2017年08月19日

脳の発達について、特に領域間のつながりがどのように発達するかを、非常にわかりやすくレビューしてくれる論文があったので、自分のメモ書き程度に簡単にまとめてみました。

Marcus Kaiser, Mechanisms of Connectome Development, Trends in Cognitive Sciences, Volume 21, Issue 9, 2017, Pages 703-717, ISSN 1364-6613, http://dx.doi.org/10.1016/j.tics.2017.05.010.


・いかにして長距離のコネクションができるのか
軸索は基本的に直線的に伸長し、ターゲットとなるニューロンを探す。そのため、基本的には近距離のニューロンとの間にコネクションを作る。

軸索の長さに影響を与える2つの要因があり、1つはニューロンの密度、もう1つは軸索の曲率である。前者に関しては、ニューロン密度が高いところを軸索が通る場合、そこのニューロンとコネクションを作るため、短い軸索になる。

もう1つは軸索の曲率で、真っ直ぐの軸索からジグザグのものもある。面白いのは、ジグザグだからといってニューロンと結合しやすいわけではなく、むしろ真っ直ぐの軸索の方が結合しやすい。曲率が高いと、無駄に長くなる可能性がある。

軸索は、ターゲットニューロンからの分子を検出してコネクションを作るが、軸索が検出できる範囲は1cm程度とのこと。しかし、脳内での長い軸索は10cmくらいのこともあるので、それはどう実現されるのか。

1つの可能性は、先駆者的なニューロンが作った道筋を利用するという可能性。これにより軸索の束ができる。

もう1つは、発生当初の、ニューロン同士が近い時期にコネクションを作るという可能性。


・非対称のコネクションの形成
あるニューロンや脳領域と別のニューロンや脳領域にコネクションがある場合に、お互いに同等のコネクションを作る場合だけではなく、一方のコネクションがもう一方よりも強いことがある。

これに影響を与えるのが、1つはニューロンができるタイミング。同じタイミングにできるニューロンは対称的なコネクション、別のタイミングだと非対称になりやすい。

別のタイミングの場合、後でできたニューロンは、以前にできたニューロン同士は既にネットワークを形成しているため、遠くのコネクションを探す必要も生じるようである。


・モジュールの発達
脳のモジュールがどう生まれるかについて。
まず、同じタイミングで生まれたニューロンは空間的にも近く、ニューロン同士のコネクションを作りやすい。モジュールの大きさは、その形成にかかわる時間窓の長さ。

もう1つのモデルとして、ニューロンの自発活動というものがあるが、これはある程度形成したモジュールに適用するべき。

他のモジュールとのつながりの強さやどのくらい他のモジュールとつながっているかを示す指標がdispersion。dispersionの高さは、あるモジュールが、他の多くのモジュールとつながっていることを示し、dispersionの低さは、あるモジュールが特定のモジュールとつながっていることを示す。

ヒトの成人では、dispersionの平均は12%であり、ある脳領域のある部位は他の12%の領域とつながっていることを示す。


・ハブとリッチなハブ
脳がスケールフリー(一部のノードが膨大なリンクを持つ一方で,ほとんどはごくわずかなノードとしか繋がっていない)かスモールワールド(2つのノードが、中間にわずかな数のノードを介するだけで接続される)かというのは議論があるところだが、この論文ではスケールフリーの視点に立つ。そこで重要なのが、多くの領域との結合をもつハブ領域の存在である。

こういったハブ領域がなぜ発生するかについて、早く生まれたニューロンが、ハブになるという考えが有力である。早く生まれたニューロンに対して、新しく生まれたニューロンがコネクションを作っていきハブになる、また、逆にコネクションを持たないニューロンはどんどんコネクションを持たなくなり、あるニューロンや脳領域に一極化するという考えである。

さらに、最近では、あるネットワークに追加されるノードの数は指数関数的に増えるため、ネットワークのコネクションは非線形で加速度的に増えていくという考えもある。このことにより、あるノードは、他のノードより、また、あるハブは、他のハブより、コネクションが増えることが説明できるかもしれないという。


gccpu at 22:18コメント(0) 
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