子宮頸部におけるCINの診断について。
最初に全ての生検あるいは手術検体において、目的とした部位が採取されているかどうかが重要です。子宮頸部であれば「移行部」が含まれているかどうかを必ず判定します。
外科病理学によれば子宮頸部の異形成は、重層扁平上皮の各層において細胞成熟過程の乱れ、極性の乱れと核の異常と定義される。さらにこれらは3つに分類される。すなわち、
軽度異形成: 異形成が上皮の下層3分の1に限局するかコイロサイトーシスが表層3分の1にあるもの。
中等度異形成: 異形成が上皮の下層3分の2に限局する。
高度異形成: 異形成が上皮の表層3分の1におよぶが全層置換していないもの。
上皮内癌:癌としての形態をもつ細胞が上皮の全層におよぶが間質浸潤が欠如する病変。
核の異常とは核腫大、大小不同、核型不整、核クロマチンの増加、異常核分裂像である。軽度異形成では異常核分裂像を認めることは稀である。
上記は病理医間で再現性の問題が指摘されていた。そこに子宮頸部の病変は核DNAの異常であり、この「病理像」と「遺伝子学的根拠」を包括して子宮頸部上皮内腫瘍CINと言う概念が提唱された。すなわちCINは良性の病変ではなく、ある一定数の症例は癌化する、癌化への一過程であるとする点である。CINは3段階に分類され、
CIN1: 従来の軽度異形成に相当。コイロサイトーシスはあっても良い。http://pathology.or.jp/corepictures2010/15/c04/02.html
CIN2: 従来の中等度異形成。コイロサイトーシスはあっても良い。http://pathology.or.jp/corepictures2010/15/c04/03.html
CIN3: 従来の高度異形成と上皮内癌を含む。コイロサイトーシスはあっても良いが、数は少なくなる。
http://pathology.or.jp/corepictures2010/15/c04/04.html
http://pathology.or.jp/corepictures2010/15/c04/05.html
更に分子生物学、微生物学の発展により、扁平上皮癌や前駆病変はHPVの関与が明らかになり、CINには2つの概念が含まれると考えられ、上皮内扁平上皮病変SILが提唱された。これら病変には90%以上にHPVが検出され、HPVの型(高リスクなど)、癌化、異型の程度から低悪性度上皮内病変 low SIL, 高悪性度上皮内病変 high SILの2群に分類された。すなわち、
LSIL: CIN1
HSIL: CIN2 or CIN3
(三上, 2011)
病理学的にCIN の程度を評価する場合は,腫瘍性の異型(基底側の異型)とウイルス感染による細胞傷害の結果として生じるコイロサイトーシスを伴う感染性の異型(表層の異型)を区別する。
感染性の異型が CIN の診断に重要な所見であるのに対して,腫瘍性の異型がみられる範囲が異形成病変としての程度(軽度〜高度)を規定する.
感染性の異型:コイロサイトーシスは感染性の異型である。コイロサイトーシスは成熟異常の結果生じる細胞質内空胞(偽コイロサイトーシス)と区別する必要がある.コイロサイトーシスを示唆する所見としては,(1)中層・表層細胞の核腫大(3倍以上)(2) , 核の不均一な染色性,(3)核濃縮・クロマチン増量,(4)2核細胞(2個以上400倍強拡大視野)(5)不整形で大小不揃いな細胞質内核周明庭,が挙げられる.コイロサイトーシスは CIN1の特徴的な所見である。
潜伏感染状態ではHPV DNA はepisome (染色体外と染色体内の両方の存在形態をとりうる DNA)で存在し、感染細胞のDNA複製時のみHPV DNAも増幅できる。
ウイルスが大量に産生される状態はproductive viral infectionで、感染細胞のDNA複製とは無関係にHPV DNAが大量に複製される。その結果、コイロサイトーシスなどの細胞形態異常を起こす。コイロサイトーシス様形態も減少する。
以上から、
異型核を伴うコイロサイトーシスがあれば迷わずCIN.
異型核を伴うコイロサイトーシスのみならCIN1.
異形成が上皮基底層3分の1までに存在すればCIN1.
異形成が上皮基底層3分の2までに存在すればCIN2.
異形成が上皮基底層3分の2以上から表層までに存在すればCIN3.
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