2006年05月

2006年05月31日

水樹和佳子「グレイッシュ・メロディ」

 水樹和佳子のマンガ「グレイッシュ・メロディ」を読みました。作者5年ぶりの新作!SF長編「イティハーサ」を完結させたあと、どうなってしまったのかしらと思ってましたが。漫画家活動を再開されたんですね!うれしい〜♪「イティハーサ」とは内容が一転、現代日本が舞台のホームドラマ。それも一風変わったホームドラマなの。
 主人公の中学生・真幸(まさき)は、父親とふたり暮らしの少年。母親のゆくえはわからず、父親の職業は不明。それだけでもフツーじゃないのに、真幸は普通の人には見えない何かが見えてしまう不思議な能力を持っていた。そんな親子のまわりにおこる小さな事件のつみかさねの中で、真幸は両親の秘密を知ることになる・・・。
  真幸パパの神山仁さんがとってもイイ男なのー。イイ男なのに優しいのよう。世間一般の家庭のあり方とはちょっと違うカタチをしてる神山家が、明るく優しく暮らしている様子が暖かくていいなぁと思いました。

 あとがきで水樹さん自身が「イティハーサ」完結後の心境をつづってます。休筆後、再び執筆活動に向かわせた思いも。『世間はいつのまにか、全てに「白黒」をつけたがるようになってしまいました。「曖昧」という行為の実は賢さを、「中庸」という思考の実は寛大さを、そして「グレイ」という色の限りない多様さをすっかり忘れてしまったかのように・・・』←長々と引用してしまいました。「好きか嫌いか」「賛成か反対か」「善か悪か」そんな風な二元論が世間に蔓延してるように思います。「賛成か反対か」と問題を単純化すればわかりやすいけれど、その中間にある意見をすべて切り捨ててしまう。多様性を失わせてしまう。ひとつの意見、ひとつの思想に答えを見い出そうとする考えは、いつか行き詰まると思います。作者が「イティハーサ」でも書いていたように、多様性を大事にしたいです。
 白泉社ジェッツコミックスから発売中。

2006年05月27日

小浦昇「MOON MACHINE」

ギャラリーで絵を買いました。生まれてはじめて!
作者サイン入りの本物っす。絵といっても版画なので、油絵とかにくらべたらずーーっと安いの。デジカメが1台買えるくらいの値段。つーか、これでまたデジカメ購入予定が先に伸びてしまったよ・・・(未だにデジカメ持ってない)。
先日見にいった小浦昇さんの個展で購入しました。
買ったのはこの絵です。タイトルは「MOON MACHINE」。

中央に描かれてるのが「MOON MACHINE」という機械。
この機械で月をたくさん造っているらしい。
今ちょうど、機械が月をひとつ、映写機のように写し出している。
そのまわりには、できたての小さい月があちこちに転がっている。
大きさも形もいろいろ。だけど、どれも三日月っぽい。
よく見ると、まわりの人物にひとり、頭部が月の月人間がいる。

細かいところまで遊び心がいっぱいで、1枚の絵の中に物語があるような。
いつまでも見ていて飽きない絵です。いい買い物をしました♪

gc4332 at 21:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!アート 

2006年05月24日

Kバレエカンパニー「ジゼル」

 熊川哲也率いるKバレエカンパニーの公演を見にいってきました!演目は「ジゼル」。古典バレエの代表作です。貴族の青年アルブレヒトと村娘ジゼルの悲恋物語。アルブレヒトは、身分を隠してジゼルとつきあってます。でも彼にはジゼルのほかに婚約者がいる。それを知ったジゼルは悲しみのあまり死んでしまい・・・という話。19世紀に生まれた古典バレエは、こ〜いうベタなメロドラマが多いのです。きっと、今でいう「昼メロ」だったんでしょうねー。「ジゼル」は、古典バレエの初期にフランスで生まれた作品。ロシアバレエのような派手さはないけれど、ロマンティックバレエの真骨頂というか、ぴんと張りつめたような叙情性を見せてくれます。
 「ジゼル」はまた、演じるダンサーの個性によって物語の印象が変わります。熊川哲也演じるアルブレヒトは、婚約者は親が勝手に決めたいいなずけで、ジゼルへの愛の方が本物、と思わせてしまう。ほんとはヒドイやつのはずなのにー。ジゼル役のヴィヴィアナ・デュランテは、とってもはまり役!アルブレヒトの裏切りを知りジゼルが死んでしまう場面は、彼女の繊細で狂おしい演技に、グっときました・・・。
 舞台美術も素晴らしかったわ。第1幕は、背景画が見どころ。ダンサーの衣装も含めて舞台全体のトーンに統一感があり、まるで絵本の挿絵みたいでした。第2幕の見どころは、照明。ほのかに舞台を照らすライトが青白く幽玄で、精霊たちの世界にひきずりこまれてしまいます。
  とても素晴らしい舞台だったんだけど・・・席がね、4階席で(泣)。学校の屋上よりさらに高いところから前庭を見下ろすよ〜なかんじ。熊川哲也は米つぶでした・・・ハハハ・・・。

2006年05月21日

斎藤美奈子「紅一点論」

 斎藤美奈子「紅一点論」(ちくま文庫)を読んだ。とてもとても面白かった!
 子どものためのジャンルとしてのアニメ、特撮、伝記。その物語の中で、ヒロインがどのように描かれているか、どういう役割を与えられているかを読み解く評論。「職場の花」ともてはやされる紅一点のヒロインが、男社会の視点から描かれたものであるのは言われるまでもない。秀逸だったのは、そういう典型的紅一点のヒロイン像が変容していく過程。「ヤマト」「ガンダム」「エヴァンゲリオン」へと変化していく流れ、「ナウシカ」「もののけ姫」などの宮崎アニメや「セーラームーン」の分析には、目からうろこ!70〜80年代の特撮やアニメで育った私には、筆者の書いている指摘はとてもよく実感できたわ。この時代の男女観って、今見ると笑っちゃうくらい古いんだもん。
 たとえば、「未来少年コナン」のヒロイン、ラナ(「天空の城ラピュタ」のシータも同様だと思う、私は)。彼女たちを見てると、ちょっとは自分で何とかしろよ!と思ってしまう。「コナン」も「ラピュタ」も作品としては大好きなんだけれど。要するに、制作者側や受け手側の意識の問題を指摘しているの。この時代のアニメや特撮って、原作から製作にいたるまで、ほとんどが男性によって作られていただろうからな。女が描けてないのよねー。はぁーこの本読んでスッキリした!アマゾンの紹介ページはこちらっす。

 同じ筆者の「妊娠小説」(ちくま文庫)という文芸評論もとても面白いです。

gc4332 at 20:33|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip! 

2006年05月18日

マンガ小説映画バトン

「マンガ小説映画バトン」というのを拾ってきました。マンガや本や映画のバトンは以前に答えたけれど、前のを見てない方もいると思うので。

Q1・好きなマンガ5つ

●萩尾望都「11人いる!」
●山岸凉子「妖精王」
●佐藤史生「金星樹」
●清水玲子「ノアの宇宙船」
●竹宮恵子「地球へ・・・」

Q2・最近読んだマンガ5つ

●水樹和佳子「グレイッシュ・メロディ」←作者5年ぶりの新作!
●遠藤淑子「ヘヴン」「ヘヴン2」←人に薦めるために読み返した。
●今市子「百鬼夜行抄」←新刊が出たので。
●漆原友紀「蟲師」←人に借りてます。
●渡辺多恵子「風光る」←新刊が積ん読になってた汗。

Q3・好きな小説5つ

●恩田陸「六番目の小夜子」
●加納朋子「ななつのこ」「魔法飛行」
●菅浩江「永遠の森 博物館惑星」「五人姉妹」
●長野まゆみ「少年アリス」
●ロバート・F・ヤング「たんぽぽ娘」

Q4・最近読んだ小説5つ

最近読んだ本じゃなくて、読みかけの本も入れていいですか〜。小説ではなく評論・エッセイ・画集・写真集も含めて本全般ってことで。つーか↓小説が入ってないわ・・・汗。

●斎藤美奈子「紅一点論」←アニメ・特撮のヒロイン像評論。
●後藤健生「ワールドカップの世紀」←サッカーW杯ノンフィクション。
●萩原朔「少女アリス」←今では絶版の少女写真集。
●小浦昇「青い月の物語」←最近展覧会を見にいった画家の作品集。
●岩合光昭「きょうも、いいネコに出会えた」←動物写真家の猫写真集。

Q5・好きな映画5つ

●「スターウォーズ」シリーズ
●「ブレード・ランナー」
●「2001年宇宙の旅」
●「惑星ソラリス」
●「ヒドゥン」

Q6・最近観た映画5つ

ここ数カ月の間に映画館やDVDで見た作品ってことで〜。

●「ナルニア国物語・ライオンと魔女」←今月、映画館で見た。
●「有頂天ホテル」←三谷幸喜の最新作。
●「コープス・ブライド」←ティム・バートン監督の人形アニメ。
●「スターウォーズ・エピソード3」←泣いたよう〜。
●「アリス」←シュヴァンクマイエル監督の人形アニメ。

以上!このバトン、答えたい方は自由にお持ちかえりくださいませ。

gc4332 at 22:03|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip! | その他

2006年05月14日

フィギュアスケート・ジャパンオープン

 フィギュアスケートのジャパンオープンという国際大会をテレビで見ました。5月にフィギュアの大会を見るというのがちょっとヘンな気分。春〜夏はサッカー観戦、秋〜冬はフィギュアスケート観戦という季節感で生活してるので。この大会、プロとアマが一緒に出てるのがうれしいわ。なかなかプロの演技はテレビで見る機会がないので。というわけで私の注目は、ヤグディンと本田武史くんなのでした。
 ロシアのアレクセイ・ヤグディン。ソルトレークで金メダルをとった「仮面の男」の演技。当時とくらべたらジャンプの難易度は低いし、最後は疲れちゃった?でもやっぱり「仮面の男」のプログラム、見せてくれるわぁ。カナダのジェフリー・バトルも好きな選手。前傾のイーグルやイナバウアーなど、足技とリズム感で見せてくれる。でもジャンプが苦手なので、なかなか完璧な演技を見られないのよねー。今日もちょっと残念。ところで、いつも民放のフィギュア中継は、外国人男子の演技を激しくカットしてくれるのだけど、今日のテレビ東京はまぁちゃんと放送してくれた方かな・・・ほかの民放にくらべたら良心的だったと思う。テレビ東京がんばれ。
 日本人選手の感想。本田武史くん。去年の全日本選手権と同じ「トスカ」の演技。全日本のときはミスが目立ったけど、今日はトリプルアクセルを2回決めて、ちゃんとプログラムをすべりきってくれたのでよかったわぁ。高橋大輔くんは、来シーズンの新しいプログラムを期待。女子では、安藤美姫ちゃんの演技を久しぶりに見ました。おぉ、ジャンプがよくなってるじゃん。衣装も髪型も、オリンピックのときよりずっといいよう。もう4回転なんか挑戦しなくていいよ。浅田真央ちゃんは、あいかわらずの安定感がすごい。彼女の演技で感心するのは、トリプルアクセル、片手ビールマン、手をひらひらさせるスパイラル、と彼女オリジナルの技をいろいろ持ってるところ。荒川静香さんは、貫禄のエキシビション。美しかったわー。

2006年05月11日

マンガの書評を更新!

 えと、自分のホームページ「プラネット・ルビー」で、マンガの書評を書いてます。久しぶりに更新しました。このブログで書いてる文章がたまってきたので、それをまとめただけなんですが。おまけに、書評なんてえらそ〜なものでもないただの感想ですが・・・。興味のある方は、ご覧になってください。何か面白いマンガないかな〜と思ったら、読書案内のたすけになればというかんじでやってます。↓
http://www.bekkoame.ne.jp/i/gc4332/

 トップページから「TALK」をクリックして、「マンガ感想vol.2」へお入りください。

2006年05月08日

小浦昇展「SILVER MOON」

 名古屋のギャラリーに、小浦昇の展覧会を見にいってきました!とってもよかったぁ〜。小浦昇は、月をモチーフにした絵を描かれている銅版画家。青い色に特徴があって、銀青色とでもいうような柔らかくて透明感のある色づかいがとても綺麗。
 彼の絵の世界は、飛行船、汽車、複葉機、望遠鏡などなどが登場し、20世紀初頭を思わせる風景の中で月がいろいろな形で描かれてます。ただ空に浮かんでいるだけでなく、頭が月の形の月人みたいな人物が出てきたり、月を製作するMOON MAKERという人物が出てきたり、はりぼてのように地上に置かれている月があったり・・・。
 名古屋の栄にあるギャラリータマミジアムで、5月20日まで展覧会を開催してます。サンシャイン栄(観覧車のあるとこ)のとなりのビル2階。ギャラリーでは展示即売もしてます。それほど大きい絵じゃないし、銅版画だからお値段も高くないし、買おうと思えば買えないこともないのよね・・・ううう。来月ボーナスが出るし。ぐらぐら。でも作品集を持ってるのでガマン、と思いとどまったわ、とりあえず。

gc4332 at 19:02|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!アート 

2006年05月05日

ローザンヌ国際バレエコンクール

 NHK教育テレビで「ローザンヌ国際バレエコンクール」の模様を放送してたので見ました。こ〜いうマニアックな番組を地上波で放送してくれるからNHKって好きだ。
 ローザンヌといえば、若手ダンサーにとっては世界への登竜門となるコンクール。熊川哲也や上野水香もこのコンクール出身なのです。出場者の年齢は15〜18歳。100人をこえる出場者の中で、決戦と呼ばれる最終審査に残ったのはたった12人。バレエマンガでおなじみのコンクールの場面だけど、実際に見たのははじめて。最終審査に残るような子は、みんな上手で素人目には区別つかないんじゃないかと思っていたけれど。意外に違いが見えるものなんだなぁ。たしかにテクニックは水準以上なんだけど、振付けにあわせて身体を動かしているだけの子もいれば、自分の中で振付けをちゃんと意味づけできて踊っている子もいる。解説者の方が「バレエはセリフがないので・・・」とおっしゃってたけれど、「音楽を身体で語る」ということなんだろうなぁ。
 最終審査の課題は、クラシックバレエ2つとコンテンポラリーダンス1つ。面白かったのは、コンテンポラリーダンスの審査。 今回の課題は、イリ・キリアンの振付け作品。10代の子には難しいと思う抽象的なダンス。「あ、この子なかなか上手」と思ったら、解説者が「振付けを自己流に踊ってしまっている」と指摘をしてた。厳しい〜。でもキリアンの振付けはなかなか好みだったので、プロのダンサーが踊るのをちゃんと見てみたいわ。
 出場者の中で、とびぬけて目をひく男の子がいました。ウクライナ人で、踊りに華があってチャーミング。「あの子いいなぁ」と思ってたら、観客の人気投票による「観客賞」を受賞、スカラシップ(入賞)でも最高点を獲得!セルゲイなんとか君←名前覚えてない。そのうちプロで活躍するようになるんじゃないかしら♪

2006年05月01日

和田慎二「あさぎ色の伝説」

 和田慎二のマンガ「あさぎ色の伝説」を読みたくなったので、オークションで落札しました。今では絶版になっている幻の作品。
 新選組の沖田総司が主人公。江戸の試衛館時代から、京へのぼり新選組で活躍しはじめるまでをオムニバス形式で描きます。試衛館の仲間との交流、はじめて人を斬る話、初恋の話など、人間・沖田総司の若さが瑞々しいです。作者の、沖田総司や新選組に対する思い入れが感じられて好感が持てる作品。ただ、おそらく作者はもっと続きを描きたかったのではないかなぁ。絶版になったまま復刊を断っているという話なので、この作品の出来に満足していないのかもしれない。ファンにとっては、作者の代表作としても新選組マンガとしても評価のできる作品だと思うのだけれど。
 白泉社・花とゆめコミックスから全4巻が発売、現在絶版。