鳥の重箱脊髄路について。続き。
参考:エッセンシャル神経科学。一部編集して記載。

脊髄路は、上行路と下行路が存在する。長い下行路は、随意運動や不随意運動、筋緊張の調節、脊髄の髄節性反射および内臓機能の調節などの運動機能を仲介している。
皮質脊髄路は大脳皮質から下行する。
視蓋脊髄路や赤核脊髄路は中脳から生じている。
その他の経路は下位脳幹の異なった神経核グループから生じている。これには、橋や延髄から生じる外側や内側の前庭脊髄路および網様体脊髄路がある。
更に延髄の神経核から生じるその他の下行路は自律神経機能を調節する。皮質脊髄路や赤核脊髄路は主に屈筋運動系や肢の微細な運動の制御に関係している。その一方で、前庭脊髄路や網様体脊髄路は、主に抗重力筋、姿勢およびバランスを調節している。


長い下行路
●皮質脊髄路
McGill の解剖図:こちら
この経路は微細な運動の制御に関与している。これはヒトの中枢神経系で最も大きく、最も重要な経路である。
大脳皮質から始まり、延髄錐体を通って脊髄に終止する。これらの軸索の多くは体肢の遠位部の微細な運動を制御している。皮質から生じる軸索は放線冠に収束し、それから内方、中脳の大脳脚、橋、延髄を通って下行する。その線維の大多数は (90%) は、延髄と脊髄の接合面で反対側へ交差し、外側皮質脊髄路を構成する。この経路の線維は脊髄を下行し、異なった分節レベルで交差し、反対側の前角細胞とシナプス (接合) する。
延髄の腹側 (前方) 表面には脊髄の前正中裂の連続したものがある。延髄錐体はこの裂のそれぞれの側に位置している。その錐体を下行性の皮質脊髄路や皮質延髄路の線維が通っている。延髄と脊髄の接合面での交差は錐体交差 pytramidal decussation と呼ぶ。
*交差 (交叉):錐体交差は錐体路 (皮質脊髄路) だけの交差である。よって、基本的には右大脳 (または右皮質脊髄路) が障害されれば、交差する対側の左側の四肢麻痺が生じる。
小脳の伝導路には交差性のものが無いため、全て同側支配になる。
*皮質と脊髄を結ぶ。

●赤核脊髄路
この経路は赤核のニューロンから生じる。この核は中脳被蓋の吻側半分に位置しており、ニューロンの軸索は腹側中脳の中線を横切り、反対側の脊髄まで下行する。赤核脊髄路の線維は体部位再現的に配置されている。すなわち、頸部の脊髄髄節は赤核の後ろ側から線維を受けるが、赤核は感覚運動皮質の上肢領域から入力を受ける。
また腰仙部の赤核の腹側半分から線維を受けるが、赤核は感覚運動皮質の下肢領域から入力を受ける。赤核脊髄路の線維は介在ニューロンに終止する。介在ニューロンは背側部に位置している運動性の前角細胞に投射している。
*赤核 (中脳に位置する) と脊髄を結ぶ。

●視蓋脊髄路
この経路が始まるニューロンは上丘に位置する。ニューロンの軸索は頸部の脊髄髄節の上部に終止している。この経路は視覚や聴覚の情報をもとにして頭部の運動方向を決めるのに働く。
*視蓋 (中脳被蓋) と脊髄を結ぶ。

●外側前庭脊髄路
この経路は橋と延髄の境界部に位置している外側前庭核のニューロンから生じる。この経路の線維は非交差性で脊髄の全経路を下行する。その下行線維は、体幹や同側の肢の伸筋を支配している運動ニューロンを活性化する介在ニューロンに終止する。外側前庭核ニューロンは小脳から抑制性入力を受け、前庭器官から興奮性入力を受けている。
まとめると主な機能は直立姿勢やバランスを維持する筋を抑制する。
*外側に位置する前庭核 (延髄にある核) と脊髄を結ぶ。

●内側前脊髄路
この経路は同側や反対側の内側前庭神経核から生じる。頸部脊髄の前索を下行して同側の前角に終止する。この経路の主な機能は、姿勢の変化に応じて頭の位置を調節する。
*内側の前庭神経核 (延髄にある核) と脊髄を結ぶ。

●網様体脊髄路
網様体は機能的に異なった3つの線維系を生じる。この系は3つの成分は調節する。1) 運動機能を調節する、2) 自律神経機能を仲介する、3) 痛みインパルスを調節する。
1) 運動機能の調節
延髄から生じる線維は巨大細胞核と呼ばれる内側に位置する大きな細胞の一群から生じる。この細胞は脊髄の全てのレベルまで両側性に投射し、この経路は延髄外側網様体脊髄路と呼ばれる。この経路の重要な機能は、伸筋脊髄反射を強力に抑制することである。
別の網様体経路は、橋内側網様体脊髄路と呼ばれ、主な機能は伸筋脊髄反射を促進することである。
2) 自律神経機能の仲介
下行性の網様体脊髄路の第2のグループの線維の多くは延髄の腹外側部から始まり、脊髄の胸腰髄部の中間外側の細胞へ投射している。
3) 痛みの調整
延髄の大縫線核に位置しているセロトニン作動性ニューロンに投射している。この下行線維の機能は、脊髄視床路を上行する痛みのインパルスの活動を調整する。
*延髄外側網様体脊髄路は、延髄と脊髄を結ぶ。
*橋内側網様体脊髄路は、橋と脊髄を結ぶ。

●内束縦束 (MLF)
内束縦束は、主に上行線維からなるが、下行線維も含んでいる。上行性および下行性の線維のほとんどは橋に位置する前庭神経核から起始する。
MLF の下行線維は前索の後部に位置している。主に脊髄の上部頸部髄節に投射している。この線維は上部頸髄に位置している運動ニューロンの活動を抑制する。つまり、体平衡の維持に関与する。錐体外路の一部。

●固有束
固有束は脊髄に始まり、脊髄に終わる。上行性、下行性、交差性、非交差性とあらゆる線維を含む。脊髄の異なる髄節間を接続する。