2010年03月08日

【コラム・ネタ・お知らせ】 現代における消費というマナー(下)

クエスチョナーズの藤岡です。前回のコラム「現代における消費というマナー(上)」なんですが、なんだか妙にご好評を博してしまって微妙にプレッシャーがかかってきています。直接お便りも来ちゃったし...。期待されればされるほど裏切りたくなるこの気持ち...ですが僕も今年で31歳、良い年した大人なのでちゃんと続きを書いてみようと思います。
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・前回の話

前回のコラムは「コンテンツのマネタイズにおける悪循環をどうにかしなければ」というところで終わっておりましたので、今回は具体的にその方法について語ってみたいと思います。

前回のコラムのおさらい。 コンテンツのマネタイズの悪循環

その前に、正直今回話そうと思っていた内容に対して、直接いただいたお便りでクリティカルなところを突かれていたので、少し返答・補足をします。

・代理店の話

現在のコンテンツ制作・流通批判がなされる際には「代理店の中間搾取」という事がよく語られています。曰く「代理店が無ければ、コンテンツ制作にかかる経費が減り、ユーザーは安価にコンテンツを手に入れることができるし、制作者側にももっと多額の報酬が払われるであろう」みたいな。

僕は結構この話に違和感を覚えることが多くて、それはなぜかというと、この論調というのが「消費者または制作会社からアウトソーシング業務を受ける個人」からの一方的な意見のように見えてしまうからです。

平成15年の経産省によるアニメ制作の報告(リンク先はPDFです)。
スポンサーの5000万円も現場では500万円に。

現在のコンテンツ(にも限りませんが)制作現場の構造というものは基本的に分業化が進んでおります。なのに、コンテンツ制作のためのお金を集めてくる役割を担う「代理店(営業と言い換えても可)」だけを、「コンテンツ制作」という業務の中から切り離して「区別」するのが不思議極まりない、と思うわけです。

確かに具体的な待遇面での差というものは存在するでしょう。しかし、そのバランスを決定しているものというのは当事者同士の話し合いなので、余人が語っても仕方が無いのでは?とも思います。例えば同じ代理店を通してアニメを制作するとしても、ジ○リとクエスチョナーズでは条件が変わってくるでしょう。そのバランスを何とかしたいと思うならば、己のブランド価値を何がしかの実績で高めた上で、相手との交渉を有利に進めるしかないわけです。

だから現在のそういったアンバランスさというのは、制作者側がそういった作業(お金を集めたり、メディアの占有権を抑えたり)について怠慢だったから。さらに言うと、制作者もそうですが、ユーザーも含めた、そういう状況を甘受してきたコンテンツ市場に関わる全ての人に責任のある話だと思うわけです。

とはいえ、このアンバランスな状態も、市場で一定以上の景気水準が保たれて、制作会社の末端の下請けを担当する人間の生活が何とか成立していた状況下では多少の不満はあれども成立していたのです。

ちょっと前回の話に戻りますが、現在多くのコンテンツがマネタイズの過程に問題(具体的にはケースバイケースですが)を抱えているわけです。そうして制作サイドに入ってくるお金が減少してしまうような状況下になると、このアンバランスさというモノが致命的な構造的欠陥であったことが市場に関係する全ての人たちに実感となってきつつある、というのが現状です。


・で、やっと本題ですよ

こういう状況(アンバランスな状態)を打破するには、上記のように自らの力を高めて、相手が自分の出す条件を飲むしかない状況を作り出すか(でもコレは場の中の取り分が変わっただけであまり根本的解決では無いですね。誰かが笑えば誰かが泣くだけです)、そもそも全く違うフィールドを作り出してしまうしかないわけです。で、ここからは僕の妄想する「コンテンツ天国」のお話。

本来エンタテインメントコンテンツというのは、コンテンツを制作する人が自分で商品を手売りして、お金を出して楽しむユーザーがいれば、最悪二人の人間が存在するだけで成り立ってしまうのです。これは前回のコラムで書いたような、パトロンとアーティストの関係とほぼ同じもので、コンテンツという市場における最低単位の市場形態です。

エンタメコンテンツ市場の最小単位。
この規模の市場では作品の規模にも限界があります

勿論、たった二人で閉じられてしまう市場では動かせるお金の量も限られてしまいますので、制作することのできるモノも限られます。そこで大きな作品を作ろうとするならばこの市場規模を大きくしなければなりません。

しかし、この時に現行のモノと同じ方法で市場規模を大きくすることを考えていては、結果も同じようになってしまうでしょう(営業担当と制作担当のバランスの悪さという意味で)。これは争点となる両者の対決の場が、人間同士の対話という形をとらざるを得ないので、どうしても営業サイドの得意フィールドで行われてしまうからです。


・コンテンツ天国の正体

そこでその「営業担当」の部分を、利益をあまり追求しない第三者機関に委託してしまって、そのハブに対してユーザーとアーティストを集約してしまえないか、というのが僕の考えるコンテンツ天国の正体です。

僕が考えるコンテンツ天国
製作者とユーザーの間に、利益をあまり追求しない機関が入る。

例えば「コンテンツ天国」みたいなサイトを用意し、そこにユーザー(会員)が資金を500円玉貯金のノリでプールしていく。管理システム運営におけるロスをなくすために、ニコニコ動画の有料会員のように月額幾らで徴収しておくのがいいでしょう。プラスアルファでポイント追加購入とかかな。

このお金はポイントに換算され、各ユーザーが使用できる「投票用紙」(※後に説明)のようなものとして扱われます。そして同時に、各アーティスト(または企画屋)たちは自分が作りたいコンテンツの企画書をアップしていきます。

そして各アーティストが出した企画を実行に移すのに必要な金額(ポイント数)が提示され、それに対して各ユーザーが「コレが欲しい」と思えば、各人の保有ポイント数を自由に割り振って企画に投票をしていきます。そして投票ポイント数が企画実行に必要な分だけたまった時に、その企画の制作が開始されるわけです。

そして完成したコンテンツは投票をしたユーザーの名をクレジットした状態で世に発表される(最終的には一般的に流通するが会員は時間や購買個数において優先的にそのコンテンツを享受する)、とこうなるわけです。

コンテンツ天国の仕組み

文字が多くなりすぎて嫌になってきましたか?僕も自分で書いときながら、正直疲れてきました。基本的に僕はこういう企画の内容を人に伝える時は、会話の勢いだけで伝えきってしまう(つもりになってしまう)タイプの人間なので、たまに本当に文章だけで人に何かを伝えようとすると、この有様ですよ。そこが綺麗にサラリーマンをやれない理由でしょう。

・コンテンツ天国で変わること

でもまだ終わりませんよ。なんかもう一回くらい続けちゃった方がいいのかしら?とか言いながらも話を先に進めます。

この方法(「コンテンツ天国」)が実行されればユーザー=パトロンの構図が明確化され、アーティストや企画屋はある一定のリスクヘッジをしたままコンテンツの制作が可能になります。

海賊版や違法アップロードによる被害が減る、というよりはそういった不良ユーザーの求めるものよりも、ちゃんとお金を払ってコンテンツを楽しむユーザーの意向しか反映されない状況が作り出せる。さらに評価されるコンテンツは事前にある一定のリターンが保証されるわけです。そういったリスクヘッジが可能になることにより、世に発表されるコンテンツの絶対数は増大するでしょう。勿論玉石入り乱れるとは思いますが、絶対数が増えれば確率的に良作は増えるので問題ないのです。

ユーザー側からの視点としても、各人が自分の納得することのできる援助額で、パトロンとしての名誉が得られ、さらに基本的にユーザーの提供する資金は現行の方法に頼るよりもより直接的にコンテンツ提供者に与えられるので、ユーザーと提供側の距離がぐっと近づき、各ユーザーの意向もコンテンツ制作の現場に反映されやすくなるでしょう。

勿論ある一定以上の数の暴力を生み出しうる志向性のあるものには限られますが。しかしコレも極論してしまえば、ニッチな志向を持つ個人が、1万人の生み出しうる力を一人で発揮してしまえば解決される問題ですね。要は誰かが一人で50億円をポンと出せば、しかるべき人たちが超大作ゲームの一つくらいは作ってくれるはず、という話。

また、こういったハブを通すことにより起きうる金銭的なロスは、サーバー維持費と、このシステム自体を維持するために必要な数人の人件費(システムエンジニア、会計、企画自体の監査)くらいなので、ちゃんとしたオンブズマン制度が確立されれば、会員が一定数を超えたときに誤差の範囲として無視しうるものになるでしょう。

まあ最初はこのハブは有志のボランティアによって成立するんでしょうが。ここは名誉職であり、有名税と割り切ってもらうしかないですね。会員が一定数を越えた時点で任期制と選挙制を導入して自浄能力を持たせるのもいいかもしれませんね。

・結局言いたかったこと

何が言いたかったのかを言ってしまいますと、「世の中に存在するありとあらゆる商品には制作する際に絶対にコストがかかっていて、そういったものを享受し続けるためには、ユーザーとしても正しい姿勢を模索し続けなきゃいけないんじゃないのかな?」という事です。海賊版とか、違法アップロード・ダウンロードが横行する今のこの世の中で、「お客様が神様」であるためには、色々お客様の方も努力しなきゃいけなくなってるんじゃないのかな、みたいなね。

なんかこんなにダラダラ描き続けた文章が4行でまとまる不思議。

皆様無駄なお時間をお取りして申し訳ありません。まあこんな勝手な事を言うだけ言って後は知らんぷりというのも、人としてアレなので、近いうちに上記のような団体を作るために動いてみますので、それに免じて許してやってください。うまくいくかどうかはわかりませんが。

・ご意見等はこちら

なんか今回は変な誤解をされそうな文章になってる気がしてきてますが、まあ誤解を受けるのも自らの不徳のなすことなので諦めます。言いたい事も結構言った気がしますので、後、正直疲れてきたので、今回はここまで。

ツッコミやご意見ご感想、あと万が一ご協力のお申し出などがありましたらもう直接言いに来て下さい。一方的な文章だけで済ますよりは色々正確にコミュニケーションがとれると思います。

僕(藤岡)の連絡先です。お気軽にどうぞ。

末尾でこっそりと、になりますが、今回の話を書くにあたって僕が意識的に、無意識的に参考にさせていただいた野尻抱介氏とコイケリク氏に勝手に謝意を表明しておきます。


・最後に恒例のwebラジオ告知

現在弊社で趣味のようにやっておりますwebラジオ「あきでんラジオ」第12回目放送が本日更新されております。

今回は前半のゲストに、クエスチョナーズに泊まりに来てた野尻抱介氏を。後半のゲストには、いつも当ラジオにお便りをいただいている奇特なケイ氏をお招きしてお送りします。泊まりに来てたSF作家とか、数少ないお便りをくれるファンまで取り込んで誰得!?な感じの約2時間、是非お楽しみください。

そんな感じでまた再来週。ではでは。

クエスチョナーズ 藤岡聡

【バックナンバー】
(株)クエスチョナーズ ちょっと普通の会社とは違う
(株)クエスチョナーズの作り方
ちょっと頭がアレな人たちの、アレな会社の特殊な事例
空飛ぶパンツ クエスチョナーズがヤリます!!
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現代における消費というマナー(上)

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