2010年07月12日

【コラム・ネタ・お知らせ】 他人を喜ばせる上手な「嘘」

クエスチョナーズ藤岡っす。「嘘」と聞くと中身を調べもせずに拒否反応を示す人々が多いものですが、賢明な読者の皆様に置かれましては近頃のご機嫌いかがでしょうか?夏のイベントシーズンを前にクエスチョナーズの事務所は日々熱が増しており(物理的に)、おデブな僕としてはもう限界ギリギリです。題名に反して嘘ではないのが悲しいところですね。
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デブ話はさておき、僕たちは生きているうちに幾度となく「嘘」をついています。意識的なこともあるし、無意識でやらかすこともあるし、自分のためだったり、他人のためだったり、世の中には本当に色んなタイプの嘘が存在します。「人生で一度も嘘をついたことがない」なんて人がいたら、常識的な人間であればそのセリフ自体を冗談として扱うか、そのセリフを発した人間のオツムの出来を疑うべきでしょう。

人は生きているうちに幾度となく色んな「嘘」を付いている

そもそも「人間社会」自体が様々な個体差・欲求をもった個人の集まりで、そういった人たちが一様に「人間社会」なんて名前の一定の枠またはルールの中で暮らしていることにより、「誰それが悪い」というわけでなくても様々な衝突が起きるものです。で、そういった衝突を平和裏に解決・調節するのが「嘘」だったり「諦め」だったり「思いやり」だったりします。だから、これらのものに関わらずに人間として生きていくなんてことは不可能な筈なのです。自身の中で「言葉」がしっかりと確立出来ていない赤ん坊や、狼に育てられた少年、みたいな存在ならば例外として「嘘」に関わらずに生きていると言えるかも知れませんが、このコラムを読んでいる方たちの中にはそんな人はいないでしょうから、そういう例外はまあ無視で。

一応このコラムでは「真実とは反する言動」をひとまとめにして「嘘」と呼んで話を進めます。で、そういった「嘘」にも幾つか種類があって、大雑把に分けると「一定の感情・事実を隠すためのモノ(1)」「当初はそんなつもりはなかったのに後から嘘になってしまったモノ(2)」「真実だと証明できないことをあえて言い張る事により何かを表現するモノ(3)」があります。ちょっと具体例を挙げておくと、

(1)…自己防衛のための嘘(悪事の言い訳など)、詐欺師の言葉、悪戯の手段
(2)…ダブルブッキングを失念、希望的観測からの約束の破綻(政治家のマニフェストとか)
(3)…宗教、予言・予測(当たっていたとしても偶然と考えるべきモノの場合)、超能力、心霊体験

あたりがあります。どの例もそれを発した個人の環境・性格・精神的疾患などの要因によって(1)に分類されるべき場合が多々ありますが、概ね好意的に見られる状態の時に発したものであるという仮定の上で、こう分類します。

「嘘」の大雑把な分類はこんな感じ

このように「嘘」というモノは多様な姿で僕たちの生活の中に紛れ込んでいるものですが、実はエンタテインメントにおいても要所要所でかなり重要な役割を果たしています。そもそもエンタテインメント商材自体のほとんどのモノが、上記の(3)に分類される「嘘」そのものですし。パッと思いつくだけでも、小説や漫画やゲームにお芝居・映画にオモチャやイベントなどなど、僕らは日々非実在的な存在の非実在的な生活や感情や容姿だったりを、様々な方法で楽しんだりしているわけです。

一応「嘘」を含まないエンタテインメントとしてはスポーツとか報道あたりが考えられますが、所詮人間のやることなのでそういったものにも多少は「嘘」(八百長だったりヤラセだったり)が含まれていることもあるので、完全に「嘘」のないエンタテインメントというものは稀少価値の高いものと言えるでしょう。もちろん我らがクエスチョナーズで制作している数多の商品たち、フィギュア・コミック・アプリなどなどもご多分にもれず、「嘘」が元になっていることは言うまでもありません。

こういった「嘘」にまみれた商材を売るときにも、作るときにも「嘘」は必要とされます(もちろん「嘘」としての種類は全然違いますが)。発売日が遅れました→船の出港が遅れています・税関を通らなくて困っています(工場から言われることもあったり、メーカーが何かの手違いを隠すために言うこともあったり)みたいなものとか。何らかのミスで周囲の空気が悪くなって、それにより仕事自体に支障をきたしたりしないように、細かいところで細かい「嘘」(もちろん本当の時もあります)が今もどこかで生まれ、人と人の間の潤滑油として消えてゆくわけです。まあここらへんの「嘘」は別にエンタメ業界に限ったものでもないですが。

嘘は潤滑材としても働く

もちろん僕自身も、上記のような「嘘」をついたことがないなんてコトは口が裂けても言えません。むしろ企画屋という色んなものの調整役みたいな仕事をしているために、自分のためだったり人のためにだったりで、おそらく普通の人たちよりもそういう「嘘」をつく機会は多いと思います。まあ基本的に僕は「結果よければ全て良し」だと思っている人間なので、最終的にある程度見渡す範囲(僕が知覚している作家さん、工場、問屋、小売、お客さん位の範囲)の人が幸せになれば何やってもいいや、くらいで開き直っています(逆にそれだからこそ続けられているのかも)。最近では開き直りが一周して、何かあったらすぐ完膚なきまでに謝ってしまう、という技も覚えました。これもこれで反省しきる前に反射的にやってしまうと「嘘」みたいなもので、胃が痛くなる時間をそのまま謝った先の人間に押し付けてしまうところもある分、言い訳するよりも質が悪い、という場合もあります。人間年はとりたくないものです。

また、僕らのようにエンタテインメント商材を企画して食っていこうとか言い出すと上記のようなモノ以外にも「嘘」が必要になってきます。

企画屋として生きていこうと考えている人が何かしらの会社に入って、最初にぶつかることになるのが、決裁権を持つ上司≒スポンサー(言うなれば企画屋管理人)との「企画を通す通さない的な戦い」なんですが、このせめぎ合いというのが何とも「嘘」にまみれたヤヤコシイものなわけです。

今ままでにも何度か言ってきているように、エンタテインメント商材でお金を儲ける、なんてのはギャンブルと何ら変わりがありません。そういったものを作り始める前に「作るべきか否か」絶対の自信をもってどちらかに決める、なんてことは人間業では不可能なものです。どのような企画においても、「どうなるかわからないけどやってみる」か「どうなるかわからないけどやってみない」かのどちらかしか選択肢は無いわけです。で、結果「やってみた」時には黒字であれば正解であったことがわかるし、赤字であれば「やらない」が正解であったことがわかる。逆に「やらなかった」場合には結局何が正解だったかはわからない宙ぶらりんな状態になります。結局、「やってみなけりゃなにもわからん」という事だけが真実、というあやふやな状態だったりします。

このあやふやな状態の中でどちらの意見が正しいのか、という戦いを勝ち抜くのが「企画を通す」という事だったりするんですが、この「事前にはどちらにしても誰もが正解とは言い切れ無い」というのがミソで、そのミソの部分で色んな「嘘」が蠢くことになります。曰く「流行っているキャラクターの関連商品だから間違いない」とか「今売れ筋の商品形態だからイケル」とか「作るのに固定費が殆どかからないから売れる個数が少なくても大丈夫(これは損失を実際の作り手に押し付けている場合がほとんど)」などなどなど、挙げ始めればキリがないくらいたくさんの「嘘」が日々色んな場所で生まれていることでしょう。で、その「嘘」に上司がノッてくれば企画が通るし、そうでなければおじゃんになります。

前回のコラムにも書いたけど、周囲の人間を納得させることができなかったら
企画はそこでおしまい

というのが企画屋側から見た時のお話ですが、そもそも上司が企画を通すまいとしてくるのにも理由があります。「減点法による評価を恐れての現状の維持(失敗する怯れがあるなら動かない方がマシ、的な)」だったり「そもそも企画として成り立っていない(自分が作りたいものを他人に伝えるのに必要な情報が揃っていない)」とか「キャッシュフローの予定に合致しない」などなど、こちらも枚挙に暇がない。なので結局お互いにいろんな「嘘」を出し尽くした上で(もちろん嘘でないものも出し尽くすことになる)、「なんとなく」論に力があった方に軍配が上がることになります。

で、いざ「やる」となったら今度は「最初にやると言った人=企画屋」と「それにOKをだした人=上司とか会社とか」が一つとなって、他の組織や市場だったりに「嘘」を使って「嘘」を売りに行くことになります。最終的には個々のお客さんがその商品を買うだけ買ったその後に、そのすべての「嘘」が結果論的に「嘘」だったのかどうかが判定されて、その結果にふさわしい方法で精算されます。

このような感じで「嘘」それ自体が仕事のようになっているので、企画屋稼業を続けていると人は段々自然に「嘘」がうまくなります。良いことか悪いことかはさておいて。企画屋管理人であるところの上司なんかはそういったとこからさらに一歩先に進んでしまっている人なので、新米企画屋の企画を「嘘」だけでひねり潰すことなどお茶の子さいさいといった感じです。じゃあそんな人達が日々しのぎを削って企画を動かしているところで、何をやってやれば企画を自分で動かすことができるようになるのかというと、その戦いにおける要点を押さえた「嘘」を学んでいくしかありません。で、その要点というのがどこら辺にあるのかというと、「その企画をやることにより、お金が儲かったり・楽しい事が起きたり、という何かしらの利益がその相手(を含む団体に)にもたらされる、ということを如何に相手に信じこませるか」というところになってきます。

そうやって様々な企画を世に出していく中で企画屋自体も、商品として価値のある「嘘」がうまい人間と、企画を通す「嘘」がうまい人間とに別れていきます。後者のほうが様々な場所で様々な商品を作る機会に恵まれやすいですが、結局お客さんが喜ぶのは前者の人間が作ったモノ、というのもよくある話。人生におけるスタンスがどうなっているかという問題もありますが、企画屋として生きていくのに大切なのは、「嘘」が「嘘」であることを見破られないようにすること。エンタテインメントは「嘘」を楽しむモノではありますが、それがあまりに浅はかな「嘘」だとお客さんもシラけてきます。するとその企画屋の作るモノが売れなくなり、その企画屋自身がオオカミ少年のように周囲に相手にされなくなってきてしまいます。

「嘘は泥棒の始まり」なんていう大人たちの「嘘」に縛られすぎず、上手な「嘘」で他人を喜ばせられる真っ当な大人でありたいものです。


さて、ワンダーフェスティバルも近づいてきてますので、ここでちょっと告知を。

今回も前回のWFと同様、弊社がお世話になっている玩具問屋のカフェレオ様のブースで展示をさせていただきます。クエスチョナーズからは、VISPO氏原型の「ラクエル・ゴシック」・「ラクエル・ロリータ」、植物少女園氏原型の「サヤメ」、キングオブクラフト氏原型の「魔女娘(仮)」などの彩色見本/量産サンプルの展示の他、まるかた氏ぐりむろっく氏のコラボ「邪神像」の告知などを行ないます。

「ラクエル・ゴシック」・「ラクエル・ロリータ」
「サヤメ」・「魔女娘(仮)」

まるかた氏とぐりむろっく氏のコラボ「邪神像」

それに加えて、もう一つ。OFF LIMITというディーラー名で、主にWFで活躍されている内田氏という原型師がいらっしゃるんですが…

OFF LIMIT 内田氏の過去の作品の一つ

内田氏の1点モノの新作を、ちょっと不思議な方法で販売させていただくかもしれません。ラフはこんな感じですので、見に来ていただければ幸いです。

WFで販売予定 OFF LIMIT 内田氏の1点モノ作品(フィギュア)のラフ

ブースには僕もいるので、お気軽にお声をかけて下さいな。

また、カフェレオ様でのWF開場販売商品は、「魔法の天使 クリィミーマミ 1/7PVC完成品フィギュア ロリータVer.」と「Jウィング監修ミリタリーエアクラフトシリーズ Vol.4 Plus Bravo」の2点。こちらもどうぞよろしくお願いします。

「魔法の天使 クリィミーマミ 1/7PVC完成品フィギュア ロリータVer.」

「Jウィング監修ミリタリーエアクラフトシリーズ Vol.4 Plus Bravo」

最後に恒例のあきでんラジオ告知。今回も生放送でやります。日時は7/12月曜日の22:00~ニコ生Ustreamどちらもやります。暑さにめげそうになりながらもドッコイ生きてるダメ人間二人のお送りする約2時間をお楽しみに。

そんな感じで今回はここまで。ではまた再来週。

クエスチョナーズ 藤岡聡

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