streptococcus (GAS); 主にStreptococcus pyogenes〕
  • B群レンサ球菌〔Group B Streptococcus(GBS); 主にS. agalactiae〕
  • C群またはG群レンサ球菌〔Group C or G Streptococcus (GCS または GGS); 主にS. dysgalactiae subsp. equisimilis (SDSE)〕の3種が重要である。
GASは、
ゝ淦咽頭炎や蜂窩織炎などの急性化膿性疾患や敗血症、
毒素に起因する猩紅熱や劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome: STSS)、
L髪岾愿機序が関与する急性糸球体腎炎やリウマチ熱等の続発症を引き起こす。
GBSは、新生児の菌血症、髄膜炎、および成人の敗血症、肺炎の原因となる。
SDSEは、成人の敗血症や劇症型溶血性レンサ球菌感染症を起こす。

病原体サーベイランス
典型的なSTSS症例がわが国で初めて報告された1992年以降、地方衛生研究所(地衛研)と国立感染症研究所が参加する衛生微生物技術協議会の溶血性レンサ球菌レファレンスセンター(以下SRC)が、1)菌のT血清型別、
2)emm 遺伝子(S. pyogenes とSDSEの病原因子と関連のあるMタンパクをコードする遺伝子)の型別、
3)薬剤感受性試験、
等の病原体サーベイランスを行っている。

1)T血清型別
SRCによると、2011〜2014年の間に、地衛研は、GAS咽頭炎患者から分離された年間947〜1,240菌株のT型別を行った(図3a)。2011〜2012年はT1、T12が、2013〜2014年はT12、TB3264が多くを占めた(図3a)。一方、STSS患者から分離されT型別が実施された総数321菌株(図3b)中、T1が153株(48%)、TB3264が58株(18%)、T12が23株(7%)、T28が20株(6%)であった。T1は、2010〜2011年には60〜70%を占めたが(IASR 33: 209-210, 2012)、2012〜2014年には26〜49%に減少した(図3b)。東京都内でGAS咽頭炎およびSTSS患者から分離された菌株も2013〜2014年はTB3264が多いという同様の傾向を示した(本号5ページ)。

2)emm 遺伝子型別
疫学情報として有用なemm 塩基配列を指標にした型別では、2012〜2014年のSTSS患者由来GAS 243菌株のうち、emm1型が41%(100株)を占めていることが分かった。

3)薬剤感受性
β溶血性のレンサ球菌感染症にはペニシリン系薬が第一選択薬剤である。
2011〜2014年に13都道府県で分離されたGAS咽頭炎由来1,608菌株は、マクロライド系抗菌薬に対しては約60%、リンコマイシン系およびテトラサイクリン系抗菌薬に対しては約25%が耐性であったものの、β-ラクタム系抗菌薬に対しては、全菌株感受性であった。STSSの治療にはペニシリン系抗菌薬の大量投与とクリンダマイシン投与が推奨されている。2012〜2014年に分離されたSTSS由来243菌株は、ペニシリンG、アンピシリン、セファゾリン、セフォタキシム、メロペネム、リネゾリドには感受性であったが、このうち28株(12%)はクリンダマイシン耐性であった。


**************************************************************************
劇症型/重症溶血性レンサ球菌感染症患者分離株のemm 遺伝子型、2006〜2011年
国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2121-related-articles/related-articles-390/2473-dj3902.html

A群レンサ球菌には、数多くの表層抗原因子が知られている。このうちM蛋白質は型特異的であり、100以上の型が知られていることから、菌の疫学マーカーとしてよく用いられている。M蛋白は、抗オプソニン作用を有し、細胞への接着にも関与しており、病原因子として知られている分離株のM型別を行うことは病因との関連を知る上で重要であるM型別を血清学的方法ではなく、M蛋白をコードする遺伝子(emm )の塩基配列を決定することで、遺伝子による型別が可能となった

2006〜2011年までに衛生微生物技術協議会溶血性レンサ球菌レファレンスセンター(本号3ページ参照)に集められた劇症型A群レンサ球菌感染症患者分離株311株(2006年41株、2007年43株、2008年36株、2009年52株、2010年59株、2011年80株)について、emm 遺伝子型を調べた。311株のうち、307株がStreptococcus pyogenes 、4株がS. dysgalactiae subsp. equisimilis であった。全部で27種類のemm 遺伝子型の株が2006〜2011年の間に分離された。
最も多い型は、emm1 型で、54%(167株)を占める。続いて、emm28 (7.4%、23株)、emm89 (6.8%、21株)、emm3 (6.4%、20株)、emm12 (6.4%、20株)と続いていた。
最も多かったemm1 型は、毎年最も多く分離された遺伝子型であり、2010年以降、分離比率が増加傾向にある(2009年40%; 2010年58%; 2011年70%)。
S. dysgalactiae subsp. equisimilis と同定された分離株のemm 遺伝子型は、stG245stG485 であった

G群レンサ球菌もA群同様emm 遺伝子を保有しており、emm 遺伝子型別が可能である。2006〜2011年までに衛生微生物技術協議会溶血性レンサ球菌レファレンスセンターに集められた劇症型G群レンサ球菌感染症患者分離株69株(2006年9株、2007年2株、2008年7株、2009年12株、2010年17株、2011年22株)について、emm 遺伝子型を調べた。69株すべてS. dysgalactiae subsp. equisimilis であった。全部で13種類のemm 遺伝子型の株が2006〜2011年に分離された。最も多い型は、stG6792 型で、26%(18株)を占めた。続いて、stG485 (12%、8株)、stG245 (10%、7株)、stG2078 (10%、7株)と続いていた。A群と異なり、最も多く分離されたemm 型は毎年異なっている(2006年 stG485 、2007年 stG652 、stG2078 、2008年 stG245 、2009年 stG6792 、2010年 stG6792 、2011年 stG245 、stG652 、stG6792 )。

Proteus 属は腸内細菌科のひとつである。

腸内細菌科とは
真正細菌の分類上の一グループ。グラム陰性桿菌で、通性嫌気性、ブドウ糖を発酵し、酸とガスを産生する。しばしば腸内細菌(動物の腸内に生育する細菌群)と混同されるが両者は別物である。
腸内細菌科に属する細菌には、
  • 腸内細菌の一種:大腸菌や赤痢菌、サルモネラなど、ヒトや動物の腸内に生息する
  • 通常、腸内細菌ではないもの:ペスト菌のように消化管ではなくリンパ節や肺に感染するもの
腸内細菌科と呼ばれるものの、ヒトの腸内細菌のうち腸内細菌科は1%未満である。その他の多くは偏性嫌気性菌が占める。

腸内細菌科 医学書院 
http://www.igaku-shoin.co.jp/seigo/03456/03456_p154_t.pdf


そのうちのひとつ、プロテウス属(Genus Proteus )
神奈川衛生研究所 http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/002_kensa/02_microbe/detailed.htm#fe144

プロテウス属は、ヒトの腸管に対する病原性はないが、スウォーミングの性質をもつ菌種(P. vulgaris, P. mirabilis)は、他の集落の上に広がって、原因菌の分離を困難にすることが多く、昔から問題になっていた。
このため、多くの腸内細菌分離用培地には、プロテウスのスウォーミングを抑える成分(胆汁酸塩)が添加されている。
これらの菌種は、サルモネラと類似した集落を示すことから検査の上で重要な菌である。
尿路感染症の原因菌のひとつで、日和見感染として問題となる。


ヒトや動物腸管内に広く分布するの4菌種, P. vulgaris, P. mirabilis, P. penneri, P. myxofaciens
Proteus プロテウスはギリシア神話に登場する海神ポセイドンの従者の名前でいろいろな形に変身できる。本菌の集落が、培地表面を滑るように広がる性質(スウォーミング、遊走)があることから命名(1885)された。


スウォーミングと鞭毛 〜H抗原とO抗原のはなし〜
プロテウスは腸管感染症の原因菌ではないが、腸内に生息し、その発育形態ゆえに古くから細菌学者が注目した。Weil & Felix (1917)は、鞭毛が有るときにはスウォーミングで激しく培地上に広がり、鞭毛を失った(あるいは、培地にフェノールを加えて鞭毛の形成を阻止した)菌株では単独集落を形成することを発見した。
スウォーミングは、ガラスに息を吹きかけたときの曇りガラスの状態に似ており、これをドイツ語でHauchbildungということから、プロテウスのスウォーミングをHauchbildungと表現した。一方、鞭毛のない菌の発育はHauchbildungがないということでohne Hauchbildungと表現し、これを語源として、鞭毛のあるプロテウスの菌株をH型、鞭毛のない菌株をO型と呼んだ。
その後、鞭毛の抗原をH抗原、菌体の抗原をO抗原と呼ぶようになった。


写真はP. mirabilis の寒天培地上の所見。
スウォーミングにより、寒天培地全体が曇りガラスのように、曇っている。
CDC https://phil.cdc.gov/Details.aspx?pid=1046

This photograph depicts a Petri dish culture plate, which had contained a trypticase soy agar growth medium, that had been inoculated with 
Proteus mirabilis bacteria, and subsequently gave rise to this colonial growth pattern referred to the Dienes reaction.

1046_lores

ダプトマイシンDaptomycin について
古川恵一
http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/120105html/index.html
ダプトマイシンは、リポペプチド系の静注抗菌薬で、MRSA感染による皮膚軟部組識感染や敗血症、右心系感染性心内膜炎などの治療薬として使用される。
作用機序
薬剤がグラム陽性菌の細胞膜に結合し、細胞膜からカリウムイオンを流出させて膜電位の脱分極を起こす。そして細菌の蛋白質やDNAやRNAの合成を阻害して殺菌する。
標的病原体
グラム陽性菌に抗菌力があり、MRSAを含む黄色ブドウ球菌、β溶血性連鎖球菌、α連鎖球菌、バンコマイシン耐性腸球菌を含む腸球菌などに対して比較的強い抗菌力を持っている。またグラム陽性桿菌や一部のグラム陽性嫌気性菌に対しても抗菌力があるが、弱い。


ダプトマイシンの位置づけ
二木芳人:抗MRSA薬の使い方、使い分け
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/4/101_1085/_pdf


福島慎二:症例から考える感染症診療−症例から考える抗MRSA治療薬の使い方−
https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kansen/data/11_mrsa.pdf


Daptomycin. Heidary M, Khosravi AD, Khoshnood S, Nasiri MJ, Soleimani S, Goudarzi M. J Antimicrob Chemother. 2018 Jan 1;73(1):1-11. doi: 10.1093/jac/dkx349. PMID: 29059358 Review.
https://watermark.silverchair.com/dkx349.pdf?token=AQECAHi208BE49Ooan9kkhW_Ercy7Dm3ZL_9Cf3qfKAc485ysgAAAmowggJmBgkqhkiG9w0BBwagggJXMIICUwIBADCCAkwGCSqGSIb3DQEHATAeBglghkgBZQMEAS4wEQQMBSxu0azfkjcWjP1jAgEQgIICHdA6RUL1HlnQcPsZMKmSZbRACyKtCD8A25OIJcg5xQmUwE71U_7p286bV73x-Te9tZjOPVmK0wjH00QNeKSUkzBAzOS2nHvkL_PJArLMVwqVYEc7puX7GMi_s6UOGiSFdyD0LT6gfm00vjMn7rOz9hXFkdlsHZbbTWTBqbB2tpwzIGCCFuN5CgwvQUL_cPPM8V_9pE45d-nCbLMTuVNScB2Q4SsiGVksOiDuZV07jy4fTgoaKwWlsXAVSqz6U01-hr1-MW1otpimlGvIAuUpEYNIndWiYaiB2TNIJ83wqZ7Tu_zAGP690wvCFEne516QMZLFj6lHsl_0gUshMe4N_myG3K9ZOxQk5TVMkt25_0ifEnnrubj8sRw8E1rWenjx4P9bAa3ZEXl8vAu7WiV8pRi5az51pwKv7CF31ZDZSYabZ0XhgBDfhKQUSfx6vwzCn6bf6qBSI2LtmP3XxXbwXs7UrRxQWadNoCywkOQEVjUtpTalIgpFKnuGY_FU1JppL6kGVGI2jQ_pBqLFUnkVwTLlPKLe7nQDi8ZQSVHqL9-WJ7jteZ0kNdE2pQcgr-CGZJbppqt47fIgibdFbfmfNklX4hxwz3Bqt7ADceTHKLTaSzkOOb2XLJUd5bDE_h4mOAVXQbsZN4b8lBKQklh7SBFygslzwQB1lJ48egcmOJfjNOx2ZbrJ-pQClHlaKojlTv-blIf0V9KSvwLLXlA


Daptomycin is a cyclic lipopeptide antibiotic used for the treatment of Gram-positive infections including complicated skin and skin structure infections, right-sided infective endocarditis, bacteraemia, meningitis, sepsis and urinary tract infections.
Daptomycin has distinct mechanisms of action, disrupting multiple aspects of cell membrane function and inhibiting protein, DNA and RNA synthesis.
Although daptomycin resistance in Gram-positive bacteria is uncommon, there are increasing reports of daptomycin resistance in Staphylococcus aureus, Enterococcus faecium and Enterococcus faecalis. Such resistance is seen largely in the context of prolonged treatment courses and infections with high bacterial burdens, but may occur in the absence of prior daptomycin exposure.
Furthermore, use of inadequate treatment regimens, irregular drug supply and poor drug quality have also been recognized as other important risk factors for emergence of daptomycin-resistant strains. Antimicrobial susceptibility testing of Gram-positive bacteria, communication between clinicians and laboratories, establishment of internet-based reporting systems, development of better and more rapid diagnostic methods and continuous monitoring of drug resistance are urgent priorities.

抗菌薬的特徴
環状ポリペプチドである
13アミノ酸のコアと10のC末端残基で構成された環状ポリペプチド構造を持ち、環はエステル結合で繋がれている。3つの環外アミノ酸側鎖は末端のトリプトファンに脂質残基が付着している。
ダプトマイシンはグラム陽性菌の細胞膜にCa2+依存性に挿入し膜の脱分極と細胞内成分の漏出を引き起こす。


ダプトマイシン構造


2 antibiotics-09-00017-g001
Daptomycin_Ball_et_al.svg

血液培養の汚染菌について

森井大一:血液培養における汚染率をめぐる用語の混乱

血液培養を採取する際には真の病原体と皮膚常在菌による汚染率が問題となる。
CUMITCH (Cumulative Techniques and Procedures in Clinical Microbiology 臨床微生物学的検査における技術と手順の蓄積)では、血液培養から検出される汚染菌の目安として 2〜3% とする数値目標を示している.しかし,この「汚染率」なる用語は様々に定義されており,現状では比較可能性に乏しい.これまでの先行研究で定義されてきた「汚染率」には,大きく分けて
  • 臨床判断によるもの
  • 特定菌種等に注目し自動的に判定し算出するもの
とがある.それぞれの考え方に基づいて,分子及び分母を定義している.

欠点
  • 臨床判断する場合の分子の問題:評価者の主観が排除できないことと手間がかかり過ぎることである.また,陽性数を分母とすると値は陽性適中率と同値となり,手順のバリデーションに利用できない.
  • 自動的に判定する場合:複数セット採取したうち1 セットのみから coagulase negative  staphylococci などの特定の菌種が分離されたものを汚染と判定することが多い.しかしこの場合,真の感染をある程度「汚染菌」と判断してしまい、真の感染を過少評価することに注意が必要である.

**********************************************************
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌とは
Y's Square
http://www.yoshida-pharm.com/2012/text04_02/

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Coagulase-negative Staphylococci: CNS)
CNSはコアグラーゼ陰性でマンニットを分解しないブドウ球菌群で、ヒトの皮膚、粘膜、上気道に常在する。
CNSには表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus saprophyticus などが含まれるが、医療関連感染起因菌として代表的なものは表皮ブドウ球菌である。

病原性は黄色ブドウ球菌より弱いといわれているが、易感染患者の増加に伴い、体内挿入人工物や血管カテーテルに関連してCNS感染が増加している。血流感染、心内膜炎、髄膜炎、敗血症などを起こす。


抗菌薬耐性
CNSにはMRSAと同様に抗菌薬に対して多剤耐性を示す株がある。メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis: MRSE)も多く検出されており、臨床上問題となっている。日本においてはMRSEを含むメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌がコアグラーゼ陰性ブドウ球菌臨床分離株の半数以上を占める。
その耐性機構はMRSAと同様で、PBP2’の遺伝子であるmecAの保有が確認されている。また、バンコマイシンに対する低感受性株・耐性株も報告されている。
CNSは莢膜多糖体を産生し、カテーテル表面に付着しやすく、バイオフィルムを形成して抗菌薬による除菌が困難となる。

感染対策および消毒
CNSは皮膚常在菌であるので、血管内留置カテーテル挿入部位の皮膚消毒やカテーテル挿入操作時の手指消毒・手袋着用が重要となる。挿入部位の消毒に用いる消毒薬として日本で繁用されてきたのは10%ポビドンヨード液であるが、1%クロルヘキシジングルコン酸塩アルコール液を使用した場合のほうがカテーテル挿入部位の微生物数を減少させる効果が高く、血流感染の発生リスクを低減させる傾向がみられるとの報告がある。



Coagulase-negative staphylococci. Clin Microbiol Rev. 2014 Oct;27(4):870-926. doi: 10.1128/CMR.00109-13.
https://cmr.asm.org/content/cmr/27/4/870.full.pdf

The definition of the heterogeneous group of coagulase-negative staphylococci (CoNS) is still based on diagnostic procedures that fulfill the clinical need to differentiate between Staphylococcus aureus and those staphylococci classified historically as being less or nonpathogenic. Due to patient- and procedure-related changes, CoNS now represent one of the major nosocomial pathogens, with S. epidermidis and S. haemolyticus being the most significant species. They account substantially for foreign body-related infections and infections in preterm newborns. While S. saprophyticus has been associated with acute urethritis, S. lugdunensis has a unique status, in some aspects resembling S. aureus in causing infectious endocarditis. In addition to CoNS found as food-associated saprophytes, many other CoNS species colonize the skin and mucous membranes of humans and animals and are less frequently involved in clinically manifested infections. This blurred gradation in terms of pathogenicity is reflected by species- and strain-specific virulence factors and the development of different host-defending strategies. Clearly, CoNS possess fewer virulence properties than S. aureus, with a respectively different disease spectrum. In this regard, host susceptibility is much more important. Therapeutically, CoNS are challenging due to the large proportion of methicillin-resistant strains and increasing numbers of isolates with less susceptibility to glycopeptides.



**********************************************************************************************
CNSと血液培養汚染
Clin Microbiol Infect. 2018 Sep;24(9):964-969. doi: 10.1016/j.cmi.2018.03.030. Epub 2018 Apr 3.
Contaminants in blood cultures: importance, implications, interpretation and prevention.

医療施設において、喀痰をはじめ、一般細菌を同定するために選択する培養検査で、基本的な寒天培地は、
  • 血液寒天培地
  • チョコレート寒天培地
  • BTB乳糖加寒天培地(ドリガルスキー変法培地)
である。

細菌が増殖するために必要な栄養素とは?
生物細胞の培養に必要な栄養源を基質(substrate)、これらを含む溶液を培地(culture medium)といい、培養システムを構成する最も重要な要素である。
培地の栄養源は通常、炭素源、窒素源、ミネラルの3種類に大別される.

1 炭素源
炭素源はどのような細胞を培養する場合においても最も重要な栄養源である。炭素源は炭酸塩などの無機炭素源とグルコースなどの有機炭素源に大別される。無機炭素源は植物細胞、一般藻類、藍藻、光合成細菌、硝化細菌などの独立栄養生物注1)(autotroph)を培養する場合に用いられ、これ以外の大半を占める従属栄養生物注1)(heterotroph)を培養する場合は有機炭素源が用いられる。
  • 無機炭素源として用いられるもの:CO2、NaHCO3、Na2CO3等
  • 有機炭素源として用いられるもの:主としてグルコースなどの単糖類が一般に使用される。(カビなどではデンプンを用いることが多く、細菌ではグルコース以外にペプトン、トリプトン、カザミノ酸等の有機窒素を含有する炭素源を用いることが多い。
培地中に含まれるブドウ糖(炭水化物)は、
.┘優襯ー獲得のため、
同時に炭素源として炭水化物の分解による菌種の鑑別の目的のため
である。
本培地では,離┘優襯ー獲得、炭素源の追加供給(カゼインペプトンに含まれる炭水化物が少ない)目的で添加されている。添加することで細菌の発育が良好になる。


2 窒素源
窒素源は炭素源に次いで重要な栄養源で、アンモニウム塩、硝酸塩などの無機窒素源とアミノ酸やペプトンなどの有機窒素源に大別される。無機窒素源は独立栄養生物のほか、窒素同化が可能な従属栄養生物の培養にも用いられる。一方、窒素同化できない従属栄養生物を培養する

ペプトンとは(ギリシャ語で”消化”という意味)
細菌が発育するために最小限必要な栄養素は窒素源と炭素源である。細菌は自力では蛋白分解する力がないため、肉・牛乳は直接の栄養素として利用できない。しかし、タンパク質をポリペプチド・ペプチドの型まで消化すると細菌は分解することが可能になり栄養素として利用できる。これらの蛋白を消化または分解して作成された物質をペプトンと言う
ペプトンの種類はカゼインペプトン・大豆ペプトン・獣肉ペプトン、心筋ペプトン・ゼラチンペプトン等がある。カゼインペプトンは栄養学的、経済的に優れているために細菌用培地の使用頻度が最も高いペプトンである。

3 ミネラル
塩化ナトリウム
菌体内外の浸透圧の維持するために添加されている。細胞の分裂において細胞膜の増大と細胞壁の合成が重要であるが、培養初期段階ではそのバランスが崩れて細胞壁合成が不完全な状態で細胞分裂がおこることがある。この時にできたプロトプラストは低張液では簡単に溶菌するが、塩化ナトリウムを添加することで溶菌を防ぐことができる。

発育因子
コリン・葉酸・リボフラビンが主の栄養素である。これらの成分はいずれもビタミン類である。ビタミンは細菌の発育にともなう代謝時に働く酵素作用を補う補酵素の役割を担う。したがって酵素作用の活性化により細菌の発育を良好にする。

寒天
寒天は培地の固形化剤である。
原料は海藻であるテングサ、オゴノリである。培地用としてはオゴノリが利用される。主成分はアガロースで糖が直鎖状につながっており、細菌には分解されにくい構造になっている。寒天の内部に水分子を内包しやすく、多量の水を吸収してスポンジ状の構造を形成する。水分を蓄えることができ、栄養分を保持しておけるため、微生物の培地に適している。寒天は融点が85〜93℃、凝固点が33〜45℃である。

ヒツジ脱線維素血液
ヒツジの血液からフィブリノーゲン(線維素)を取り除いた血液である。
細菌用培地に血液を利用する場合は物理的(ガラスのビーズ玉を入れた容器に採血した血液を加えて、ゆっくり振盪)な手段で脱線維素血液を作成する。
血液を添加する目的は、
 ̄浜寨弋瓩慮靴靴ず拔櫃糧育する、
培地中の細菌の発育に有害な物質を吸着することで広範囲の細菌が発育する、
レンサ球菌の溶血性鑑別(α、β、γ)が可能である。(ブドウ球菌、リステリア菌、腸球菌等の溶血性の鑑別にとっても重要な役割がある)
ヒツジ血液中にはNADを分解するNADaseを含んでいる(NADが発育に必要なHaemophilus influenzae などは発育できない。)

参考
培地の成分知っていますか?
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8904/8904_yomoyama_1.pdf
培養システム
https://pub.nikkan.co.jp/uploads/book/pdf_file4cc4f0063bf12.pdf



***********************************************************************
以下、血液寒天培地、チョコレート寒天培地、BTB乳酸加培地の特徴について述べる。

1 血液寒天培地
ヒツジ血液寒天培地は、臨床材料からの溶血レンサ球菌の分離培養および溶血反応の鑑別、および栄養要求の厳しい細菌の分離培養に使用される。
本培地は、肺炎球菌等の発育支持能(コロニーの大きさ、および発育スピード)を高めたものである。

ヒツジ血液寒天培地
https://www.bdj.co.jp/micro/products/hkdqj2000001y0cx.html
CA添加5%ヒツジ血液寒天培地(M)
https://www.bdj.co.jp/micro/products/252355.html
A群溶血レンサ球菌選択培地・・・SXT血液寒天培地
http://www.bio-theta.co.jp/?%E9%A3%9F%E5%93%81%E8%A1%9B%E7%94%9F%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0___%E2%97%8F%E5%9F%B9%E5%9C%B0%E5%AD%A6%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA20


2 チョコレート寒天培地
本培地はGCII寒天培地を基礎培地に、ウマ血液8%とアイソバイタルXや牛肉エキス、酵母エキスなどのエンリッチメントを添加したもので、Haemophilus属やNeisseria属などの栄養要求の厳しい菌に対しての一般分離用の非選択培地である。
一夜培養により培地上に発育するコロニーは、すぐに次の段階に進むのに十分な大きさを期待でき、また菌種によっての特徴的なコロニーは観察しやすく、優秀な分離結果が期待できる。通常本培地での分離を目的とする菌に対しての培養では5-10%の炭酸ガス環境が要求される。

BYチョコレート寒天培地
https://www.bdj.co.jp/micro/products/1f3pro00000rxco8.html

3 BTB乳糖加寒天培地(ドリガルスキー変法培地)
Modified Drigalski Lactose Agar(変法ドリガルスキー寒天培地) はマッコンキ―寒天培地、デソキシコレート寒天培地、DHL寒天培地等と同じグラム陰性桿菌選択培地である。
乳糖を分解できる菌と分解できない菌を鑑別することができる。培地の色の変化により判定可能である。
もともと緑色→黄色へ変化=乳糖を発酵可能な菌が発育でき、大腸菌など腸内細菌がある。
もともとの緑色→変化しな=乳糖非発酵な菌で、緑膿菌などがある。

ドリガルスキー寒天培地は、1902年ドイツの微生物学者であるV.Drigalskiによって開発された病原菌分離用培地である。(当時はサルモネラ・赤痢菌の検出用であった)。欧米では、このドリガルスキー寒天培地は一般的に使用されていない。
一方、日本では、ドリガルスキー変法のBTB乳糖寒天培地として一般的に使用されている。しかしドリガルスキー変法培地とは異なり、BTB乳糖寒天培地は、ブドウ球菌、腸球菌などのグラム陽性菌も発育できるためグラム陰性桿菌の選択培地として分類されていない。複数の菌が発育できるため、ヒト感染症の細菌検査の分野では、最もポピュラーな培地として用いられている。これに対して、欧米では、ドリガルスキー寒天培地にグラム陽性菌の選択剤を添加したグラム陰性桿菌選択培地変法、ドリガルスキー乳糖寒天培地として使用されている。
グラム陰性桿菌選択培地 変法ドリガルスキー乳糖寒天培地
http://www.bio-theta.co.jp/?%E9%A3%9F%E5%93%81%E8%A1%9B%E7%94%9F%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0___%E2%97%8F%E5%9F%B9%E5%9C%B0%E5%AD%A6%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA30


写真は血液寒天培地に発育した肺炎球菌。α溶血(不完全溶血)を認める。

P1080082

Streptococcus intermedius感染症について。

成人の口腔内には700種類の菌種が生息しているとされる。これらを口腔細菌叢と呼ぶ。
口腔内各部位から検出される菌で最も多いのはレンサ球菌である。口腔内のレンサ球菌はランスフィールドの群抗原をもたないものが多く、血清型別による分類が不可能である。以前は緑色レンサ球菌viridans streptococci と総称されていた。緑色は不完全溶血環(α溶血)を意味するが、口腔レンサ球菌は非溶血のものも多い。
過去には型による分類にとどまっていたため、緑色レンサ球菌viridans streptococci としてまとめられていた。現在は分子遺伝学的方法により再分類され、口腔レンサ球菌 oral streptococci と呼ばれるようになった。
口腔レンサ球菌は大きく、4群などに分類される。
  • ミュータンス mutans 菌群
  • ミティス mitis 菌群
  • サリバリウス salivarius 菌群
  • アンギノーサス anginosus 菌群
Streptococcus intermedius はアンギノーサス anginosus 菌群に含まれる。
アンギノーサス anginosus 菌群は、口腔膿瘍や口腔由来の深部臓器感染症などの歯性感染症、心内膜炎から分離される。以前は S. milleli と呼ばれていた。S. anginosus, S. intermedius,  S. constellatusなどが本菌群に入る。歯肉縁下プラークから高頻度に分類され、培養は嫌気条件を好む。特に初代培養は嫌気条件下でなければ生育しない。歯性感染症では他の嫌気性菌と混合感染することが多い。

参考
標準微生物学

*************************************************************************

河村 好章
Streptococcus 属菌種の分類の現状
グラム陽性, 低GC% (DNAのG+Cmol% が50%以 下) の各属の16S rRNAに基づく系統解析では, Streptococcus 属は Lactococcus 属,Gemella 属, Abiotrophia 属, Globicatella 属 とともに1つのク ラス タ ーを形成している (図1)。
Streptococcus/Lactococcus のクラスターは,Pediococcus/Leuconostoc のクラスターおよびEnterococcus/Aerococcus のクラスターとも近縁な系統関係を示している。


長宗秀明 アンギノーサス群レンサ球菌の病原因子
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsb/63/3/63_3_425/_pdf/-char/ja
Streptococcus intermedius は歯性感染症から脳膿瘍、肝膿瘍をきたすという特徴がある。


壊死性肺炎
Streptococcus intermedius Causing Necrotizing Pneumonia in an Immune Competent Female: A Case Report and Literature Review. Case Rep Pulmonol. 2016;2016:7452161. Epub 2016 Nov 6.


肺に結節性病変を形成した例
Isolated Streptococcus intermedius pulmonary nodules. IDCases. 2017 Mar 23;8:48-49. doi: 10.1016/j.idcr.2017.03.007. eCollection 2017.


****************************************************************
写真はStreptococcus intermediusの血液寒天培地所見。α溶血(不完全溶血)を認める。

P1080049


新型コロナウイルスのPCR検査について、その件数増加に関して議論が続いている。
以下の如く、新型コロナウイルスの取り扱いについて、臨床の疑い検体はBSL2に、確定の病原体取り扱いについてはBSL3に定められている。

BSL4の現状
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t188-2.pdf


国内では国立感染症研究所村山庁舎がBSL4に相当する。写真。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/multimedia/8610-murayamabsl4-imgs.html

長崎大学が計画するBSL-4施設のイメージ
https://www.ccpid.nagasaki-u.ac.jp/bsl4/about/


BSL3, BSL2のイメージ
国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/images/meeting/murayama-c/mc01-04.pdf


******************************************************************************
新型コロナウイルス検体の取り扱いについて。
国立感染症研究所によるBSLのルール。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/9367-n-cov-bio.html
新型コロナウイルス2019-nCoVの病原体の取り扱いは、BSL3/ABSL3取り扱いとする。
新型コロナウイルス2019-nCoV感染疑い患者由来の臨床検体はBSL2取り扱いとする。
なお、本ウイルスは、病原性や伝搬性等で知見が蓄積中であり、本取り決めは暫定的な取り決めとする。また、新規ウイルスで知見が蓄積していないことを考慮し、曝露リスクを低減する追加対応をする。

BSLとは
バイオセーフティーレベル(biosafety level, BSL)とは、細菌・ウイルスなどの微生物・病原体等を取り扱う実験室・施設の格付けである。「バイオセーフティーレベル」は「リスクグループ」に対応している。
(例)リスクグループ3の病原体は、バイオセーフティーレベル3以上の実験室で扱うとしている。
ただしこれはあくまで原則である。例えばリスクグループ2の病原体でも、高濃度のエアロゾルが発生するような作業などでは、バイオセーフティーレベル3の実験室で行なわないと危険である ([2]p. 2-3)。

リスクグループとは
微生物・病原体などはその危険性に応じ、各国により4段階のリスクグループに分類される。
日本では、厚生労働省所管の国立感染症研究所が、国立感染症研究所病原体等安全管理規定において日本国独自のリストを作成した。特に別表3は感染症法の定める特定病原体などをリスク分類したものである。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-biosafe/8136-biosafe-kanritaikei.html
HIVの取り扱いに関して
https://www.niid.go.jp/niid/images/biosafe/PDF/HIV-bsl2-rev2_20191001.pdf

国立感染症研究所での取り扱い改定
HIV の大量培養や濃縮などの実験条件での曝露後感染リスクについての知見は十分でないためレベルダウンは行わず BSL3 での取り扱いとし、取り扱いについては別途定める HIV 取扱いマニュアルに基づくこととする。
注意:今回の感染研内の HIV の病原体取扱いの一部変更は、あくまでも感染研施設内の病原体取扱いのルール改定である。遺伝子組換え生物等の取扱いに関しては変更されておらず、HIV はクラス 3 のままである。したがって、遺伝子組換え生物等の取り扱いについては、従来通りであることに留意が必要である。同様に HIV の病原体輸送のカテゴリーもこれまで通りとする。
コメント:この説明は理解しやすい。現状、HIV感染症は治療によりコントロール可能な非致死的感染症である。ワクチンは未だ実用化されていないものの、曝露後予防対策は確立され、曝露後予防的投薬による感染成立阻止は可能である。従って、HIV は、病原性はあるものの実験者や地域社会、環境に対して重大な生物災害とはならない。なお、米国では、CDC ガイドラインに記載のとおり、BSL2 での運用とされている

WHOで紹介されている BSL2 レベルの動画。
新型コロナウイルス 疑いの臨床検体取り扱いはこのような煩雑な手順が必要である。
https://www.who.int/ihr/publications/biosafety-video-series/en/

国立感染症研究所によるBSL2のチェックリスト
https://www.niid.go.jp/niid/images/biosafe/bunyo/bunyo_checkSheet.pdf


****************************************************************
東京都健康安全研究センターのBSL3の写真。
http://www.tokyo-eiken.go.jp/lb_virus/kensa-ncov/

f38e5154b5c01db0765499e88240ee27

田中耕一さんは2002年、ノーベル賞を受賞した。
受賞理由は「生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発」であり、生体高分子の質量分析法のための「脱離イオン化法」の開発を評価され、当時日本人で12人目の受賞者となった。
https://www.shimadzu.co.jp/mass-research/nobel/index.html


質量分析法とは
質量分析法 mass spectrometry, 略称: MS とは、分子をイオン化し、質量荷電比(m/z)を測定することによってイオンや分子の質量を測定する分析法である。「マス」「エムエス」などと呼ばれる。 


田中さんの特集 NHK スペシャル
https://www.nhk.or.jp/special/plus/articles/20190305/index.html


******************************************************************************
島津製作所はこの方法を微生物の菌同定に応用できる機器を開発した。
https://www.an.shimadzu.co.jp/apl/lifescience/proteome0207005.htm

https://www.nite.go.jp/nbrc/industry/maldi/maldi.html

通常、菌株の特性を調べる方法として菌の形態,生化学検査,16Sまたは18S rDNA配列の解析などがあるが,これらの方法はいずれも煩雑な作業と時間を必要とし,しかも菌株の一面しか捉えることが出来ないという問題点があった。
これら問題を補填する方法として,マトリックス支援レーザー脱離イオン化法 Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization, MALDI)は質量分析におけるサンプルのイオン化法の一つである。日本ではマルディーと呼ばれることが多い。

MALDI-TOFMSは微生物を”丸ごと”測定することが可能である。 微生物”丸ごと”測定ではタンパク質,ペプチド,脂質などのイオンが観測されており,菌株が持つ各種分子を全体として捕らえる新しい分析方法である。


大楠 清文:トピックス http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-180523.pdf


東山智宣:質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いた臨床微生物同定と感染症迅速
診断への応用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/myco/63/2/63_209/_pdf

MALDI-TOF MS による微生物同定は,微生物菌体を専用サンプルプレートに載せ,マトリックスを混合後,乾燥させレーザーを照射し,主として菌体のリボソームタンパク質をイオン化し,MS 計内部での飛行時間計測結果から構成タンパクの質量荷電比(m/z)と強度によるマススペクトルパターンを得る.このマススペクトルパターンは,そのサンプル菌株独自のものであるが,菌種により複数の共通ピークを持つため,これを利用し同定する.
すなわち,予め数千株の既知標準菌株のマススペクトルパターンを模式化した MSP(Main Spectra)をデータベースとして登録しておき,サンプル菌株由来のマススペクトルパターンの MSP を既知標準菌株由来のものと比較し,最も類似するものを選び出すことにより同定が可能となる.


小松 方 MALDI-TOF MS を用いた臨床微生物学的検査の新しい潮流原理から応用まで

******************************************************************************
MALDI-TOF MS微生物同定用ライブラリー(指紋判定法)の提供
https://www.nite.go.jp/nbrc/industry/maldi/maldi.html


MALDI-TOF MS微生物同定用ライブラリー(指紋判定法)のパンフレット
https://www.nite.go.jp/data/000106063.pdf


******************************************************************
さらに機器の小型化に成功した。机の上に置ける大きさで、価格は3,000万
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP510826_Q9A530C1000000/

従来のMS質量分析装置は,設置に大きなスペースと周辺設備を必要としたが,MALDImini-1は,A3サイズを下回る省スペースなフットプリントで, 真空ポンプも内蔵しており,AC 100V電源さえあれば設置することができる。
https://www.an.shimadzu.co.jp/ms/maldimini-1/index.htm
https://www.an.shimadzu.co.jp/ms/maldimini-1/technology.htm


写真は MALDImini-1

https___imgix-proxy.n8s.jp_DSXZZO4544634030052019000000-PB1-1

このページのトップヘ