2012年08月23日

【コラム・ネタ・お知らせ】PCゲームは長編だけじゃない。そう、今回スポットを当てるのは「短編作品」です

みなさんコンニチワ!ビジュアルアーツvavaしゃちょーです。忙しくて慌ただしいこんな時代にはPCゲームも短編でいいじゃないか、と思いませんか? 大作志向の貴方も、一度短編作品に目を向けてみてはどうでしょう。そんなこんなで、今回はPCゲームにおける短編作品についての考察です。
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みなさんは大作短編どっちが好きですか?
え?安くて量がいっぱいあるのが好き?

いやもちろんそうでしょうけど…(笑)

でもこんな慌ただしく、そして全てがスゴイ速さで流れ行く時代ですよ?

みんながスマホを手に、通学・通勤の空き時間ささっとなにかを楽しむ。それがゲームであれなんであれ、それがエンターテイメントを楽しむ一般的なスタイルになりつつある時代に、PCゲームだけがなんで大作志向なんでしょうね?

一般的な映画は2時間前後、1クールのアニメを全て見ても約6時間30分ほど。しかし大作PCゲームともなるとプレイ時間が最低でも10時間ないと怒られる。中には数十時間を超えることもあったり……。

これは、issueの短編キネティックノベル「名探偵失格な彼女」
怪盗、密室トリック、連続猟奇殺人、名探偵-もしもミステリの世界が日常だったら?破天荒なヒロインが元気一杯に暴れ回り、快刀乱麻に事件解決する、とっても面白い作品だよ。
DLで販売中

もちろん、われらがKeyの諸作品を例に上げるまでもなく、確かに大きな作品でしか表現できない世界観深い物語はある。

だけどそういう大作だけが素晴らしくて短編がつまらない、なんてことはないと思うんだよね。

それに、メーカーとしてはもちろんのこと、ユーザーだって長い作品を最後までやって、それが面白ければいいようなものの、結果つまらなかったら時間もお金ももったいない。

だったら、規模は小さくても良質な短編作品を成功させるの方が、今の時代にあってるような気がする……。

なにより短編は大作の小型化にあらず。うまくいけばこのジャンルの可能性を飛躍的に高めることが可能なんじゃないかと思うんだ。

てなことで、今回はPCゲームにおける短編作品のススメと、制作者視点での短編作品をどう作ればいいのかについて、ちょっぴり考察してみたいと思います。


(過去回へのリンク)
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◆恋愛には時間がかかる?

んでもって、恋愛ゲームの話

世間的にはいわゆる『萌ゲー』と呼ばれてるジャンルだけど、このジャンルの短編というのはほとんど見かけないよね。

もちろん成人向けの短編作品はいっぱいあって、そういうのはちゃんとダウンロード販売を中心にして市場を形成しつつあるんだけど、こと『萌ゲー』に関しては今もってぜんぜんそういうのが喜ばれない。というか、短編の恋愛ゲームがヒットしたためしがない

なぜなんでしょう?

理由は簡単。

なぜなら恋愛感情を抱くにはどうしてもそれなりの時間が必要になるからだ。

これは経験則だけど、例えばPCゲームにおいてユーザーにあるキャラクター=女の子への恋愛感情に近いものを抱かせようとすると、最低でもそのキャラとの会話を累積3時間以上作らないとうまくいかない。

そうするとそういうヒロインが5人いれば15時間分は会話シーンが必要になる計算で、それはシナリオ量で言うと1.5メガバイト以上になる。絵もそれに応じて必要になるし、これでは小さくするのは構造上無理なんだな。

会話って大事。男と女に限らず、人間どうしが理解し合うのには一定の時間がかかる。数時間をかけて話し合えば、仲良くもなれるし気心も知れる。それってたぶんDNAに刷り込まれてるんじゃないかね?んでキャラとユーザーも同じ。

もちろんキャラを少なくすれば可能にはなるんだけど、今度はユーザーの好みをかなり限定することになってしまう。たった一人のヒロインを提示して、そのキャラがユーザーの気に入らなければ、もうそのゲームを買う理由はなくなってしまうからね。

つまり恋愛ゲーム短編でやるのは至難ってことになるんだ。

…え?それは困るって?

萌えをやりたいのに、それができないとPCゲームの意味がない?

はいはい、そこのアナタ、お気持ちはよくわかりますよ(笑)


◆短編作品を成功させる方法論

じゃあPCゲームにおいて、たとえば300キロバイト程度のシナリオで良質な短編作品=小品を作るにはどうすればいいのか?
しょうひん【小品】
�@文学・音楽で,短い作品。また,絵画・彫刻などの小規模の作品。「珠玉の-集」
�A小さな品物。「諸の-を販売する肆店あり /西洋道中膝栗毛七杉子」
(大辞林第三版の解説.より)
1.恋愛するならヒロインは一人。特徴ある物語で印象深く

さっきも言ったように、ユーザーに恋愛感情を抱かせるのはとても時間がかかるのだ。

ということは、それを短編シナリオで目指しても、なかなか成功しないということになるよね?

だからヒロインは出来れば一人にし、集中して会話させることが重要。人間は誰かと会話したり、見つめることでしか恋愛感情は抱けない。そしてその時間は、さっきも言ったようにゲーム時間なら3時間は必要なのだ。つまり貴重な会話シナリオをできるだけ分散させないほうがいいと思う。

それから、短編では当然プレイ時間が比較的短いので、物語をしっかり印象深くしないとユーザーとしては満足感が得られないよ。

たとえ『萌え』=恋愛が重要なテーマだとしても、それ以外の物語要素…ミステリーとかSFとか、ホラーとかもしっかり入れて、ちゃんと心に残る内容に仕上げるほうがいい。

逆に長編なんかだと、そこをあまりやりすぎると恋愛が忘れられてしまって本末転倒あら不思議
面白かったけど萌えれなかった、みたいになるんだよね……(笑)


2.わかりやすさとアイデアと

それから、世界設定はわかりやすい方がいい。長編ではいろんなシーンを通じてその世界への理解を深めていくことが可能だけど、短編にはそんな余裕がない。だからパッとその世界の入っていける設定のわかりやすさが必要になる。

これは初心者がよくやる失敗なんだけど、すごく細かい世界設定とか世界のルールとか、いわゆる架空のファンタジー世界をやろうとするんだけど、実は説明不足でユーザーにはその世界が理解できなくて、やっと理解できたころには物語が終わってしまう、なんてことがある(笑)。

ユーザーはいつも自分の常識の中で理解しようとするものだから、作者がいくら独創的な世界をきちんと構築していても、ユーザーにはまるで伝わってなかったりするんだね。

ただし、いくらわかりやすさが大事とは言っても、ただそれだけではつまらないので、なにかしらのギミックやアイデアは必要だよ。

たとえば設定はありがちな学園ものにしておいて、しかし揉め事をカードバトルで解決するのが校風だとか、あるいは近未来ものだけど、そこは一夫多妻が許される世界だとかね(笑)

わかりやすさと新鮮味のバランスが重要なんだな。

ご存知「神曲奏界ポリフォニカ」の1シーン。
このゲームは凄く独創的な世界設定だけど、それが実に理路整然と説明されててとてもわかりやすい。妖精へのあこがれが時代とともに人間のネーミングセンスに影響を与えて、みんなそういう名前になってる、なーんて素敵すぎる。

3.オチが重要

長い物語なら進行する「過程」でお腹いっぱいになれるかもしれないけど、短編だとなかなかそうはいかない。だからしっかりしたオチを作って、キレのある読後感を演出しないといけない。

たとえば長編だと

(1)ヒロインと出会う→(2)日常を過ごす→(3)試練が訪れる→(4)恋愛が成就する

こういう構成がよくあって、ここでは(3)や(4)よりむしろ(2)の日常が一番大事だったりするのだが、これが短編の場合は同じ構造をやろうとしても(2)の日常に多くの時間がとれず、全体として満足感が不足てしまう。

だから短編の場合は

(1)日常を紹介しつつ事件がおこる→(2)さらに事件がおこる→(3)クライマックス→(4)解決とオチ

こんな風にテンポよく進行させつつ、さらにしっかりオチを意識した構成を考えていくといい。

たとえば

(1)恋愛関係にあった2人が神隠しにあう→(2)夢幻世界を2人で彷徨う→(3)もう二度と帰れないのを覚悟で誰かを救う→(4)救ったのは2人の未来の子供だった

こういう場合では(2)の過程もさることながら(4)のオチに最大の注意を払って、序盤で布石を打ったり、悟られないよう注意深くネタを振ったりして、そこに向けて全体を構成していくとかっこよくて読後感のいいゲームになるよね。


◆短編作品の可能性

さっき短編は時間がかからなくて作る方もやる方もいいよ、みたいなことを言ったけど、もちろん
メリットはほかにもあるよ。

まずは値段。

長編だと制作経費がハンパないから、どうしてもそれなりの販売価格になってしまう。それが短編だと比較的安価に設定できるし、うまくやれば価格フリーにもできる可能性がある。メーカーとしても、規模が小さいためにスマホなどへの移植が容易で、結果として多角的な回収が見込めたりする。

ほかには各クリエイターの負担が少ないので、長編には参加できないような有名な人や、他ジャンルの作家さんにも参加してもらえる可能性がある。

また実験的な世界観やキャラクターを短編作品で試してみて、人気があるようなら長編化という手法もとることができるよね。これはユーザーとしても気に入らない作品を買ってしまうリスクを回避する意味で大きい。

さらに、比較的簡単に楽しんでもらえるので、ユーザーの裾野が広がったりもする。数時間で終わるなら、忙しい社会人や、大人のユーザーさんも安心して楽しめるよね。

これはmana×MF文庫Jの最強タッグがお送りする、絶対貴族ファンタジー! 「ノーブルリージュ」の1シーン。 著者・TAMAMI、原作・丘野塔也、mana、イラスト・兎塚エイジによるライトノベルが主体だけど、キネティックノベル版もあってとても好評を博した。こういう実験的作品が生まれるのも短編の魅力だ。

とはいえもちろん短所もあるよ。

たとえば世界観やキャラクターを深く描くことができないので、アニメ化やグッズ化といった派生商品への展開はやりにくいし、プレイ時間の短さは持続した人気に繋がりにくい。

こういう部分はマルチな作品展開や、計画的な関連作品の展開でカバーしていかないといけないのかもね。

……てことで、いずれにしてもこれからわれわれも、短編には依然力を入れてやっていきたいと考えてます。今までやらず嫌いの人はぜひ一度やってみてね!!


補記1
本文中シナリオはゲーム業界の慣行に従ってキロバイトで表記したが、1キロバイトは原稿用紙約一枚に相当する。ライトノベルで言うと1冊が200キロバイトくらいなので、短編と言ってもそれよりは多い。一方長編は最低でも1.5メガバイトはあって、これはライトノベル7冊くらいにあたる。

補記2
エロゲーは今まさに小品の時代。ちょっとした思いつきをすぐに実現できて、ニッチなキャラやシチュエーションを素早く作品化するという本来の姿に戻りつつある。もちろん廉価だし、どんどん面白くなってきた。DLサイトで同人作品とソフ倫作品が区分けされていなければ、ソフ倫系ももっと売れるのにとちょっぴり残念。

補記3
とまあなにが言いたいのかというと、キネティックノベル作品「不死鬼譚きゅうこん 千年少女」をよろしく(笑)あと、この作品の元となった作品コンクールのキネティックノベル大賞は、10月締切なのだが実はまだ応募が少ないorz はっきり言って今回最低100作品以上の応募がなかったら、この賞の存続がピンチと思う。

補記4
クリエイターの皆さんにはこちらでノベルエンジンの提供もしているのでご興味ある方はどうぞ。


■ ちょっとだけ見せちゃいます、「ビジュアルアーツ大感謝祭 Shift:NEXT→Generation! -きみとかなでるあしたへのうた-」の設営様子!

盛況に終わりましたビジュアルアーツ20周年イベント「ビジュアルアーツ大感謝祭 Shift:NEXT→Generation! -きみとかなでるあしたへのうた-」の設営様子をちょーっとだけお伝えします。!

この日はイベント前日21時前に会場入りし、撤収が終わったのはイベント当日25時頃でした。横アリ滞在時間、寝ずに約30時間!?

最初に待っていたのは大量の荷降ろし……! 展示物、販売物、機材などなど、山のように!

どんどん機材が運び込まれる会場。みんな真剣そのもでしたっ。

こちらは例のバルーンを制作しているチームです。こうやって作られてたんですねー。

この大きなロゴは会場入口に飾られていたもの!実物を見るとめっちゃくちゃ大きかったです!

パネルがまず立てられたこれ、何かわかりますか? このあとショーケースが置かれ、各展示コーナーが作られたんですよ。

横アリを見守り続けたRewrite Hfカー
もう少しでオークション販売も行われますので、是非Key公式サイトをチェックしてくださいね!

ずららっと並んだ各ヒロイン達! みんなはどれだけわかるかな?

ここは年表コーナーですね。さすがに20年分とのもなると、かなりの長さになっちゃいましたね!

所変わって、Keyの展示ブース設営です。まずはブースを作り、そこから飾り付けです!

展示コーナーでも人気が高かった、SAGA PLANETSのショーケースを飾り始めたところですね。

外に移って物販前の最終チェック様子です。

そして始まったライブ本番!

【バックナンバー】
「ビジュアルアーツ大感謝祭 Shift:NEXT→Generation! -きみとかなでるあしたへのうた-」が無事に終了しました! 果たしてイベントはどうなったのか……!
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