先日、10月20日に新刊が発売されました。
タイトルは『マネジャーのジレンマ』です。

日々、仕事の現場でジレンマに悩むマネジャーの方々の助けになる本だと思っています。ぜひ、ご一読ください。

この本の中に「すべての判断基準を『顧客』に収斂する」ということを書いています。

判断を求められたとき、マネジャーが迷うのは「何を基準に判断すればいいか」ということです。判断基準はひとつではないからです。「売上」「利益」「顧客満足」、その他の「社内事情」、または「好き嫌い」など、さまざまな要因がからんでいます。

すべてをごまかさずに、「つねに判断を『顧客』に収斂する」ことで、マネジャー自身も精神的にラクになれます。いつでも、ひとつの基準で判断できるからです。


ここでは、マネジャーが持つべき判断の<モノサシ>として、「つねに顧客を基準にする」ことで、的確な判断ができるということを書きました。

そして、ここでは書けなかったのですが、「つねに顧客を基準にする」ことには、もう一つ、大きな意味があります。

それは「周りの評価に振り回されない」ということです。

組織の中では、つねに「評価」がつきまといます。査定などのような形式的なものから、「上司にどう思われているのか」「部下はどんなふうに考えているだろうか」など、つねに気になってしまいます。

「同期に負けるんじゃないか」
「上司はあいつのほうを評価しているんじゃないか」
「部下は自分のことをどう思っているんだろう」

私もかつては、周りの目ばかりを気にしていました。

しかし、周りをよく見てみると、このあいだまで評価が高かった人が、こんどは周りからこき下ろされているということも、めずらしいことではないということに気がつきました。「周りの評価」というものほど、うつろいやすく、あてにならないものもないのです。そこには必ず、利害関係や個人的な感情が影響するからです。

たとえば、上司にとって都合のよい、使いやすい人間であれば評価されるかもしれませんが、いくら能力が高く、成果を上げていても、上司の利益に一致していなければ評価されることはありません。一度は「あいつはよくできる」「彼は信用に足るやつだ」と評価されたとしても、「あいつは全然だめだ」「あいつは自分のことしか考えていない」とガラッと評価が変わってしまうことなど、いくらでもあるのです。

「公平な評価」「正当な評価」などと言いますが、評価するのが人間である以上、そんなものはないと思っておいたほうがいいでしょう。自分ではない他人の評価に、自分を合わせることなど、しようと思ってもできるものではありません。コロコロと変わる、人の評価に合わせようとしているうちに、疲れ切ってしまいます。

では、何を基準に仕事をするのか。何のために一生懸命働くのか。

それが「顧客」です。顧客には社内事情も、個人的な感情も、まったく関係ありません。いいものはいいし、悪いものは悪いのです。その評価基準はつねにフラットです。これほど確かな評価はありません。

そう考えるようになってから、周りの目があまり気にならなくなりました。自分がどこを向いて仕事をすればいいのかが、はっきりと定まったからです。なによりも精神的に強くなれました。

周りの評価を気にしていては、いい仕事はできません。そしていい人生も送れません。

何のための仕事なのか、誰のための仕事なのか。

その答えはひとつしかないのです。